片喰は夜に揺れる ~Fate / Berserk Requiem~   作:斑鳩古都

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第3章 狂戦士襲来 〜第7節 道に落ちた雪は、溶けるまでその場から動かない〜

【ランサー・長宗我部元親の視点】

 

 

 一瞬何が起きたのか分からなかった。

 一領具足たちは、私の指揮下から離れ、ナニカに誘いこまれるように海へと駆け出して行った。

 私は止めた。でも、止められなかった。何が起きているのかそれを確かめるため、渾身の跳躍を行い、上空を滑空した。宙に浮きながら、我が兵の進む先にある黒い塊を見つけた。

 その瞬間、全身を痛みが貫いた。別に攻撃を受けたわけでもない。ただ単純に、恐怖が身体を支配したのだ。そしてその刹那、私は全てを理解する。本能が、教えてくれる。

 嗚呼、私はあの存在には一生勝つことは出来ない。

 戸次川が、頭からこびりついて離れない。

 

 

 そうして、砂浜にて爆発の様な閃光が放たれた。余りの眩しさに眼を覆う。そして、光が消え失せた後には、我が配下四千名と、アーチャーの宝具である鉄砲足軽八千名は、跡形もなく姿を消していた。

 

 

 ★

 

 

 上空から、くないと、アーチャーが着地した。恐らく、待ち伏せのポイントから急いでこちらに向かってきたのだろう。

「くない! 大丈夫か!」

 だが、その言葉に反応は無かった。くないは、唇を震わせながら、顔面蒼白でバーサーカーを見つめていた。

 アーチャーも、その表情に余裕は見られない。くないは、四千の兵数で済んだが、アーチャーの宝具『坂東太郎』は全て消滅してしまった。宝具を破られたことによるダメージが、その身に襲い掛かっているのだろう。アーチャー・佐竹義重は立ち上がることが出来ないでいた。

 そして、もう1人。雷切丸を携えた、セイバー・立花道雪は立ち尽くしたまま、徐ろに言葉を発した。

「はっは、貴殿。そう、そこの貴殿よ。良く聞こえなくてな、もう一回言ってくれんかのう? なぁ、貴殿――――鬼島津と言ったか?」

 その表情は、憎しみで満ち満ちていた。眼は裂けんばかりに見開かれ、歯茎から血が出るのではと思うぐらい歯を食いしばっている。憤怒の表情は、まるで般若の面のようであった。

 そうして、セイバーが今にも飛び掛からんとしたその時、

 

 

「全く、滑稽ですね。罠にはめたつもりが、罠にはめられていたなんて」

 

 

 声が聞こえた。目の前の、黒いケダモノの後ろから。

 忘れることなんて出来ない。この声は、小夜子を手駒としていたあの声の主。そう、バーサーカーのマスターだ。

 そうして、バーサーカーの影から姿を現した者がいた。そこに居たのは、二人の男だった。バーサーカーを挟むように、二人の人影が左右に立っている。異様なのは、その二人の男は着ている服は違っているが、顔は全く同じだったことだ。二人とも背が高く、細身だった。双子なのだろうか。

 右側に立つ一人は、執事の様な燕尾服に袖を通していた。顔には眼鏡が掛けられており、柔和な表情だ。だが、何故か悲しげに微笑んでいる。

 左側に立つ一人は、神社の神主の様な斎服を着ている。だが、その服の色は黒。闇に溶けそうなほどの漆黒の斎服だった。そして、その表情には不敵な笑みが浮かべられている。

 本能で分かる。あの声の主は、漆黒の斎服に袖を通した左の男だ。

 と、突如、唇を震わせていたくないが、言葉を漏らした。

「お前。カシン、カシンじゃないか」

 カシンという言葉に反応したのは、右側の執事風の男だ。

「えぇ、貴女様。お久しぶりでございますね。待合室でお別れして以来となります。皆様のカシンでございます」

「くない、お前は知っているのか」

「あぁ、ここで召喚される前に、居た場所がある。そこで私たち英霊に給仕してくれていた男だ。何を隠そう、私に”くない”という呼び名を与えてくれたのは、あやつじゃ」

 マジかよ。どうしてその男がこんな場所に居るんだ。

 と、セイバーとアーチャーも口を開く。

「そう言えば、拙僧も見覚えがあるな」

「俺っちもだ。いい感じにもてなしてくれたこと、覚えてるぜ」

「えぇ、道雪様、義重様も、お変わりの無いようで」

 久々に知人と出会ったように、嬉しそうに笑う。不思議と、この人から悪意を感じなかった。

「皆様、よくぞここまで戦い抜かれましたな。このカシン、影ながら皆様を応援しておりましたよ。ですが、大変名残惜しいのですが――――ここでお別れです」

「カシン! それはどういう意味じゃ!」

 くないの叫びに、カシンと呼ばれた男は寂し気に笑うだけだ。それを見て、漆黒の斎服を着た男が、笑った。

「滑稽だなぁ、”キャスター”」

 この場に居る全員に緊張が走る。今、この男、何と言った?

