【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。   作:まだら模様

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お待たせしました。第55話です。

230メートルの檻を抜けた先、直哉が辿り着いたのは、自身の魂が描く灰色の平原。
そこで彼を待っていたのは、かつての禪院家で、そして前世で、彼を絶望の淵へと叩き落とした「最強」の背中でした。

蹂躙、屈辱、そして「有象無象」という宣告。

しかし、直哉の執着は、そのすべてを『積層』して爆ぜさせます。
彼が手にした、真の「あっち側」への通行証。
その一撃を、どうぞその目に焼き付けてください。

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意ください。

評価付与、感想、お気に入り登録は直哉が「あっちへ」と到達するピースになります!

特に感想、マジで見てますから。どんな内容でも送って下さい。それだけで結構嬉しいです。


第46話:「vs伏黒甚爾/禪院直哉:オリジン/到達」

黒い火花が霧を焼きはらっている。

 

 直哉の脳内では、未完成だった『空写』の設計図が、黒閃による「呪力の核心」への接触を経て、爆発的な進化を遂げていた。

 

「……見えとるわ。甚爾くんの『次』が」

 

 直哉は、血に濡れた扇子を優雅に翻した。

 

 距離優先でも精度優先でもない。対象の「因果」そのものを情報の束として読み取る、極限の先読み。

 

 甚爾が地を蹴る、その筋肉の微かな収縮。大気の流れ。視線の動き。

 

 それらすべてが、直哉の脳内では「数秒先の収束しつつある未来」として、幾重もの残像となって浮かび上がっている。

 

「ハッ、口だけじゃねぇな」

 

 甚爾が笑った。

 

 次の瞬間、男の姿が掻き消える。

 

 呪力を一切持たぬがゆえの、物理法則を超越したゼロ距離への転移。

 

 だが、直哉の体は、甚爾が動くよりも先に、その「着地点」を予測して横へと滑っていた。

 

「『空写…鏃…零駒』!!」

 

 直哉は回避と同時に、足元に逆噴射の衝撃波を最小限の予備動作で叩き込んだ。

 

 自身の体を「弾丸」から「独楽」へと変える。

 

 甚爾の特級呪具が、直哉の髪筋をかすめて空を切る。その空振りの隙に、直哉は甚爾の懐へと潜り込み、掌底を突き出した。

 

「——っ!?」

 

 甚爾の表情が、驚愕に歪む。

 

 これまで一度として、自分に触れることさえできなかった「ガキ」が。

 

 情報の空白であるはずの自分の動きを、完璧に『読んで』いる。

 

 ドッ、と衝撃が走る。

 

 直哉は甚爾との間にある空気を利用して細かく薄いフレームを幾重にも作り、それらを投射呪法で加速した拳で割ることにより発生した衝撃波を甚爾に叩きつける形で腹に拳を叩き込んだ。

 

 その瞬間再度黒き火花が迸り、甚爾の鋼のような肉体が、物理的な反作用によって一歩、二歩と後退させられる。

 

「……ハッ、雅やあらへんな。泥臭い、ほんまに泥臭い戦いや」

 

 直哉は肩で息をしながらも、その瞳から黒い光を絶やさない。

 

 脳が焼けるような情報の過負荷。反転術式による自己修復を脳に直結させ、強制的に意識を維持する。

 

 その頃。

 

 現実の屋上では、さらに異常な光景が広がっていた。

 

「……おい、地面が……ッ!!」

 

 爆豪が叫ぶ。

 

 直哉を中心に、寮の一部の床や直哉の部屋の床が「波打って」いた。

 

 眠る直哉から漏れ出す呪力が、現実の物理空間を侵食し、直哉が夢で見ている「灰色の平原」の断片を、この世界に無理やり現出させている。

 

 現実と夢。

 

 その境界線が、直哉の「覚醒」によって完全に崩壊しようとしていた。

 

「禪院……お前、一体どこまで行くつもりだ?」

 

 相澤は捕縛布を構えながらも、その圧倒的な「格」の変貌に、手を出すことさえ躊躇わされていた。

 

 

「……ハッ、遊んでんじゃねぇぞ、ガキ」

 

 甚爾の低く掠れた声が、平原の空気を凍らせた。

 

 次の瞬間、大気が爆ぜた。

 

 それは「移動」ではない。物理法則そのものをへし折るような、蹂躙の踏み込み。

 

 特級呪具が、直哉の『空写』が予知した「軌道」さえも力任せにねじ伏せ、最短距離でその喉元を狙う。

 

 

 直哉は『鏃』使い立体的な移動を駆使して、紙一重で首を逸らした。

 

