守護の騎士が至る道   作:匿名希望

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少し書き方を変えました。



1-7「怒りバーニングして」

 

「終わったか。手間かけさせやがって」

 

 事が済むとメツは乱雑にニアを離す。

 

「ラキア!おい!」

 

 沈むラキアにニアが一目散に駆け寄る。

 

「ラキア…」

 

 ラキアはもう…。

 

「お嬢様…」

「くっ…!」

 

 ニアに寄り添うビャッコの表情にも悲しさが現れている。

 ニアの顔に怒りが滲み、仲間を睨む。

 

「メツ!シン!なんでラキアを殺したんだよ!何故だ!」

 

 ニアは怒りのまま怒号を浴びせた。

 

「導かれた──────」

「え?」

「あの男、何かの意思によって導かれていた。が、どれ程の男かと思えば、あの程度だった」

「やっぱり、お前には何か見えてたんだな」

「ああ」

「だが、わからねぇな。何故お前にそれが見えた?」

「それは俺にもわからない。俺の目に見えたのは、幼い影だけだった。だが───もう終わった事だ」

「他でもないお前がそう言うならいいさ」

 

 2人の話にニアは困惑して狼狽える。

 

「意味わからない…理由になってない!」

 

 尚も声を荒らげ続けるニア。

 

「何喚いてんだよ。やっぱりガキだな。1人死んだ程度でピーピー言ってんじゃねぇぞ」

 

 冷徹にニアに告げるメツ。

 

「あいつはお前に随分と肩入れしてた様子だったからな。ああすれば動きが止まると思ったぜ。にしても、お人好しな野郎だったな」

「なんでだよ…メツ、おい!」

「キーキーうるせぇぞニア!シン、さっさと運び出すぞ」

「ああ」

「ザンテツ、手伝え」

「はいよ」

 

 それ以上は聞く耳を持たず、メツはザンテツと共に〈天の聖杯〉が眠るカプセルを担ぎ、何事もなかったかのように場を去る。

 

「…」

 

 ニアはラキアの亡骸に目を向ける。悲しみに満ちた眼差しで、もう動かないラキアを見つめる。

 

「ごめん…」

 

 冷たくなったラキアに小声で告げ、重い足取りでメツ達を追うニア。

 主人の心境を察しながらも何も言えぬビャッコ。

 暗雲が立ち込める外では雨が降っていた。まるでニアのぐちゃぐちゃになった心を表現しているかのような大粒の雨が。

 肩を落とし、誰とも話す気にもなれず、俯いてメツの後ろを歩いていると、メツは。

 

「おい、ニア。ここにいる奴ら全員殺せ」

 

 後ろを向き、突然ニアに命令を下した。

 

「は?」

 

 ニアは、言葉の意味を理解できなかった。

 

「なんでだよ。この人達は関係ないじゃん…」

「俺達が天の聖杯を手に入れたって話を広められたら手間だからな。ここで口封じしておくのがベストなんだよ」

「で、できないよ。そんな…」

 

 動揺から目が泳ぐニア。

 

「それにこいつらの命の代金はバーンに支払ってる。何も問題ねぇからさっさと殺せ」

「この人達関係ないじゃん…」

「おかしな事を言う。お前、自分が何のためにここにいるか忘れたのか?」

「で、でもさ…」

 

 尚も躊躇するニアに業を煮やしたメツは。

 

「ああもう…てめぇは面倒くせぇな。もういい。俺が殺すわ。ガキは黙って見てろ」

 

 メツは天の聖杯が眠るカプセルをザンテツに渡す。

 

「おい、頼んだぜ」

「はいよ。メツ」

 

 メツは自らの手でこの場の全員を亡き者にし、目撃者を消そうと 旋棍(せんこん)を握る。

 

「さてと…」

 

 ()るか────とメツは、甲板の手すりに寄り掛かって喋りに興じる人間とノポンのサルベージャーに目を付けた。

 彼らは、自分らが会長に命を売られ、今まさにその命を奪われる直前であるとは露ほどにも思っていない。

 メツが殺意を込めた旋棍の刃を振おうとした次の瞬間────この場の誰も、それはメツやシンにも想定していなかった事が起こった。

 ザンテツが担ぐ天の聖杯が収められたカプセルが突如燃え盛る炎を噴き上げ、炎上した。

 

「なに!?」

 

