【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。   作:まだら模様

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これはもし戦いの間にこんなことがあればのIFの話です。
※この直哉は呪霊直哉と戦った世界線の直哉…その地続きの話です。
心象風景に甚爾が現れたんなら、こんなのもアリだろうと…オリジナル展開マシマシとなっています。
ここまで掲示板回に付き合ってくださった皆様への感謝を込めて!どうぞ!お楽しみください!

直哉が掴むものとは…?

※今回呪術廻戦の技、領域展開などに独自解釈を用いています!オリジナル設定です。かなり原作より別設定にしているものもあるのでご注意ください。
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

感想、評価付与、お気に入り登録は直哉が更なる高みへと昇る鍵になります!


第132話:IF回 異なるifを越えて・弐 ── 禪院直哉、最強と邂逅 ──中編/無量空処と万象剥離

 

「『断層の構え』……へぇ、領域展開を使うんだ。禪院くんの領域の設計、六眼で全部見えているよ。三層構造に三種の必中効果。掌印と詠唱が三種類それぞれ必要……なかなか重い縛りだね」

 

「縛りの重さが、この三層という異常な構造を許しとるんや」

 

直哉は不敵に口角を上げる。五条の「軽さ」が消え、純粋な好奇心がその双眸に宿った。

 

「そうだね。縛りと恩恵のバランスが取れている。……で、それで僕に何ができる? 無量空処の情報洪水は、領域展延がなければ防げない。君、展延は使えるの?」

 

「——使えるに決まってるやろ、悟くん」

 

五条が、初めて明確な「驚き」を見せた。

 

「……へぇ。どこで会得した?」

 

「前世の俺が、呪霊になった可能性と戦ったんや。この心象風景の中で。その中で、体得したわ」

 

「前世の……呪霊化した禪院直哉と戦ったのか」

 

五条の声が、少しだけ静かになった。

 

「……時胞月宮殿を使ってきただろう。あれは厄介な領域だ。細胞レベルのフリーズは——反転術式でも追いつかないことがある」

 

「追いつかへんかったわ。かなりきつかったで」

 

「……それでよく勝てたね」

 

「落花の情の派生技で呪力を吸収して、それを推進力と弾薬に変えたんや。あとは展延で必中を遮断して、最後は極ノ番を叩き込んでな」

 

「……面白い設計だ」

 

五条が、右手の人差し指と中指を、絡めるように構えた。帝釈天印。

 

「僕も本気でいくことにする。この心象風景は君のものだから、僕が壊しても怒らないでよ」

 

「……設計の材料にしたるわ。構わへんよ」

 

「お互い、術式が焼き切れるくらいはやるぞ」

 

「設計に入れてるわ」

 

「……そっか」

 

五条が笑った。直哉は、深く息を吸い込んだ。

 

「重なりし有象、皆泥濘(ぬかるみ)」

 

直哉の詠唱が、漆黒の心象風景に走った。足元の鏡面が、さらに深みを増す。上空のフィルムのコマが、一枚、また一枚と積み重なっていく。1/24秒の静止画が、天井のない暗闇に吊り下げられていく。

 

《font:86》「我が瞳に映るは、一刻の極彩」

 

鏡面に触れた物質の「色」が分離し、溶け込んでいく。音の振動が24枚の層に分解され、直哉が許容した音以外は響かなくなる。

 

《font:86》「余分は一画すら、許さへん」

 

詠唱の最後の一節。直哉の両手の中指を、互いに交互に弾いた。フィルムを巻くような、独特の動作。

 

《font:86》「領域展開『万象剥離・極彩断層(ばくしょうはくり:ごくさいだんそう)』」

 

心象風景が、変質した。これまでの「漆黒の平原」とは異なる。直哉の領域が展開されたことで、心象風景が「直哉の設計だけが法となる空間」に塗り替えられていく。上空には無数のフィルムが渦を巻き、それぞれに今夜の戦闘の「過去の静止画」が焼き付いている。足元は漆黒の鏡面。音は直哉の設計に従う。極彩断層が、展開された。

 

五条は、その光景を六眼で見渡した。

 

「……きれいな設計だね」

 

素直な感嘆の声だった。

 

