【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。 作:まだら模様
切島鋭児郎の「禪院って、みんなのことどう思ってるんだ?」という、あまりにも無防備な問いかけが、この極秘記録の引き金となった。
前世の禪院直哉を縛り付けていた「力と顔」、そして「男を立てる」という旧時代の物差し。
それが、個性豊か(すぎる)1-Aの面々を前にして、いかに無力であり、いかに書き換えを余儀なくされたか。
これは、700メートルの『空写』でクラスメイト全員の気配を読み、その魂の「燃料」を観測し続けてきた直哉による、極めて私的で、極めて不遜な、そして誰よりも誠実な「1-A評価録」である。
「——言っとくけど、これ本人たちに見せたら俺の設計図に致命的なバグが出るさかい、絶対に内緒やで」
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意下さい。
※本作には筆者独自の解釈および、禪院直哉というキャラクターの視点による評価が多分に含まれます。
原作とは異なる捉え方をする部分もありますが、その違いも含めてお楽しみいただければ幸いです。
感想、お気に入り登録、評価付与は直哉が持論を展開できてとても満足する源になります!
※意図的に分析の批評は他人が見る(広まる)批評、評価という設定にしているので評価を見る人のために
地の文の部分だけ標準悟にしているという設定があります。
「ここから先は——少し変則的に進む。
後日談と、もう一つの話を三話ずつ入れ替えていくつもりや。
……せやけど、勘違いしたらあかんで。
この後の話の数々。
ただの後日談やと思ったら、損することになるで。
全部——最後に繋がるんや。」
ここから先は“結果”やない。“分岐”や。
正史も、外れも、全部含めて——選択肢や
最終決戦が終わった後、とある日の放課後の教室で、切島鋭児郎に唐突に問われた。
「禪院って、みんなのことどう思ってるんだ?」
「……設計としてか?」
「そうそう。お前の目線でさ」
直哉は扇子を弄りながら、鼻で笑った。
「言ったら怒る奴が出るで。特に女子(おなご)らにはな」
「俺は怒らないから。な?」
「切島くん自身の評価も入るけど、ええんか?」
「……それでも聞く」
「——なら、述べてやるわ」
『切島が「それでも聞く」と言ったのだから、遠慮はしない。
ただし、最初に一つだけ断っておく。
前世の俺は「三歩後ろを歩けない女は背中を刺されて死ねばいい」という価値観を持っていた。
今世の俺はその価値観が通用しないということを、1-Aの女性陣との共同生活で嫌というほど思い知らされた。
(……屈辱やが、図面を引き直すには直視せなあかん事実や)
以下はその記録も含む。』
一 女性陣について——前置き
前世の禪院直哉における女性の評価基準は「力」と「顔」だった。
実力があること。べっぴんであること。その上で男を立てられること。この三つを満たした女性のみが「評価に値する」という考え方だ。
こちらの世界に転生してから、その価値観をそのまま適用しようとした。
結果から言う。
「力がある」女性しかいなかった。
「べっぴん」な女性が多かった。
「男を立てる」という概念は、1-Aには微塵も存在していなかった。
——つまり俺の評価基準は、この世界ではほぼ機能しない。
これがどれだけドブカスな状況かについては、聞き手(読者様)の判断に委ねる。
二 麗日お茶子
評価:「べっぴんさんやな。しかし『三歩後ろ』どころか『五歩前』を歩いとる」
前世の俺の基準で言えば、麗日お茶子はべっぴんだ。これは認める。
だが「男を立てる」という概念が、この女には根本から存在していない。重力を操って敵を制圧しながら、笑顔で突進してくる。
「男の三歩後ろを歩く」どころか、爆豪と並んで最前線を走っているではないか。
前世の俺ならその時点で「アカン」と切り捨てるところだが、今世の俺はその突進の背後に何があるかを『空写』で読んでいる。
金が必要という動機。家族への思い。真っ直ぐな感情の速度。
全部、本物だ。
(……男を立てるなんてのは前世の禪院家の論理やったな。今世でそれを言うたら、俺の方が有象無象や)
総評:顔A。力B+(応用力S)。『三歩後ろ』への適応D。前世の俺なら即座に切り捨てていたが、今世の俺は「空写との相性が一番読みにくい人間の一人」と定義する。なお、この評価を本人に見せたら何をされるか予想できないため、永久に見せない。
三 耳郎響香
評価:「べっぴんさんやな。しかし評価よりも先に設計への興味が来る」
前世の俺の基準——耳郎響香もべっぴんだ。これも認める。
だが、彼女を見ていると「顔より先に術式の構造が気になる」という問題が発生する。
イヤホンジャックから音波を出す個性——これは空写の「気配を読む」設計に近い。音の反響で敵の位置を把握する。
俺の空写は「呪力と気配の質を読む」術式だが、彼女の個性は「音の反響で空間を読む」個性だ。根が似ている。