 メツは驚いて踵を返す。

 

「ザンテツ、放り投げろ!それはただの炎じゃねぇ!」

「ちっ!」

 

 ザンテツが急ぎカプセルを投げ捨てる。

 

 ガシャン!────と大きな物音を立てて甲板に放り捨てられたカプセルは、一瞬のうちに炎に包まれた。

 そして長い眠りから解き放たれた焔の炎は、天へと向かって渦を巻く炎の柱へ変貌した。

 炎は古代船の頂上へ到達し、次第にその正体を現し、姿を白日の下に晒した。

 体を走る翠玉色のエーテルライン、胸に輝く翠玉色のコアクリスタル。

 赤き焔に包まれた最強のブレイド。

 

 この瞬間───〈天の聖杯〉が目覚めた。

 

 ホムラが頂上に座した。

 その姿を見て、メツは驚いた。

 

(ドライバーもなしに目覚めただと!?そんなバカな…!)

 

 頂上から自分らを見下ろす目覚めたばかりの天の聖杯(ホムラ)。その姿を見たメツは悟った。

 

(胸のコアクリスタルの形……ッ!まさか!)

 

 その直後、船が揺れた。

 甲板の下から炎が天へと昇った。

 

 その炎の中から現れたのはなんと───!

 

「さっきはよくもやってくれたな」

 

 つい先ほど、殺したはずの男だった。

 しかも手には聖杯の剣が握られている。

 

「ラキア!?」

 

 ニアはビャッコと目を見開き、口を開けて驚いた。

 

「…」

 

 無言のシンは、背中の長刀に手を伸ばす。

 

「てめぇ…!」

 

 メツの考えは正しかった。

 

(ラキア・アマルガ…!あのクソ野郎、死から蘇りやがった。内側が欠けたコアクリスタル…。天の聖杯と命を共有したな。半分を貰い受けやがった!)

 

 メツは内心、なんであいつ如きが…!と思いかけたが、早々に始末しなければと決断させるに足る男だった事を思い返した。

 

(技量が確かなあのクソ野郎が天の聖杯のドライバーになった。これは面倒だな。その辺のガキが同調するのとは話が違う。…だがまあ、これはこれで面白いってか)

 

 笑うメツはシンの言葉を思い返した。

 

(酔狂にやろうじゃねぇか。シンの言っていた"導かれた"ってのも気になるしな)

 

 そうだろ?シンよ。

 

(興味津々な(ツラ)しやがって。まあ()()()()()()()()()()()()()()()、わからんでもない。けど"今"じゃねぇ)

 

 メツはシンの心境を悟りながらも止める。

 

「待てシン。今はまだお前の出る幕じゃねぇから手を離しな。俺が行く」

 

 メツの言葉にシンは長刀から手を離す。

 

「どの程度なのかを引っ込んで観察してな」

「そうさせて貰う。油断はするな」

「はいよっと」

 

 シンが後ろへと引き下がり、メツはラキアと対峙し、怒れる眼に殺気で応じる。

 

「おいクソ野郎。そういう事だから俺が相手をしてやる。あいつの力をホイホイ使わせるわけにはいかないんでな。かかってきな」

 

 メツはラキアを挑発した。

 

「まさか同じ日に二度も同じ奴を殺すなんて日があるとはな」

「バカじゃないんでな、同じ轍を踏む気はない」

「いいや、バカだな。一度ボコられてあっけなく死んだのをもう忘れちまったか?それともなんだ、天の聖杯(あいつ)と同調して気でも大きくなったか?」

 

 当のホムラがラキアの隣へ降りてくる。

 

「お前らこそバーンと組んで何を企んでる?こそこそ裏で動いて、碌でもない事を繰り返してるようだな。ホムラを回収したら全員始末する算段で監視まで付けるとはご苦労な事だな」

 

 ラキアは物陰からこちらの様子を窺っているプニンを睨む。

 メツも小さな影に横目を向けると、両者から凄まれたプニンは物陰で震え、大慌てで尻尾巻いてウズシオの中へと逃げ帰った。

 

「ンなモン、俺達には関係ねぇな。しかしお前、そこまで把握してやがったか。勘の良い野郎だぜ。だが、ここでお前らを始末して天の聖杯(そいつ)を回収すれば全部丸く収まる。結果、予定通りって寸法だ」

