【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。 作:まだら模様
切島鋭児郎の「禪院って、みんなのことどう思ってるんだ?」という、あまりにも無防備な問いかけが、この極秘記録の引き金となった。
前世の禪院直哉を縛り付けていた「力と顔」、そして「男を立てる」という旧時代の物差し。
それが、個性豊か(すぎる)1-Aの面々を前にして、いかに無力であり、いかに書き換えを余儀なくされたか。
これは、700メートルの『空写』でクラスメイト全員の気配を読み、その魂の「燃料」を観測し続けてきた直哉による、極めて私的で、極めて不遜な、そして誰よりも誠実な「1-A評価録」である。
その後半です!
「——言っとくけど、これ本人たちに見せたら俺の設計図に致命的なバグが出るさかい、絶対に内緒やで」
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
ご注意下さい。
※本作には筆者独自の解釈および、禪院直哉というキャラクターの視点による評価が多分に含まれます。
原作とは異なる捉え方をする部分もありますが、その違いも含めてお楽しみいただければ幸いです。
感想、お気に入り登録、評価付与は直哉が持論を展開できてとても満足する源になります!
意図的に分析の批評は他人が見る(広まる)批評、評価という設定にしているので評価を見る人のために
地の文の部分だけ標準悟にしているという設定があります。
九 緑谷出久
評価:「美しい。しかしドブカスすぎて時々目を逸らしたくなる」
設計の密度が異常だ。七つの個性を同時に動かしながら、全部が噛み合っている。
「一人で全部抱えようとする」という欠陥が、時々全てを台無しにする。だが今は、それも含めて「デクくんの設計」だと思っている。
総評:設計の美しさA+。欠陥の愛らしさS。空写で追いかけ続けた甲斐があったわ。
十 爆豪勝己
評価:「雅やない。でも一番『設計が本能になってる』人間や」
感情と設計の境界が、この男だけ存在しない。空写で読んだ爆豪くんの気配は、常に前を向いていた。後ろを向いたことが一度もない。
「ドブカス野郎」という呼び方は失礼だと思う。毎回言い返せないのも事実なので我慢しているが。
総評:雅やないが本物S。「ドブカス野郎」呼称への耐性が上がってきたことを報告しておく。
十一 轟焦凍
評価:「美しい。設計と感情が『同時』になった人間の完成形の一つや」
「おんなじだ」という言葉を交わした夜は、設計の記録に残っている。
天然なのが唯一の欠点だが、天然も設計の外の動きだからむしろ面白い。
総評:設計の完成度A。天然度S。空写で一番「次に何をするか読めない」人間の一人だ。
十二 切島鋭児郎
評価:「雅やない。でも一番『燃料を渡してくれた』人間や」
「硬化」はシンプルだが、その「シンプル」を極限まで磨いている。
空写で読んだ切島くんの気配は、常に「誰かの方を向いていた」。
総評:設計の純粋さA。燃料供給量S。この評価を本人に読ませる予定だったな。覚悟しておいてくれ。
十三 飯田天哉
評価:「雅やない。でも一番『信頼できる設計』の人間や」
飯田くんを空写で読むと「今何をしようとしているか」が一番はっきり分かる。深夜でも誰かのために動いている気配を空写で読むと、少し安心する。
総評:設計の可読性S(弱点でもある)。信頼係数A。読んでて安心する設計は、最高の褒め言葉や。
十四 上鳴電気
評価:「有象無象……かと思いきや、設計の切り替えが一番速い人間や」
「感電」の切り替え速度は俺の空写との連動に一番向いている。
「うるさい」という表面的印象が設計の本質を隠している。表面で判断するのは雑魚の思考だ。
総評:表面的印象D。設計の切り替え速度A。以上。
十五 砂藤力道
評価:「美しい。一番『本音が設計になってる』人間や」
「それでいい」「よかった」「怪我は」——全部本音だけで構成されている。
空写で読んだ砂藤くんの気配は、常に安定していた。揺れない。
そして顔については、あえて言及しない。
総評:設計の安定性S。本音率S。顔:黙秘権を行使。一番信頼できるタイプの人間だ。
十六 常闇踏陰
評価:「美しい。設計の最も深い部分を一番よく分かっとる人間や」
「分からないまま持っておけ。それが闇の中で見続けることだ」という言葉は設計の記録に残してある。
総評:設計の深度S。「フッ」の使用頻度全クラス1位。黒影との「橋」の完成を期待している。
十七 峰田実
評価:「……設計の方向性が俺には理解できへんが、判断速度は本物やな」