 だが、回避したはずの空間に、甚爾の左拳が「置いて」あったかのように吸い込まれてくる。

 

「——っ、がはっ……!!」

 

 防戦に回した両腕ごと、直哉の体は地面を水平に滑らされた。

 

 重い。

 

 一撃一撃が、山の崩落をその身に受けているような、圧倒的な質量の暴力。

 

 『空写』で先読みをしても、肉体の反応速度が、甚爾という「完成された生物」の殺意に追いつかない。

 

「先が見えるのと、避けられるのは別だ。……分かってんだろ、お前」

 

 甚爾の追撃。

 

 空中で体勢を崩した直哉の胸ぐらを掴み、そのまま灰色の地面へと、深々と叩きつける。

 

 衝撃で直哉の意識が飛びかける。

 

 だが、その薄れゆく意識の淵で、直哉は「視た」。

 

 ——空写。

 

 ——情報の、完全な統制。

 

 これまでの俺は、世界を「視る」ことに執着していた。

 

 だが、本当の『雅』は、視るだけではあらへん。

 

 視界に入るすべての事象に、俺の「法」を刻み込み、世界そのものを俺の設計図通りに「固定」することや。

 

(……反転、出力。……最大。……脳に直結させろ。……壊れるまで回せ……ッ!)

 

 直哉の脳内で、呪力が極限の臨界点を超えてスパークした。

 

 反転術式による強制的な脳の冷却と、呪力操作の超並列処理。

 

 その瞬間。

 

 直哉の『空写』の設計図が、白銀の輝きを放ちながら、かつてない「深淵」へと到達した。

 

「『極ノ番(ごくのばん)』…今なら…全てを重ねて、束ねて…ありったけを」

 

 直哉の瞳から、黒い雷光と、それとは対照的な「静寂の白」が溢れ出した。

 

 掴みかかっていた甚爾の腕が、目に見えない「斥力」によって、じり、と押し返される。

 

「——何だ?」

 

 甚爾の眼が、初めて「未知のもの」を見る色に染まった。

 

 直哉の周囲数十メートル。

 

 そこはもう、ただの心象風景ではない。

 

 直哉の「意志」が、1ミリの狂いもなく物理空間を支配し始めた、絶対的な『処刑場』へと変貌していた。

 

 ——現実、雄英・屋上。

 

 直哉を中心に広がる「波打つ地面」が、唐突にピタリと静止した。

 

 そして。

 

 周辺にいた、爆豪、轟、そして相澤までもが、その場で「一歩も動けなくなる」という異常事態に陥った。

 

「……身体が……っ、重ぇ……!? いや、違う……動かねぇんだ……っ!!」

 

 爆豪の叫び。

 

 個性の発動すら許されない。ただ、そこに「固定」されているかのような、圧倒的な支配。

 

 眠り続ける直哉の全身から、白銀の光が、夜空を貫くように噴き上がった。

 

 

 

白銀の光が、灰色の世界を完全に塗り潰した。

 

 直哉の脳内では、一秒間を二十四に分割する術式の「理(ことわり)」が、かつてない密度で再構築されていた。

 

 通常、彼の『積層残影』は二十四の瞬間を収束させ、重い一撃を放つものだ。

 

 だが、今の直哉が辿り着いたのは、その「重なり」をさらに「重ねる」という、思考の限界を超えた再帰的設計図。

 

(……一秒。……二十四フレーム。……その一瞬一瞬を、すべて俺の法で縛り、一つに束ねろ……ッ!)

 

 直哉の両肺から、熱を帯びた呼気が漏れる。

 

 全身の毛穴から血が噴き出し、脳はオーバーヒート寸前で白く焼けている。

 

 だが、その瞳だけは、かつてないほどに澄み渡り、甚爾の姿を「静止した情報の束」として捉えていた。

 

「——逃がさへんで。……これこそが、俺の『格』や」

 

 直哉が、震える唇を開く。

 

 その言葉は、言霊となって空間そのものを固定した。

 

「瞬刻、二十四節、積層の理」

 

 

 詠唱。

 

 直哉の周囲に、二十四枚の白銀の「葉」のような残影が、万華鏡のように展開される。

 

 一枚一枚が、一秒を二十四分割した「一瞬」の記録。

 

 それを、直哉はさらに二十四層、自身の拳へと叩き込んでいく。

 

「極ノ番——『積層残影・二十四葉・重!!!』」

 

 音すらも置き去りにされた、完全なる静寂。

 

 直哉の踏み込みは、もはや「移動」ですらなく、確定した未来へと己を「配置」する神業だった。

 

 甚爾の眼が、初めて「死」の予感に細められる。

 

 特級呪具を構える予備動作すら許されない。

 

 直哉の拳が、甚爾の胸板に触れた。

 

 ——ドッ!!