「聞こえなかったのか? そうだ、この執事の様に気取って、お前らの味方の様に振舞っていたこの男が、キャスターのサーヴァントだと言ってるんだよ」

 サーヴァント? この、悪意の欠片もなさそうな、この男が?

「そ、んな、カシン、お前は私たちを騙していたのか? 私たちを裏切っていたのか?」

「あぁ、ランサーよ、違う違う。この男は律儀にお前たちを支えようとしていた。むしろ、その行為が――――」

 漆黒の斎服を着た男は、視線を動かした。その視線の先にはバーサーカーが居た。

 

 

「――――この私への裏切りだったんだからな」

 

 

 ズドン、と音が響いた。

 バーサーカーの手にした槍が、カシンと呼ばれた男を一筋に貫いていた。

 カシンの表情は穏やかだった。まるで、自分が処刑されるのが分かっていたようだった。

 そうして、退去が始まる。足元から順に、光の粒子に包まれていく。そうして、カシンと呼ばれた男は、微笑みを称えたまま、宙に消えていった。

 

 

 ★

 

 

「じゃあ、さっさとお前たちを消すことにしよう」

 斎服の男は、無慈悲に告げた。

「今、キャスターを始末したから、ここにいるセイバー・アーチャー・ランサーを処分すれば、我がバーサーカーが勝者になるな。面倒だ、一気にかかってくるか?」

 と、斎服の男は、急に眼をパチクリとし始める。

「あぁ、何のことか分からないという顔をしているね。さっき始末したキャスターは、私が呼び出したサーヴァントだ。そして、私自身でもある」

 俺は、周囲の人たちを代弁し、疑問を投げかける。

「それは、どういうことだ? キャスターがお前自身って意味が全く分からない。お前は、バーサーカーのマスターじゃないのか?」

「あぁ、分かるように説明してやろう。私は、サーヴァントとして召喚されてもおかしくない英霊なのだよ。今回は、バーサーカーのマスターでもあり、キャスターのマスターでもある。そして、キャスターとして召喚したのは、生前の私ということだ。まぁ、ちょっと性格が良い子ちゃん過ぎてしまっていて、オルタナティブとも呼ぶべき存在ではあったがな」

「百歩譲って、お前が英霊だとしよう。魔術師であるお前が、サーヴァントとしてのお前を召喚するなんてことが出来るのか?」

「ははは、今更何を言ってるんだ? この聖杯戦争は狂っているんだよ。別に一人のマスターが二体のサーヴァントと契約していたり、とある英霊が魔術師という立場として自分自身を召喚したとしても、何らおかしくはない」

 ツッコミどころは多々あるが、俺はグッと言葉を飲み込んだ。目の前の男なら、確かに不可能ではないのかもしれない。

「そう、この聖杯戦争は特殊でね。所謂”座”と呼ばれる場所。英霊たちが還るべき場所から召喚しているわけではないんだ。君たちサーヴァントは、私が個別にヘッドハンティングして、独自にその存在をキープさせてもらっていたのだよ。つまり、私専用の”座”を作り、そこの管理をキャスターに任せていたということだ」

「............お前、どういう事だ」

 偽健吾が、黒い斎服の男へ食ってかかる。

「あぁ、君がアーチャーのマスターか。会いたかったよ。君も、私に会いたかったんだろう?」

「あぁ、会いたかったよ。物心ついた時から、お前の事ばかりを考えていたさ」

「それは光栄だね。なら、私の邪魔をせずに大人しくして居て欲しかったけれども」

 邪魔? 物心ついた時から? どういう意味だ。

「は、アンタを出し抜く為なら俺は何だってするさ。この世の全てを騙して、裏切ったとしてもな」

 偽健吾は、眼をギラつかせている。やつがこの戦いに身を投じた理由。それは、恐らくこの斎服の男に出会い、そして倒すためなのだろう。

「それよりも説明しろ。”座”を独自に作るとは、一体」

「人材派遣会社、というものがこの現世にはあるのだろう? それと同じ考え方だよ」

 斎服の男は、不敵な笑みを浮かべる。

「私は、人理と言うものが嫌いでね。そういった存在から”人材派遣”を受けるのは虫唾が走るんだよ。だから、自分で英霊を囲い込む。囲い込むために、自分の力で聖杯戦争を作り運営する。知ってるかい? 私が今までに手掛けてきた様々な聖杯戦争の数を。軽く百は超えるんだが、中々私が理想とするものにはほど遠くてね。毎回色んな趣向を凝らしているんだ」

