守護の騎士が至る道   作:匿名希望

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1-8「変身 アラモード」

 

「ふてぶてしいクソ野郎だ」

「お前は心底気に入らない野郎だな」

「言ってくれんじゃねぇかよ。スカした(ツラ)、叩き斬ってやるよ!」

 

 メツはラキアの首を刈り取ろうと鋭い一撃を放つ。

 

「そのくどい(ツラ)、ぶん殴ってやる」

 

 売り言葉に買い言葉、ラキアはメツの一撃を受け流し、カウンターで聖杯の剣を振るう。

 一進一退、互いに譲らぬ攻防が繰り広げられる。

 

(こいつの戦い方、面倒だな。瞬時にこっちの粗を見つけてきやがる)

 

 ラキアのファイトスタイルは型のない我流。攻撃は受け流しながら戦いながらも、洗練された身のこなし。加えて一撃一撃の精度もかなり高い。

 そして、新たに天の聖杯のドライバーとなったラキアからメツが感じるただならない手応え。

 

(最初に手を合わせた時からまさかとは思っていたが…このクソ野郎。間違いなく修羅場を潜った猛者だな)

 

 カウンター狙いの一撃に迷いがない。

 

(聖杯の剣だって使い慣れてねぇだろうに。もう長剣の特性を把握してやがる。丸腰の時と訳が違げぇ!)

 

 ここ数百年の間に殺してきた生温い連中とは格段にレベルが違う。

 高い技量を前にメツもギアを上げる。

 

「いいぜ、久しぶりに本気で激ってきたぜ。ラキア・アマルガァァァァ!」

 

 強烈な一振りがメツから放たれた。

 受け流せない程に強く重い一撃に、ラキアは防御せざるを得なくなくなった。

 聖杯の剣で防御するも、防御した聖杯の剣を構える腕が衝撃で痺れ、顔を歪めるラキア。

 

(ッ…力が増した。受け流すのも限界がある。この黒ゴリラ…!)

 

 昂って力が増したのか、だるいな。

 

「どうした!?そんなもんかよ!ええ!?」

 

 次々と繰り出されるメツの猛攻を前にして、アキアは徐々に押され始めてしまう。

 

「ラキア!」

 

 見兼ねたホムラがラキアの加勢にと走り出すが、その前にメツのブレイドのザンテツが立ち塞がってホムラの行く手を阻んだ。

 

「こいよ、天の聖杯!」

「…!」

 

 ザンテツもホムラへと襲いかかる。

 ホムラはエーテルを使った障壁でザンテツの格闘を防ぎ、耐え凌ぐ。

 火花散る戦いの最中、ニアが叫ぶ。

 

「やめなよメツ!なんでラキアを殺す必要があるのさ!」

 

 戦いを止めようと声を上げるも、止まらない。止まる訳がなかった。

 いつまでも踏み切れずに足踏みをしているニアの半端さにメツのイライラが増す。

 

「いつまでもふざけた戯言抜かしてんじゃねぇぞニア!この野郎はとっくに天の聖杯のドライバーだ!」

「天の聖杯のドライバー…?ラキアが!?」

「お前も自分のすべき事をやりやがれ!何の為にここにいる!?自分の事わかってんのか!?」

「っ…で、でも…!」

 

 わかっている…それでも、捨てきれない心に戸惑い、苦悩するニアは、眼前で起こっている戦いを前にしてもまだ迷いを捨てきれずにいた。

 

「ニア!お前を利用したこんな奴の言葉に耳を貸すな!」

 

 戦闘の最中、ラキアは説得を試みる。

 

「はっ、利用ねぇ。言えた口か!」

「なんだと?」

「それがお前ら人間の所業だと言ってんだよ!」

「そうかよ!」

 

 ラキアは足を引っ掛けてメツを転かす。

 メツが倒れて体勢を崩した瞬間、ラキアは聖杯の剣を翻した。

 倒れたメツ目掛けて聖杯の剣の側面で攻撃をするも、メツは身を捩って避け、起き上がった。

 直後、メツは不快感で顔を顰めた。

 

「なぜ斬らなかった。ナメてんのか!」

「だるい。お前にわざわざ理由を言う気はない。自分で考えろ」

「自分が殺されても殺す勇気はねぇってか?お人好し!」

 

 声を荒らげたメツは旋棍を頭上へと投げた。

 投げた先にはザンテツの姿が。

 

「くらえっ!」

 

 メツから武器を受け取ったザンテツは、空中からX字の飛ぶ斬撃をラキアへと放った。

 ラキアは防御の構えを取るが、あわやの瞬間にホムラが割って入り、ザンテツの飛ぶ斬撃を防いだ。

 障壁と斬撃がぶつかり合った結果、大きな衝撃波が巻き起こり、肌を刺激する強風が吹き荒れる。

 

