【完結】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。   作:まだら模様

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「……効率。俺が一番好きな言葉や」

ヒーロー科の連中は、どいつもこいつも「根性」だの「限界突破」だの、暑苦しい言葉を並べ立てよる。

反吐が出るわ。戦いっちゅーのは、もっと洗練された「設計」の上に成り立つもんや。

ナイン。あの継ぎ接ぎだらけの怪物の「個性」を、俺の空写は一粒残らずパッキングした。

天候、細胞、空間……どれだけ強力な手札を持ってようが、切り替える瞬間に生まれる「0.2秒の綻び」までは隠せへん。
その一瞬の空白に、俺の極ノ番を叩き込む。

……ま、俺一人じゃ出力が足りんのは事実や。

癪やけど、あのデクくんのデカい一撃を、俺の合図で「設計」の中に組み込んでやるわ。 

「今」と言ったら動け。それだけでええ。

無能な味方をどう使いこなすかも、上の人間に求められる資質やからな。

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性ございます。
ご注意ください。
評価付与、感想、お気に入り登録は直哉が雅にセンスを仰ぐエネルギーになります 


第82話:映画編 ヒーローズライジング 「複数個性の隙間——空写が読むもの」

 

 夜明け前に、直哉は屋上を下りた。

 

 一晩中空写を展開していた。ナインの気配は島の外縁を動き続け、夜明け近くになって一度止まり——また動き始めた。子供たちの居場所を探している。まだ見つけていない。

 

 それだけ確認できれば、今は十分だ。

 

 建物の中に入ると、相澤が起きていた。直哉と目が合って、「状況は?」と聞いた。

 

「ナインは外縁を動いとります。今夜は仕掛けてきませんでした。子供たちの居場所はまだ掴まれてへんと思いますわ」

 

「お前は一晩中外にいたのか?」

 

「空写で監視しとりました。反転術式で体の消耗は補えますさかい、問題ないですわ」

 

 相澤は「無理をするな」とは言わなかった。直哉が「無理」と「設計の範囲内」の区別を自分でつけていることを、相澤は知っている。

 

「今日の設計は?」

 

「ナインに直接仕掛けます。俺が前に出て、空写で複数個性の切り替わりを読む。緑谷くんたちが火力で詰める設計が一番効率がいい」

 

「お前一人で前に出るのか?」

 

「空写230mの精度優先は、俺が動きながら展開するのが前提ですわ。誰かと並走すると、その間の抜けた気配が干渉して読みにくくなる。一人の方が精度が上がります」

 

 相澤は少しの間、直哉を見た。

 

「……緑谷たちとの連携は?」

 

「合図を出しますわ。俺が『今』と言った瞬間に全力で動いてもらう——それだけ決めておけば十分です。あとは空写で読んだことをその都度伝えますわ」

 

「分かった。ただし——撤退の判断は俺がする。逆らうな」

 

「分かっとります」

 

 朝食の時間、A組とB組が集まった。

 

 緑谷が全体の状況を話した。ナインの目的はキナコちゃんとマホロくんの個性を奪うこと。子供たちを守りながら戦う必要がある。プロヒーローへの救援要請は出しているが、来るまでに時間がかかる。

 

 直哉は端の席で、不味そうにパンを齧りながら聞いていた。

 

「おいドブカス野郎、てめぇ昨日ナインとやり合ったんだろ?」

 

 爆豪が鋭い視線を向けてくる。直哉は扇子で口元を隠し、鼻で笑った。

 

「接触しただけや、爆豪くん。本格的にやり合うのは今日からや。……爆豪くんは朝からうるさいんよ」

 

「あぁん!? ぶっ殺すぞ!!」

 

「切島くん、この荒れ狂う個性をどうにかしてや。朝から耳障りやわ」

 

 切島が「まあまあ!」と間に入り、「それで、ナインの個性、読めたんだろ?」と身を乗り出す。

 

「複数個性の切り替わりの隙は確認できたわ。そこを狙えば入れる」

 

「入れる?」

 

「嵐の壁の内側に、や。外からじゃ俺の6葉では壁を抜けられへん。密着すれば話は別やけどな」

 

