守護の騎士が至る道   作:匿名希望

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メツ達のパートになる予定でしたが、ちょっと変更しました。

ラキアの所持ゴチゾウはプリンテとザクザクチップスのみです。
チップス君には重要な役割があるので、その日までお待ちください。
それではどうぞ。


2-2 「トリゴへの道行」

 

『…というわけで、ラキアに助けられて命からがら逃げてきたも…』

「というわけ…じゃないも!」

 

 執務室にて、バーンは憤慨していた。

 その内心は穏やかとはかけ離れ、辺り全ての商人やノポン、物に構わず怒り散らす勢いであった。

 そのあまりの憤慨っぷりには、バーンお抱えの踊り子達も萎縮するレベルだ。

 踊り子達は執務室の片隅で固まる。

 

「お前はアホかも!どうしてきっちり死んでこないも!後で返金しろとか言われたらどうするつもりも!」

『え?それはどういう意味も?』

 

 通信機に映されたプニン相手に声を荒らげ続けるバーン。対するプニンは、言葉の意味がわからず、モニター越しに首を傾げた。

 その惚けたプニンの姿も声も更にバーンの神経に障り、顔はみるみる釣り上がり、加速度的に機嫌が悪くなる。

 

「お前は何も知らなくていいも!黙ってるも!」

 

 バーンの機嫌は最悪、稀に見る最低っぷりだ。普段なら多少気を悪くしても踊り子が色仕掛けを仕掛ければころっと上機嫌になるところだが、今日は何をどうしても火に油を注ぐ結果になる。

 荒ぶる気性を抑えられず、バーンは机を勢いよく叩く。

 

(まったく、全て順調に事が運んでいたのに、面倒な事になったも。ラキアめ…珍しい風貌と腕を買って雇ってやったのに。金の匂いがしたから今までずっと目を掛けてやっていたのに…!恩を仇で返された最悪の気分も!)

 

 ぐぎぎ…!と歯軋りするバーン。

 

(あの連中から受け取った金はもう懐に入れたも。誰にも渡さないも!だいたい、部下の失態は部下の失態だも!いざとなったら全責任を背負わせて、のこのこ戻ってきたアイツらを切り捨ててしまえばも!)

 

『あ、あの…バーン会長…?』

「うるさいも!黙ってるも!」

『ひっ!?』

 

 ついぞバーンのイライラが爆発し、机の上の物が床に勢いよくぶち撒けられた。小道具、資料、今の今まで机に並べられていた様々な物が舞い落ちる。

 一度発散して少し冷静さを取り戻したのか、バーンはプニンへ問い掛ける。

 

「それで、ラキアとそのブレイドはどこへ行ったんだも?」

『ラキア達を乗せたアルスは、トルネア海から南に逃げて、その後は行方知れずですも…』

「わからない、も?」

『はい。嵐が激しかったもので…』

「で、のこのこ逃げてきたも?」

『は、はいも…』

「こ、この…!」

『も?』

「この役立たず!お前は役立たずも!なぜすぐにラキアの後を追わなかったも!」

『そう言われましても…』

「言い訳は聞きたくないも!」

 

 バーンはまたも激昂し、激しく机を叩く。

 

「く〜っ!とっとと戻ってこいも!次の仕事が山盛りになってるも!今回の失態分を帳消しにするまで報酬はあると思うなも!」

『そ、そんな…!』

「うるさいも!うだうだ言うんじゃないも!これ以上文句を言うならクビにするも!お前の代わりはいくらでも居るのを忘れるなも!」

 

 感情に任せて怒鳴り散らしたバーンは、愕然とするプニンに一切気を止めず、一方的に通信を切った。

 声と呼吸を荒らげるバーンであるが、苛立ちが治る気配は一向にない。

 それどころか、どんどん苛立ちが増す。

 

「ウズシオにも保険をかけてたってのにこれじゃ大損だも。ラキア・アマルガ、本当に余計な事をしてくれたも!」

 

 バーンは苛立ちが限界まで達し、ラキアとの契約書をビリビリ破き、紙屑を投げ捨てた。

 

「もう二度とアヴァリティア商会の恩恵を受けれるとは思うなも!」

 

 それは事実上のクビ宣告だが、この場にいないラキアが知る術はない。

 そしてバーンは腐ってもノポンの豪商と呼ばれる大物ノポン族。その思考はこの損失をどう補填するかにシフトし、次なる稼ぎ場を模索していた。

 考えの末、バーンは次なる手を閃く。

 

「トルネア海から南に向かったとすれば…今の時期だとグーラに向かった可能性が大きいも。おい、そこのお前」

「な、なにようでしょうか?」

「グーラのモーフ領事を呼び出せも。急げも!」

「は、はい!」

 

 秘書兼踊り子は、急ぎ通信機を調整してグーラの領事を呼び出した。

 映されたのは豚っ鼻の男であった。

 

『これはこれはバーン会長。先立っては大変お世話になりました』

 

