ドクター・ストレンジ:マルチバース・イーター   作:ルルルだ。

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33話 終戦

ニューヨーク上空。

宇宙の彼方にある「ノーウェア」から放たれた紫色の極大ビームが、マンハッタンを消滅させんと降り注ぐ。

その圧倒的な質量の前に、空気すら悲鳴を上げていた。

 

だが、その絶望の光に向かって、二つの影が躊躇なく飛び込んだ。

 

「邪魔だ、失せろ!」

宿儺が、空を駆ける。

彼はビームの直下に入り込むと、両手を広げ、全身の呪力を一点に凝縮させた。

もはや『解』ではない。対象を切り刻むのではなく、空間ごと削り取る「王の調理法」。

 

「『竈』・開」

 

宿儺の手から放たれた炎の矢が、螺旋を描きながら巨大化し、紫色のビームと激突した。

ズドォォォォォン!!

熱核爆発のような閃光。

 

「ほう、少しは耐えるか」

宿儺がニヤリと笑う。ビームは相殺されず、炎を押し潰して降下してくる。

だが、その横からもう一人の「最強」が割り込んだ。

 

「重いねぇ、神様のゲロは」

五条悟が、宿儺の隣に並んだ。

彼は指を組み、ビームの軌道上にある空間座標をねじ曲げる。

 

「術式反転・『赫』……いや、面倒だ」

五条は指を弾いた。

「虚式・『茈』」

 

仮想の質量が射出される。

宿儺の炎と、五条の茈。

呪術界の二大巨頭の火力が重なり合い、コズミック・ビームを真っ向から押し返した。

 

バリバリバリバリッ!!

 

空が割れた。

ビームが霧散し、紫色の光の雨となってニューヨークに降り注ぐ。

直撃すれば都市が消える攻撃を、たった二人で防ぎ切ったのだ。

 

「……チッ。五条悟、貴様が混ぜたせいで威力が落ちたぞ」

「はあ? 僕が押し返したんだけど? 感謝してよね」

 

空中で火花を散らす二人。

だが、その隙に「本命」が道を切り開いていた。

 

「道は開いた! 行け、デンジ!」

ソーがムジョルニアを振り回す。

「我が雷をくれてやる! その刃で悪魔を断て!」

 

バリバリッ!!

ソーの召喚した雷撃が、デンジのチェーンソーに直撃した。

「ギャアアアア! 痺れるぅぅぅ! でも力が湧いてくるぅぅぅ!!」

 

デンジの刃が、雷を帯びて青白く発光する。

雷神の魔力と、チェンソーの悪魔の概念消滅能力のハイブリッド。

アース-666の科学と魔法、そして異界の呪いが結集した、一撃必殺の形態。

 

「リリ! スターク!彼を押し込め!」

サムが叫ぶ。

 

「了解! ロケット噴射だ!」

アイアンマンとアイアンハート、ウォーマシーンが背後からデンジを加速させる。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

デンジは光の弾丸となり、アベンジャーズ・タワーのペントハウスへ突っ込んだ。

 

 

 

ペントハウス。

マキマは、迫りくる光の弾丸を冷静に見据えていた。

 

「無駄」

彼女の背後にある「セレスティアルズの光輪」が輝く。

「私は宇宙の理そのもの。……『止まれ』」

 

彼女が命じれば、物理法則は従うはずだった。

だが。

 

ギャリギャリギャリギャリ!!!!

 

デンジは止まらない。

マキマの展開した「概念防御」の壁――「自分より下等な存在の攻撃は届かない」というルールが、デンジのチェーンソーに触れた瞬間、豆腐のように削り取られていく。

 

「なっ……!?」

マキマの黄金の瞳が揺らいだ。

「なぜ……? あなたは私より弱いはず……!」

 

「関係ねえよ!!」

デンジが叫ぶ。

「俺はアンタよりバカで、アンタより弱ぇかもしれねぇけど! 今日の俺は……最高に腹が減ってんだよ!!」

 

ズバァァァン!!

 

マキマの障壁が粉砕された。

デンジがマキマの懐に飛び込む。

 

「マキマさぁぁぁん!! 俺と一つになろうぜぇぇぇ!!」

 

デンジは、マキマを斬るのではない。

彼女の背後に浮かぶ、セレスティアルズから奪った力の象徴――「光輪」に噛み付いた。

 

ガブッ!!

 

「やめ……!」

マキマが手を伸ばす。

 

だが、チェンソーの悪魔の能力が発動した。

「食べたものの存在を消滅させる」力。

デンジが食いちぎったのは、マキマが保持していた「宇宙支配の概念」そのものだ。

 

バキンッ……!

