ドクター・ストレンジ:マルチバース・イーター 作:ルルルだ。
ダーク・ディメンションの毒々しい空の下。
五条悟は、瓦礫の上にふわりと着地すると、目の前にいる羂索(モルドの体を乗っ取っている)を見下ろした。
「なるほどねぇ」
五条は、六眼でこの空間の呪力構造を瞬時に解析し、納得したように頷いた。
「本来なら、渋谷で僕を『獄門疆』に詰めるつもりだったんだろ? でも、ワンダちゃんが次元に穴を開けちゃったから、計画を変えた」
五条は指を一本立てた。
「封印する手間を省いて、この『暗黒次元』っていう閉鎖空間に僕ごと放り込み、ドルマムゥとかいうデカ物と共食いさせる。……効率的じゃん、羂索」
『ご名答だよ、五条悟』
羂索(モルド)がニヤリと笑う。
『死滅回遊を始めるには、君を封印することが必須だった...だが、今の壊れた世界では時間の概念すら曖昧だ。リスクが高すぎる。……だから、ここで踊ってもらうことにした』
一方、アイアンマン(トニー・スターク)の隣に着地したデンジは、自分の胸のスターターを引く前に、首をかしげていた。
ブォン!! ギャリギャリギャリギャリ!!
頭部と両腕からチェンソーが飛び出し、チェンソーマンへと変身完了する。
「よし! マキマさんはどこだ! ハグさせろ!」
「おいおい、なんだその非科学的な変形機構は」
トニー・スターク(アイアンマン)が、ナノテク・スーツのフェイスプレート越しにデンジを凝視した。
「体積保存の法則はどうなってる? 血液ポンプの動力源は?」
「知るかよ! 鉄のオッサン!」
デンジが走り出す。
「まあいい、分析は後だ」
トニーは肩のポッドを展開し、上空のドルマムゥと、それを縛ろうとするマキマをロックオンした。
「フライデー、あのデカい顔(ドルマムゥ)と、スーツの女(マキマ)のエネルギー値を計測。……なんてこった、エラーばかりだ」
『ボス、この空間自体が彼らのエネルギーで構成されています。物理攻撃の有効性は30%以下』
「上等だ。ストレンジの知り合いなら、理屈が通じないのは慣れてる!」
トニーはリパルサー・レイを最大出力で発射した。
ズドンッ!!
光弾がマキマに向かって飛ぶが、彼女の周囲に展開された「支配された悪魔の肉壁」に阻まれる。
「効かないよ」
マキマはトニーの方を見向きもせず、指鉄砲を向けた。
「『ぱん』」
見えない衝撃波がアイアンマンを襲う。
「うわっ!?」
トニーはスラスターを吹かして回避行動を取るが、右翼の一部がひしゃげた。
「衝撃波? いや、重力干渉か!?」
戦場の中央では、次元の支配権を巡る頂上決戦が始まっていた。
『ウウウ……我ハ……支配サレヌ……!!』
ドルマムゥが咆哮し、暗黒次元の岩塊を隕石のように降らせる。
その質量は、一つ一つがエベレスト級だ。
「デカけりゃ当たると思ってるのが可愛いよね」
五条悟は、あくびを噛み殺しながら空中に立っていた。
隕石群は、五条の体に触れる寸前でピタリと停止する。
「無下限呪術」。
彼に近づくほど、対象物は遅くなり、永遠に到達しない。
「さて、僕も混ぜてもらおうかな」
五条は、六眼を輝かせた。
彼の周囲の空間がねじれる。
「術式反転・『赫』」
指先から放たれた衝撃波が、隕石群を弾き飛ばし、そのままドルマムゥの巨大な顔面へと直撃した。
ドゴォォォォォン!!
『グアアアアッ!!』
ドルマムゥの顔の一部が消し飛ぶ。だが、即座に暗黒エネルギーで再生する。
「へえ、再生速いね。呪霊よりタフかも」
五条は楽しげに笑った。
「でもさ、この空間……君の『生得領域』みたいなもんでしょ? だったら」
五条は印を結んだ。
「僕の色で塗り替えてあげるよ」
「領域展開・無量空処」
宇宙のような結界が広がり、暗黒次元の一部を侵食し始めた。
ドルマムゥの意識の中に、「無限の情報」が流し込まれる。
『ナ……ンダ……コレハ……!?』
思考が停止し、再生速度が遅れる。
「今だ、ストレンジ!」
遠くのストレンジへ、五条が叫ぶ。「デカブツの動きは止めた! そっちの魔術師狩りをやれ!」
「了解!」
ストレンジは、乙骨憂太と共に羂索(モルド)へ突っ込んだ。
羂索は、モルドの身体能力と自身の呪術、そして「游雲(コピー)」を駆使して応戦する。
「やるねぇ。魔力のない元外科医と、乙骨憂太か」
羂索が呪霊を召喚し、ストレンジに放つ。
ストレンジは呪具化した斧を振るい、呪霊を一刀両断する。
「魔力はなくとも、技はある!」
その死角から、乙骨が踏み込んだ。
乙骨の刀が、紫色の呪力を帯びて閃く。
ガキンッ!!