 領事は顰めっ面のバーンにへこへこと頭を垂れる。

 

「前置きはいいも。今日はとっとと要件にはいるも」

『随分荒だっておられるご様子で。いったい何用でしょうか?』

「天の聖杯の目覚め…」

『なんと!?』

「それからラキア・アマルガという子生意気な男についての話も。この情報の値は高く付くも〜」

 

 1人のノポンの底知れぬ強欲は、事態を混乱と争いの渦を更に掻き回す。

 それから夜が明けた朝方、ラキア達は今まさに出立しようとしていた。

 ラキアとニアの話声が朝の静寂を葬る。

 

「ここは『グーラ』だったのか」

「うん、そうだよ」

 

 昨晩はまったく気が付かなかったが、ここはラキアが訪れた事のある土地だったらしい。

 場所の所在が割れ、ようやく少しばかり道行が明るくなった。

 

「ラキア、グーラに来た事あったの?」

「二度な、フリーのサルベージャーで生計を立てていた頃にトリゴの街にサルベージした物を売りに行っただけだがな」

「その時は街近くに接岸したからここがグーラだとは気付かなかったのお」

「あの時は色々あったからな」

「何があったんですか?」

「サルベージした品を盗難されたんじゃ。少し目を離した隙にの」

 

 結構な損失だった。盗られた品は…

 

『かんぺき測距センサ』

『ビヨンコネクタ』

 

 など多数。

 

「あの時のノポンの顔は忘れてないからな」

「根に持っとるの〜」

「当然だろ。商売が一つ白紙になったんだからな」

「よくノポンの顔見分けられるな。ま、そんな事より、行くんだろ?トリゴの街に」

「ん?ああ…そうだな」

 

 街に向かう、ラキアは思考を巡らせる。

 

(メツ達はホムラを回収して目撃者を始末、情報の出所をその場で全て潰そうとした。そこまでしようとした奴らが天の聖杯の話を広げるとは思えない。やり方を変えた、となれば話は変わってるが、あいつらがどう動くかはわからない。今の問題は…)

 

 バーンの方だ。

 

(俺達をメツに売ってプニンに監視させていた以上、ホムラの存在にも気付いている。商会の情報網なら名の知れた街にはバーンの息がかかった奴も少なからずいるはず。金に目敏いあいつが動かないとは思えない。刺客を雇ってホムラを奪いに来る。いや、有力者に情報を撒いて金稼ぎの方が汚いあいつらしいやり方か。あわよくばその後でホムラを横から掻っ攫う…バーンのやりそうな手口はそんなところか。なら街に行くのはリスクが高い)

 

 でも街に行ってアルス船を調達しなければ、世界樹、楽園への道がないのは事実。それに無駄に足踏みして後手に回ればメツ達に気取られる可能性も高い。今また戦うとなれば、昨日の二の舞だ。

 

(爺さんが飛べれば話は早かったんだが…。ない物ねだりしても何にもならないか。は〜だる)

 

 気は進まないが、行くしかないようだ。

 

「ああ。一先ずはトリゴの街を目指すか」

 

 夜が明けた早朝、ラキア達はトリゴの街に向けて歩みを進める。

 この先を抜けて、道を登れば平原に出るはずだとニアの案内で一行は進む。道中、モンスターとの戦闘を経験しながらも順調にトリゴの街を目指す。

 

「おい、爺さん。一つ聞きたい」

 

 道中、ラキアはビャッコの背中に乗るセイリュウへ問い掛ける。

 

「なんじゃ」

「レックスという名前の子供を知っているか」

「…」

 

 セイリュウは驚いた表情を浮かべた後、口を固く閉ざして沈黙した。

 

「黙るって事は知ってるんだな」

「まだじゃ。レックスの件は話せん」

「理由があるんだな」

「コルレルと決めた事じゃ」

「コルレルの婆さんと?」

「そうじゃ。この先、イヤサキ村に帰ったとき、コルレルと共にレックスの話をしよう。それまでは待て」

「…わかった」

「やけに素直に引き下がるの」

「事情があるんだろ。無理には聞かない。それに話すってんなら待つさ」

「すまんの」

「あいつらの事もいい」

「レックスはともかく、なぜじゃ?メツとシンの事も聞かぬのか?」

「ホムラがな」

 

 ラキアはニアと話すホムラへ目を向ける。

 

「訳ありだろ」

「察しの良い奴じゃ。可愛げがないのぉ」

「俺も同じだからな」

 

 隠し事は誰にだってある。知られたくない事の1つや2つくらい。

 言いたくても、言えない事だってな。

 

「お主の"あの力"か?」

「見てたのか…」

「少しだけじゃ。ニアを抱えて船の外壁からぶら下がっとったの。あれはエーテルの力でも、天の聖杯の恩恵から得られる力でもない。見てすぐわかったわい」

「伊達に長生きしてないな」

「色々な人や物事を見てきたからの。異質な力とそうでない力の見分けは付く。ラキア、お主がどうするのかは知らんが…お主が聞かんかったようにワシも詳しくは聞かん」

「ああ…今はそうしてくれると助かる。ありがとうな、爺さん」

「じゃが、いずれ時はくるぞ」

 

