【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。   作:まだら模様

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供養します
ガバガバです。
ご容赦を…
ざっくりと原作には合わせてるつもりなのでお許しください…


第4話:入学編「委員長と、来るべき日のこと」

翌朝、雄英高校の正門前にマスコミが集まっていた。

 

 直哉はクラスメイトの列の端で、その光景を眺めた。

 

 カメラ、マイク、レポーター。何人もの記者が門の前で待ち構えており、生徒たちが登校してくるなり一斉に押し寄せてくる。

 

「雄英の生徒さん! コメントをお願いします!!」

 

「ヒーロー基礎学についてどう思いますか!?」

 

「オールマイト先生の授業は……」

 

「うわっ」上鳴が引いた。「なんか来た!!」

 

 緑谷が「え、あ、えっと……」と言い訳をしながら人波を掻き分けていた。麗日が困った顔で「えーっと……」と言葉を探している。飯田が真面目に答えようとして記者たちがついていけない表情をしている。

 

 直哉はカメラが向けられた瞬間、無言でそちらを見た。

 

「あなたは! コメントを!」

 

「ない」

 

「でも!」

 

「ない言うとる」

 

 直哉はそのまま歩いた。レポーターが何か続けようとしたが、直哉の目が一瞬だけそちらを向いた。それだけで、レポーターが口をつぐんだ。

 

(……関係ない人間に構う時間はない)

 

 

相澤先生による屋内対人戦闘訓練への言及が終わった後、ホームルームが始まった。

 

「委員長と副委員長を決める」

 

 相澤が眠そうな目で言った。クラスが一気に盛り上がった。

 

「委員長!?」

 

「誰がなるの!?」

 

「立候補制だ。やりたい奴が手を挙げろ」

 

 真っ先に手が挙がったのは飯田だった。

 

「飯田天哉、立候補します!!」

 

 続いて麗日、八百万が手を挙げた。緑谷も恐る恐る手を挙げる。何人かが続く。

 

 直哉は腕を組んだまま、手を挙げなかった。

 

「禪院は立候補しないのか」切島が隣でこそっと言った。

 

「する理由がない」

 

「委員長って責任ある仕事だぞ」

 

「知っとる。だからこそする気がない」

 

「……ある意味正直だな」

 

(……委員長。誰かをまとめて、誰かのために動く。俺には向いてへんし、する気もない。その分の呪力と気力は自分のために使う)

 

 投票が行われた。

 

 結果が黒板に書き出される。

 

 緑谷出久:三票。八百万百:二票。麗日お茶子:一票。飯田天哉:零票。

「え」緑谷が目を丸くした。「僕が……?」

 

「飯田くん、零票!?」上鳴が驚いた。

 

「…………」飯田が黒板の「零」という文字を見つめ、その巨体が微かに震えた。

 

「緑谷ちゃんが委員長ね」蛙吹が静かに言った。

 

「い、いや僕なんかが……」緑谷が焦っている。

 

「多数決の結果だ。緑谷、委員長、八百万が副員長をやれ。」相澤が淡々と言った。

 

「は、はい……!」

 

「承りました!」

 

(……緑谷が委員長、八百万が副員長か)

 

 直哉はその結果を聞いて、内心でぼんやりと思った。

 

(確か飯田くんに変わるんやったな。今日中に侵入騒ぎが起きて)

 

 飯田がこそっと緑谷に話しかけていた。

 

「緑谷くん、僕も立候補していたが……君の方が票が入った。頑張ってくれ」

 

「飯田くん……ごめん、なんか……」

 

「謝る必要はない。結果だ。だが僕は君を応援する。僕の兄のような、人を導けるヒーローに君はなれると思っているよ」

 

「飯田くん……!」

 

 直哉はその会話が聞こえていたが、特に何も思わなかった。

 

(……飯田くんの兄か。確か、後でその兄が絡む話があった。ヒーローが倒される、飯田が暴走する。そういう記憶が薄くある)

 

(……今は関係ない話や)

 

 

昼休みだった。

 

 直哉が食堂にいると、突然アラームが鳴り響いた。

 

 ビーーーーーッ。

 

「何!?」

 

「警報!?」

 