 聖杯戦争を、手掛ける、だと。

「今回は、鬼というコンセプトで演出してみたよ。結構面白かっただろう? 全員が狂化スキルを有するなんて、最高じゃないか」

「貴様、そんなことの為に、多くの人たちを巻き込んでいたのか!」

 偽健吾は叫ぶ。それに対する斎服の男は、笑みを崩さない。

「あぁ、勿論。言っただろう、私は人理が嫌いだと。こんな人間の世は滅んでしまえばいい。まぁ、唯一捨てたもんじゃ無いものも、あるんだけれどね」

 捨てたものじゃない? この男の目的は一体......。

「おっと、君と私ばかりが喋っているじゃないか。こういう時はもっと色んな登場人物に見せ場を作ってあげないとね」

「うるさい、これ以上お前の好きにはさせない」

「そんな口の利き方は良くないなぁ。そうだろ? 君は私の正体を知っているはずだ」

「やめろ! それ以上言うな!」

 偽健吾は、必死に叫ぶ。言うな? あの男が何を言ったらいけないのか。

 そうして、斎服の男は、楽しくて仕方が無いという風に口を開いた。

「アーチャーのマスター。君と私は血が繋がっているのだから」

「な、なに......?」

 思わず、言葉が漏れてしまった。今回の黒幕である、バーサーカーのマスターは、あいつの関係者?

「そうだよ、犬塚守尭くん。そうだね、私と先ほど処分した裏切り者の正体を教えてあげよう。魔術世界では、くだらないコードネームで呼ばれているがね」

 そう言うと、声高々に斎服の男は宣言した。

 

 

「我が名は、カシン。そう、――――果心居士(かしんこじ)である」

 

 

 ★

 

 

 果心居士(かしんこじ)。

 俺には、馴染みのない人名だった。

「............十六世紀、戦国時代で、人々に恐れられた幻術使いだ。別名、”七宝行者”さ」

 偽健吾は、力無く項垂れながら、説明を始めた。

「大和国、現在の奈良県にある興福寺の僧侶だったと言われている。だが、外法の技に通じ、幻術や鬼道と呼ばれる術を駆使したため、興福寺から破門をされてしまった。そうして全国を渡り歩き、金を稼ぐためにその幻術を使って生きていた。そういった外法の術で人々を惑わせ一世を風靡し、信長・秀吉・家康といった時の権力者たちに見いだされるも、その力を恐れられ殺害されたと言われる。だが、文献によってその生涯は異なっており、死んだとされるエピソードも数多く存在している。信長に殺されたとも、秀吉に殺されたとも、ね。むしろ殺されたが実は生きていたという話さえ無数に存在する。正体不明、実在したかも定かではない、謎に包まれた人物。それが、果心居士だ。魔術世界では、コードネーム”K”と呼ばれている」

「そうか、アレが”K"か......」

 成田先生が口を開く。

「成田先生、知っているのか」

「あぁ、守尭くん。触れてはならない禁忌の一つとされている」

 目の前の斎服の男、いや、果心居士は上出来だと言わんばかりに、手を叩いた。拍手だ。それは、自らの正体を解説してみせた、偽健吾への賛辞。

「ありがとう、アーチャーのマスター。そして、君の中には、忌まわしき私の血が流れている。どうやら、色々と苦労をかけてしまったみたいで申し訳ないねぇ」

「うるさい。黙れ」

「どうやって、黙らせる? 君の自慢のサーヴァントの宝具は、今さっき潰して見せただろう?」

 アーチャーは未だに地に膝をついたままだ。かなり消耗が激しいみたいだ。

「令呪を使うかい? そうして魔力を補填して、また『坂東太郎』を開放するかい? 何度やったって一緒だよ。私のバーサーカーの前では、何度でも包囲され殲滅されるのがオチさ」

 そう言って、果心居士は不敵な笑みを崩さない。悔しいが、その通りだ。さっきの閃光を見た後では、『坂東太郎』も、そして『死生知らずの野武士なり』も通用しない。かつての部下を召喚し総攻撃をしかけるタイプの対軍宝具は、このバーサーカーには相性が悪すぎる......!

