【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。   作:まだら模様

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これはもし戦いの間にこんなことがあればのIFの話です。
※この直哉は呪霊直哉と戦った世界線の直哉…その地続きの話です。
心象風景に甚爾が現れたんなら、こんなのもアリだろうと…オリジナル展開マシマシとなっています。
ここまで掲示板回に付き合ってくださった皆様への感謝を込めて!どうぞ!お楽しみください!

直哉が掴むものとは…?

※今回呪術廻戦の技、領域展開などに独自解釈を用いています!オリジナル設定です。かなり原作より別設定にしているものもあるのでご注意ください。
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

感想、評価付与、お気に入り登録は直哉が更なる高みへと昇る鍵になります!


第131話:IF回 異なるifを越えて・弐 ── 禪院直哉、最強と邂逅 ──前編/六眼の訪問

 

 AFO戦が終わって、十日が経った。

 

 直哉の日課は変わっていない。深夜に起き、空写を展開して周囲の安全を確認し、ノートに術式の設計図を書き、夜明けまで一人で考え続ける。

 

 変わったのは、ノートの内容だ。

 

 「次の設計」の質が、AFO戦の前とは違う。

 

 領域展開「万象剥離・極彩断層」を完成させ、実戦で発動させた。それは達成だ。だが達成した瞬間から、直哉の思考は「次の課題」に向いていた。

 

 層位破断の発動速度。墨色定着の維持時間。万代の透過を維持したまま別の効果を重ねる並列処理の精度。どれも「使えた」が「完璧ではない」。

 

 そして最大の課題。

 

 (領域展延を、もっと精密にするんや)

 

 呪霊直哉との戦いで体得した展延は、使えた。呪霊直哉の領域を「中和できた」。だが完全な遮断ではなかった。膜の密度に、まだ斑がある。

 

 (……展延の精度が上がれば——もう一段先が見える。でも、その「もう一段先」が何かは、まだ分からへん。……不細工な妥協は、俺の設計図には一行もいらんわ)

 

 直哉はペンを置いた。窓の外、夜明け前の空が藍色になっている。

 

 (……そろそろ眠るか。設計は、脳が動いてないと進まへん)

 

 扇子を閉じた。目を閉じた。

 

 意識が、沈み始めた。

 

 落ちた先は、暗かった。

 

 灰色でもなく、白でもない。漆黒の平原。

 

 直哉が万象剥離・極彩断層を完成させた後から、この心象風景が「形」を持ち始めていた。頭上には、薄いフィルムが何枚か積み重なっている。足元は漆黒の鏡面だ。自分の領域の断片が、眠るたびに少しずつ心象風景に染み出してきている。

 

 (……今夜も来るか、と。俺の眠りまで土足で踏み荒らすんは、どこのドブカスや)

 

 直哉は空写を展開しようとした。

 

 展開できた——が、読めなかった。

 

 いや、正確には。空間に、「読み取れない気配」が存在していた。

 

 甚爾との時とは違う。甚爾は「情報の空白」だった。

 

 今の気配は、空白ではない。むしろ——情報が多すぎる。

 

 漆黒の鏡面を覆うほどの呪力の密度が、一点に凝縮されている。空写が処理できないほどの「情報量」が、心象風景の中に存在している。

 

 「——よう」

 

 声が、後ろから聞こえた。

 

 軽い。飄々としている。だが、その声だけで、直哉の全身の産毛が総立ちになった。

 

 直哉は、ゆっくりと振り返った。

 

 白い目隠し。高い身長。着崩した黒い衣装。

 

 そこに立っているのは、自信という概念すら通り越した「余裕」そのものの顕現。

 

 「……悟くん。死んでなお、人の眠りを邪魔しにくるたぁ雅やないな」

 

 「そう言うなよ。……いい心象風景だね。上の方のフィルム、僕の好みだよ」

 

 五条は、漆黒の鏡面を見下ろしながら言った。

 

 「君の領域の断片が、眠るたびに心象風景に染み出してきてる。そのうち、ここが完全な『万象剥離』になるんだろうね」

 

 直哉は、動じないようにしながら問うた。

 

 「……なんで、アンタがここに居るんや」

 

 「僕はもう死んでるよ」

 

 五条はあっけらかんと言った。

 

 「宿儺との戦いでね。でも——まあ、死んでも好奇心は残るものだ。禪院くん、君のことが気になってたんだ」

 

 「……俺のことを?」

 

 「禪院直哉。この世界に転生した呪術師。前世の記憶を持ちながら、独自の術式体系を組み上げ、AFOを倒した。……僕が生きていた頃の呪術界にも、君みたいな術師はいなかったな」

 

 五条が、目隠しをずらした。

 

 六眼が、直哉を捉えた。

 

