【完結予定】転生って人の心とかないんか?―有象無象のヒーローごっこ、三歩下がってついといで。   作:まだら模様

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同じ個性の気配が二つ」——。

 空写を展開した瞬間、脳がバグを起こしたかと思ったわ。

 双子のサーペンターズ。エナとディオ。

 
 俺の「設計」は、相手の個性の質を読み、その火種が爆ぜる瞬間に合わせるもんや。

 なのに、目の前におる二人は、呪力の流れも、個性の出力も、まるで鏡合わせみたいに一致しとる。

 どっちがどっちか、空写のレーダーだけやと重なって見えよる。
 
 ……ハッ、不細工な嫌がらせやな。
 
 けどな、魂の質は同じでも、肉体は別物や。

 どっちの肩が先に跳ねるか。どっちの膝が先に沈むか。

 個性の「質」で読めへんのなら、その不細工な「肉体の癖」を剥き出しにしてやるわ。
 
 爆豪くん、お前はディオを叩け。俺がエナを解体する。
 
 それと——今日、初めて試す「設計」がある。

 6葉じゃ届かへんのなら、その先を叩き込む。

 右腕がブッ壊れるかもしれへんけど、反転術式があるんや。

 「無理」と「設計の範囲内」は別物やで。

キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性ございます。
ご注意ください。

お気に入り登録、感想、評価付与は作者、そして直哉の気分が上がりまくって…より筆に力が入るかも…?



第88話:映画編 ワールドヒーローズミッション「双子の蛇腹剣——同じ気配を読み分ける」

蛇腹剣が三本、同時に来た。

 

 直哉は空写でその軌道を読んだ。左から二本、右から一本。左の二本は牽制——本命は右の一本。

 

「——読めとるわ」

 

 落花の情で一度オート迎撃した後に即解除。右に跳びながら、鏃を射出した。右の剣の刀身に直撃する。軌道がわずかに逸れた。残りの二本が追ってくる。空虚呪法で空中に固定節を生成——剣が固定節に引っかかって止まる。

 

 直哉は着地しながら、扇子を開いた。

 

 目の前のサーペンターズの一人——エナかディオか、まだ判別できていない——が剣を収めて次の構えを作った。

 

 空写で読む。

 

 個性の質は——やはり、もう一人と全く同じ。同じ個性。同じ出力。同じ気配の重さ。

 

(……チッ、ほんまに鏡合わせやな。反吐が出るわ。……けど、魂がコピー品でも、肉体の動きまで寸分狂わず一緒なんてあり得へん)

 

「右肩の動きが先に来るな、お前」

 

 直哉は気づいた。

 

 剣を振るとき、この男は右肩が先に動く。わずか0.1秒だが、右肩の気配が先行する。個性の質ではなく、身体の癖。

「——これや。設計、変更。……ゴミみたいな個性に頼るんやなくて、その不細工な肉体の癖を読ませてもらうわ」

 

 直哉は空写の向け方を変えた。筋肉の収縮、重心の移動、呼吸のリズム。

 

 蛇腹剣が再び来た。今度は五本。

 

 右肩が動いた——0.1秒後に右の二本。左膝が沈んだ——左の剣が下から来る。

 

「全部見える。……鈍いわ、ノロマ」

 

 落花の情で高速移動しながら、五本全ての軌道を回避した。鏃を二発射出して二本を弾く。空虚呪法で固定節を生成して一本を止める。残り二本は身体を傾けて通り抜けさせた。

 

 無傷。

 

 エナが——右肩から先に動く方がエナだ、と直哉は判断した——顔色を変えた。

 

「……読んでいるのか?」

 

「全部や。お前の次の呼吸の深さまでな」

 

 廊下の向こうで、爆豪の爆破音が聞こえた。

 

 もう一人のサーペンターズ——ディオ——と爆豪が戦っている。

 

「爆豪くん——ディオの癖は左膝が先に動く。右の奴と逆や」

 

 廊下の向こうに向かって、直哉は声を投げた。

 

「聞こえてるか知らんけど——左膝が沈んだ瞬間が攻撃の予備動作や。そこに爆破を合わせえや。……それで仕留められへんのなら、君のセンス、疑うわ」

 

 しばらくして、爆豪の爆破が一段大きくなった。

 

 空写で感知できた——ディオの動きが乱れた。爆豪の攻撃が入った。

 

(……フン、言うた通りにしおって。素直やないな)

 

 エナが構えを変えた。

 

 今まで三本だった蛇腹剣が——五本になった。トリガーを使った気配ではない。純粋に本気。

 

 直哉は空写を最大限に絞った。

 

 右肩。左膝。首の向き。重心の位置。

 

 五本の剣が動く前に、エナの身体のどこかが必ず先行する。

 

「——右肩と左肘が同時に動いた。右の二本と左の一本が来る。残り二本は——」

 

 残り二本の予備動作を読もうとした瞬間、エナが動いた。

 

 予備動作がない。

 

「——」

 

