ドクター・ストレンジ:マルチバース・イーター   作:ルルルだ。

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20話 混沌

「『お手』」

 

マキマの言葉と共に、暗黒次元の幾何学的な空から、巨大な「鎖」が出現した。

それは物理的な鉄鎖ではない。対象の魂を縛り、自らの所有物とする「支配の概念」そのものだ。

 

鎖の先端が、ドルマムゥの燃え盛る巨大な顔に向かって伸びる。

 

『小賢シイ……人間風情ガ……我ヲ……!』

 

ドルマムゥが咆哮し、暗黒の炎を吐き出す。惑星一つを消し飛ばす熱量。

だが、マキマは涼しい顔でその場に佇んでいた。

彼女の背後には、地獄から連れてきた「闇の悪魔」の肉片や、銃の悪魔の残滓が盾として展開されている。さらには、モルドが持ち込んだ「日本国民へのダメージ転嫁」の契約が、この異次元でも有効に働いていた。

 

ズズズズ……!

鎖がドルマムゥの額に突き刺さる。

ドルマムゥの目が、怒りの赤から、マキマと同じ「渦巻き状の黄色」へと変色し始めた。

 

「嘘でしょう……」

クレアが絶句する。

「ドルマムゥの構成概念が書き換えられている……! 『自分は彼女より格下だ』と認識させられているのよ!」

 

「まずいな」

スティーヴン・ストレンジは、手にした呪具化した斧を強く握りしめた。

「ドルマムゥがマキマの『ペット』になれば、暗黒次元は彼女の飼育小屋になる。そして地球は餌場だ」

 

「どうするの、スティーヴン!? 私の魔法弾じゃ彼女の契約を突破できない!」

 

「力押しじゃ勝てない」

ストレンジは、斧の柄に埋め込まれた「宿儺の指」を見つめた。

「彼女の支配条件は『自分より程度が低いと思うこと』だ。……なら、絶対に彼女を見下すような『傲慢の塊』をぶつけて、認識をバグらせる」

 

ストレンジは、斧を上段に構えた。

魔力はない。だが、彼の精神力と、指に込められた呪いは共鳴していた。

 

「起きろ、両面宿儺。……女に飼い慣らされる気分はどうだ?」

 

彼は斧に意識を集中させた。

指の中に眠る宿儺の魂。その「天上天下唯我独尊」たる自我を、拡声器のように増幅して周囲に放射する。

 

ドクンッ!!

 

斧から、赤黒い衝撃波が放たれた。

それは物理的な破壊力を持たないが、精神的な「ノイズ」としてマキマの脳内に響き渡る。

 

『――不愉快だ』

 

マキマの動きが一瞬止まった。

彼女の思考の中に、どうしても「格下」と認識できない、圧倒的な邪悪と自尊心が割り込んできたのだ。

 

「……ッ」

マキマが眉をひそめる。

その隙に、支配の鎖が緩んだ。

 

『オオオオオオッ!!』

正気を取り戻したドルマムゥが、屈辱に震えて暴れ出す。

『貴様ァァァ!!』

 

暗黒次元そのものが牙を剥いた。地面が隆起し、マキマを飲み込もうとする。

マキマは咄嗟に防御に回るが、次元全体の怒りを一身に受け、その余裕の表情が崩れる。

 

「今だ、クレア!」

ストレンジが叫ぶ。「モルドを叩くぞ! 奴が持っているチェンソーの破片が、この場を繋ぎ止めている楔だ!」

 

ストレンジとクレアがモルドに殺到する。

モルドは瓦礫から這い出し、血を吐きながらも笑っていた。

 

「遅い、ストレンジ! もう『回路』は繋がった!」

 

モルドは懐から、奪い取ったチェンソーの刃を取り出し、自身の心臓に突き立てた。

 

「なっ……!?」

ストレンジが息を呑む。

 

「私は器になる。……この身を以て、呪術と魔術の完全なる融合を果たす!」

 

ギャリギャリギャリギャリ!!

