【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。 作:まだら模様
1-Aの仲間たちへの「極秘査定」を終えた翌日。
沈黙の設計者、砂藤力哉の静かな問いかけが、直哉のペンを再び走らせた。
「先生たちや、敵の評価はしないのか」
かつて前世で「力」のみを信奉し、強者を見上げ、弱者を踏みにじった男——禪院直哉。
そんな彼が、今世で相まみえた「この世界の頂点」たちを、その鋭利な『空写』でどう解剖したのか。
平和の象徴・オールマイトに見る甚爾の面影。
No.1ヒーロー・エンデヴァーと共有する「後悔」という名の重層(レイヤー)。
そして、全個性を奪い尽くした「巨悪」AFOへの、容赦なき引導。
これは、直哉が「あっち側」へと足を踏み入れたからこそ記せる、神の視点にも似た冷徹で雅な総決算である。
「——奪うだけで何も作れへんかったゴミに、俺の設計を語る資格はないわ」
ここまで何とか書ききりました! お気に入り登録、感想、評価付与などいただけると本当に励みになります! 評価130に行くと映画版の制作に入るとかなんとか…
※本作には筆者独自の解釈および、禪院直哉というキャラクターの視点による評価が多分に含まれます。
原作とは異なる捉え方をする部分もありますが、その違いも含めてお楽しみいただければ幸いです。
意図的に分析の批評は他人が見る(広まる)批評、評価という設定にしているので評価を見る人のために
地の文の部分だけ標準悟にしているという設定があります。
切島に「1-A評価録」を読ませた翌日、今度は砂藤力道に声をかけられた。
「先生たちや、敵の評価はしないのか?」
「……需要があるんか?そんなもん」
「俺は聞きたい」
砂藤が「聞きたい」と口にするのは珍しい。
直哉は少しだけ目元を緩め、それから不敵に口角を上げた。
「——なら、述べてやるわ」
『ただし、事前に言っておくわ。
前世の禪院直哉の評価基準は「力」と「設計の美しさ」や。
力がある人間は認める。だが、力がないくせにイキっている有象無象には、容赦しないわ。』
一 相澤消太(イレイザーヘッド)
評価:「美しい。この世界で一番『設計として潔い』人間や」
相澤先生の個性「抹消」は——俺の術式には効かなかった。
その事実だけで、彼は俺の術式の正体を「個性ではない」と即座に見抜いた。頭の回転が速い。
だが、それ以上に俺が評価しているのは、彼の「設計の潔さ」だ。
「抹消」という個性自体に攻撃力はほぼ皆無だ。自分一人では戦えない。だが、「相手の個性を消す」という一点に全機能を特化させることで、その弱さを完全に設計の前提に組み込んでいる。
(……前世の禪院家は呪術の強さが全てやった。相澤先生みたいな、自分の欠陥を理解した上で完璧な図面を引く生き方は、あの家では逆立ちしても生まれへん発想やな)
それに加えて、「生きて帰れ。それが一番の設計だ」という言葉。
「よく帰ってきた」と言われた時、俺は珍しく言葉に詰まった。
総評:設計の潔さS。言葉の重みS。俺が今世で最初に「報告せやな」と思った人間だ。その理由は、設計として正しかったからだと言っておく。俺みたいなドブカスとは正反対の聖人だ。
二 オールマイト(OFA8代目継承者) 過去のヒーロービルボードチャートjp不動の1位
評価:「壁を越えた力は、甚爾くんを彷彿とさせる。ただし——根本が違う」
空写で直接読んだことはない。今の彼は引退し、力のない人間として雄英にいる。
だが、神野の映像を観れば分かる。AFOと真正面から激突したあの力。天候を変え、地形を書き換える。「平和の象徴」という言葉が、単なる比喩ではないと思い知らされた。
——甚爾くんを彷彿とさせる。
