守護の騎士が至る道   作:匿名希望

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1-2「ドライバーとブレイド」

 

 現れた連中はどこから見ても普通じゃないと感じる奴らだった。1人そうでもない小さい子供が紛れてはいるが、他の奴らは風貌から顔付きに至るまで、今まで出会った人やノポンとはどこか違うと感じさせる独特の雰囲気を纏っていた。

 一番最初に入ってきたのは、獣の耳を生やした銀髪の髪の小柄な少女。黄色の衣服を纏った彼女の隣には、四足で歩く白毛の白虎の姿がある。

 

("ドライバー"に"ブレイド"か)

 

 少女の姿を見たラキアが内心呟き、少女と次に入ってくる人物を交互に目で追い掛ける。

 少女の後ろから現れたのは男。身を包む黒い鎧越しにでもわかる体格のずば抜けた黒髪短髪、不適な笑みを浮かべた大男。そしてこの男もブレイドを連れている。紺色の肌に黒の装飾を身に付けたトカゲのようなブレイドを。

 そして、最後に現れたのは、全身が白で統一された白い仮面に白の長髪、背中に太刀を背負った高身長のこれまた鎧の男。

 

 こいつらがセイリュウの爺さんが言っていたドライバーとブレイドなのか。

 

「初めて見たな…」

 

 セイリュウから聞くに『ドライバー』と『ブレイド』はこのアルスト世界における特別な存在。誰もがなりたいと思ってなれるものではない希少な存在らしい。故に各国ではどちらも重要視されて厳重に管理されているらしい。

 そんな連中が2組も現れ、バーンが20万もの大金を払った。これは深い裏がまだあるなとラキアは悟られぬようにバーンを睨んだ。

 

「依頼内容はある物資の引き上げだ。最近の海流変動で発見された未探海域のかなり深いところに沈んでいる」

 

 ラキアの思惑など考慮に入れず、白い仮面の男は黙々と依頼内容だけを話し始めた。

 

「ベテランの精鋭を派遣すると言ったけど、リベラリタス島嶼群の出身で少数精鋭の人材を希望だったも」

 

(大規模なサルベージ依頼ならバーンの言った通りベテランの腕で確実に引き上げるのがセオリーのはず…)

 

 こいつらも何か企んでるな、バーンとグルになっているのか。それとも知らせていないこいつらの思惑なのか…。

 

「だからお前に白羽の矢が立ったんだも。しっかり役に立って働いて来るんだも」

「わかりました」

 

 釘を刺すように言うバーンにお辞儀で返すラキアだったが、ラキアは自分にずっと向けられているであろう視線を背中に感じていた。

 部屋に入ってから一才表情を変えず、淡々と応じているラキアの様子をずっと見ていた獣の少女が怪訝な顔を浮かべていた。

 

「なあ、シン。こんな無愛想で何考えてるかわからなそうな優男、大丈夫なのか?」

 

 信用に足る人物かどうかと勘繰って仮面の男に問うも、仮面の男が何か言う事はなかった。変わりに黒い鎧の男が受け答えた。

 

「ま、ニアの気持ちもわからんでもない」

 

 そう言った大男は、何かを企んだような目でラキアに一瞥を浴びせる。

 

「だったら……なあ?」

 

 ニヤリと笑った黒髪の大男。

 

「メツ?」

 

 メツ、男の顔を見上げて真意を読み取れずに疑問符を浮かべるニアという少女。彼女を置き去り、ラキアとその大男の間に緊張が走る。

 

「確かめればいいだけだ!」

 

 "メツ"と呼ばれた大男は、言葉の直後、相棒のブレイドからSの字に湾曲した青く輝く武器を逆手持ちに受け取り、何の躊躇もなくラキアに刃を向けて斬り掛かった。

 

(こいつー!)

