ドクター・ストレンジ:マルチバース・イーター   作:ルルルだ。

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31話 ガーディアンズ・オブ・マルチバース

光の粒子が収束し、クリスタルの空間に二つの人影が実体化した。

 

「……あ?」

 

一人目は、ボロアパートの畳の上から転送された少年、デンジ。

彼は口にくわえていた食パン(イチゴジャムたっぷり)を、呆然と地面に落とした。

「俺の……朝飯……」

彼は状況を理解するよりも先に、落ちたパンを見て絶望的な顔をした。

「ジャム塗った面が下じゃねえか!! 最悪だ!!」

 

「やあ。また会ったね」

 

二人目は、渋谷の瓦礫の上から転送された男、五条悟。

彼は周囲の状況――巨人のウアトゥ、ボロボロのストレンジ、そして不機嫌そうな宿儺を一瞬で視認し、ニヤリと笑った。

 

「地獄から戻って一息ついたと思ったら、今度は『神様』の御前会議かな? 忙しいねぇ、僕らも」

 

「五条悟、そしてデンジ……」

スティーヴン・ストレンジが、安堵と緊張の入り混じった息を吐く。

「呼び出してすまない。だが、君たちの力がどうしても必要なんだ」

 

「あ? 誰だオッサン」

デンジがパンを拾い上げ、ふてくされた顔でストレンジを見た。

「俺は家でテレビ見る予定があったんだよ。帰してくれよ」

 

「帰る場所がなくなるかもしれない」

スパイダーマンがマスクを脱ぎ、真剣な眼差しでデンジに訴えた。

「君の世界も、僕たちの世界も、あの『支配の悪魔』に書き換えられようとしている。……助けて、チェンソーマン」

 

「チェンソーマン……?」

デンジは少し鼻を高くした。

「へへっ、俺のこと知ってんの? 有名なんだな、異世界でも」

 

「時間が惜しい。状況を説明する」

ウアトゥが巨大な手を広げ、空中にホログラムを展開した。

 

映し出されたのは、地球(アース-666)の上空に停滞する巨大な頭蓋骨「ノーウェア」と、そこから放たれる支配の波動。

アベンジャーズやX-MENといった地球の守護者たちが、虚ろな目でマキマに伏している映像だ。

 

「マキマはセレスティアルズの全知全能に近い力を得た。今の彼女は、対象を視認した瞬間に『格下』と定義し、概念レベルで支配する」

ウアトゥの重厚な声が響く。

「物理攻撃も魔法も無意味だ。彼女が『効かない』と思えば、現実はそれに従う」

 

「チッ、面倒な女だ」

宿儺が腕組みをして鼻を鳴らす。

「俺の『解』すら、彼女のルールの中では無効化されかけた。……羂索の小細工より厄介だな」

 

「だが、攻略法はある」

ウアトゥは、五条とデンジを指差した。

 

「支配の条件は『認識』だ。彼女が理解し、制御できる範囲内でのみ、その力は発動する。……ならば」

 

ウアトゥは五条を見た。

「五条悟。君の『無量空処』は、対象に無限の情報を強制する。……全知を得た気になっている彼女の脳に、処理不可能な『無限』を流し込めば、支配のプロセスは崩壊する」

 

次に、デンジを見た。

「そしてデンジ。君の中にいる『チェンソーの悪魔』は、概念を食らい、消滅させる力を持つ。……彼女が作り出した『支配の理』そのものを、君が食い破るのだ」

 

「よくわかんねえけど、OKOK!」

 

 

「……というわけだ」

ストレンジは、ヴォルトの杖を握り直し、全員を見回した。

 

「まとまりのないチームだ」

ストレンジは自嘲した。

「ヒーロー、学生、悪魔、そして呪いの王。……アベンジャーズが見たら卒倒するだろうな」

 

「勘違いするなよ」

宿儺が冷ややかに釘を刺す。

「俺はあの女が気に入らんだけだ。あいつを殺した後、次は貴様らを殺すかもしれんぞ」

 

「はいはい、怖い怖い」

五条が宿儺の肩に手を置こうとして、避けられる。

「宿儺くん、恵の体で暴れるのは程々にしてよね。……あとで生徒に合わせる顔がないよ」

 

