ドクター・ストレンジ:マルチバース・イーター   作:ルルルだ。

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21話 規格外

ダーク・ディメンションの毒々しい空の下。

五条悟は、瓦礫の上にふわりと着地すると、目の前にいる羂索(モルドの体を乗っ取っている)を見下ろした。

 

「なるほどねぇ」

五条は、六眼でこの空間の呪力構造を瞬時に解析し、納得したように頷いた。

 

「本来なら、渋谷で僕を『獄門疆』に詰めるつもりだったんだろ? でも、ワンダちゃんが次元に穴を開けちゃったから、計画を変えた」

五条は指を一本立てた。

「封印する手間を省いて、この『暗黒次元』っていう閉鎖空間に僕ごと放り込み、ドルマムゥとかいうデカ物と共食いさせる。……効率的じゃん、羂索」

 

『ご名答だよ、五条悟』

羂索(モルド)がニヤリと笑う。

『死滅回遊を始めるには、君を封印することが必須だった...だが、今の壊れた世界では時間の概念すら曖昧だ。リスクが高すぎる。……だから、ここで踊ってもらうことにした』

 

一方、アイアンマン(トニー・スターク)の隣に着地したデンジは、自分の胸のスターターを引く前に、首をかしげていた。

 

ブォン!! ギャリギャリギャリギャリ!!

頭部と両腕からチェンソーが飛び出し、チェンソーマンへと変身完了する。

 

「よし! マキマさんはどこだ! ハグさせろ!」

 

「おいおい、なんだその非科学的な変形機構は」

トニー・スターク(アイアンマン)が、ナノテク・スーツのフェイスプレート越しにデンジを凝視した。

「体積保存の法則はどうなってる? 血液ポンプの動力源は?」

 

「知るかよ! 鉄のオッサン!」

デンジが走り出す。

 

「まあいい、分析は後だ」

トニーは肩のポッドを展開し、上空のドルマムゥと、それを縛ろうとするマキマをロックオンした。

「フライデー、あのデカい顔(ドルマムゥ)と、スーツの女(マキマ)のエネルギー値を計測。……なんてこった、エラーばかりだ」

 

『ボス、この空間自体が彼らのエネルギーで構成されています。物理攻撃の有効性は30%以下』

 

「上等だ。ストレンジの知り合いなら、理屈が通じないのは慣れてる!」

トニーはリパルサー・レイを最大出力で発射した。

ズドンッ!!

光弾がマキマに向かって飛ぶが、彼女の周囲に展開された「支配された悪魔の肉壁」に阻まれる。

 

「効かないよ」

マキマはトニーの方を見向きもせず、指鉄砲を向けた。

「『ぱん』」

 

見えない衝撃波がアイアンマンを襲う。

「うわっ!?」

トニーはスラスターを吹かして回避行動を取るが、右翼の一部がひしゃげた。

「衝撃波? いや、重力干渉か!?」

 

 

 

戦場の中央では、次元の支配権を巡る頂上決戦が始まっていた。

 

『ウウウ……我ハ……支配サレヌ……!!』

ドルマムゥが咆哮し、暗黒次元の岩塊を隕石のように降らせる。

その質量は、一つ一つがエベレスト級だ。

 

「デカけりゃ当たると思ってるのが可愛いよね」

五条悟は、あくびを噛み殺しながら空中に立っていた。

 

隕石群は、五条の体に触れる寸前でピタリと停止する。

「無下限呪術」。

彼に近づくほど、対象物は遅くなり、永遠に到達しない。

 

「さて、僕も混ぜてもらおうかな」

五条は、六眼を輝かせた。

彼の周囲の空間がねじれる。

 

「術式反転・『赫』」

 

指先から放たれた衝撃波が、隕石群を弾き飛ばし、そのままドルマムゥの巨大な顔面へと直撃した。

ドゴォォォォォン!!

 

『グアアアアッ!!』

ドルマムゥの顔の一部が消し飛ぶ。だが、即座に暗黒エネルギーで再生する。

 

「へえ、再生速いね。呪霊よりタフかも」

五条は楽しげに笑った。

「でもさ、この空間……君の『生得領域』みたいなもんでしょ? だったら」

 

五条は印を結んだ。

「僕の色で塗り替えてあげるよ」

 

「領域展開・無量空処」

 

宇宙のような結界が広がり、暗黒次元の一部を侵食し始めた。

ドルマムゥの意識の中に、「無限の情報」が流し込まれる。

『ナ……ンダ……コレハ……!?』

思考が停止し、再生速度が遅れる。

 

「今だ、ストレンジ!」

遠くのストレンジへ、五条が叫ぶ。「デカブツの動きは止めた! そっちの魔術師狩りをやれ!」

 

「了解!」

ストレンジは、乙骨憂太と共に羂索(モルド)へ突っ込んだ。

 

羂索は、モルドの身体能力と自身の呪術、そして「游雲(コピー)」を駆使して応戦する。

「やるねぇ。魔力のない元外科医と、乙骨憂太か」

 

羂索が呪霊を召喚し、ストレンジに放つ。

ストレンジは呪具化した斧を振るい、呪霊を一刀両断する。

「魔力はなくとも、技はある!」

 

その死角から、乙骨が踏み込んだ。

乙骨の刀が、紫色の呪力を帯びて閃く。

 

ガキンッ!!

