ドクター・ストレンジ:マルチバース・イーター 作:ルルルだ。
ニューヨークの上空、アベンジャーズ・タワーの真上。
黒雲が渦巻き、雷鳴が轟く中、二つの規格外の力が激突した。
「唸れ、ムジョルニア!」
ソーがハンマーを振り下ろす。
雷撃が、一条の光となって両面宿儺に直撃した。
ズガァァァァァッ!!
「効いたか?」
ソーが目を凝らす。
だが、煙の中から現れた宿儺は、着物が少し焦げた程度で、不敵な笑みを浮かべていた。
「……痺れるな」
宿儺は首を鳴らした。
「だが、ただの電気ではない。神の魔力が乗っているか。……悪くない」
宿儺が姿を消す。
瞬速の移動。ソーの背後に回り込み、ゼロ距離で『解』を放つ。
ギャンッ!!
金属音が響く。
宿儺の斬撃を、ソーはムジョルニアの柄で受け止めていた。
「見切ったぞ、呪いの王!」
ソーが裏拳でハンマーを振るう。
その一撃は、惑星を砕くほどの質量攻撃。
「チッ」
宿儺は咄嗟に腕を交差させ、呪力ガードで受け止めるが、衝撃で数百メートル吹き飛ばされ、エンパイア・ステート・ビルの壁面に叩きつけられた。
「ハハッ! なかなかやる!」
宿儺が瓦礫の中から飛び出す。彼の顔には、痛みではなく純粋な歓喜が浮かんでいた。
「俺の体に響く打撃を入れたのは久しぶりだ!」
「私はソー・オディンソン! アスガルドの王子だ!」
「知ったことか! そのハンマーごと微塵切りにしてやる!」
雷神と呪いの王。
物理と呪術の頂上決戦は、周囲のビル群を巻き込みながら加速していく。
一方、そのさらに上空。
大気圏に近い場所で、光の軌跡が交差していた。
ドォォォォン!!
キャプテン・マーベルが、光速に近いタックルを繰り返している。
彼女は「バイナリー・モード」を発動し、全身が恒星のように輝いていた。その突進力は、サノスの旗艦さえ貫く威力だ。
だが、その全てが「届かない」
「嘘でしょ……!?」
キャロルが驚愕する。
彼女の拳は、目の前の男――五条悟の鼻先数センチで、見えない壁に阻まれて停止していた。
「速いし、強いね」
五条はポケットに手を突っ込んだまま、余裕で微笑んだ。
「君のエネルギー吸収能力は厄介だけど……僕の『無限』はエネルギーじゃない。ただの『距離』だ。吸い取れるもんじゃないよ」
「距離……?」
キャロルがフォトンブラストを至近距離で放つ。
だが、それもまた無限に減速し、五条に届くことなく霧散する。
「さて、お返しだ」
五条が指を弾く。
「術式順転・『蒼』」
キャロルの周囲に複数の引力点が発生する。
「うわっ!?」
彼女の体が、見えないブラックホールに引っ張られるように振り回される。
五条は彼女を殺す気はない。マキマの洗脳を解くための時間稼ぎだ。
「ちょっと乱暴だけど、酔わないでね」
五条はキャロルをピンボールのように弾き飛ばし、地上で戦うアベンジャーズの群れの中に落とした。
アベンジャーズ・タワーのペントハウス。
マキマの絶対領域。
ギャリギャリギャリギャリ!!!!
デンジが、マキマの展開した「支配の障壁」を物理的に削り取っていた。
火花が散り、マキマの美しい眉間に皺が寄る。
「しつこい男は嫌われるよ、デンジ君」
マキマが指鉄砲を向ける。
「『ぱん』」
ドンッ!!
