「滝沢キック!」
時刻は午後7時半、一夏は授業後勝手にアリーナでIS無しに特訓をしていた。毎日特訓はするのだが、本日はいつもより気合がこもっており、言うなれば熱気と汗の匂いが学校中に漂い出すくらいである。では何故こんなにも気合が入っているかというと、それは本日の3時間目の出来事だった。
「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」
「はいっ、拳と足と折れない心ですね!」
「違うわ馬鹿者!いや確かにそれも大切だが各種装備と言っているだろうが!ったたた……」
「大丈夫ですか織斑先生⁉︎」
「お前のせいだ織斑ぁ‼︎」
一、二限目とは違って千冬が教壇に立って授業を行おうとしている。しかし最初の一夏の発言のせいで開始1分もしない内に凛々しい千冬の姿は一変し腹を抑える格好となってしまった。
「いたた…ゴホン、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
痛みを紛らわすように咳払いをしてから続ける千冬。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦ではなく……って寝るな織斑っ!」
「小難しい話はさっぱりだぜ先生っ!」
「〜〜〜‼︎ええい、1年間変更が出来ない戦うクラス委員という事だ、わかったか‼︎」
「はいっ‼︎」
「小憎たらしいほどいい返事だな……では再度説明するぞ」
一夏と漫才のようなやりとりをした後、そう言って全員に説明を始める。
「という事だ。自薦推薦は問わない、誰かいないか?」
「はいっ、わたしは織斑くんがいいと思います!」
「なにっ⁉︎」
「私もそれに賛成します!」
「ちょ、ちょっと!」
「ふむ、では候補者は織斑一夏。他には誰もいないのか?」
少々にやけながらそう言う千冬。一夏が代表者になれば責任感が湧き熱血な言動も無くなり更には自分への胃のダメージも無くなるとでも思ったのだろうか。きっとこの千冬は全力学園野球部伝説のキャプテン「不屈闘志」の事を忘れているかもしくは一夏が闘志の影響を受けていないとでも思っていたのだろうか。
「お、俺がクラス委員?ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
「待って下さい、納得がいきませんわ!」
一夏が狼狽えていると先ほど一夏に突っかかってきて超理論であしらわれたセシリア・オルコットが机をバン!と叩いて立ち上がる。
「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか⁉︎」
「ああ、その通r……え?」
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからと言って極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
「箒、俺ってそんなに猿っぽい面してるのか?」
「いや、普通の面だと思うぞ」
「だよな、良かったぜ」
一夏が箒に自分が猿面なのか確認を取っている内にセシリアのエンジンがあったまって来たのか更に加速する。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体、わたくしにとってはとても屈辱的d」
「おい、それとこれとは関係ないだろっ‼︎」
ついに一夏がキレたのか立ち上がって叫び、その叫びにセシリアが怯んだ瞬間続ける。
「俺はさっき『それはそれ、これはこれ』って言ったよな!これもそれと同じじゃないか、クラス代表と日本が極東にある事と何の関係があるんだ!忘れっぽいならもう一度言ってやる、『それはそれ、これはこれ』だっ‼︎」
……訂正、別にキレた訳ではなくセシリアがさっき言った事を忘れていた事に驚いただけだったようだ。しかし余計な事を言ったのがマズかったのか、セシリアは顔を真っ赤にしてプルプルと震えだす。
「あっ、あっ、あなたねえ!わたくしを侮辱しますの⁉︎」
「えっ、してないけどして欲しいの⁉︎」
「そんな訳ないでしょう⁉︎どこまでわたくしを侮辱すれば気が済むのですかあなたは⁉︎もう頭にきました、決闘ですわ‼︎」
ざわ、っと周囲がざわめく。しかし一夏は不敵に笑い、強気な声で
「いいぜ、口論するよりもそっちの方がわかりやすいぜ」
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い、いえ、奴隷にしますわよ」