 セイリュウの目は真剣そのものだ。

 

「明日かも知れんし、もっと先かも知れん。ただ、後悔だけはするでないぞ?言わずに"最悪"を迎える可能性もある。お主が行かんとする道は"そういう道"じゃ」

 

 ああ、わかってるさ。

 アルストに来る前、扉を破壊する時に死を覚悟して、一度は捨てた命をレックスに拾われて。

 そして今度はホムラに救われた。

 

 全部わかってる。

 

「今更言われるまでもない」

 

 それに…。

 

 もうとっくに歩いてるさその道は。

 コメルが帰ってこなくなった家を出た日から、ずっと。

 

「やらなきゃならん事も、放って置けない奴もいる。もう死ぬ気はない」

 

 全てを果たすその日までは。

 必ず『楽園』に辿り着く。

 

「それはそれとして、もう二度とあんなふざけた真似はするな。もし次やったら…」

「やったら…なんじゃ?」

「ビャッコのエサにする」

「食べませんよ!?」

 

 なんだ、そうなのか。

 

 アルスを上へと登り、一行の道は続いていく。

 小さな池を越えれば平原が見えてくると言うニアの案内は的確で、この辺りの地理を事細かく知っているようだった。

 ニアの言葉通り、いよいよトリゴの平原が目の前に広がった。その奥にはグーラ領・トリゴの街が全員の目に見えた。

 トリゴの街を目の前にして、ニアは歩みを止めた。

 

「ここがグーラのアルスの上層右半身。さてと、ここでお別れだね」

「お前、あんな奴らの元に戻る気か?」

「うん。アタシは戻らないと…」

 

 苦しみと苦さが混じった酷い作り笑いを顔に貼り付けて言うニア。

 ビャッコは自らのドライバーであるニアに従うと、否定も肯定もしない。

 

「お前を利用して殺そうとした奴らだぞ?」

「日は浅くても仲間だったから」

「メツがお前にした事、お前自身が一番身に染みてるだろ」

「そりゃ、メツのした事は許さないって言うか…どうかと思うさ。それにさ、シンだって…なにかきっと訳があって…」

 

 言い訳だ、自分にそう言い聞かせて現実から目を背けようとしている。目を泳がせるニアの姿を見てラキアはそう思った。でもニアはそこに拘り、縋ろうとしている。まるで、そこに縛られているかのように、そこにしか居場所がないかのように。

 

「そうか…」

 

 それが他でもないお前が、お前自身が選んだ道なら、ニアがそうしたければ、そうすればいいさ─────なんて言うはずがない。

 ラキアは有無を言わさずニアを担ぎ上げる。

 まるで荷物のように肩に担がれて抱えられたニアは、ジタバタと手足を動かして暴れて反発。自分の目に映るラキアの背中を睨み付ける。

 

「おい!」

「暴れるな。だるい」

「何するんだよ!」

「お前がその気なら無理矢理にでも連れて行く。あんな奴らの所に返すわけないだろ」

「は?アンタになんの権利があるって…!おい!放せよ!」

「…」

「無視するな!」

「行くぞ、ホムラ、ビャッコ」

「は、はい!」

「ビャッコ、なんとかしろ!」

「申し訳ありません。お嬢様…」

「おい!」

「さっさとトリゴの街に行くぞ」

「話を聞けー!」

 

 バカみたいに騒ぐとこ似てるな、絆斗(バカ)に。

 

「ああ…バカか」

「誰がバカだ!」

「安心しろ。俺の知ってる限りだが───お前はマシな方のバカだ」

「ムキー!なんだとぉ!」

「バカをバカと言って何が悪いバカ」

「バカって言った方がバカなんだよ!」

「だる。お前の方がバカだ」

「ムキー!バカ!」

「バカみたいに騒ぐなバカ。バカがうつる」

「うつるか!バカ!」

「ハッ…やっぱりバカだな」

「っ〜!なんだとぉ〜!バカにしやがって〜!うにゃあ〜!」

 

 ニアは更に暴れ狂う。

 そんな2人の様子を面々、セイリュウはやれやれ…と、ビャッコは何故か口角をあげ嬉しそうに、ホムラはあわあわと見ていた。

 ついぞ、2人の小賢な争いにホムラが口を挟む。

 

「あの!バカバカ言ったらいけないと思います!2人ともバカに───」

 

「誰がバカだ!」

「ええっ?」

「そうだ。ホムラ、こんなバカと一緒にするな」

「なんだとお〜!許さん!引っ掻いてやる!」

「ホムラよ、戯れあっとるだけじゃ。放っておいて問題ないぞ。あれでラキアも楽しんどるからな」

 

 やれやれ。

 

「だる」

 

 

 

 つづく

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