 

モルドの胸からチェンソーが飛び出し、彼の全身が異形の姿へと変貌していく。

だが、それは以前のポチタとは違う。

彼の背後には、日本の結界術の象徴である「鳥居」のような紋様が浮かび上がっていた。

 

そして、空間にあの陽気な声が響き渡る。

 

『ピンポンパンポーン!』

 

虚空から、無数の「コガネ」が出現した。

一匹ではない。数千、数万のコガネが、暗黒次元の空を埋め尽くす。

 

『お知らせします! 死滅回游・ルール追加!』

 

空中にホログラム文字が展開される。

 

【死滅回游・追加エリア】

エリア名:暗黒次元(ダーク・ディメンション)

 

【新規ルール】

 

・本コロニー内では、「魔力」と「呪力」を等価交換可能とする。

 

・プレイヤーは、他プレイヤーを殺害し、その「魂の価値」に応じた点数を得る。

 

・100点を獲得したプレイヤーは、地球への帰還権を得る。

 

「死滅回游だと!?」

ストレンジがコガネを睨む。「羂索か! ここまで手を伸ばしてきたのか!」

 

『正解だよ』

 

モルドの口から、モルド自身の声ではなく、羂索の声が響いた。

モルドは完全に羂索に乗っ取られていたのだ。いや、彼が「魔術師狩り」として集めた呪具を通じて、精神を同調させられていた。

 

『暗黒次元は閉じた箱庭だ。ここでなら、誰にも邪魔されずに最強の「呪霊・魔人・魔術師」のバトルロイヤル実験ができる』

 

羂索(モルド)は両手を広げた。

『さあ、始めよう。参加者は君たちだけじゃない』

 

暗黒次元の空に、無数の「穴」が開いた。

羂索は、死滅回游の管理者権限を使い、地球(アース-JJKおよびアース-666)から、強者たちを強制的にエントリーさせたのだ。

 

ヒュン、ヒュン、ヒュン……!

光の柱と共に、プレイヤーたちが転送されてくる。

 

一人目は、瓦礫の山に着地し、不機嫌そうに頭を掻く男。

「あーあ。せっかく牛丼食おうとしてたのに」

制服姿。腰に日本刀。

乙骨憂太。

「ここ、どこですか? 里香ちゃん、大丈夫?」

『ユウタァ……ココ、クライ……』

 

二人目は、空中で回転しながら着地した、赤と金のアーマー。

「フライデー、状況報告。……なんてこった、また宇宙か?」

アイアンマン。

(※ストレンジたちの世界線では存命、もしくはAI搭載型スーツ)

「おい魔法使い! お前のパーティーはいつも場所が最悪だな!」

 

三人目は、チェンソーのエンジン音と共に落下してきた少年。

「夢バトル第2回戦キタコレ!!」

(※途中のポチタは羂索が現実改変能力を使い、デンジから無理矢理ポチタを分裂させた、呪骸の姿)

デンジ(チェンソーマン)。

 

そして四人目は……。

 

静寂。

空間の揺らぎと共に、その男は現れた。

目隠しをしていない、蒼い瞳(六眼)。

最強の呪術師。

 

「……久しぶり」

五条悟。

彼は空中に浮いたまま、眼下のカオスを見下ろし、ニヤリと笑った。

 

「傑……じゃなくて、羂索か。随分と派手な同窓会を用意してくれたね」

 

役者は揃った。

 

「状況を整理する暇はないぞ!」

ストレンジが叫ぶ。

「ここはバトルロイヤル会場だが、我々の目的は一つ! 羂索(モルド)を倒し、このふざけたゲームを終わらせることだ!」

 

「オーケー、話が早くて助かる」

トニー・スタークがリパルサー・キャノンを構える。

「とりあえず、あの緑のローブと、怖そうな女(マキマ)をぶっ飛ばせばいいんだな?」

 

「マキマさんは俺がやる!」

デンジがチェンソーを起動する。「愛の力で!」

 

「僕はあっちのデカい顔(ドルマムゥ)を抑えるよ」

五条が指を鳴らした。「領域展開の実験台にちょうど良さそうだ」

 

「憂太、君はストレンジ先生を援護して」

「わかりました。……行こう、里香ちゃん」

 

羂索(モルド)は、その光景を見て、愉悦に満ちた笑みを浮かべた。

『素晴らしい。これぞ、呪いと魔法の極致だ』

 

彼は、暗黒次元の地面に手を突き刺した。

『さあ、殺し合え。生き残った者の魂だけが、新しい世界へ行ける』

 

ゴオオオオオオオオッ!!

 

ドルマムゥの炎、マキマの支配、五条の無下限、アイアンマンの科学兵器、そしてストレンジの呪具。

全ての能力が入り乱れる、史上最大の「死滅回游・暗黒次元編」が幕を開けた。

 

「私の魔力が戻るまで、あと48時間」

ストレンジは斧を構え、乙骨と背中合わせになった。

「それまで生き残れるか?」

 

「余裕ですよ」

乙骨が刀を抜き、特級過呪怨霊・里香を顕現させる。

「僕たち、純愛なんで」

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