羂索は游雲でそれを受け止めるが、乙骨の背後から現れた巨大な影――特級過呪怨霊・里香が、その腕を巨大な手で鷲掴みにした。
『ケンジャクゥゥゥ……!!』
里香の絶叫と共に、羂索が地面に叩きつけられる。
「里香ちゃん、ナイス!」
乙骨は追撃しようとするが、羂索は地面を液状化させて逃れた。
『さすがは乙骨憂太。だが、君のコピー能力……この次元の「魔法」もコピーできるのかな?』
羂索は距離を取り、モルドの記憶にある魔術の印を結んだ。
だが、使うのは魔力ではなく、濃縮された呪力だ。
「呪法・エルドリッチ・ブラスト!」
赤黒い稲妻が乙骨とストレンジを襲う。
乙骨は刀で防ごうとするが、ストレンジが前に出た。
「乙骨、見るな! それは精神汚染を伴う!」
ストレンジは斧を掲げ、宿儺の指の力を解放して、呪いの稲妻を相殺した。
「……その斧、ヤバくないですか?」
乙骨が冷や汗をかく。「宿儺の気配がプンプンしますけど」
「ああ、君の知り合い(虎杖)からの贈り物だ。使い勝手は最悪だがな」
一方、マキマとデンジの戦場。
「デンジ君」
マキマは、デンジのチェーンソーを素手で受け止め、悲しげな顔をした。
「どうして私に刃を向けるの? 私たちは家族になりたかったんじゃないの?」
「家族……」
デンジの動きが鈍る。
「そうだよなぁ……マキマさんのこと、好きだったしなぁ……」
デンジの脳裏に、パワーやアキとの思い出がよぎる。
「でもよぉ! 家族を殺すのが家族かよ! 俺は俺のやり方で、アンタを抱きしめてやるよ!」
デンジはチェーンソーの回転数を上げた。
「愛のチェーンソーだァァァッ!!」
ギャリギャリギャリギャリ!!
マキマはため息をついた。
「話にならないわね」
彼女は、背後の「銃の悪魔」の肉片を起動させようとした。
その時。
暗黒次元の天井が、ガラスのように砕け散った。
パリーン!!!!
全員の手が止まる。
五条の領域も、ドルマムゥの炎も、マキマの支配も、その現象の前では霞んで見えた。
砕けた空の向こうから、巨大な「紫色の顔」が現れた。
惑星を主食とする、宇宙魔神。
ギャラクタス。
だが、様子がおかしい。
ギャラクタスの体表には、無数の「呪霊」が寄生し、彼のコズミック・パワーが「呪力」へと変質している。
『……飢エタ……』
『呪イヲ……喰ワセロ……』
羂索が、狂ったように笑い出した。
「ハハハハハ! 見たまえ! あれこそが、死滅回游の真のゴールだ!」
羂索は両手を広げた。
「ワンダ・マキシモフが開けた穴から、この宇宙の捕食者(ギャラクタス)に、特級呪物を打ち込んだのさ。……結果、彼は星ではなく『呪い』を喰らう魔神へと進化した!」
「呪い食いのギャラクタスだと……!?」
ストレンジが絶望する。
「奴がこの次元に来れば、ドルマムゥごと我々を吸収し、その次は地球の呪いを喰らいに行くぞ!」
「規模がデカすぎて笑えてきた」
五条悟が領域を解き、冷や汗を拭った。
「ねえ、誰かあのデカブツを倒すプラン持ってる?」
トニー・スタークがマスクを閉じた。
「プランBがある。……全員で協力して、あのデカい口の中に『超特大の爆弾』を放り込むんだ」
「爆弾?」デンジが首をかしげる。
「ああ」ストレンジが頷き、斧を握りしめた。
「ドルマムゥだ。……この次元の主を、ギャラクタスにぶつける」
敵の敵は、一時的な弾丸。
魔術、呪術、科学、悪魔。全ての力を結集した、対ギャラクタス共同戦線が始まろうとしていた。