羂索は游雲でそれを受け止めるが、乙骨の背後から現れた巨大な影――特級過呪怨霊・里香が、その腕を巨大な手で鷲掴みにした。

 

『ケンジャクゥゥゥ……!!』

里香の絶叫と共に、羂索が地面に叩きつけられる。

 

「里香ちゃん、ナイス!」

乙骨は追撃しようとするが、羂索は地面を液状化させて逃れた。

『さすがは乙骨憂太。だが、君のコピー能力……この次元の「魔法」もコピーできるのかな?』

 

羂索は距離を取り、モルドの記憶にある魔術の印を結んだ。

だが、使うのは魔力ではなく、濃縮された呪力だ。

 

「呪法・エルドリッチ・ブラスト!」

赤黒い稲妻が乙骨とストレンジを襲う。

 

乙骨は刀で防ごうとするが、ストレンジが前に出た。

「乙骨、見るな! それは精神汚染を伴う!」

ストレンジは斧を掲げ、宿儺の指の力を解放して、呪いの稲妻を相殺した。

 

「……その斧、ヤバくないですか?」

乙骨が冷や汗をかく。「宿儺の気配がプンプンしますけど」

「ああ、君の知り合い(虎杖)からの贈り物だ。使い勝手は最悪だがな」

 

 

 

一方、マキマとデンジの戦場。

 

「デンジ君」

マキマは、デンジのチェーンソーを素手で受け止め、悲しげな顔をした。

「どうして私に刃を向けるの? 私たちは家族になりたかったんじゃないの?」

 

「家族……」

デンジの動きが鈍る。

「そうだよなぁ……マキマさんのこと、好きだったしなぁ……」

 

デンジの脳裏に、パワーやアキとの思い出がよぎる。

「でもよぉ! 家族を殺すのが家族かよ! 俺は俺のやり方で、アンタを抱きしめてやるよ!」

 

デンジはチェーンソーの回転数を上げた。

「愛のチェーンソーだァァァッ!!」

 

ギャリギャリギャリギャリ!!

 

マキマはため息をついた。

「話にならないわね」

彼女は、背後の「銃の悪魔」の肉片を起動させようとした。

 

その時。

暗黒次元の天井が、ガラスのように砕け散った。

 

パリーン!!!!

 

全員の手が止まる。

五条の領域も、ドルマムゥの炎も、マキマの支配も、その現象の前では霞んで見えた。

 

砕けた空の向こうから、巨大な「紫色の顔」が現れた。

惑星を主食とする、宇宙魔神。

 

 

ギャラクタス。

 

 

だが、様子がおかしい。

ギャラクタスの体表には、無数の「呪霊」が寄生し、彼のコズミック・パワーが「呪力」へと変質している。

 

『……飢エタ……』

『呪イヲ……喰ワセロ……』

 

羂索が、狂ったように笑い出した。

「ハハハハハ! 見たまえ! あれこそが、死滅回游の真のゴールだ!」

 

羂索は両手を広げた。

「ワンダ・マキシモフが開けた穴から、この宇宙の捕食者(ギャラクタス)に、特級呪物を打ち込んだのさ。……結果、彼は星ではなく『呪い』を喰らう魔神へと進化した!」

 

「呪い食いのギャラクタスだと……!?」

ストレンジが絶望する。

「奴がこの次元に来れば、ドルマムゥごと我々を吸収し、その次は地球の呪いを喰らいに行くぞ!」

 

「規模がデカすぎて笑えてきた」

五条悟が領域を解き、冷や汗を拭った。

「ねえ、誰かあのデカブツを倒すプラン持ってる?」

 

トニー・スタークがマスクを閉じた。

「プランBがある。……全員で協力して、あのデカい口の中に『超特大の爆弾』を放り込むんだ」

 

「爆弾?」デンジが首をかしげる。

 

「ああ」ストレンジが頷き、斧を握りしめた。

「ドルマムゥだ。……この次元の主を、ギャラクタスにぶつける」

 

敵の敵は、一時的な弾丸。

魔術、呪術、科学、悪魔。全ての力を結集した、対ギャラクタス共同戦線が始まろうとしていた。

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