「な、俺はそんな風に見られていたのか⁉︎ショックだぜ……言っておくがな、セシリア。俺は真剣勝負で手を抜くような事は一切ねえ、不屈にいちゃんと昇にいちゃんに誓ってだ」
「だ、誰ですのその人達…まあいいですわ、イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとないいい機会ですわ!」
そう火花を散らしながら言うのもつかの間、一夏がふと気付いたような声をあげる。
「ハンデはどんなもんつけるんだ?」
「あら、早速お願いかしら」
「いや、俺がどんなもんハンデつければいいのかなーと」
一夏がそう言った瞬間、クラスからドッと爆笑が起きた。
「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?イチローとかニンジャは除くけどね?」
「織斑くんは、それは確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ」
そうだった、しまった。今、男は圧倒的に弱い(イチローとニンジャと水木一郎アニキは除く)。そんな事も忘れていたのか俺は、と頭を抱えてうずくまり「あぁ〜〜〜」と唸ってしまう。
「織斑くん、今からでも遅くないよ、セシリアに言って決闘を取りやめてもらお?織斑くんじゃ無理だよ、勝てっこないよ」
1人の女子(確か名前は村井さん)が言う。きっと親切心で言ったのだろう。しかし一夏がそれを聞いた瞬間、ピクっと動き唸るのをやめてゆらりと立ち上がった。
「村井さん、君は俺がセシリアに勝つのは無理と言ったね?」
「う、うん、勝てっこないって言ったよ」
「それは違うっ!」
先ほどまでの弱気でうずくまって唸っていた情けない姿とは一変、瞳に熱い炎を宿し拳を握った漢がそこにはいた。
「確かに、現段階ではとてつもなく厳しいかもしれない。俺は確かにISでの真っ当な戦闘経験は0だ。だがしかし、まだ時間はある‼︎そして俺には、ずっと鍛えてきたこの腕!この足‼︎そしてこの身体があるっ‼︎つまりだ‼︎」
「つ、つまり?」
一夏の勢いに飲まれ、みんなが一夏に聞き返している。あのセシリアまでもが、だ。因みに千冬はこの光景を見てデジャブを感じたのか「あ、これ一夏がクラス代表になっても胃が休まらないな」と確信し清々しい表情で諦めており、真耶はそんな千冬を揺さぶってこの状況をなんとかしようとしていた。そんなこんなでみんなが各々の反応をしている中、一夏が叫ぶ。
「つまり、俺にはまだ全て残っている!まだ見ぬ俺が使うISも!そして今まで一緒に戦ってきたこの身体もっ‼︎」
「で、ですが操縦技術などはわたくしの方が上、あなたが勝てる可能性なんてこれっぽっちも無いのですわよ?」
「ふっふっふ………たしかに、普通だったらそうかもしれない。だが聞こうセシリア、お前は必殺技を持っているのか?」
「必殺技?そんな幼稚なもの、持っているわけないでしょう?」
「必殺技を幼稚?もうこれで勝敗は確定したぜ、セシリア!この勝負、俺の勝ちだ!」
「な、何を根拠にそんな事を⁉︎」
まだ戦ってもいない、その上ズブの素人に勝利宣言までされて腸が煮えくりかえっているのか語気を強めて聞く。
「答えなさい!何故あなたはそんな事がわかるのですか⁉︎つまらない理由だったらこの場で倒して差し上げますわ‼︎」
「つまらなくなんてないさ。ただ、必殺技があるのと無いのでは雲泥の差が出来る、確かにセシリアは強いだろう、言うなれば100本の木刀だ。対して俺はズブの素人、しかし‼︎俺には必殺技がある‼︎言うなれば一振りの日本刀だ‼︎君の100本の木刀が命中しようが俺は死なないが、俺の一振りの日本刀が命中すれば君は死んでしまう‼︎つまりそういうことさ!」
「まるで意味がわかりませんわ⁉︎」
「わからない?なら決闘当日、どういう事か見せてやろうじゃないか‼︎」
「あー、もう話は纏まったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意ををしておくように。それでは授業を始める」
「押忍!」
諦観から復活した千冬が仲裁し授業を開始する。一夏は割と真剣に、新必殺技を考えながら授業を受け、放課後となりそして現在に至る。
「今日はこれくらいであがっとくか……まだルームメイトに挨拶もしてないもんな、俺」
そう言うとタオルで汗を拭き、自分の部屋を目指してランニングを始める。その顔は、弱気など一切無く勝ちに行く漢の顔であった。
正直後2話くらいかかるんじゃないですかね一夏がIS白式(仮)を装着するまで。因みに感想で色々言われてましたがこの一夏はシャイニングフィンガー「は」使いません、シャイニングフィンガー「は」。それでは皆さま次の話までご機嫌よう。