「五条悟……」

宿儺の目に殺気が宿る。

「貴様とは一度、決着をつけねばならんな。……だが、今は『餌』が先か」

 

 

「準備はいいか」

ウアトゥが空間に巨大な裂け目を作った。

それはポータルではない。物語のページをめくるような、次元干渉。

 

「私は観測者だ。戦いには参加できない。……だが、君たちを『特等席』に送り届けることはできる」

 

裂け目の向こうに、赤く染まった地球と、鎮座するノーウェアが見える。

 

「行こう」

ストレンジが先陣を切る。

「これが、最後のマルチバース・ウォーだ」

 

「っしゃあ! 行くぜポチタ!」

デンジがスターターを引いた。

ブォン!! ギャリギャリギャリギャリ!!

チェンソーマンに変身し、雄叫びを上げて飛び込む。

 

「遅れないでね、アメリカちゃん」

五条が目隠しをかけ直し、軽やかに飛ぶ。

 

「クソが」

宿儺も舌打ちしながら続く。

 

最強たちが、次元の彼方へと出撃した。

 

 

アース-666、ニューヨーク上空。

かつてのアベンジャーズ・タワーの頂上に、マキマは優雅に座っていた。

彼女の足元には、ひざまずくキャプテン・アメリカ、ブラックパンサー、キャプテン・マーベルなどのヒーローたち。

そして、上空にはノーウェアが浮かび、そこから垂れ下がる神経ケーブルが地球全体を覆う「支配の籠」を形成していた。

 

「静か」

マキマは、淹れたてのコーヒーを啜った。

「争いもなく、飢えもなく、恐怖もない。……これこそが、正しい世界」

 

だが、その平和は唐突に破られた。

 

ズガァァァン!!

 

空が割れた。

ノーウェアの支配領域を無理やりこじ開け、五つの流星が降ってくる。

 

「……懲りない人たち」

マキマはカップを置いた。

「アベンジャーズ、迎撃しなさい」

 

「Yes, Ma'am.」

サムが、虚ろな目で翼を広げ、空へ飛び立つ。

ソーがムジョルニアを回し、雷雲を呼ぶ。

キャプテン・マーベルが全身を発光させる。

 

「うわっ!?」

スパイダーマンが空中で悲鳴を上げる。

「ドクター! 僕、キャプテンと戦えないよ!」

 

「迷うなピーター! 彼らは洗脳されているだけだ! 気絶させれば戻る!」

ストレンジがヴォルトの杖で防御陣を展開する。

「宿儺! 五条! 雑魚は任せた! マキマの本陣へ道をこじ開けろ!」

 

「雑魚だと?」

宿儺が空中で停止し、迫りくる雷神ソーを見据えた。

「……ほう。この世界の神か。少しは楽しめそうだ」

 

「『解』」

 

「マイティ・サンダー!」

 

宿儺の斬撃と、ソーの雷撃が激突。

ニューヨークの上空で、神話級の衝撃波が炸裂した。

 

 

一方、五条はキャプテン・マーベルの光速タックルを「無下限」で受け流していた。

「速いねぇ。でも、当たらないよ」

 

五条は指を弾く。

「術式順転・『蒼』」

引力が発生し、アベンジャーズたちが一箇所に吸い寄せられる。

 

「デンジ! 今だ!」

 

「うおおおおお!! 邪魔だァァァ!!」

 

チェンソーマンが、アベンジャーズの防衛線を突破し、一直線にマキマの元へ突っ込む。

マキマは立ち上がり、静かに指鉄砲を構えた。

 

「『ぱん』」

 

見えない衝撃波が放たれる。

だが、デンジは止まらない。

彼は自分の体を切り裂きながら、その痛みと狂気で「支配」の命令を塗りつぶしていた。

 

「なっ……!?」

マキマの表情が強張る。

 

「愛を教えに来たぜぇぇぇ! マキマさぁぁぁん!!」

 

ギャリギャリギャリギャリ!!!!

 

チェンソーの刃が、マキマの障壁に食い込む。

最終決戦の幕が上がった。

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