 

 一瞬に凝縮された、五百七十六回分の衝撃。

 

 物理的な質量ではなく、空間そのものが「そこにあるべきでない密度」に圧縮され、甚爾の肉体を内側から崩壊させる。

 

 理外の肉体、フィジカルギフテッド。

 

 その神話的な頑強さが、直哉の執念が産んだ「積層」の前に、紙細工のように無残にひしゃげた。

 

「……ッ、が、は……ッ!!」

 

 甚爾の巨体が、白銀の閃光と共に、心象風景の果てへと吹き飛ばされる。

 

 平原が割れ、霧が消え、空間そのものが「極ノ番」の威力に耐えきれず、粉々に砕け散っていく。

 

 ——現実、雄英・寮内

 

 「な……っ、何だ、今の光は……っ!!」

 

 相澤、爆豪、轟。

 

 三人が目撃したのは、眠る直哉の部屋から放たれた、夜空を昼間に変えるほどの白銀の奔流だった。

 

 直哉の右腕から、パキパキと不気味な音が響く。

 

 筋肉が断裂し、血管が破裂し、皮が裂ける。

 

 あまりにも過剰な出力。

 

 一度放てば、二度目は許されない。文字通りの「奥義」。

 

 直哉は、白銀の余韻の中で、ゆっくりと、その膝を地面についた。

 

 意識の向こう側。

 

 クレーターの底。崩れゆく意識の中で、甚爾は初めて、目の前に立つ少年の顔をはっきりと捉えた。

 

 金髪。端正な顔立ち。そして、傲慢さと執着が混ざり合った、見覚えのある「禪院」の瞳。

 

白銀の閃光が収まり、心象風景を覆っていた不透明な「霧」が、潮が引くように消えていく。

 

体の一部が抉れている甚爾は、満身創痍ながらも笑っていた。

 

「——これで、あんたの背中を追う必要はなくなったわ」

 

 甚爾の口元に、自嘲気味な笑みが浮かぶ。

 

「……ハッ。お前……だったのか。あの時、廊下で震えてたガキが…合格だ」

 

 甚爾の口元に、自嘲気味な笑みが浮かぶ。

 

 直哉はボロボロの体を引きずり、その傍らへ膝をついた。視界は涙で歪み、声は震えてまともに音にならない。

 

「……そうや。……ずっと、あんたの背中だけ、見てたんや。……あんたを倒して、俺が『あっち側』へ行くために」

 

「ハッ……殺す、か。……随分と可愛くねぇガキに育ちやがって」

 

 甚爾は、粒子となって消えゆく右手を、重そうにわずかに動かした。

 

 かつて、自分を否定し続けた禪院家。その中で唯一、自分を「恐怖」と「憧憬」の目で見つめていた少年。その執着が、時を超え、理(ことわり)を捻じ曲げて自分を討ち取ったのだ。

 

「……甚爾くん。……俺、あんたのようになれてるか?……不細工やあらへんか?」

 

 直哉の問いに、甚爾はフッと短く鼻で笑った。

 

 それは、前世のどの瞬間よりも、直哉という個を真っ向から認めた男の顔だった。

 

「認めてやるよ。お前は強い。……この俺を倒したんだ。誇れよ、直哉」

 

「…………っ!!」

 

「……あとは、好きにしろ。……不細工なツラして泣いてんじゃねぇよ」

 

その言葉を最後に、甚爾の姿は完全に光の塵となって霧散した。

 

主を失った心象風景に、重苦しい静寂が戻ってくる。

 

 「……ぁ、…………っ」

 

 直哉は、その場に崩れ落ちた。

 

 脳裏に焼き付いて離れない。

 

 あの男の、最後の笑み。

 

 禪院の底で、自分が見上げていた背中。

 

 有象無象の一つだったはずの自分が、

 

 その存在を、今、終わらせたという事実。

 

 膝をつき、灰色の土を握りしめる。

 

 勝った。

 

 前世でさえ成し得なかった、あの背中を越えるという悲願。

 

 だが、その達成感と一緒に込み上げてきたのは、二度と埋まることのない圧倒的な「喪失感」だった。

 

今の直哉には甚爾のその言葉が、やけに静かに響いた。

 

 世界が、止まる。

 

 霧も、崩壊しかけていた大地も、その一瞬だけ呼吸を忘れたように沈黙する。

 

 直哉の中で、何かが「ほどけた」。

 