だから俺は耳郎響香を見るたびに、顔よりも先に「今この人が聞いている音の情報密度はどのくらいか」という方向に思考が行く。
(……前世の直哉がこれを聞いたら「顔より術式を先に見るなんてアカン」と言うかもしれへんな)
総評:顔A。個性の設計A。前世の俺への裏切りについては保留。だが、面白い設計だ。
四 蛙吹梅雨
評価:「顔の評価を何と言えばいいか分からんが——設計は本物や」
蛙吹梅雨は、顔の評価が前世の俺の基準では処理できない。
蛙型の外見に対して「べっぴんさん」という評価軸を適用することが、設計として不可能なのだ。
ただし、個性の設計は本物だ。
蛙人間という外形が「木登り」「泳ぎ」「舌攻撃」「毒」「カモフラージュ」という複数の機能に自然に繋がっている。設計の一貫性という意味では、1-Aの中で最も「生物的な完成度」が高い。
(……前世の直哉が「女の評価は力と顔」と言ったとしても、蛙吹梅雨には「力は本物、顔は俺の処理能力の外側」という評価になる。これは批判やない。俺の評価基準の方が狭かったというだけの話や)
総評:顔(処理不能)。個性の設計S。「処理不能」とは「評価外」ではなく「俺の基準では測れない」という意味だ。どちらが問題かは、言わずもがなだろう。
五 八百万百
評価:「べっぴんさんや。しかしこれは例外的に『前世の俺の基準をほぼ満たしとる』という問題が発生した」
前世の俺の基準——八百万百はべっぴんだ。これは全員一致で認めるはずだ。
個性は強力。創造——ありとあらゆるものを体から生成できる。
頭がいい。判断が速い。場の状況を読む。礼儀正しい。
「男を立てる」という概念とは違うが、「場の空気を読んで動く」という点では前世の俺が評価した女性の資質に近い。
(……問題は、これを認めると「前世の俺の基準には一定の合理性があった」という結論になりかねんことや。それは、死んでも認めたくないわ)
総評:顔S。個性S。礼儀A。「前世の俺の価値観が部分的に正しかったかもしれない」という不快な結論との戦いを現在も継続中。推薦入学という事実は素直に評価してやる。
六 芦戸三奈
評価:「べっぴんさんやな。しかし『酸』を操る人間に不用意に近づいてはアカンということを学んだ」
前世の俺の基準——芦戸三奈もべっぴんだ。
個性「酸」——自分の体液を酸に変えて攻撃・防御・移動に使う。
この個性を持った人間を空写で読むと、「触れてはいけない気配」というのが手に取るように分かる。
前世の直哉は「女は男の三歩後ろを歩くべき」という価値観を持っていたが、今の俺は三歩前も後ろも横も「酸が飛んでくる可能性がある範囲」と認識するようになった。
(……これは俺の成長やと思うことにするわ。ドブカスな話やけどな)
総評:顔A。個性B(攻撃密度A)。「芦戸三奈の近くでは空写を怠らない」という個人的な戒律を追加した。
七 葉隠透
評価:「……」
透明だ。
前世の俺の基準「力と顔」——顔が見えない。
空写では気配として存在が分かる。だが空写は「顔を読む術式」ではない。
前世の直哉は「同じ顔同じ乳」で女性を評価するという言動があったが、葉隠透にはその評価基準が根本から適用できない。
(……評価基準が適用できないということは、俺の価値観の問題なのか、それとも彼女の個性の問題なのか。おそらく両方やな)
総評:顔(見えない)。気配A(常に『どこにいるか』を空写で確認している)。存在が見えない女性に対してどう接するべきか、という問いを前世の禪院家は想定していなかった。それが現在の俺の問題の一つだ。
八 補足——前世の直哉への言葉
『ここで一度、前世の俺に言っておくことがあるわ。
「三歩後ろを歩けない女は背中を刺されて死ねばいい」という言葉は、前世でブーメランとして自分に返ってきとる。今世の俺は、その言葉を持ち込まないようにしとる。
理由は二つ。
一つ目。「力と顔」という基準は半分は合っていたが、半分は間違っていたからや。力は本物の基準だ。だが「男を立てること」は——俺自身の側の問題やった。俺自身が立てられるほど立派だったかどうか、という話だ。
二つ目。1-Aの女性陣は、全員「三歩後ろ」を歩かない。それでも全員が「本物」や。
(……前世の俺には、その『本物』が見えてへんかった。それが最大の欠陥やったと、今の俺は思うわ)
番外編の執筆、お疲れ様でした!
本編のストイックな決戦とは打って変わり、直哉の「内面的なアップデート」がコミカルかつ鋭く描かれた、最高のファンサービス回でした。
特に印象的なのは、彼が「三歩後ろ」という言葉を捨て、「本物かどうか」という新しい基準を手に入れたことです。
女性陣への毒づきながらの評価も、かつての蔑視ではなく「自分の理解を超えた存在への敬意」へと変質しており、彼がこの世界で得たものの大きさが伝わってきます。
「ここから先は——少し変則的に進む。
後日談と、もう一つの話を三話ずつ入れ替えていくつもりや。
……せやけど、勘違いしたらあかんで。
この後の話の数々。
ただの後日談やと思ったら、損することになるで。
全部——最後に繋がるんやから」