「ホムラ、助かった」

「どういたしまして。次、きます!」

 

 衝撃波を潜ったメツとザンテツが迫る。

 突然起こった戦い、アヴァリティアのサルベージャー達は呆気に取られていた。

 

「何やってんだ!お前らさっさと逃げろ!」

 

 言葉を失い、動かない連中にラキアが一喝すると、ハッと我に返った仲間達は大急ぎでウズシオの中へと走っていく。

 しかし、それをさせぬとメツが狙う。

 

「逃すわけねぇだろ!」

「メツ、受け取れ!」

 

 ザンテツの武器の所有をスイッチし、刀身にエーテルエネルギーを収束させた。

 

「誰も逃がさねぇ。ここで死んでいけ!」

 

 船の上部へと飛び上がったメツは、剣先を研ぎ澄ませて構えた。ザンテツが放った飛ぶ斬撃に酷似した一撃を遠距離から放つ気だ。その斜線上にあるのはウズシオ。

 是が非でもこの場で始末する腹づもりだ。

 

「お前の相手はこっちだ!」

 

 聖杯の剣を振るったラキアも炎の斬撃を飛ばし、メツの妨害をして仲間を守った。

 ラキアがメツの相手をしている間にウズシオは発進、ラキアらを残して古代船から全速で離れていく。

 取り逃したとメツは舌を打つ。

 その隙にラキアとホムラは。

 

「ラキア、合わせていきます!」

「…俺もか?」

「はい!」

「……わかった」

 

 ラキアは若干戸惑いながらもホムラの考えに従う事に。

 

「先導します!力を込めてください!」

 

 2人で聖杯の剣を握り空中へと飛ぶ。

 舞い上がった2人は、聖杯の剣を天へと掲げ、大火力の一閃をメツに振り下ろす。

 

「バーニングソードォ!」

「ソード…」

 

 古代船上部に立つメツに攻撃が当たり、辺りが爆発に包まれた。

 最中、ホムラのテンションの高さに呆気に取られたラキアは、技の名前をいちいち叫ぶ必要があるのか?とつい思ってしまった。

 そういえば…モンスターと戦った時、ニア達も…。

 ……戦いの最中にこんな事考えている場合じゃない。

 

 ─────やるじゃねぇか。

 

 炎の中、神経に障る男の声がした。

 爆風が晴れると、無傷のメツの背後、メツと共に武器を逆手に構え、攻撃を防ぐザンテツの姿が。

 メツは攻撃が当たる直前にザンテツと武器を構え、防御に全エネルギーを集中してラキアとホムラの攻撃を無傷で耐え凌いだのだ。

 ラキア自身、これで終わりだとは思ってはいなかったが、まさか無傷で防ぐとは。これもブレイドの力を引き出したドライバーの力かと、ラキアは経験の差を痛感した。

 

「シンの言う通り、導かれたってのもこれなら頷ける」

 

 それに。

 

「よくよく見てみりゃ()()()()()()()()()()

「似てる?何を言ってる」

「教えねぇよ!」

 

 メツは武器を持つ手とは逆の手、左手に紫のエネルギーを纏わせた。

 明らかにやばいと感覚で悟ったラキアだったが、空中では思う様に身動きが取れない。

 空中が不慣れなラキアへメツがその手を振るうが、ホムラは咄嗟にラキアの身を引き、メツの攻撃から間一髪でラキアの身を守った。

 ギリギリ引き下がって甲板に降りたラキアとホムラ。そこへ、透かさずメツが攻撃を仕掛けてくる。

 攻撃を仕掛けるタイミングを合わせたザンテツも加勢に加わり、戦いはより苛烈さを増す。

 互いの武器同士が弾き合い、ラキアとメツの間に距離が空くと、メツが口を開く。

 

「中々のモンだぜ。初見で天の聖杯をそこまで扱うとはな。もしかするとアデルに匹敵するかもな」

「使う…?」

 

 天の聖杯、ホムラを使う…か。

 

「はあ〜、ほんとだるいな。お前は」

 

 ラキアは聖杯の剣を構え直す。

 

(いっそこいつらをヒトプレスにでもして…)

 

 それでこの場を…とラキアは考えるが。

 

(いや駄目だ。ニアなら兎も角、舌の速度も早くはない。メツには対応される。それに…シンとかいう仮面の奴の俺を殺った速度、あいつにも当たるとは思えない)

 

 使ったとしても、斬られるのがオチか。

 

(シンのあの尋常じゃない速度…)

 

 アルストの人間は、幸果や絆斗が住む人間界の人間達よりも多少身体能力が高い。この世界の環境故にではあるのだろうが、それでもシンのあの速度は並外れているというレベルを逸脱していた。