 勝った実感でも、達成感でもない。

 

 もっと原始的な——

 

 「認められた」という事実だけが、異様な重さで沈んでいく。

 

(……ああ)

 

 視界の奥で、甚爾の輪郭がほどけていく。

 

 だが、その「消え方」を、直哉ははっきりと視ていた。

 

 粒子になっていくのではない。

 

 この世界から、「定義」が消えていく。

 

(……俺が、決めとる)

 

その瞬間。

 

 甚爾という存在の「輪郭」が、直哉の認識の中でわずかに歪んだ。

 

 まるで——最初から「そこにいなかった」かのように。

 

(……違う)

 

 直哉の喉が、ひくりと震える。

 

(俺が視てるんやない)

 

(——俺が、“在り方”を決めとる)

 

 直哉の指先が、わずかに震える。

 

  ——世界があって、俺が視ていた。

 

  ——違う。

 

——世界は、選ばれる側に堕ちた。

 

 視たものだけが、残る。

 

 それ以外は——

 

 消える。

 

(……これが……“『あっち側』”か)

 

 息が、うまく吸えない。

 

 それでも、分かる。

 

 これは——

 

 術式やない。

 

 ——外に出せば、“閉じる”ことができる。

 

 その確信だけが、骨の芯に焼き付く。

 

 次の瞬間。

 

そのすべてが、音を立てて崩れた。

 

「……あ、ああぁ——」

 

「……あ、ああぁ、ぁあああああぁぁあぁッ!!」

 

 直哉は子供のように、声を上げて泣いた。

 

 誰もいない、自分の内側だけの世界。

 

 雅も、格も、選民思想も脱ぎ捨てて、ただ一人の「禪院直哉」として、かつての憧れを失った悲しみに身を震わせる。

 

 その涙は、冷たい灰色の平原を濡らし、直哉の魂の澱を洗い流していくようだった。

 

 

泣き腫らし、意識が現実へと浮上し始めるその刹那。

 

 直哉は、自身の内側に「変化」が起きていることに気づいた。

 

(……そうか。ここは、俺の心。……無意識の領域の、一歩手前やったんやな)

 

 今回の戦いを通じ、彼は二つの決定的な「理」を掴んでいた。

 

 一つは、己の心象風景を具現化するという感覚。甚爾との死闘により、曖昧だった精神世界が、確固たる「個」の空間として固定された。

 

 そしてもう一つ。

 

 心象風景の中では、自分は常に、無意識に「領域」を展開しているのと同義であるということ。

 

(……外角。……俺の意志を、現実に固定するための『器』の作り方。……そのカンが、今なら分かるわ)

 

 これまで「視る」だけだった『空写』が、今、世界を「閉じ込める」ための牙を得ようとしていた。

 

 ——現実、寮内

 

 直哉の瞳が開く。

 

 右腕はボロボロで、呪力も枯渇している。

 

 だが、その瞳に宿る銀の輝きは、もはや後戻りできない場所へと彼が至ったことを物語っていた。

 

 

灰色の平原が、静かに崩壊していく。

 

 主を失い、霧散する心象風景。直哉の意識は、深淵から一気に現実の重力へと引き戻された。

 

 ——現実、雄英高校・寮内

 

「……あ、……っ」

 

 直哉が、ゆっくりと瞼を持ち上げた。

 

 夜風が、血と汗に塗れた髪を冷たく揺らす。

 

 右腕は無惨に焼け焦げ、指先一つ動かせない。脳を焼き切るような呪力の枯渇感が全身を襲い、立っていることさえ奇跡に近い満身創痍。

 

「禪院! おい、しっかりしろ!!」

 

 駆け寄る相澤消太の、焦燥に満ちた声。

 

 背後で息を呑む爆豪や轟の、戦慄した視線。

 

 だが、直哉は彼らを見ていなかった。

 

 自分の内側。

 

 甚爾を打ち倒し、その魂と「合格」の言葉を刻み込んだ、自分の魂の輪郭。

 

(……そうか。……これが、『世界』を俺の設計図通りに閉じ込める、第一歩や)

 

 直哉は、相澤に支えられながらも、震える左手で自分の顔を覆い、低く、低く笑った。

 

 これまで『空写』で視ていたのは、あくまで「他人の世界」だった。

 

 だが今は違う。

 

 自分の心象風景(平原)を、この不細工な現実の上に「上書き」するための、外角の構築方法……領域を展開するための「感触」が、指先にまで染み付いている。

 

「……ハッ。……不細工に、騒ぐな、言うてるやろ……」

 

 直哉が、相澤の手を振り払うようにして、一歩、踏み出した。

 