 砂藤が「密着って、嵐の中を突っ切るってことか?」と言った。

 

「そうや。嵐の気流を空写で読みながら、隙間を縫って入る。……ま、並の人間なら肉片も残らんやろけど、俺には設計図が見えとるからな」

 

「……できるの、それ?」

 

「設計は立った。昨夜確認したわ」

 

 砂藤は「そうか」と言った。余計な心配をする顔ではない。砂藤は直哉の「設計が立った」という言葉の重さを、なんとなく理解している。

 

 緑谷が直哉を見た。

 

「禪院くん——僕と連携してほしい。君の目が必要なんだ」

 

「知っとる。緑谷くんの過剰な火力と、俺の先読みを合わせる。それが一番効率がいい設計やからな。……緑谷くん、俺の指示に遅れるなよ?」

 

「……うん、分かった!」

 

「俺が『今』と言った瞬間に動け。それだけ頭に入れておいてくれ」

 

 緑谷は頷いた。真剣な顔だった。

 

 ナインが動いたのは、午前の半ば過ぎだった。

 

 直哉の空写が先に感知した。

 

「来る——南方向。一人。ナインやわ。……ようやくお出ましやな」

 

 相澤の指示が飛んだ。子供たちの守りをB組と一部のA組が担う。緑谷・爆豪・轟・直哉が前に出る。

 

 直哉は建物の外に出た。

 

 空は晴れていた。でも、南の空に分厚い雲が集まり始めている。ナインが天候操作を準備している気配が、空写に流れ込んでくる。

 

「個性の切り替わりを読む——準備はできとるわ」

 

 直哉は扇子を開いた。

 

 ナインが現れた。

 

 昨夜より、気配が重い。複数個性の層が、昨夜より厚く積み重なっている。

 

「また来たか、学生」

 

「来てやったわ。……その継ぎ接ぎだらけの気配、今日も吐き気がするわ」

 

 直哉はナインを空写で読みながら、優雅に前に出た。

 

 最初の一手は、直哉から動いた。

 

 投射呪法で地面を蹴る。高速接近。同時に空写でナインの個性の動きを追う。

 

 天候操作の予備動作——ナインの呼気が変わる。気配が「嵐」に向かって収束する。0.3秒。

 

「鏃——三連射」

 

 鏃を鋭利な槍の形状で高速射出した。三発。連続して。

 

 嵐の壁が展開される直前——一発が壁の薄い部分を抜けた。ナインの左肩に当たる。

 

「……」

 

 ナインは動じなかった。でも、気配が一瞬だけ乱れた。

 

 そこだ。

 

「切り替わり——今や!」

 

 個性が「天候操作」から「細胞活性化」に切り替わる瞬間、気配の層が薄くなった。0.2秒。

 

 直哉は鏃の反動推進を使った。足元に鏃を射出し起爆——衝撃で空中に跳ぶ。嵐の壁が薄くなった場所を空写で読みながら、その隙間に身体を滑り込ませた。

 

 嵐の壁の内側に入った。

 

「——」

 

 ナインの顔が、わずかに変わった。

 

 直哉は密着距離から扇子を構えた。

 

「瞬刻、二十四節、積層の理…」

 

「——極ノ番・積層残影・6葉!」

 

 6葉が炸裂した。

 

 嵐の壁がない。直撃する。ナインの胸部に衝撃が入った。ナインの身体が後ろに押される。

 

 でも——倒れない。

 

 細胞活性化で自己強化している。6葉の衝撃を、強化された肉体が受け止めた。

 

「6葉か…少々火力不足に見えるが?