衝撃波がデンジの腹部を貫通する。内臓が飛び散る。
普通の人間なら即死だ。
だが、デンジは止まらない。彼は自分の血を飛び散らせながら、狂ったように笑った。
「痛ってぇぇぇ! でも、マキマさんの攻撃ならご褒美だぜぇ!」
彼は自分の腸をマフラーのように首に巻き直し、さらに加速する。
「なっ……」
マキマが初めて動揺した。
彼女の「支配」は、相手が恐怖するか、屈服することで成立する。
だが、デンジには恐怖がない。あるのは歪んだ愛と、混沌とした食欲だけだ。
「理解できない……」
マキマが後ずさる。
「 なぜ私の命令を聞かないの?」
「だって俺、バカだから難しいことわかんねえもん!」
デンジがチェーンソーを振りかぶる。
「マキマさんと一緒なら、地獄でも天国でもどっちでもいい! ……だから、俺に食われて一つになろうぜ!」
概念の衝突。
マキマの「秩序ある支配」に対し、デンジの「無秩序な愛」が、論理の壁を食い破っていく。
「今だ、五条!」
スティーヴン・ストレンジが叫んだ。
地上では、ストレンジとスパイダーマン、アメリカ・チャベスが、キャロルやサム)たちの猛攻をギリギリで防いでいた。
「先生! もう限界! 殺さずに止めるなんて無理だよ!」
アメリカが悲鳴を上げる。
ストレンジはヴォルトの杖を掲げ、通信魔法で五条に伝えた。
『マキマの注意がデンジに向いている! 今なら彼女の「脳」に隙がある!』
「了解」
上空にいた五条悟が、目隠しをずらした。
六眼が、眼下の戦場全体――特に、マキマとアベンジャーズを繋ぐ「支配の鎖」を捉える。
「全員まとめて、脳味噌揺らしてやるよ」
五条が印を結んだ。
ただの領域展開ではない。
彼が選んだのは、0.01秒の一瞬だけの、領域展開
「無量空処・限定解除」
カッ!!!!
マンハッタンの一角が、白い光に包まれた。
時間は止まっていない。だが、その場にいた全員の脳内に、「完結しない無限の情報」が流し込まれた。
「ア……ガ……」
サムが盾を取り落とす。
「ウ……ウウ……」
ソーが雷を消し、膝をつく。
キャプテン・マーベルが空中で硬直する。
マキマと繋がっていた「支配のパス」に、無限のジャンクデータが逆流したのだ。
サーバーダウン。
アベンジャーズたちの洗脳が、強制的にシャットダウンされる。
「くっ……!」
マキマもまた、頭を押さえてよろめいた。
「私の……脳に……ゴミを……!」
彼女の絶対的な処理能力が、五条の「無限」によってパンクしかけている。
「洗脳が解けた!」
スパイダーマンが叫ぶ。
「キャップ! 起きて!」
サムが、ハッと我に返った。
「俺は……何を……?」
彼は自分の手を見つめ、そして目の前でボロボロになっているストレンジたちを見た。
「……すまない。長い悪夢を見ていたようだ」
サムは盾を握り直した。その目に、正義の輝きが戻る。
「状況は把握できていないが……」
ソーが立ち上がり、ムジョルニアを呼んだ。
「あの女(マキマ)が敵であることだけは、魂が覚えているぞ!」
「反撃開始だ、アベンジャーズ!」
ストレンジが叫ぶ。
「ウォー!」
正気を取り戻したヒーローたちが、一斉にアベンジャーズ・タワーのマキマへ向かって飛び立つ。
「チッ、形勢逆転か」
マキマは乱れた髪を直し、冷ややかな目で迫りくるヒーローたちを見下ろした。
「……野蛮な人たち。言葉で分からないなら、力で躾けるしかないわね」
彼女は、ノーウェアに直接リンクした。
宇宙に浮かぶ巨大な頭蓋骨が口を開ける。
ゴオオオオオオオオッ!!
空から、紫色のコズミック・ビームが降り注ぐ。
それは都市を消滅させる威力。
「させねえよ!」
五条悟が、ビームの軌道上に割り込んだ。
「デンジくん! 彼女の『概念』を食え! ビームは僕と宿儺で止める!」
「おう!」
デンジがマキマに肉薄する。
「おい、勝手に俺を含めるな」
宿儺が文句を言いながらも、降り注ぐコズミック・ビームに向かって、最大出力の『解』を放つ構えを取った。
「神殺しの斬撃、見せてやる」
最強たちの連携。
そして、マキマの背後に、地獄からさらなる「援軍」の気配が迫っていた。
次回完結です。