 ——その瞬間。

 寮内の空気が、ピリリと音を立てて爆ぜた。

 

呪力は枯渇しているはずなのに、直哉が足をついた床を中心に、目に見えない「円」が広がる。

——その瞬間、“世界が切り替わった”。

 

「なっ……!?」

 

 相澤の『抹消』が、一瞬だけ弾かれた。

 

 直哉の瞳に宿る銀の輝きは、もはや生徒のそれではない。

 

「……見てろ。……俺が、この不細工な世界を……雅に閉じ込めてやるわ」

 

 右腕一本と引き換えに、彼は手に入れたのだ。

 

 最強の男が認めた、「あっち側」への通行証。

 

 そして、いずれ世界を飲み込むであろう、真の『領域』への確かな一歩を。

 

 直哉は、夜空に浮かぶ月を見上げ、静かに、そして誰よりも不敵に微笑んだ。

 

 




……ハッ、笑わせるなよ。

「合格だ、ガキ」

あんたにそう言われるために、俺がどれだけの地獄を這いずってきたか……。
甚爾くん。あんたの隣に立つのは、不細工な凡夫共やあらへん。この、禪院直哉や。

(というわけで、第55話でした。
ついに放たれた極ノ番、そして伏黒甚爾との魂の対話。
現実の屋上で相澤先生の『抹消』を無意識に弾いたあの一歩……。直哉が「領域」の入り口に指をかけたこの瞬間に、「鳥肌が止まらない!」「直哉、最高にかっこいい!」と思った方は、ぜひ**【評価付与】や【しおり】**、お気に入り登録などで応援をいただけると嬉しいです。

【術式解説:極ノ番『積層残影・二十四葉・重(かさね)』】

今話で初披露となった、直哉の現時点における最大奥義です。

通常の『積層残影』は、一秒間を24分割した動きを収束させ、一打に重みを乗せる技。直哉はこれまでの絶え間ない研鑽により、通常の「二十四葉」であれば、今や大きな反動もなく比較的連発することが可能になっています。

しかし、この極ノ番『重(かさね)』は、その次元を遥かに超越しています。

「一秒24フレーム」の動きを束ねた一撃(二十四葉)を、さらに24回分、再帰的に積層(スタック)させる。

理論上、一瞬に「576発分」の衝撃を凝縮して叩き込むという、術式の設計図を限界まで書き換えた最終形態。
あまりにも過剰な出力ゆえ、一度放てば直哉自身の呪力回路にもそれなりの反動が出て、肉体にも甚大な負荷がかかるある種の「諸刃の剣」でもあります。

伏黒甚爾という強大な敵に立ち向かうと言う場で黒閃を決め、ゾーンに入った直哉が頭をフル回転させてたどり着いた、秘中の秘奥義です。

甚爾という理外の怪物をねじ伏せるために、直哉が魂を削って捻り出した、文字通りの『奥義』。
しばらくは「お預け」となるこの一撃の重みを、ぜひ噛み締めていただければ。

※なぜ甚爾くんが呼び込まれたの?前世の肉体より次いでいた禪院という血の血統による繋がりと、空写の拡張によって起こった夢の中での無意識な手繰り寄せで奇跡的に直哉にとって縁の強かった者を読み取った結果、そして直哉が領域展開のきっかけや一端に触れていたため、領域展開は心象風景を写すものになりますので、夢の中での領域展開(未完成)に伏黒甚爾が引っ張られてきたということになります。 無意識で領域(心象風景を写し)展開していたため、初めは入ってきた側の甚爾くんも靄がかかって直哉(領域展開対象)を識別できずにいましたが、直哉が動揺から回復して夢の中にいることを自覚した時点で甚爾は直哉を認識しました。

夢の中の未完成な領域ということもあり、縛りや必中、必殺の区分も曖昧
だからこそ純粋に強化された空写がとある世界線の甚爾を読み取り、フィジカルギフテッドという領域を無視できる存在を呼び止すことができたのはこのためです。
つまり効果が不明なんだから、なんでもアリな空間に設定!という感じでした。

一応呼び出した甚爾の時系列としてはタイミングとしては天内理子小殺害を依頼されて五条悟を倒すために色々と呪具などを用意していて待ち構えていた甚爾くん。のコピー的存在?精神体?
みたいな形でここに入り込んだ感じです。伏黒甚爾本人なのは間違いありません。
…強者に一泡吹かせたいと思う直前の甚爾くんが入り込んだのだったという設定です。

「この一戦、どう見えたかは読者に委ねるわ」
直哉からのメッセージです。果たしてどう映るのか…
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