 食堂が一気にざわついた。椅子を倒しながら立ち上がる生徒、出口に向かって走り出す生徒、互いにぶつかり合う生徒。パニックが広がっていく。

 

「落ち着け!!」

 

「どこに逃げるんだ!!」

 

「ヴィランか!?」

 

(……警戒レベル3。マスコミの侵入や。本物のヴィランやない)

 

 直哉は椅子に座ったまま、動かなかった。

 

 周囲が混乱している。誰も方向が分からず走り回っている。このままでは将棋倒しになる。

 その時だった。

 

 食堂の上の方から声が響いた。

 

「落ち着いてください!!」

 

 直哉が見上げると、飯田が非常口の出口ランプに覆い被さるように張り付いていた。麗日のゼロ・グラビティで浮かされたのだろう、壁の高い位置に手を当てて食堂全体を見下ろす形になっている。非常口を示すような姿勢で腕を伸ばし、出口の方向を指し示している。

 

「これはヴィランの侵入ではありません!!マスコミが敷地内に侵入したことによる警戒です!!!雄英高校の施設には雄英バリアという高性能セキュリティが備わっています!!不審者が入っても遠くまでは来られません!!焦らず、順番に、出口から退避してください!!!」

 

 食堂が静まった。

 

 飯田の声は大きく、迷いがなく、明確だった。パニックになっていた生徒たちが、その声に引っ張られるように動きを止める。 

 

(……なるほどな)

 

 直哉は腕を組んで、飯田を見上げた。

 

(咄嗟に麗日ちゃんに頼んで高い位置に上がり、全員が見える場所から呼びかけた。判断が速い。それに、あの声には人を動かす力がある。場を制圧できる人間や)

 

 食堂の生徒たちが、飯田の指示に従って秩序を取り戻し始めた。

 

(……これを見て、緑谷くんが委員長を譲るんやろな。妥当やな)

 

 直哉は静かに席を立ち、出口へ向かった。

 

 

アラームが解除された後、午後のホームルームが始まった。

 

 緑谷が立ち上がった。

 

「僕、委員長を飯田くんに譲りたいと思います」

 

 クラスが静まった。

 

「さっきの飯田くんの動き、みんなも見ましたよね。咄嗟にあれができるのが、本当の委員長だと僕は思う。麗日さんに頼んで高い場所に上がって、全員に呼びかけて。あれは僕にはできなかった。今の僕には、まだ人を導く資格がない」

 

「緑谷くん……」麗日が驚いたように言った。

 

「飯田くん、お願いします」

 

 飯田がしばらく緑谷を見ていた。

 

「……やりたいと思うことと、相応しいかどうかは別の話だ。僕は自分の正しい判断をしたまでだ」

 

 一拍置いてから続けた。

 

「だが、緑谷くん。君に推薦してもらえたことは、素直に嬉しい。委員長として、精一杯務める」

 

「飯田くん!!」緑谷が笑顔になった。

 

 クラスが盛り上がった。

 

「飯田が委員長! さっきのあれはかっこよかった!」切島が言った。

 

「確かに向いてるよな!」上鳴が続けた。

 

「禪院くんはどう思う?」麗日がこちらを向いた。

 

「飯田くんが正しい判断やろ」

 

「さっきのあれ、どう見てた?」

 

「咄嗟に高い位置を確保して全員に届く声で呼びかけた。麗日ちゃんに個性を借りる判断も速かった。それだけのことができる人間が委員長をやれ、という話や」

 

「……禪院くんって、やっぱりちゃんと見てるよね」麗日が少し嬉しそうに言った。

 

「見たら分かることやろ」

 

 飯田が直哉の方を向いた。

 

「禪院、今日は……」

 

「どういたしまして、とは言いにくいな。俺は何もしてへん。お前が自分でやったことや」

 

「……そうだな。だが見ていてくれていたことは分かった。感謝する」

 

「ああ」

 

 直哉は短く答えて、視線を窓の外に向けた。

 

 

放課後、直哉は一人で帰り支度をしていた。

 

 周囲は飯田の委員長就任の盛り上がりの余韻が続いている。

 

 直哉は鞄を持って立ち上がった。

 

(……USJ。どうするか)

 

 歩きながら、直哉は考えた。

 

 ヴィラン連合が来る。大筋は分かっている。黒霧と死柄木弔が率いるヴィランたちが、USJに押し込んでくる。相澤先生が多勢に無勢で戦い、13号が誰かを庇って個性を使われて負傷する。緑谷たちが散り散りにされる。そしてオールマイトが来て、終わる。

 

 大筋はそうだ。

 

(……先手で動けば防げる。ヴィラン連合の計画を潰しに行けば、誰も傷つかない)

 

 だが、直哉の中でもう一つの声がある。

 

(……何のために俺はここにいる?)