「1/24秒で刻んだ世界を、そのまま外側に引き摺り出した心象風景。投射呪法の設計思想が、領域の形そのものになっている。……一貫性がある。前世の世界の術師が見たら、誰も真似できないだろうね」

 

「……最高の褒め言葉やな、おおきに」

 

「でも——僕の領域と押し合うことになるよ」

 

「分かっとるわ」

 

五条が、右手の人差し指と中指を、絡めるように構えた。帝釈天印。そして——詠唱が始まった。五条の領域展開に詠唱があるという事実を、直哉は知らなかった。知識の片隅にも残っていなかった。だが確かに今、五条の口から言葉が紡がれている。

 

「無限は現実に宿り」

 

心象風景が、震えた。まだ五条の領域は展開していない。だが詠唱の一節だけで、空間全体の「密度」が変わった。圧力が増す。直哉の万象剥離の鏡面に、細かい亀裂が走り始めた。

 

(……詠唱の途中から、すでに効果が滲み出してきとる。悟くんの呪力量の桁が違いすぎる。詠唱自体が、もう危険や)

 

直哉は、脳直結の反転術式を最大出力で維持した。

 

「知覚は終わりを知らず」

 

三節目。直哉の視界の解像度が、わずかに落ちた。情報の「無限」が、まだ展開もされていない五条の領域から滲み出て、直哉の知覚に干渉し始めていた。

 

(……ッ! まだ展開してへんのに、情報が流れ込んでくる。六眼と無下限の呪力量で、詠唱だけで空間を汚染してきとる)

 

直哉は、領域展延の設計を起動した。漆黒の鏡面の質感が、皮膚の一ミリ外側に張り付く。1/24秒のフィルムのコマが、その膜の内側に積み重なる。極彩断層の「外縁」が、直哉の体に纏わりついた。

 

「伝達は虚空に溺れ」

 

四節目。

 

「この空を、無限の内側に」

 

五条の声が、心象風景の「全て」を塗り替えるような重さで響いた。

 

「領域展開」

 

「『無量空処(むりょうくうしょ)』」

 

心象風景が、二つの力によって引き裂かれた。万象剥離・極彩断層の漆黒の鏡面と積み重なるフィルムのコマ。無量空処の宇宙のような光景と、知覚と伝達を無限に強制する情報の奔流。二つの「法」が、直哉の心象風景の中でぶつかり合った。

 

地面が割れた。上空のフィルムが、無量空処の宇宙の光景に飲み込まれ始めた。漆黒の鏡面の端から端まで、ひびが走った。直哉の領域の境界線が、無量空処に押されて後退する。端から崩れていく。

 

(……押し負けとる。呪力量の差や。悟くんの無量空処は、押し出力そのものが俺の領域の比やない)

 

同時に、無量空処の「必中効果」が直哉に向かって来た。情報が、流れ込んできた。

 

「——ッ!!」

 

直哉は、領域展延の膜を即座に全出力で展開した。漆黒の鏡面の質感が、全身に張り付く. フィルムのコマが、膜の内側で高速回転する。無量空処の情報洪水が、膜の表面で——弾かれた。

 

完全ではない。膜の密度が追いついていない部分から、情報が滲み込んでくる。だが——立っていられる。

 

(……展延が、機能しとる。無量空処の必中を、完全にではないが、中和できとる)

 

「……展延で無量空処を防いでいる。……すごいな、禪院くん」

 

五条の声が、心象風景の中から響いた。感心の色が混じっていた。

 

「でも——僕の領域が押し勝っている。君の万象剥離は、端から崩れてきているよ」

 

「……分かっとるわ」

 

直哉は、崩れていく鏡面を見た。

 

(……展延で必中は防いどる。でも、領域の押し合いで負けとる。崩れる前に——次の手を打つ)

 

直哉は、掌印を切り替えた。半分の手のL字をそのままにして、もう片方の手は顔から少し離し、小指だけを立てて横にし、目線を隠すようにした。

 

「此処に在れど、非ず」

 

詠唱が走る。

 

「万代(ばんだい)の刹那、我のみが層を跨ぐ」

 

「——ッ!?」

 

五条の声に、初めて「驚き」の色が混じった。直哉の輪郭が滲み始めた。虹色のノイズが走り、実体が現実から希薄になっていく。

 