 

 

「ならば、拙僧がお相手致そう」

 

 

 そんな中、一歩前に出る者が居る。セイバー・立花道雪だ。

「拙僧の宝具であれば、『釣り野伏せ』は通用せん。なぁに、手はずが変わったとしても戦場でやることは何も変わりはせんのよ」

 百戦錬磨の鬼道雪。その言葉に、心の中の絶望感も解きほぐされていく。

「それに、――――島津と聞いて、血が滾らん拙僧では無いわ」

 そうだ。立花道雪が使えた大友家は、島津家に負けたことで凋落していった。生前叶わなかった、リベンジマッチ。鬼道雪は、燃えていた。

「アーチャー。ちょっと魔力の消費が酷過ぎるな、見てられんわい。ちょっとそこで休んでおけ」

「............かたじけない」

 いつもは調子のいいアーチャーが、殊勝だ。

「ランサー。そなた、なんちゅう顔をしておる。いいか? お前のマスターはまだまだひよっこよ。しっかり、守ってやれ。そして、戸次川の仇討ち、拙僧が代わりに承ろう」

「道雪......公......」

「はっはっは! 残念じゃろ? 今ここでバーサーカーは拙僧が倒す。お主は、息子の仇討ちをする機会を失うわけじゃ。せいぜい、よーく見ておけよ」

 そう言って、セイバーは成田先生に向き直る。

「マスター。じゃ、頼むわい」

「あぁ、セイバー」

 そう言って、成田先生は目をつぶる。先生の魔術回路が、起動する気配を感じた。

「――――令呪を持って命ずる。宝具『雷切丸』にて、バーサーカーを殲滅しろ!」

 

 

 そうして、辺りは眩い光に包まれた。

 セイバーの構える雷切丸。それを台風の目として、天をも焦がすほどの光の柱が立ち昇る。それは、とてつもなく大きな雷。山一つどころではない、見渡す限りを焼き尽くすであろうその大きさ。

 雷とは、神が鳴るとも表現される。これは、まさしく雷神の化身に相違なかった。

「――――令呪を持って、重ねて命じる! セイバー、さらなる追加魔力で持って、確実にバーサーカーを仕留めよ!」

「応」

 令呪の二画使用だ。ただでさえ、尋常ではない火力である。それに重ね掛けときた。これは疑いようも無く、確実に必殺の一撃となる。

「ではな、島津よ。お主がどの”島津”なのかは分からぬが、もう良い。言わずとも良い。何故ならば、――――ここで拙僧が討ち果たすからよ」

 瞬間、バーサーカーのマスターを名乗った果心居士は、透明になって消えた。小夜子が生み出した固有結界の中でも、姿形を隠していた。アイツ、身を隠して攻撃を避けるつもりか。だが、バーサーカーはそこに残されたままだ。

 色んな謎は尽きないままだが、これだけは言える。奴がサーヴァントを失ってしまえば、俺たちの勝ちに違いない。

 

 

 そうして、天をも焦がす光の柱は、バーサーカーめがけて放たれた。

 バーサーカーは、その場で身じろぎもせず、立ち尽くす。

 攻撃を正面から受け切って見せると、自信に満ち溢れているようだ。だが、この攻撃を受けて、無事で済むはずがない。

 光の柱は、とてつもない轟音と衝撃波を伴って、バーサーカーへ直撃した。あまりの眩しさ目をつぶりそうになるが、耐える。見届けなければ、とその一心で俺は目を開け続けた。

 そうして、俺の視界の片隅で、雷切丸の渾身の一撃は、確かにバーサーカーへ直撃し、その霊核を砕いていた。

 衝撃波に耐えながら俺は見る。バーサーカーは光の粒子となり、消え去っていき、そして――――

 

 

 ――――セイバーの身は、槍で貫かれた。

 

 

 ★

 

 

「あぁ、抜かったのう......」

 セイバーは、小さく呟く。その口から血が溢れる。

「勝負を急ぎ過ぎてしまったわ。この道雪としたことが、抜かったのう......」

「セイ、バー......」

 成田先生が、崩れ落ちて、膝をつく。

「マスター。申し訳ない。あなたの夢を叶えることが出来なかった」

「そん、な、私こそ......」

「いやいや、二度も主君の夢を叶えられなかった」

 ははは、とセイバーは哀し気に笑った。

「雪は、降り積もった場所から決して動くことは無い。道の上の雪は、その場所で静かに溶けていく。それは虚しいのではない、美しいと考えるべきなのですよ。武士として生まれた以上、使える主君は一つのみ。道に積もった雪の様に、一筋にそこに在り続ける。道雪(どうせつ)。拙僧はこの言葉が好きでしてな。好き過ぎて、出家した後に名乗るほどでした」