 

(まさか…)

 

 思い返したラキアの中に一つの疑惑が生まれた。しかし、その疑惑を確固たる確信に変えるには、いまひとつ確証が足りなかった。

 

「戦闘中に考え事か!余裕あんじゃねぇかよ!」

 

 しまった、隙を狙われた。

 避けられないと覚悟したラキアはメツの斬撃を聖杯の剣の防御で受けた。

 しかし威力を殺しきれず、ノックバックして膝を突く。

 

「調子に乗るなよ。クソ野郎!」

 

 メツの左手がまた紫に怪しく光る。

 

「特別だ。味わえ」

 

 メツはニヤリと笑うと、手を前に突き出して、強力な波動が放出した。

 

「ラキア!」

 

 波動の衝撃がラキアに迫る危機的状況、ザンテツ猛攻を掻い潜りながらホムラが声を荒げる。

 しかし、ラキアは諦めていない。

 ラキアにはまだ策がある。

 

(仕方ない)

 

 あまり使いたくはなかったが、本来(グラニュート)の力を使って防ぐしか。

 

 そう決めたその時────ニアが遂に。

 

「ビャッコ!」

「承知!」

 

 ラキアのピンチを前に咄嗟に動いた。

 ニアの(めい)でビャッコは衝撃波へと咆哮を浴びせ、メツの攻撃を相殺して掻き消した。

 ニアはビャッコに跨りラキアの側へ。

 

「ニア…!何しやがる!頭イカれてんのかお前は!」

「イカれてんのはそっちだろ!」

「自分の側がどっちかわかってんのか!」

「わかってるさ、けど…!」

「煮え切らねぇな!っああっ…!面倒くせえぞニア!」

 

 メツの苛立ちが頂点に達した。

 

「ニア、ビャッコ、助かった」

「お気になさらず。お嬢様の指示ですので」

「そうか。なら、ホムラの援護を頼む」

「ラキアは…まさかメツを1人で!?」

「ああ。お前の分も一発かましてやる」

 

 立ち上がったラキアはニアの頭をわしゃわしゃと撫で一歩前に出る。

 戦いの中、度重なる攻撃の応酬でいつの間にかヘルメットがひしゃげてしまっていた。残念だが、これではもう使い物にはならない。

 ラキアはヘルメットを甲板へ投げ捨てた。

 

(次に会った時、コルレルの婆さんに謝らないとな…)

 

 上着も脱ぎ捨て、軽装になったラキアはアレを使う決断をし、守る"覚悟"を決めた。

 

「頼む。また力を貸してくれ」

 

 ラキアの願いに応え、隠れ潜んでいたプリンテゴチゾウがラキアの手の中へ。

 

「ラキアン!いくぞー!」

 

 どこか気の抜けた様な声にラキアは笑みを溢す。

 まるでデンテだな、と仲間への思いが募る。

 ラキアは、聖杯の剣を甲板に突き立てて、自らの力を手に取る。

 一部がひび割れたそれは、あまり長い間は持たないであろう。

 だからこそ、保ってくれ…と祈りながら。

 

 "ヴラスタムギア"を。

 

(デバイス)…?」

「おい待て、なんでお前が持ってやがる」

 

 ラキアの手の中にある物を見たホムラとメツ。2人は酷似した物を知っていた。だからこそギアを見た2人は疑問を覚えた。

 

「最短で勝負を決めてやる」

 

『ヴラスタムギア』

 

 ベルトを装着、相棒と共に力を解き放つ。

 

『デザート』『オン』

『ドロップミー』『ドロップミー』

 

『デッシュアップ』

 

『メイキング』『メイキング』

 

 足元に出現した取手を引き上げると、周囲に生クリームやフルーツが盛り付けられた三段重ねのケーキスタンドが現れた。

 

『スイーツ』『メイキング』

『メイキング』『メイキング』

 

 この場には似つかわしくない音声、スタンドに並べられた色とりどりのフルーツや白い生クリーム。

 この場の全員が今目撃している光景を前に「えっ?」と目を丸くした。

 何を見せられるかと思っていたメツも流石にこれは予想外だと…意表をつかれて硬直。

 

『スイーツ』『メイキング』

 

 前髪を掻き上げ、いよいよ言う。

 

 

「変身」

 

 

 "変身"───それは覚悟の言葉。

 

『complete!』

 

 カスタードプディングをフルーツと美しい純白のクリームで盛り付け、ラキアは銀色の騎士の装甲に身に纏った。

 

『アラモード・モード』

『ボナペティ』

 

 ラキア・アマルガはぷるんと変身した。

 

 

 守るための騎士──────

 

 

 "仮面ライダー"へと。

 

 

 

 

 つづく

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