 

 咄嗟に頭を切り替えたラキアの眼前には、旋棍(せんこん)、刃の付いたトンファー状の武器の刀身が既に迫っていた。

 ニア、小柄な獣の少女は、自分の言葉が発端とはいえ、突然の仲間の行動に驚いた様子だが、"シン"という名の仮面の男の方は一切動揺する様子はなかった。

 刀身が迫った時、ラキアの目は鋭くなった。ラキア・アマルガ、彼はこの世界、アルストには存在しない種族、グラニュート。その動体視力を持ってすれば、この程度の速度の斬撃、見切るに容易い。

 メツの放った逆手横払いの一閃に対し、刀身の刃を咄嗟に拳で下から殴り、剣を真上に弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた旋棍はガキン!と物騒な物音と共に天井に突き刺さった。

 

「なかなかの身のこなしだな。やるじゃねぇか」

 

 ニヤりと余裕ぶっこいているところ、お返しと言わんばかりにラキアは拳を握った。

 好き好んで争い事に首を突っ込むのはだるいし、面倒事にはだるいからなるべくなら関わりたくないのが心情ではあるのだが、喧嘩を売ってきたならば話は別だ!ラキアはメツに対して右ストレートをお見舞いした。

 

「っぶねぇな」

 

 顔面狙いの拳を男は軽々と受け止めた。

 

「どうだか、なぁ!」

「!?」

 

 拳に気を取られてガードが疎かになった胸部に向かって、ラキアは右足で力一杯の前蹴りを打ち込んだ。

 鎧越しと言えど、ラキアの蹴りを腹部に受けたメツは、数歩退けぞる。まさか一撃貰うとは思っていなかったメツは「ほう…」と興味深そうに少しばかり驚いた様子だが、態度にはまだまだ余裕がある。

 けれどそれはラキアも同じである。

 

「ったく…だるいことすんなよ」

「はっ、粋がってる小僧が。やっと本性出しやがったか」

「…」

 

 結果、まんまといっぱい食わさた。相手の思う壺にはまったラキアはメツを睨む。

 

(こいつ…ガタイだけの脳筋かと思えば、動きといい、頭の方もかなり切れるな)

 

 しかも、表や顔に出していなかったラキアの内面にも気付いて鎌かけてきた。メツ…この男、勘の鋭さも大したものだ。

 

(ストマックの連中よりもやっかいかもな…)

 

 はあ…だる。

 

「嘘だろ───"アーツ"もなしにメツに一撃入れた…!?」

「これは驚きました。まさか…」

 

 メツよりもニアと獣のブレイドの方が驚き、ラキアを凝視している。

 

「って!それよりメツ!いきなりなにするんだよ!」

「おいおい、この野郎が信用ならねぇって言い出したのはお前だろうがニア」

「アタシはそんなこと言ってないよ!」

「言わずとも、思っていたろ?で、結果は見ての通りだ。やるじゃねぇか。みたところドライバーじゃなさそうだが…」

 

 品定めするような目付きでラキアを見るメツ。

 

「それよりも…お前本当にリベラリタスの出身か?」

 

 矛先を納めたメツがラキアに問い掛ける。

 

「だったらなんだ?」

「質問しているのはこっちだ。どうなんだ?」

「だる。一応な、文句はあるか?」

「……本当にか?」

「ああ。リベラリタスの村から来た」

「信じられねぇな、お前…「メツ」

 

 仮面の男が追求を止めた。

 

「いい」

「チッ…」

 

 意外だった。もっと問い詰められるかと思えば、仮面の男の横入りでメツは呆気なく引き下がった。

 

「おい。こいつのサルベージャーとしての腕は?」

「アヴァリティアでの歴は半年だも。でも…」

「半年だぁ?ペーペーじゃねぇか!」

 

 話が違うだろうが!とバーンに対して声を荒らげるメツ。

 

「話は最後まで聞くも。うちで雇ったのが半年前、それまではフリーで活動していたも。腕の良いサルベージャーがいる話を耳にして、雇ったも」

 

 バーンの語る通り、雇われるまでは、ラキアはフリーのサルベージャーとして活動し、雲海から釣り上げたものをそこいらの適当な村や町に自らの足で売り込む活動で生計を立てていた。

 