「そうや。今の俺には6葉しかないねん。不便やろ?」

 

「その通りだ。威力が足りない」

 

「知っとる——せやけど、重ねれば削れるわ」

 

 直哉は後退しながら、もう一度空写を展開した。

 

 ナインが細胞活性化から天候操作に切り替える——その0.2秒を読む。

 

 切り替わりの瞬間に、また壁の薄い場所が生まれる。直哉は鏃の反動推進で跳んで、その隙間を抜ける。

 

「瞬刻、二十四節、積層の理」 

 

 密着。極ノ番・積層残影・6葉。

 

 また入った。

 

「……同じ手を繰り返すのか」

 

「繰り返せる手なら、繰り返す。それが設計や。……君には学習能力がないんか?」

 

 ナインが天候操作を全開にした。嵐が強くなる。風が建物を揺らす。

 

 直哉は嵐の気流を空写で読んだ。風の渦の方向。強い流れと弱い流れ。嵐は気まぐれに動いているように見えるが——ナインの意志で動いている。

 

「嵐も、気配の流れや——読めるわ」

 

 気流の隙間を縫いながら、直哉は動き続けた。

 

 十分が経った。

 

 ナインは倒れていない。でも——直哉の極ノ番6葉が、確実に蓄積していた。

 

 ナインの気配が、最初より少し重くなっている。複数個性の切り替えのリズムが、わずかに乱れ始めている。

 

 直哉は反転術式で自分の傷を修復しながら、空写を維持した。

 

 嵐の風が横から来た。空写で読んでいたが、回避が間に合わなかった。直哉の身体が横に吹き飛ぶ。

 

 建物の壁に叩きつけられた。

 

 衝撃がある。肋骨に来た。でも——反転術式が即座に動く。骨の歪みが修復される。三秒もかからない。

 

「——それが反転術式か」

 

 ナインが静かに言った。

 

「そうや。すぐ再生できるんよ。便利やろ?」

 

(しれっと反転術式について言及してきとる…ってことはやはりヴィラン連合に情報が漏れとるな…予測通りやわ)

 

「それがどうした。以前俺の肉体は健在だ」

 

「それは見れば分かっとるわ。……君の歪な身体もな」

 

 直哉は壁から離れた。傷は消えている。消耗はある——反転術式の維持にも呪力を使う。でも、まだ動ける。

 

「……お前は、何者だ」

 

「雄英1年A組の学生ですわ。……ま、君らみたいな底辺とは出来が違うけどな」

 

 ナインは答えなかった。

 

 直哉は空写でナインの次の個性の動きを追った。

 

 ——切り替わる。天候操作から、別の個性へ。

 

「何や——初めて感じる気配やな」

 

 新しい個性の層が表に出てくる。攻撃個性だ。

 

「これはまずいな……」

 

 直哉は瞬時に判断した。新しい個性の性質を空写で読もうとするが——切り替わったばかりで気配が安定していない。

 

 ナインが腕を伸ばした。

 

 何かが来る。直哉は空写の断片的な情報を頼りに、横に跳んだ。

 

 空間に、裂け目のような何かが走った。直哉のいた場所の地面が、えぐれた。

 

「——空間系の個性か。……趣味悪いわ」

 

 直哉は空中で鏃の反動推進を使って距離を取った。

 

 新しい個性。読み切れていない。距離を取る必要がある。

 

 でも——距離を取ると、空写の精度が落ちる。

 

「……設計を変えるわ。緑谷くん、来い!」

 

 直哉は後退しながら、緑谷に向かって声を張り上げた。

 

「緑谷くん——来い! ぼーっとすな!」

 

 緑谷はすぐに動いた。跳躍しつつ、空中を移動してくる。

 

「今、ナインが新しい個性を使い始めたわ。読み切れてへん——俺が読む時間を作るさかい、その間に緑谷くんが注意を引くんや」

 

「分かった!」

 

 緑谷が前に出た。OFAのオーラが噴き出す。ナインの注意が緑谷に向く。

 

 直哉は空写を全力で展開した。

 

 ナインの新しい個性——空間を裂く。気配の質を分析する。発動の予備動作は——ナインの右腕が動く直前、指先の気配が鋭くなる。

 

「……読めたわ。不細工な動きやな」

 

 0.15秒。天候操作よりも隙が短い。でも——ある。

 

「緑谷くん——俺が『今』と言ったら右に跳べ。一拍おいてから全力で前に出るんや。……ミスったら死ぬで?」

 

「今?」

 

「まだや」

 

 直哉は空写でナインの右腕の動きを追った。

 

 指先が鋭くなる——今だ。

 

「今——!!」

 

 緑谷が右に跳んだ。空間の裂け目が緑谷のいた場所を走る。

 