 直哉は鏃の反動推進で後退した。五本の剣が直哉のいた場所を薙いだ。

 

 一本だけ、かすった。左腕の袖が裂けた。

 

 反転術式が即座に動く。傷は浅い。でも——予備動作なしの剣があった。

 

「……二本は読み方が違う。癖が別系統や。……おもろいことしよるわ」

 

 エナは——五本の剣のうち、三本は「身体の癖から来る動き」で、残り二本は「個性の意志から直接来る動き」がある。

 

「設計を更新する。……肉体と意志、両方を同時に読ませてもらうわ。脳みそ、焼き切れるまで踊れや」

 

 試した。

 

 エナが動いた。五本。

 

 身体の癖の三本——右肩と左膝が先行する。個性直接制御の二本——エナの視線が剣の方向を向く。

 

「全部見えた。……終わりや」

 

 落花の情で回避しながら、鏃を二発射出した。個性直接制御の二本の刀身に当てる。弾かれた。空虚呪法で固定節を生成して身体の癖の一本を止める。

 

 完全回避。

 

 エナが——今度こそはっきりと、驚いた気配を出した。

 

 十五分が経った。

 

 エナを相手に、直哉は傷らしい傷を負っていない。

 

 でも——削れてもいない。

 

「……6葉では削り切れへんか。……タフなだけの木偶人形やな」

 

 直哉は扇子を持ち替えながら、状況を確認した。爆豪とディオの戦闘は長引いている。轟とレヴィアタンの巨大な気配もまだ消えていない。

 

 緑谷の気配は——230mの端。フレクトの方向に向かっている。

 

「緑谷くんが動いたな。……ま、あのアホが負ける設計は立ててへんけど」

 

 エナが構えを変えた。今度は——六本。

 

「トリガーか。……どこまでも不細工な真似を。薬なんかに頼って、それでもヒーローの敵を名乗るんか?ヴィランの名が泣くわ」

 

 空写でエナの気配を読んだ。個性が強化されている。

 

 直哉は空写を最大限に展開した。

 

 右肩と左膝——身体の癖の四本。視線の方向——個性直接制御の二本。

 

「全部来る。……捌き切るのが精一杯か。……しゃあないな」

 

 直哉は着地しながら、状況を分析した。呪力の消耗が速い。

 

「……このままでは長引くか。6葉では届かへん——次の手、試させてもらうわ。……ブッ壊れても、後で治せばええだけやしな」

 

 直哉は扇子を握った。

 

 12葉。

 

 訓練で感触だけは知っている。実戦で使ったことはない。

 

 エナがまた動く。六本の蛇腹剣が展開される。

 

 直哉は空写を全力で展開した。右肩と左膝と首の動き、視線の方向。

 

「全部見えとる。無駄や」

 

 六本が来る。

 

 直哉は鏃の連続機動による立体機動で動きながら、今まで通り捌く。空虚呪法による固定節。槍の形状の鏃の射出による迎撃。

 

 そして——エナが六本を収めて次の構えを作る、その0.3秒の間。

 

「今や。……沈めや。出来損ないが」

 

 直哉は扇子を構えた。

 

 「瞬刻、二十四節、積層の理」

 

 直哉の口から滑らかな詠唱が紡がれる。

 

「——極ノ番!『積層残影』12葉!!」

 

 六よりも、より多重に重なった12葉が炸裂した。

 

「ぐっ…!?」

 

 6葉とは違う。衝撃の重さが、明らかに違う。エナの胸部に入った12葉は、エナを数メートル吹き飛ばした。

 

「……ッ、あー……重いな、これ」

 

 直哉は右腕の感触を確認した。6葉とは比べ物にならない負荷。反転術式が動いて修復しているが——連射はできない。

 

 エナが立ち上がった。

 

「……トリガー使用の個性は、回復も速い、か。……ほんま、しつこいな」

 

 廊下の向こうで、大きな爆破音がした。爆豪が仕留めた。

 

 爆豪が角を曲がって現れた。

 

「てめぇ——まだかかるのか。このドブカス野郎が」

 

「もう少しや。6葉よりも強化した12葉を入れた。削れとる。……あいつ、薬で無理やり繋いどるだけやわ」

 

「12葉? 初めて使ったやつか」

 

「ああ。右腕に負荷が残ってる——連打はできへん。……ま、あとは任せてもええんやけどな?」

 

「…俺が仕留める。テメェはせいぜいそこで大人しく見てろ!」

 

 爆豪がすでに動いていた。

 

 エナが六本の蛇腹剣を展開する。爆豪が爆破を連発しながら突っ込む。

 

「爆豪くん——右肩が動いたら左に跳べ。今——」

 

 右肩が動いた。

 

「左や!」

 

 爆豪が左に跳んだ。蛇腹剣が空を切る。

 

 爆豪が着地と同時に爆破を炸裂させた。エナの正面から直撃する。

 

 エナが——倒れた。

 

「……仕留めたな。……ま、俺の正確なナビがあったおかげやけど」

 

 爆豪が「…チッ、クソが」と言った。

 