 

光輪が砕け散った。

ノーウェアからのエネルギー供給が断たれる。

マキマの体に満ちていた全知全能の力が、風船がしぼむように抜けていく。

 

「力が……私の支配が……」

マキマが膝をつく。

彼女はただの「支配の悪魔」に戻った。不死身ではあるが、神ではない。

 

 

 

「へへっ……ごちそうさま」

デンジは口元の光の粒子を拭い、変身を解いた。

ボロボロの生身の姿で、マキマの前に立つ。

 

「マキマさん。もうアンタは神様じゃねえ」

デンジは、膝をついたマキマに歩み寄った。

 

マキマは、空っぽになった自分の手を見つめていた。

「……そう。また負けるのか、チェンソーマンに...」

彼女の表情には、怒りも恐怖もなかった。ただ、深い徒労感と、どこか安堵したような色が混じっていた。

「私はただ……対等な関係が欲しかっただけなのに」

 

「俺じゃダメか?」

デンジが彼女の前にしゃがみ込む。

 

「……デンジ君じゃ、顔がタイプじゃない」

マキマはふっと笑った。それは、初めて彼女が見せた、演技ではない素の笑顔だったかもしれない。

 

「そっか。残念」

デンジは、マキマをそっと抱きしめた。

殺意ではない。支配でもない。

ただの、少年としての情愛。

 

「じゃあ、サヨナラだ」

 

デンジの胸から、ポチタのチェンソーが飛び出した。

ズシュッ。

刃がマキマの心臓を貫く。

 

契約の代償、不死性の無効化、そして概念的な「死」。

マキマの体が光の粒子となって崩れていく。

日本国民へのダメージ転嫁も発動しない。デンジの攻撃は「攻撃」として認識されなかったからだ。

 

「……またね、デンジ君」

 

マキマは光の中に消えた。

残されたのは、静寂と、デンジの腕の中に残った温もりだけだった。

 

 

 

 

マキマが消滅した瞬間。

空を覆っていた赤黒い霧が晴れ、ニューヨークに本来の青空が戻ってきた。

 

「終わった……のか?」

スパイダーマンが座り込む。

 

「ああ。コアが消えた」

ストレンジがヴォルトの杖を下ろした。

 

上空では、五条悟と宿儺が降りてくる。

「ちぇっ、結局美味しいところは全部デンジくんが持ってったね」

五条がサングラスをかけ直す。

 

「……フン」

宿儺は興味を失ったように、消滅したマキマの痕跡を一瞥した。

「まあいい。羂索の思惑も潰えた。……これ以上ここにいても退屈なだけだ」

 

その時。

世界が震えた。

ゴゴゴゴゴゴ……。

 

「インカージョンが逆再生されている!」

ストレンジが叫ぶ。

「世界が離れようとしているんだ! 異界の者たちは元の世界へ強制送還されるぞ!」

 

空間に巨大な亀裂が走り、吸い込み始める。

 

「お別れの時間だね」

五条が、ストレンジに向かって手を挙げた。

「楽しかったよ、ドクター。……君の世界のコーヒー、悪くなかった」

 

「二度と来るなよ、最強の術師」

ストレンジは苦笑して握手を返そうとしたが、五条の体は既に光になりかけていた。

 

「デンジ!」

スパイダーマンが叫ぶ。

「ありがとう! 君は最高のヒーローだ!」

 

「ヒーロー? 俺が?」

デンジは光に包まれながら、鼻の下をこすった。

「へへっ、悪くねえ響きだな! ……あ、そうだ! 誰か食パン余ってねえ!?」

 

「あっちで食べな!」

アメリカ・チャベスが笑いながら手を振る。

 

宿儺は答えず、ただ冷笑を残して消えていった。

 

シュンッ……!

 

光が収束し、異界の戦士たちは全員、元の世界へと帰還した。

アース-JJK、アース-CSM。

それぞれの物語へ。

 

残されたのは、アース-666のヒーローたちと、戦いの爪痕が残るニューヨークの街並みだけだった。

 

 

 

 

結晶の聖域。

ウアトゥは、平穏を取り戻したアース-666を見下ろしていた。

 

「こうして、多元宇宙を揺るがした『呪い』の侵略は幕を閉じた」

 

画面には、復興作業に勤しむアベンジャーズや、日常に戻ったスパイダーマンの姿。

そして、サンクタムの窓辺で、コーヒーを啜りながら静かに本を読むドクター・ストレンジの姿があった。

彼の手元には、黒く焦げた「指」の残骸と、小さな「チェンソーの刃」が、封印箱に収められている。

 

「彼らは知った。自分たちの知らない『理』が、この広い宇宙には無数に存在することを」

 

ウアトゥの視線が、画面の端に移る。

そこには、日本のどこか(アース-JJK)で、宿儺が計画を立てている姿、地獄(アース-CSM)で新たな支配の悪魔(ナユタ)が生まれ落ちる瞬間が映っていた。

 

「物語は続く。それぞれの世界で、それぞれの形で」

 

ウアトゥは目を閉じた。

 

「だが、彼らの運命が再び交わることは、もうないだろう。……そう願いたいものだ」

 

「私はウォッチャー。ただ観測する者……」




『ドクター・ストレンジ:マルチバース・イーター』
完結です!楽しんでいたたけたでしょうか?ありがとうございました!....
と言いたいところですが、続きを作ります。(主人公はストレンジから五条悟へ)
この事件から10日後の、アース-JJK(呪術廻戦)が舞台です(TVAが舞台って言った方がいいかな?)。五条悟とTVAの話。ほぼスピンオフ作品です
新規で作りますので、良かったらそちらも見ていただくと幸いです!!
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