 その瞬間、直哉は——心象風景の空写が根本から書き換えられるような感覚を受けた。

 

 六眼が、直哉の全設計を「読んでいる」。

 

 (……反吐が出るわ。こいつ、俺の手札を全部視透かしとる)

 

 「……で、何をしに来たんや。サインでも書きにきたか?」

 

 「戦いたい」

 

 五条は、さらりと言った。

 

 「この心象風景で、君と戦いたいんだ。……命のやり取りじゃない。でも、本気でいくよ。僕も、君も」

 

 「……断ったら?」

 

 「この心象風景は君のものだから、僕を追い出せる。でも——」

 

 五条が笑った。

 

「追い出すかい?」

 

 直哉は、少しだけ沈黙した。

 

 AFO戦を終えた今、直哉の「次の設計」に必要なのは、「自分の領域の限界を知ること」だ。そのための「試験台」として——これ以上の贅沢はない。

 

 (……六眼に全部読まれとる状態で、俺はどこまでやれるか。それを知ることが——次の設計の基盤になる)

 

 「……受けたるわ。アンタみたいな規格外を解体できる機会、そうそうないしな」

 

 扇子をパチンと閉じた。

 

 「ただし——俺の心象風景の法は、俺が決める。それだけは、前提として認めろや。……ここでは俺こそが、唯一無二の設計者さかい」

 

 「それくらいは当然だ。ここは君の内側だからね。——始めようか」

 

 

 五条が動いた。

 

 軽薄な空気が霧のように消え、そこに「最強」が顕現する。

 

 直哉は即座に空写を精度優先に切り替えた。

 

 (……悟くんの内側が読めへん。呪力が全部、無限収束で弾かれとる。俺の空写には『内側』が見えへん。気配の『外縁』だけが分かる)

 

 それだけでも、十分に恐ろしかった。

 

 五条のそれは——「海」だ。底が見えない。

 

 「……空写が、アンタの内側を読めへん。不細工なほど完璧やな」

 

 「そうだろうね。無下限がすべて弾くから。僕の呪力の流れは外には漏れないし、六眼があれば微細な呪力操作すら完璧に把握できる」

 

 「せやけど——外縁の密度は読める。アンタが次に動く方向は、密度の偏り(重心)から分かるんよ」

 

 「……なるほど。無下限の『収束密度の偏り』を逆読みするか。本当に頭がいいね、君は」

 

 五条が動いた。音がしなかった。

 

 着地点を弾き出すより早く、五条の右拳が直哉の顔面を射抜く。

 

 (——速い。甚爾くんとは種類が違う。悟くんは——呪力で速度の定義自体を書き換えとる!)

 

 直哉は鏃を足元で起爆した。爆圧で横に飛ぶ。五条の拳が、直哉のいた空間を穿つ。漆黒の鏡面に、衝撃の波紋が広がった。

 

 「おっ、避けたね」

 

 五条の声は軽い。だが六眼は、すべてを見ている。

 

 直哉は落花の情を展開しながら、空写で五条の次の動きを読もうとした。

 

 外縁の密度の偏りが、左から来ることを示している。

 

 左に鏃を展開して飛ぶ。五条の左拳が、直哉の肩をかすめた。完全な回避ではない。「少しだけ触れた」。

 

 その瞬間、直哉の肩の表面に「何か」が当たった。

 

 物理的な衝撃ではない。収束された「無限」が、皮膚の外側で何重にも積み重なって——止まった。

 

 (……無下限バリア。これが『届かない』の実感か。反吐が出るわ。触れることすら許されへんのか、アンタは)

 

 「——すごいわ。完全に防御が成立しとる。俺の鏃も、着弾する前に——バリアの外側で止まるんやな」

 

 「正解。無下限を突破する方法は限られてる。特殊な呪具か、同等以上の呪力量か、あるいは——」

 

 「領域展延か」

 

 五条が笑った。

 

 「そう。……で、禪院くん、君は展延を使えるかい?」

 

 直哉は答えなかった。代わりに、空虚呪法を展開した。

 

 

 直哉は、五条の正面に固定節を三つ、連続で生成した。

 

 今回の用途は「爆破」ではない。

 

 (……固定節を『バリアの収束を止める楔』として使う。無下限が無限に収束するなら、その収束先の『点』を物理的に固定(フリーズ)してしまえばええ)

 

 収束の終点が固定される。その僅かな隙間を鏃が通る——という設計だ。

 

 直哉は鏃を圧縮した。収束の「死角」に向けて、極限まで細く鋭利にした呪力弾を放つ。

 

 「——っ」

 

 五条が、初めて体を動かした。避けた。

 

 「……なるほど。収束の終点を固定して、隙間を作るか。本当に、雅な発想をするね」

 

 「お世話になるわ。アンタみたいなのを相手にするには、これくらいせんと」

 