 爆豪と直哉は廊下を進んだ。

 

「緑谷くんがフレクトと戦っとるわ」

 

「知ってるわ!んなこと!」

 

「フレクトの個性は反射——あらゆるエネルギーを跳ね返す、常時発動型の個性や。……俺の術式でも、物理的な接触が必要な12葉は相性が悪すぎる。設計が立たへん」

 

「分かってる。だからクソナードに任せるんだろ?そんなもんがなきゃ、俺がとっくに仕留めてたわ!クソが!」

 

 

 直哉は少し驚いた。

 

「——分かってたか。……爆豪くんも、意外と周り見とるんやな」

 

「てめぇが空写で読んで「反射の個性」って言った瞬間に、あいつしかいないと思った。無個性だったやつが、超パワーの力技で押し込む——それが一番あの個性への答えになる」

 

 直哉は爆豪を見た。

 

「……ハッ、不細工な戦い方やけど、あいつにはそれが一番似合っとるわ」

 

 フレクトの戦闘室の手前で、直哉は空写を展開した。反射の個性のせいで、精度が落ちる。

 

「……個性の気配が反射されとるな。……ま、緑谷くんの気配は読める。ボロボロやけど、まだ折れとらん」

 

 爆豪が扉の前で止まった。

 

「中に入るか?」

 

「……いや。俺の今の状態では、足手まといになるだけや。12葉を使った後の呪力じゃ、あの反射膜を確実に抜く設計が組めへん。……あのアホに任せえや。緑谷くんが突破する——それだけが今の設計の正解や」

 

 爆豪は何も言わなかった。

 

 扉の外で、二人は待った。

 

 待っている間、直哉は右腕の感触を確かめ続けた。

 

(12葉……実戦でのフィードバックは十分やな。1発の重さを計算しながら、どこで使うかを決める——それがこれからの俺の設計や)

 

 扉の向こうで、大きな衝撃音がした。

 

 緑谷の気配が——消耗の底に達している。でも、止まっていない。

 

「——何かが起きてるわ。……あーあ、あんな出鱈目な出力……設計もクソもないわ」

 

 巨大な力が炸裂した音。

 

 直哉は空写でその衝撃の方向を読んだ。フレクトの気配が急激に弱くなった。

 

「……緑谷くんが通したな。……ほんま、無茶苦茶しよる」

 

 扉が開いた。

 

 緑谷が立っていた。ボロボロだ。それでも——立っている。

 

「——終わったか。……ほんま、見てられんくらい不細工な姿やな、緑谷くん」

 

 緑谷が直哉と爆豪を見た。

 

「二人とも……大丈夫?」

 

「俺は問題ないわ。……緑谷くんほどボロ雑巾にはなってへんしな」

 

 緑谷は「よかった」と言って、ゆっくりと膝をついた。

 

 直哉は近づいて、緑谷の肩を支えた。

 

「反転術式が使えれば、君のそのボロボロの腕も治してやれるんやけどな。……生憎、俺の術式は俺にしか使えへん。……まぁ今の君ならボロボロな姿の方が似合っとるし、このままでええやろ」

 

「あはは…相変わらず禪院くんらしいね……支えてくれてありがとう」

 

「礼は要らへんわ。……設計通りや」

 

 直哉は空写でロディの気配を追った。解除キーを持って走っている。

 

「ロディくんが動いとる。間に合うわ。……さあ、撤退の設計、組ませてもらうで」

 

 三人は、その場で少しの間、動かなかった。

 

 直哉は右腕の感触を確かめた。12葉の負荷が、少しずつ抜けていく。

 

(……ま、悪くない夜やったな)




(……あー、右腕がジンジンしよる。
 12葉、想像以上やな。
 6葉を連射する方が呪力効率はええけど、ここぞという時の一撃の重さが段違いや。
 反転術式で無理やり繋いどるけど、今の俺やと一発撃つごとにリキャストタイムが必要になる。
 実戦で使ってみて正解やったわ。これが今の俺の『全力の設計』の限界値やな。
 廊下の向こうで、爆豪くんがディオを仕留めた気配がした。
 あいつもあいつで、俺の出した「左膝」の情報を即座に爆破に変換しおった。
 ドブカス野郎とか言うてくる割には、俺の設計図を一番信頼しとるんは、案外あいつかもしれへんな。
 ……さて、最後は緑谷くんや。
 反射の個性、フレクト。
 俺の12葉でも、あいつの反射膜を貫ける確率は五分五分……いや、今の呪力残量やとそれ以下か。
 そんなギャンブル、俺の設計には組み込めへん。
 せやけと、あの『無個性』やった緑谷くんが、100%の力を出し切って正面からねじ伏せる。
 あのアホみたいな直向きさが、反射という理屈を物理で粉砕する。
 ……その未来だけは、なぜか確信が持てるわ。
 設計の最後を他人に預けるなんて、俺らしくないけどな。
 今夜だけは、特別や。
 あいつが扉を開けて出てくるのを、ここで優雅に待たせてもらうわ。)
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