「サルベージの腕と目標ポイントの見極め、勘の良さは確かだも。成果も商会一にあっという間に一気に駆け上がった逸材だも。そちらの要望通り、精鋭には変わりないも。これ以上文句あるも?」

「なるほど…いいぜ。文句はねぇ。俺からしちゃあクソ生意気な野郎だが…いいだろう。おい、テメェの名は?聞いてやるよ」

 

「───ラキア・アマルガ」

 

「聞かねぇ名前だな」

「いい───仕事の腕が確かならば何の問題もない行くぞ、ニア、メツ」

「ああ、期待してるぜ。ラキア…いや、クソ生意気な"小僧"」

 

 メツはすれ違い様にラキアの肩を叩き、何を考えてか、その顔には気味の悪い笑みが浮かんでいた。それに"小僧"──その言葉にやけに奇妙な含みを感じた気がしたラキアだった。

 メツの後を追い、残りのメンバーもこの部屋を後にし、騒がしかった会長室内が静かになった。

 成り行きで依頼を受ける事になってしまった訳だが、あの"メツ"と呼ばれた男と仮面の男の"シン"。あの2人は間違いなく只者じゃない。メツとは小競り合ったが、あれが本気とは思えない。あのシンと呼ばれた仮面の男…あいつも同等かそれ以上か。

 

 それ以上に…。

 

(ムカつくなあの態度…)

 

 メツ、ニヤついて見下した顔、ランゴにそっくりで癪に障るな。思い出しただけで少しムカムカする。

 

「もも、何ともやかましい連中だも」

 

 バーンは嫌気がさしたような口調でそう述べると、大きな耳を手のように扱い、懐からジャラリと金貨の入った大きな袋を机の上に置く。

 

「手付金も。これで必要な準備を整えるといいも。準備が終わったら右舷の桟橋に行けも。そこで俺が手配した素晴らしい船が待っているも」

「わかりました。それでは会長、失礼します」

「任せたも」

 

 連んで何を企んでいるんだか…ラキアは疑念を秘めて、会長室を後にする。

 サルベージャーをリベラリタス島嶼群の出身に限定したに加え、少数精鋭…というのもやっぱり気になる。

 

(とりあえずは準備、か)

 

 バーンからの高額な依頼、ただでさえ信用できない奴からの黒い匂いがプンプンする儲け話。これから何が起こるかわからない。念には念を入れて出来る限りの準備と心構えだけはしっかりしておこう。

 

「武器がいるな」

 

 今までは程度の知れたチンピラ連中か、雲海からのサルベージに引っ付いてきた甲殻類のカムリ・シュリブを殴り飛ばすだけで武器の必要性はあまり感じていなかったが、今回はいつもとは話が違う。何もなければいいが…念の為だ。持っていこう。

 

「セイリュウの爺さんからアーツってのを習っておいて正解だったな。これから役に立つかも知れん」

 

 武器などを取り扱っていたノポン族───デンデンの店がゴルトムントの一階にある。まずはそこへ…。

 

「ラキアン?」

 

 思考をして歩いていると、懐からプリンテゴチゾウが顔を覗かせた。

 ラキアから見たその顔は、今まさに厄介事に巻き込まれ、荒事を懸念している自分の事を心配しているように思えて見えた。

 

「大丈夫だ。心配するな。いざって時の"切り札"もあるからな」

 

 人間、ブレイド相手にもなるべくなら使いたくない───そう思いながら、ラキアは足を止め、懐からヴラスタムギアを取り出して眺める。

 手に取ったヴラスタムギアは、ひび割れて破損していた。この世界に流れ着いた時の衝撃か、一部が破損してしまっている。

 

(無理矢理に変身はできるが───それも3…いや1.2回が限界か…)

 

 仮面ライダーの力をあまり多様は出来ないのが現実だ。現状、この世界で破損したベルトを修復する術がないのだ。

 

「セイリュウの爺さんに言うだけ言ってから行くか…」

 

 後から何かいわれてもだるい。

 

 

 

 つづく

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