 

 答えは一つだ。強くなるためだ。前世の高みへ還るために、この世界で実戦を積み重ねる。

 

(……ヴィラン連合が来るなら、それは俺にとっての試し石や。本物の殺意を持った相手と戦う機会や。教室の中の模擬戦とは違う。前世で呪霊と戦い続けた感覚を、この世界で取り戻すための実戦や)

 

 直哉は静かに結論を出した。

 

(……放置する。来たら来たで対処する。オールマイトも来る。全部俺が潰す必要はない)

 

 ただ、頭の中で整理しておく必要があることがある。

 直哉は、この侵攻に関わる脅威を三つに分類した。

 

 一つ目。黒霧。

 

(……ワープ個性や。あいつを潰せば、ヴィランを呼び込む手段が消える。だが逆に言えば、あいつがいる限りヴィランをどこにでも転送できる。逃げる手段にもなる。危険ではあるが、直接的な攻撃力は低い。後回しでええ)

 

 二つ目。死柄木弔。

 

(……崩壊の個性。触れたものを崩壊させる。投射呪法で相手の動きをコマ単位で把握し、接触を避けながら戦えば俺には通用しない。ただしクラスメイトが不用意に触れたら、終わる。これが一番の優先事項や。正義感からやない。ただの損得計算だ。クラスメイトが死ぬのを見るのは面倒くさい)

 

 そして三つ目。

 

(…… 脳無 )

 直哉は、その名前を頭の中で転がした。

 

 対オールマイト用に作られたヴィラン。オールマイト級の膂力を持ち、あらゆる衝撃を吸収するショック吸収の個性を持っている。

 

(……これが一番まずい)

 

 直哉の手が、無意識に握られた。

 

(……オールマイト級の力、か)

 

 直哉は前世の記憶の中にあるあっち側の人間の強さと、今のオールマイトを重ねて考えた。オールマイトは「壁の向こう側」の人間だ。その力に匹敵するものが、ヴィラン側に用意されている。

 

(……あの脳無がこちらに動いてきたら、俺は今の実力で対処できるか?)

 

 直哉は正直に考えた。

 

 難しい。投射呪法で動きを読めたとしても、衝撃を吸収するなら打撃系の攻撃が通らない可能性がある。呪力を乗せた一撃がどこまで効くかは未知数だ。逃げることはできる。だが止めることができるかどうかは、やってみなければ分からない。

 

(……面白いな)

 

 直哉の中で、何かがわずかに動いた。

 

 恐怖ではない。渇望に近い何かだ。前世の記憶の中で、格上の相手と戦う時に感じた、あの感覚。

 

(……オールマイト級の力を持つ相手が来るなら、それは俺にとって最高の試し石や。相澤先生もオールマイトもいる場面で、俺がどこまでやれるか。試せる機会なんて、そうそうない)

 

 直哉は校門を出た。

 

 夕暮れが差し込んでいる。普通の放課後だ。

 

(……来い。黒霧でも、死柄木でも、脳無でも。何が来ようが、俺の糧にしてやる)

 

 ただし、一つだけ確認しておかなければならないことがある。

 

(……死柄木だけは、最初に潰す。それだけは決めた。他は状況次第や)

 

 それだけが、今の直哉の結論だった。

 

 誰かのためでも、ヒーローのためでもない。

 

 ただ、強くなるために。

 

 そしてあの、壁の向こう側に辿り着くために。

 

呪術廻戦から直哉以外で原作キャラを登場させますか?(呪術側オリキャラ含めて)

  • 登場させる
  • 登場させない
  • それよりドブカス(人の心とかないんか?)
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