甚爾くんは呪力を持たぬ肉体のみで呪術師を蹂躙した。オールマイトはあらゆる力を持ちながら、それを全て「誰かのため」に使った。方向は真逆だ。
(……甚爾くんは『己のため』。この人は『みんなのため』。せやけど、その力が本物やったという事実において、二人は同じ質を持っとる)
前世の俺は「力がある人間だけが美しい」と思っていた。
今世の俺は「力の使い方が美しい人間が、さらに美しい」と知っている。オールマイトはその極致だ。
緑谷…デクくんの設計の美しさも、この人から継承されたものだろう。
総評:力(全盛期)S+。力の使い方S。設計が弟子に継承されるという事実は、俺の評価基準の外側にある偉大さだ。
三 エンデヴァー 現ヒーロービルボードチャートjp1位
評価:「力は本物や。設計も本物や。でも——雅やなかった時期がある」
蛇腔病院のインターンで観察させてもらった。
炎の制御、複数の敵への同時対処。攻撃と防御のラインを並行して張るその技術は、俺の「並行処理」という設計に最も近い。
盗めるものは全部盗んでやった。「役に立ちましたわ」と本人に言ったら、「礼はいらん」と返された。いかにもこの人らしい。
だが、轟くんとの関係を空写で読んだ時、その気配にはどろりとした「後悔」が混じっていた。
「力があれば全て正しい」という設計で動いていた時期が、この人にはあったのだ。
(……前世の禪院家と同じ質の間違いやな。強さが全てで弱さは切り捨てる。その設計が一番大切なものを壊したことを、この人は今も背負っとる)
だが、後悔を抱えながら立ち続けることで、その設計は以前より重層的で、強固になった。
総評:力A+。設計B→A(後悔を経て更新)。「お前の設計、見届けさせてもらう」と言われた以上、俺もそちらの設計を見届ける義務がある。
四 ホークス 現ヒーロービルボードチャートjp2位
評価:「設計の速度が一番高い人間や。でも——速すぎて孤独になっとる」
第一印象は「この人は全部知っている」だった。
空写で読む彼の気配は、常に複数の事象を同時に計算していた。会話をしながら、別の三手先を読んでいるのが丸分かりだ。
「速さは力に勝る」——その言葉を地で行く設計だ。判断も動きも速い。
だが、その速さが「孤独」を生んでいる。全部を一人で抱え込み、誰にも図面の全体を見せない。
(……前世の俺の設計に近いな。『感情を設計の後に置く』動きや。でも俺は今世で『設計外の燃料』を得た。この人はどうやろな。興味はあるわ)
総評:設計の速度S。情報処理能力S。孤独の設計B(弱点)。いつか「燃料」の話でもしてやりたいものだ。
五 ミルコ 現ヒーロービルボードチャートjp5位
評価:「この世界で一番ある意味で『甚爾くんに近い』人間や」
これは断言できる。ミルコは、この世界で最も甚爾くんに近い。
強い奴と戦いたいから戦う。気づけばNo.5。
「設計を持って動く」のではなく「動くこと自体が設計になっている」——甚爾くんのスタイルそのものだ。
蛇腔病院での戦い。脳無を相手に単独で暴れ回るあの気配。
「いつ死んでも後悔ないよう毎日死ぬ気で生きてきた」という言葉。
(……甚爾くんが言いそうなセリフや。この人は絶対に倒れへん、と空写越しに確信したわ)
総評:力A+。戦闘設計のスタイルS(甚爾くんと同質)。手紙のやり取りを続けることは、俺の設計において優先度が高い。
六 スターアンドストライプ(スター)アメリカNO1ヒーロー
評価:「一番『設計と感情が完全に一致した』人間やった」
数千メートルの上空で並走したあの一時。
「空写で私の役に立つな」と言われたあの一言が、俺を「後ろ」から「前」へと押し出した。