 一拍。

 

「前に出ろ!」

 

 緑谷が前に出た。ナインの個性が切り替わった直後——0.2秒の隙。緑谷のOFAが炸裂した。

 

 ナインの身体に直撃する。

 

 ナインが後退した。初めて、大きく後退した。

 

 直哉はその隙に密着距離まで詰めた。

 

その最中にも詠唱を唱え、確実な一撃にするために効力を上げにかかった。

 

「瞬刻、二十四節、積層の理」

 

「極ノ番・積層残影・6葉!!」

 

 6葉が入った。

 

 ナインがまた後退する。今度は、膝をついた。

 

「……」

 

 でも——立ち上がった。

 

 細胞活性化で回復している。

 

「強い……!」

 

 緑谷が直哉の横に来た。

 

「緑谷くん——今の動き、及第点やわ。俺のリードがあってこそやけどな」

 

「禪院くん——ありがとう。『今』、完璧だった!」

 

「……緑谷くんの動きがマシやっただけや。勘違いすんな」

 

「でも、あの隙は禪院くんが読んでくれなかったら分からなかった」

 

「……当たり前や。俺が読む。緑谷くんが打つ。それが今の設計の一番効率のいい形や」

 

 ナインが立ち上がった。気配が変わった——また別の個性に切り替わろうとしている。

 

「まだ来るわ。……しつこい男は嫌われるで」

 

 直哉は空写を展開した。

 

 戦闘が続いた。

 

 直哉は空写でナインの複数個性の切り替わりを追い続けた。6葉を連発し、緑谷に合図を出し続けた。

 

 反転術式が傷を修復し続けた。

 

 でも——消耗が蓄積していた。

 

(……チッ、空写に極ノ番、反転術式の同時並行か。呪力がゴリゴリ削れるわ。ほんま不細工な戦い方やで、俺も)

 

 限界が、じわじわと近づいてきていた。

 

「……」

 

 直哉は一瞬、空写の精度を下げた。

 

 ナインの気配が、薄くなる。

 

「……まだや。まだ下げるな。てめぇ、ここで脱落したらそれこそドブカスやろ」

 

 直哉は空写を戻した。精度優先230m。

 

 ナインが天候操作を全開にした。嵐が激しくなる。

 

「……嵐の中でも読めるわ。それが空写の強さや」

 

 直哉は嵐の気流を縫いながら、動き続けた。

 

 でも——ナインも、消耗している。

 

 複数個性の切り替えのリズムが乱れてきた。直哉の6葉の蓄積が効いている。

 

「……削れてるわ。あと少しや」

 

 ナインの気配が、また切り替わった——天候操作から細胞活性化へ。0.2秒の隙。

 

「今や——緑谷くん!」

 

 緑谷が動いた。OFAの火力が炸裂する。

 

 直哉が密着から6葉を叩き込む。

 

 ナインが——また膝をついた。今度は、すぐには立ち上がらなかった。

 

「……」

 

「もう少しやな。君の不細工な人生、ここで終わりや」

 

 直哉は呟いた。

 

 でも——その時だった。

 

 ナインの気配が、急変した。

 

「——何や、これ…?」

 

 直哉は空写を最大限に展開した。

 

 ナインの身体から、巨大な気配が噴き出している。

 

「まずい!——島全体に嵐を展開する気やわ。……極地やな」

 

 直哉は緑谷に向かって叫んだ。

 

「緑谷くん——離れろ! 今すぐや!!」

 

 緑谷が反応した。黒鞭で建物に飛びつき、距離を取る。

 

 直哉は鏃の反動推進で後退した。

 

 次の瞬間——島全体を巻き込む嵐が、展開された。

 

 嵐の中で、直哉は建物の影に入った。

 

 空写を展開する。ナインの気配——嵐の中心にいる。距離が開いた。

 

「……本気を出してきたな。……キモいわ」

 

 直哉は反転術式で消耗を補いながら、状況を整理した。

 

 デクが建物の壁に張り付きながら、直哉の横に来た。

 

「禪院くん——どうする?」

 

「嵐の規模が変わったわ。さっきの設計じゃ入れへん——読み直す。……緑谷くん、焦るなよ」

 

