xxx回目
暁美ほむらは、ワルプルギスの夜との戦いに臨もうとしていた。
いつも戦いの前の時間は彼女にとって苦痛ではあるが今回はこれまでとは違った感情が彼女の中にはあった。
恐怖
これまではたとえ戦いに負けてもただ自分が痛い思いをするだけだった。
しかし、今回は違う。
これまではまどかだけでなく可能な限り、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子も救おうとしてきた。
口ではまどかを悲しませないためと言っているが実際は彼女は知人が死ぬことなんて望んではいない。
でも、今回はそれらを捨てた
ワルプルギスの夜を倒す、それだけを目的にこの一か月を過ごしてきた。
ワルプルギスの夜の発生地域の地形から最適な攻撃ポイントを考えこれまでにないほどの準備をしてきた。
これで倒せなければもう一生倒せないのではと思うほど。
それゆえに彼女は恐怖している、もし、今回倒せなかったら…
本気でやるということは同時に自分の能力の限界を知ることになる、そして、その能力の限界が自分の目標に達していないのであればその人は嫌でも理解しなければいけない。
自分には不可能であるということを、
もちろん不可能であることから目を背けることはできる、しかし、彼女はずっと目を背けてきた、私には無理かもしれない、そう思いながらも戦い続け最後にたどり着いた答えがこの単純な武力によるワルプルギスの夜の攻略なのである。
彼女は、自分の限界を知ることでわかってしまうまどかを救えないという現実がたまらなく怖いのである。
「来たわね」
恐怖と緊張が混ざった震えた声で彼女はそう言った。
ワルプルギスの夜をダメージを与えて倒すのは難しいと判断した彼女は、川に沈め時間を稼ぎ、魔力切れによる消失を狙うことにした。
そのため、彼女は、まずミサイルでワルプルギスの夜を川の上まで誘導した。
そして橋を爆発させワルプルギスの夜を川に沈め、上からこれまで準備してきた大量のミサイルを発射する。
その後はただ待ち続ける、倒せることを願いながら。
しかし、約四時間が経過してもワルプルギスの夜は消失しなかった。
そしてミサイルが尽きた、川からはほぼ無傷のワルプルギスの夜が上がってくる。
「もう、限界…」
気づいた時には膝から崩れ落ちていた、もう彼女には立っている気力すらない。
深い絶望に染まり、ソウルジェムが黒に染まりかけたとき彼女の脳に走馬灯のような、思考の波が押し寄せてきた。
私は、何がしたかったのかしら。
まどかを助けたかった…本当にそれだけ?
本当はもっと違う何かがあったのでは?
考えてみれば、まどかを救うだけならワルプルギスの夜を倒さなくてもいい、ただ、まどかを連れてどこかに逃げる手だってあった。
なぜ私はそれをしなかったの?
この手が思いつくことは何度かあった、しかし、そんなやり方が許させるはずないと自分に言い聞かせ実行しなかった。
それがなぜなのか今わかった。
私は、たぶん、まどかのようになりたかったんだと思う、まどかと初めて出会ったとき、私は救われた、初めて自分のことを肯定し、大切にしてくれることができたことで私は心が少しずつ軽くなるのを感じた。
それと同時に彼女への強いあこがれも持ち始めた、まどかのようにやさしくて人を助けられるような存在になりたいと思うようになった。
だから私はワルプルギスの夜と戦うことから逃げることはしなかった。
「は?」
じゃあ私は自分のくだらない憧れのせいでまどかを助けられずにいたってこと?
キュゥべえと契約したあの日、まどかを助けるためなら何でもやると誓ったのにもかかわらず、自分のあこがれなんて無駄な感情が残っていたなんて。
私なんてただの何もできなくて、何の役にも立たない、誰も救えない存在のくせに目標を持つなんて許されるはずがない、ましてやそのせいでこれまでまどかを殺し続けてきたなんて…
気持ち悪い、吐き気がする。
彼女は、自分と向き合うことから逃げることで忘れていた、圧倒的な自己否定の感覚を思い出していた。
そして、ワルプルギスの夜の攻撃が当たる少し前、彼女は決意した。
「自分を捨てる」
と