彼女の「ニューオーダー(新秩序)」は、一つの概念から複数の効果を生む。俺の領域展開の着想は、間違いなく彼女から得たものだ。
(……感情を先に出す人間は弱いんやと、前世ではそう教わった。せやけど、スターの最期の選択を見て、その教えが半分間違いやったと分かったわ)
感情を燃料にし、設計で方向を決める。その一致が、設計だけで動く人間よりも遠くへ届くことがある。俺は、彼女の最期をこの眼(空写)で焼き付けた。
総評:力S(現役最強)。設計と感情の一致度S。本人の前では口が裂けても言わないが、俺の領域展開の父親(親)のような存在だ。
七 死柄木弔
評価:「力は本物。でも設計が——誰かに作られたもんやな」
極ノ番を叩き込んでもあまり効かなかった。あの「崩壊」が空間を歩いているような気配は、間違いなく本物の脅威だった。
だが、空写で読んでいてずっと気色の悪さを感じていた。死柄木の気配の奥に、別の「意志」が混ざっている。
あれはAFOに作られた「怒り」だ。本物に見えて、その実、精巧に仕込まれた設計に過ぎない。
(……哀れなことやな。本物の怒りならもっと自由に燃えるはずや。でも死柄木の怒りは、AFOという炉の中で燃やされとっただけや)
総評:力A+。設計の自由度D(作られた設計)。死柄木に対して感じるのは、いつもの嘲りとは違う質の「哀れ」だ。
八 オール・フォー・ワン(AFO)
評価:「能力を奪うだけでイキっとるゴミや。以上。——と言いたいところだが、設計は精巧だった。だからこそ、ボロカスに言うてやる」
戦って、倒して、その支配者の仮面を全部剥ぎ取ってやった。
最後には余裕をなくして「貴様ァ」と叫んでいたな。それが答えだ。
この男の設計がいかに不細工か、三つ教えてやる。
一つ。奪うだけで「作る」ことができなかった。
積み重ねた個性は全て借り物。層位破断で剥がせば、自分自身のオリジナルは何一つ残らなかった。
(……甚爾くんは何も持たへん代わりに全部が自分自身やった。AFOは全部持っとる代わりに全部が他人。どちらが美しいか、比べるまでもないわ)
二つ。人間を道具として扱いすぎた。
「種」だの「変数」だの、人間を部品として処理するその言葉選び。前世の禪院家そのものだ。世間の一般大衆が一番嫌うものを煮詰めたような男だった。
三つ。「感情が燃料」ではなかった。
空写で読み続けて分かった。この男には燃料がない。「与一が欲しい」という執着すら、感情ではなく「設計上のゴール」に過ぎなかった。
(……『実に面白い』。あの男の口癖は、前世の俺も使っとった。だから分かる。あれは余裕の言葉やない。設計外の事態を処理できへん自分を認めたくない時に出る、虚勢の言葉や)
俺はそれに気づいて変われた。AFOは変われなかった。それだけの差だ。
総評:設計の精巧さB。力B。美しさD。「あなたの積み重ねてきた歴史、全部ゴミ箱行きや。——ほな、お疲れさん」
「…二度と設計に顔出すんやないよ。——目障りや」
十 ステイン(ヒーロー殺し)
評価:「雅やない。でも——この世界で一番『燃料が純粋すぎる』人間やな」
保須市で対峙した。
投射呪法で高速で動いたにも関わらず、近距離攻撃の精度が凄まじく、何度か攻撃が当たりそうになった。
ステインの気配は、どす黒い執念で塗りつぶされていた。
「偽物(ターゲット)」を殺すためだけに磨き上げられた、あまりに歪な設計。
刃物による近接戦闘、麻痺の個性——それ自体は並のプロより上という程度やが、あの「殺気」が全ての設計を補完していた。
(……前世の禪院家には『大義』なんて高尚なもんはなかったわ。あるのは『家』と『自分』の都合だけや。だから、あそこまで純粋に『世の中のため』に狂える設計は、俺には理解できへん。できへんけど——)