「『万代ノ透過(ばんだいのとうか)』!!」

 

直哉が、「存在と非存在の境界」に移行した。無量空処の情報洪水が——直哉を通り抜けた。

 

「……透過か。そういう使い方をするんだね」

 

五条が、初めて動きを止めた。その瞬間を、直哉は見逃さなかった。透過したまま——五条の真正面まで歩いた。無量空処の情報洪水の中を。全てが通り抜けていく。

 

「——散歩や」

 

直哉は、不敵に言い放った。

 

「……散歩って言うなよ」

 

「言わせてもらうわ。……何や、最強様が止まって見えるで?」

 

「僕に何もできない状態で来て、何がしたいの?」

 

「——」

 

直哉は、掌印を変えた。万代の透過の掌印状態を維持したまま、さらに中指を折り込む。透過の掌印と、次の掌印が——合わさった。

 

「——ッ!! それは——!!」

 

五条が、初めて本気で驚いた声を出した。

 

「二つの掌印を、同時に? それは縛りの外じゃないか……!!」

 

「縛りは『掌印と詠唱を経なければ効果を発動できない』というものや。同時に二つを取ることは——禁じてへんかったわ。……これくらい設計しとかな、あんた相手に『散歩』なんてできへんやろ?」

 

「——ッ」

 

「 重なりし虚飾、剥がれ落ち」

 

詠唱が走る。万代の透過を維持したまま、次の詠唱を重ねる。

 

「一刻の隙に、断絶を刻まん。」

 

「——待て——」

 

「『層位破断』!!」

 

層位破断が、五条の「層」を捉えた。五条の体を包む無下限呪術。その「層」に、引き剥がす力が走った。

 

「——ッ!!」

 

五条が、初めて苦痛の声を出した。無量空処の光景に、ひびが走る。宇宙のような光景の一部が、色彩を失い始める。

 

「——ッ……なるほどね。層位破断は『積み重なった層を剥がす』。無下限も、収束と反転と六眼の処理を『層として積み重ねた設計』だ。それを——引き剥がそうとしているわけか」

 

五条は、反転術式を即座に展開した。剥がされようとした無下限の層を、反転術式で修復する。

 

「……なるほど。AFOに対して有効だったのは、AFOが積み重ねた個性の層が多かったからか。僕の無下限は——層が少ない。構造がシンプルだからね。剥がし切れないよ」

 

「……そうやな。正直に言うと、AFOほど効かへんわ。反吐が出るほど硬いな、あんた」

 

「正直だね」

 

「でも——効いとるやろ?」

 

五条の動きが、ほんの僅か、鈍った。六眼が、層位破断への対処にリソースを割いている。その隙に——直哉は透過を解除した。実体が戻る。

 

「——極ノ番・積層残影・二十四葉・重ッ!!」

 

五条の正面、層位破断で一瞬だけ生まれた収束の「歪み」を狙って、右拳が放たれた。五百七十六倍の衝撃が、無下限バリアの外縁に叩きつけられた。

 

詠唱がなくとも確かにその一撃は無下限に響き、バリアが——きしんだ。完全には突破しない。だが、衝撃の一部が五条の体表に届いた。

 

「——ッ!!」

 

五条が、後退した。一歩だけ。だが確実に。

 

「……通したか。無下限バリアに、直接ダメージを通したのは——久しぶりだな」

 

五条の声が、静かだった。

 

「……あんたをよろめかせたん、俺が初めてか?」

 

「そうだね。……伏黒甚爾…いや禪院甚爾に殺されかけた時以来かもしれない」

 

「……甚爾くんと同じと言ってもらえるのは…光栄やな」

 

「どちらも禪院家ってのは運命を感じるね。でも——」

 

五条が、右手を上げた。

 

「勝負はまだついていないよ。万象剥離は、まだ崩れている。層位破断の効果も、反転術式で修復し続けている。……次で決める」

 

「俺もや。次で決めたるわ、悟くん」

 

二つの領域が、再び押し合いを始めた。漆黒の鏡面の上空で、万象剥離のフィルムのコマと、無量空処の宇宙の光景が、境界線を引いたまま——睨み合っていた。

 




最強に直哉はどう立ち向かうのか!
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