気配の方向が常に「何かに向かっている」。その「何か」の内訳については、俺の理解力の限界かもしれない。
総評:目標設定の方向性D(俺には読めへん)。判断速度A。これ以上言う言葉はないわ。
十八 瀬呂範太
評価:「面白い。『連結』という設計が一番設計のお手本になる個性や」
テープワームは空虚呪法の「固定」という設計に近い。地味に見えるが設計の活用幅は広い。地味な個性を設計で活かす人間は評価してやる。
総評:個性の地味さD(本人には申し訳ない)。設計の活用幅A。
十九 青山優雅
評価:「一番『設計の外側に立たされてた』人間や. でも今は一番『設計の内側に来た』人間でもある」
AFOの密告者だった。それを俺は最初から知っていた。
だが、青山くんの気配には「自分が許せない」という質がずっとあった。
「苦労させた」とAFOは言った。俺はその言葉が、AFOの全発言の中で一番腹が立った言葉だった。青山くんは今、1-Aにいる。それが答えだ。
総評:設計上の過去C。現在の位置A。「設計の外側に立たされた人間が内側に帰ってきた」——設計の記録に書いておく。
二十 障子目蔵
評価:「美しい。設計の『拡張性』において、このクラスで右に出る者はおらん」
「複製腕」という設計は、単なる多腕ではない。耳、口、眼――必要に応じて自分の機能を「外側」へ広げ続ける、極めて理知的な設計だ。
空写で読んだ障子くんの気配は常に静かだ。
しかしその静寂は、周囲のあらゆる情報を拾い上げるための「アンテナ」として機能している。
異形の設計を、誰かを守るための盾と、誰かを見つけるためのセンサーとして完璧に使いこなしている姿は、雅と呼んでも差し支えない。
総評:設計の拡張性S。索敵精度A+。その大きな掌に救われた人間は、俺の設計の記録にもぎょうさん残っとる。
二十一 尾白猿夫
評価:「雅やない。でも一番『誠実な設計』を積み上げてきた人間や」
「尻尾」一本。呪術的に見ても、あまりにシンプルで「それだけ」の設計。
だが、その一本を軸にした武術の練度は、付け焼き刃の有象無象とは一線を画している。
空写で読む尾白くんの動きには、一切の迷いがない。派手なエフェクトも、奇をてらった策もない。
ただひたすらに、己の身体という設計図を極限まで信じ抜いている強さがある。「地味」という言葉で片付ける奴は、設計の本質が分かっとらん雑魚だ。
総評:設計の堅実さS。武芸の雅度A。派手さはないが、崩れない。これこそが「本物」の強さの土台やな。
二十二 『最後に——切島くんへ
「禪院って、みんなのことどう思ってる?」という問いに答えたわ。全部記載した。
一つ分かったことがあるんや。
前世の俺は「力と顔」で人間を評価していたわ。
今世の俺は——空写全員の設計を読み続けて——「設計の質」と「燃料の本物度」で人間を評価している。
俺自身が正直心から否定したがっとるけど、確かに基準は変わっとった。
せやけど、「本物かどうかを見極めようとする」という根っこは変わっていない。
——クラスメイトは全員、最終決戦まで生き残った…そのしぶとさは、本物なんやない?それが今日の結論だ。
「切島くんの評価が抜けてる」と言いたいんか?
君の評価は最初に言った通りやわ。
「設計の純粋さA。燃料供給量S」——それで全部だ。これ以上は俺の雅なキャラが崩れるから言わへんよ。』
【番外編「禪院直哉・1-A評価録」 了】
■ 後記
この評価録を書き終えた後、切島に見せた。
切島は最初から最後まで真剣に読み込み——
「……禪院って、なんだかんだ言って、皆のことをちゃんと見てたんだな!」
と、顔を輝かせて言った。
直哉は即座に扇子で顔を隠す。
「設計として評価してるだけや」
「おんなじことだよ」
「……違うと思うんやけど」
「おんなじだよ!」
この不毛な問答は、結局決着がつかなかった。
(……切島くんの方が正しいかもしれへんな、と思う自分もおる。ドブカスやな)
でも、それを認めるのは今日ではない。
——保留だ。
なんだかんだでクラスメイトのことはよくみている直哉でしたね…
やはり計算をして設計する者としては、観察は怠らないと言うことなんですかね…
最後、切島くんに「みんなのことよく見てんじゃん」と見抜かれ、「保留や」と返す幕引き。
素直になれない直哉の矜持と、それを包み込む1-Aの温かさが同居する、これ以上ないほどに「雅」な幕切れでした。
この評価録、もし1-Aの女子会で回し読みされたら直哉の命(と尊厳)が危ういことになりそうですが……それもまた、彼の「設計外」の賑やかな日常として続いていくのでしょう。