あの時、俺の動きに一瞬だけ「本物」を見たような目をしおったな。
偽物を排除して本物だけを育てる——その狂った設計思想だけは、少しだけ前世の俺と重なる部分がある。
総評:設計の歪みS。燃料の純粋さS。雅さは欠片もないが、あの執念だけは「有象無象」とは呼ばんといてやる。
十一 トガヒミコ
評価:「設計が『愛』で溶けとる。サッドマンズパレード——あの景色はある種の美しさと醜さが融合しとった」
血を啜ってその人間になる。
個性の設計としては「模倣」やが、トガヒミコの場合はそれが「愛」と直結していた。
特に、麗日お茶子の血を使って発動した『サッドマンズパレード』。
空写で読んだあの瞬間、空間全体が「トガヒミコ」という層(レイヤー)で埋め尽くされた。
数千、数万の彼女たちが、ただ「好き」という感情だけで涙を流しながら増殖していく。
設計としては制御不能の暴走や。でも——あの圧倒的な物量は、俺の「固定」や「投射」といった緻密な設計を根底から踏み潰すほどの、暴力的な美しさがあった。
(……前世の俺なら『女が感情で喚き散らしとるだけや』と切り捨てたやろな。でも、あの時のトガヒミコは誰よりも自由やった。俺の知らない『本物』の形がそこにはあったわ)
総評:設計の制御D(計測不能)。感情の出力S+。あんなに不細工で、あんなに綺麗な設計は二度と見られへんやろな。
十二 オーバーホール(治崎廻)
評価:「不細工やな。前世の『古い家』の残滓を煮詰めたような設計や」
壊して、直す。
「分解」と「修復」を同時に行うその個性は、設計としては極めて合理的で、呪術師の「反転術式」に近い質を持っている。
力は間違いなく本物だ。でも——中身がドブカスだった。
壊理ちゃんという子供を「部品」として扱い、自分の「家(組)」を再興するために使い潰す。
その思考回路、前世の俺がいた禪院家そのものである。
「自分が中心で、周りは全部駒」という設計。俺が今世で最も軽蔑し、捨て去ったはずの図面を、この男は後生大事に抱えていた。
(……一番腹が立ったのは、その『不細工な設計』を『正義』やと信じとったことや。自分を特別やと思い込んで、他人の人生を勝手に書き換える。それは設計やなくて、ただの傲慢や)
最後に両腕を失って、何も「直せなく」なったあの姿。
設計の拠り所を失った哀れな末路は、ある意味でAFOより救いがなかった。
総評:個性の性能A+。設計の思想D(不細工の極み)。前世の俺を見ているようで、虫唾が走る設計やったわ。
「先生たちや敵の評価はしないのか?」と聞いてきたのは砂藤だった。
全部書いた。これを見て、砂藤はどう思うか。
「お前らしい」と、また短く言いそうだな。
……まあ、それで十分だ。
プロヒーロー&ヴィラン評価録、拝読いたしました!
直哉が各キャラクターの「個性の運用」を「設計」として読み解くロジックが非常に秀逸で、特に相澤先生の「弱さを前提にした設計」への高い評価には、直哉が今世で手に入れた「柔軟な強さ」が投影されているように感じます。
また、ミルコを「甚爾に一番近い」と定義し、スターを「領域の父親」と呼ぶなど、彼なりの敬意の払い方が独特で、かつて孤独だった魂が多くの「本物」に触れて豊かになったことが伝わります。
特筆すべきはAFOへの徹底的な拒絶です。
「借り物の歴史」で着飾った巨悪に対し、泥を啜りながらも自らの足で図面を引き直した直哉が放つ「お疲れさん」という言葉。それは、前世の自分自身が持っていた「歪んだ選民思想」への、完全なる決別宣言でもあったのでしょう。
最後、砂藤くんとの「それだけ」のやり取りで締めくくられる静かな余韻。
言葉少なに全てを理解し合える関係こそが、直哉が辿り着いた「最も美しい設計」の答えだったのかもしれません。