「時間は?」

 

「少し待てや。空写で嵐の流れをパッキングする。……ノイズが多すぎてイラつくわ」

 

 直哉は空写を嵐の気流に向けた。

 

 ナインの意志が嵐を動かしている。

 

「……入れる。設計が立つわ」

 

 でも——今日はここまでや、と直哉は判断した。

 

 消耗が限界に近い。呪力の残量が心許ない。

 

「緑谷くん」

 

「なに?」

 

「今日はここまでにするわ。……これ以上やると俺の顔色が悪くなる」

 

 緑谷は一瞬、直哉を見た。

 

「……禪院くんが、そう言うなら。無理はさせられない」

 

「ナインは削れとる。蓄積は入ったわ。でも俺の消耗も限界に近い——精度が落ちた設計図なんて、紙屑以下やからな」

 

「分かった。撤退しよう」

 

 相澤の声が来た。「全員、建物に戻れ」

 

 直哉は最後にもう一度、空写でナインの気配を確認した。

 

「明日やな。……相当削ったはずや…首を洗って待っとけよ。複数の個性持ちとかAFOみたいなことしてんのが気色悪いねん。…徹底的に潰したる」

 

 直哉は扇子を閉じて、建物に向かった。

 

 夜。

 

 直哉は部屋の隅で、壁に背中を預けていた。

 

(……6葉じゃ足りへん。一発の重みがなさすぎるわ。ほんま不細工やな、俺)

 

 呟きが暗い部屋に落ちた。

 

 獄の番の完成図の24葉があれば——一発で終わらせられた。

 

「……ま、今の俺の全部は出したわ。設計は正しかった。……俺なりによーやったんやない?それなりに戦えていい運動にもなったしな。良いサンドバッグがいて良かったわ」

 

 直哉は扇子を開いた。

 

「明日——続きをやるわ。ナインは削れとる。今日の蓄積がある。あと少しや」

 

 切島が部屋に入ってきた。「禪院、大丈夫か?」

 

「大丈夫やわ。……切島くん、勝手に入ってこんでや」

 

「ごめんごめん…悪かった。それにしても凄かったぞ、今日! 緑谷との連携も、かっこよかったぞ!」

 

「かっこよくはない。設計通りに動いただけや。……あと、緑谷くんへの指示が完璧やっただけやわ」

 

「それがかっこいいんだって!」

 

 直哉は切島を見た。

 

 切島は本気でそう思っている顔をしていた。直哉は「ふん」と鼻を鳴らした。

 

「明日も頼むぜ、禪院!」

 

「分かっとるわ。……とっとと寝ろや、暑苦しい…」

 

 切島が出ていった。

 

 直哉は扇子を閉じて、目を閉じた。

 

 明日——設計の続きを出す。6葉の全部を出し切る。

 

 ナインはまだ立っている。でも——削れている。

 

 あと一日あれば、設計が完成する。

 




(……チッ、反転術式を回しすぎて頭が重いわ。
 呪力の消費が計算ギリギリや。あの嵐の規模、完全に設計の外側を狙いにきとる。
 ナイン。あいつ、最後はなりふり構わず島全体を飲み込みよったな。
 不細工な足掻きや。けど、その焦りこそが「削れてる」証拠や。
 俺の「6葉」は、一撃じゃあいつを殺せへん。
 けどな、一発一発が確実に、あいつの細胞と精神の「継ぎ目」を広げとる。
 デクくんも、案外ええ動きしよるわ。
 俺の「今」の合図に、一分の遅れもなく反応しやがった。
 ……ま、俺のリードが完璧やったから当然の話やけどな。
 切島くんが「かっこいい」だの何だの抜かしてたけど、反吐が出るわ。
 俺はただ、勝てる設計を引いて、その通りに身体を動かしただけや。
 そこに感情なんか一ミリも挟まってへん。
 ……明日や。
 明日の夜明けまでに、あいつの新しい「空間個性」も含めた、完璧な終局図を書き上げる。
 蓄積はもう十分や。
 次は、あの嵐の壁ごと、あいつの存在をフレームから消したるわ。)
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