 「でも——」

 

 五条が右手を上げた。

 

「術式順転——蒼」

 

 心象風景の空間が、内側に向かって爆縮した。三つの固定節が引力に引き寄せられ、一点に集まる。重なった瞬間に、爆発が起きた。

 

 「——ッ!!」

 

 落花の情がオート起動。エネルギーを受け取り、方向を変換して弾くいた。 その反動で直哉の体が爆圧を燃料にして横に弾き飛んだ。着地した左腕が、じんと痺れている。

 

 「蒼で固定節ごと収束させたか。……鬼畜やな、アンタ」

 

 「六眼がすべて視ているからね。次に同じことをしても、同じように返すよ」

 

 (……六眼が問題や。設計をリアルタイムで読まれとる。崩すには——六眼の前提を逆手に取るしかない)

 

 直哉は空虚呪法を、自分自身の足元に向けて放った。

 

 「——っ?」

 

 直哉の動きが、完全に止まった。

 

 五条の六眼が、直哉の呪力の流れを読む。だが、直哉の呪力が一瞬だけ「静止」し、ゼロになる。

 

 その瞬間に足元に展開し、鏃に蓄えておいたエネルギーを純粋な物理機動として解放した。

 

 反動による推進…「肉体の運動」だけで、五条の懐に飛び込んだ。

 

 六眼が反応するより一瞬早く、直哉の右手が五条の無下限バリアの「外縁」に触れた。

 

 (……無下限バリアの『質感』、掴んだで。収束する無限の構造、その外縁の密度パターン。……空写で読み取ったわ。ドブカスなバリアの、綻びをな)

 

 「……なるほどね」

 

 五条が、静かに言った。

 

 「六眼の盲点を、呪力ゼロの物理機動で突いたか。そして反動を受けた時には呪力を切っていたと…一瞬だけ、僕の読みの外に出た。……面白いよ」

 

 「……アンタのバリアの外縁、少しだけ理解(わか)ったわ。……悟くん、次の一手、組ませてもらうで」

 

 直哉は扇子を開いた。

 

 

 直哉は後退しながら、反転術式を脳幹に直接バイパスさせた。

 

 脳への強制冷却。神経が焼ける感覚。だが意識は研ぎ澄まされる。

 

 (……六眼に対抗するには、処理速度を上げるしかない。アンタが読んでから動くまでの、コンマ以下の差を作り続ける。脳が焼けようが、反転で即座に修復して回す……! 俺が凡夫やないことを、骨の髄まで分からせたげるわ)

 

 直哉は空写の精度を最大まで上げた。六眼の「外縁の読み方」を逆算し、0.04秒先に動く。

 

 「術式順転——蒼」

 

 五条の右手が収束した。直哉は発動より0.02秒前に横へ飛んだ。

 

 「術式反転——赫」

 

 次が来た。五条の左手から、拡散する爆発的な呪力が迸る。

 

 直哉は落花の情でその爆圧を受け取り、九十度変換。爆圧が直哉の背後に流れる。心象風景の鏡面に焼け跡が走る。

 

 「……避けた。赫を落花の情で流すのか…この世界(ヒロアカ)用に簡易領域も変質したのか。ますます面白いね、君」

 

 「ミルコから盗んだ動きが基礎になっとる。アンタみたいな化け物を相手にするためには、背に腹はかえられないさかい」

 

 「へぇ、あの禪院家の次期候補筆頭がミルコに弟子入りなんて出来たんだ。上手いことやったね」

 

 五条が嘲るような、そして本当に感心したような声を出した。

 

 「君のその術式体系、面白いな。すべてが繋がってる。空写で読んで、鏃で機動して、空虚呪法で止めて、落花の情で迎撃し返して、反転術式で回復しながら脳の限界を書き換えて——」

 

 「……アンタ、戦いながら実況解説する余裕があるんか。雅やないな、ほんまに」

 

 「六眼で全部見えてるからね。説明しながらでも余裕がある。……これが現状の差だよ、禪院くん」

 

 直哉は認めた。圧倒的な差。

 

 (……消耗で先に倒れるのは、俺や。アンタは反転で脳を修復しながら無下限を維持しとる。消耗の概念が違う。……なら、俺も『あっち側』の札を出すしかないな)

 

 直哉は、両手を顔の前に掲げた。「断層の構え」。

 

 右手の親指と人差し指でL字。左手も同様にL字。それらを精緻に噛み合わせ、眼の前に「画角」を作る。

 

 心象風景の漆黒の鏡面が、直哉の足元からさらに深みを増した。上空のフィルムのコマが、かすかに増えた。

 

 「——来るか」

 

 五条の声が、一段低くなった。

 

 目隠しの奥の六眼が、直哉の「次の設計」を読み取ろうとしていた。

 




まずは邂逅!
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