「やれるものならやってみろ。全部がお前らの予定通りになると思うなよ」

 

 聖杯の剣の切先がメツに向く。

 

(メツの言い分、なるほど、読めた。メツはバーンに天の聖杯の事は伝えていない。それならプニンを監視に寄越したのはあいつの独断。取引の外で勝手に動いたってところか。ならこいつらとは表面上、一時的に取引をしただけで、全面的には組んではいない。バーンの目的は…金だろうな。こいつらの目的は…)

 

 いや、今はいい。

 それよりも大事な事がある。

 

「睨み付けやがって。そんなに殺されたのが気に食わないか?ああ?」

「だる…。やられっぱなしなのは性分じゃないが…今は二の次だ。それよりも…」

 

 一瞬、メツの近くのニアへ視線を向けるが、すぐにメツの方へと視線を向け直す。

 

「お前がニアにした事が気に食わない」

 

 ラキアはメツの行為に強い怒りを覚え、堪え難いほどに腹を立てていた。そこにニアがどう思っているかは関係がなかった。

 

「なるほどな、お人好しな野郎だぜ。アレを"卑怯"とでも言うつもりだったか?」

「…」

「ハッ!今までお前のような正義(ヅラ)して突っかかってきたバカな野郎を何人も始末してきたぜ。どいつもこいつも覚えちゃいないがな」

 

 口角を上げて笑って言うメツ。

 その様子にラキアの中で苦い記憶が蘇る。

 

 

 ────使えないバイトなんかどれだけ始末したと思ってんの?いちいち覚えてないわよ!

 

 

 グロッタとメツの姿が一瞬重なった。

 

「全くよぉ、お人好し(おまえら)ってのはどいつもこいつも…力の差もわからず無駄に────── 「黙れ」…あ?」

 

「お前はもう黙れ」

 

 ラキアの怒りのボルテージが上がる。

 

「黙らせてみろよ、クソ野郎」

 

 ガタンと肩から落ちた聖杯の刃が今踏み締めている甲板をグツグツと溶かす。

 

「許さん…望み通りにしてやる」

 

 髪をかき上げたラキアがメツに向かって歩み始めた。

 怒りを一切隠さず、限りなく冷たい目で、メツを睨むラキア。対するメツは、それを嘲笑うかの様に依然口角を上げていた。

 

「ザンテツ、貸せ」

「いいのか?メツ」

「黙って貸せ、目付き悪いのが来るぞ」

「はいよ」

 

 メツはザンテツから旋棍を受け取り、ラキアと同様に歩き始めた。

 

「ただのサルベージャーじゃねぇとは思ってたが、まさかな…」

 

 一歩、また一歩と距離を縮める両者。

 

「…」

「…」

 

 緊張が場に静寂を作り、弾く雨音と甲板を歩く音だけがやけに大きく聞こえる。

 この間、誰も身を動かす事ができなかった。

 ホムラもニアもビャッコも。

 訳もわからず、事の行く末を見守る事しかできない商会のサルベージャー達も。

 シンすらも動こうとはしなかった。

 

 混じり合う敵意と殺気。

 ビャッコは思わず息を呑んだ。

 

 ラキアが右手で引き摺る聖杯の剣の切先が甲板に焼けた一直線の跡を残していく。

 メツは肩をコキコキと鳴らす。

 次第に両者の歩みが早くなっていく。

 

 ゴクリ────今度はニアが息を呑んだ。

 

 それが合図となり、遂にラキアが駆け出した。

 今まで以上に口角を上げたメツも駆けた。

 

「「ッ!」」

 

 次の瞬間─────!

 

 振りかぶられた両者の武器、聖杯の剣と旋棍が激しい音を立ててぶつかった。

 

「ふてぶてしいクソ野郎だ」

「お前は心底気に入らない野郎だな」

 

 衝突する焔の刃と青の刃。

 鍔迫り合った衝撃が火花となって雨の中に散り咲く。

 

 

 

 

 そして─────雨は止んだ。

 

 

 

 

 つづく




今回の話は台詞を書き直す可能性大です。
ラキアとメツの会話に大苦戦しました。下書きの段階から何度も書き直しましたが、まだ納得いってません。
試行錯誤を重ねていたらいつ更新できるかわからなかったので、今回は思い切って更新しました。
見苦しかったら申し訳ないです。
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