 セイバーは、成田先生を見つめて、優しく微笑んだ。

「ですから、あなたもその思いを強く持ち続けることです。生き方を全うするのです。そうすれば、あなたの大切な方も、きっと再び自身の足で歩くことが出来ますぞ。聖杯の力になぞ頼らなくても、あなたの願いはいつか叶う。拙僧はそう信じております」

「あぁ......そうだな。セイバー、こんな不出来なマスターの元に来てくれて、ありがとう......」

「おやおや、何をおっしゃいますやら。あなた様は、不出来なマスターではありませんぞ?」

 光の粒子が立ち昇る。あぁ、消えていく。セイバー・立花道雪が消えていく。

 そして、蔓延の笑みを浮かべながら、鬼道雪は語り掛けた。

「だって、素敵な夢が叶ったのです。もう一度、我が足で、戦場を駆け抜けられた。拙僧こそ、感謝です。我がマスター、成田左近様」

 

 

 ★

 

 

「――――第二宝具『捨て奸(すてがまり)』を発動した」

 光が全て、消えていく。そこに残されたのは、黒い炎をまとったバーサーカーのみだ。

「この宝具の効果は、自身の命と引き換えに、相手の命を奪うという諸刃の剣だ。こうでもしなければ、セイバー・立花道雪を葬ることは出来なかった」

「どういうことだ! 説明しろ!」

 俺は、泣いていた。あのセイバーが負けたのだ。いつも空気を読まずに高笑いしながら場を和ませてくれた、あのセイバーが。そうして涙を拭うこともなく、バーサーカーへ問い詰める。

 まだ、頭の中にセイバーの笑顔が残像として残っている。あの圧倒的な火力。聖剣の輝き。令呪二画分の魔力でもって放たれた雷撃。それは確かにバーサーカーに直撃した。

「どうしてお前は生きている!? どうしてお前は宝具を二つも持っているんだ!!」

「それは違います、ランサーのマスター。我、いや我らは、――――霊核と宝具を四つ保有している」

「...............................は?」

「ちなみに『捨て奸(すてがまり)』を発動したことにより、霊核は一つ失われた。残数は三つだ」

 目の前のバーサーカーが理解の及ばないことを言った。

「マスターよ。もう正体を告げてもよろしいか?」

「あぁ、構わないよ。どうせ、こいつらじゃお前たちには勝てないからな」

 いつの間にか、再びその姿を現していた果心居士。その言葉に促され、バーサーカーはある行動を起こす。

 黒い炎が、解けていく。その中から、一人の男が現れた。

 身長は175センチ程度。身体はすらりとしており、狂化していた時のように決して巨漢ではない。炎を分厚く纏っていたのだろう、中肉中背という表現がピッタリだった。

 そして、驚くべきことに、羽織袴というような恰好では無かった。黒のクラシカルなタイプの学ランを上下着ている。戦前の男子学生が身にまとうかのような、古風な学生服だった。

 そうして、バーサーカーは何の感情も見せずに呟いた。狂化が解かれたからか、くぐもったような声ではなく、透き通るような美しい声だった。

「......この服は、マスターの趣味だ。勘違いしないで頂きたい」

 その顔は、端正な顔立ちだった。髪は短く切りそろえられ清潔感がある。目元の掘りは深く、鼻筋は通っており、そして地味なフレームの眼鏡をかけていた。年のころは、俺よりも少し上だろうか。大人びて見えるが、同時に幼いようにも思える。

 どう見ても、サーヴァントとは思えない。ただの男子学生の様に見えた。

 学ランを着こなすサーヴァント。どうしてだろう、セーラー服を身に着けたくないと対比されているように感じた。

 そうして、バーサーカーを名乗る男は、静かに自らの正体を明らかにすべく言葉を紡いだ。

「我が、いえ、我らは島津。鬼島津」

 一呼吸置く。

「長男、島津義久。次男、島津義弘。三男、島津歳久。四男、島津家久。戦国の世を駆け抜けし四名分の全ての霊基が、合体し、溶けあい、一つになった存在――――」

 

 

「――――鬼石曼子(グイシーマンズ)。島津四兄弟、とでも呼んでもらいましょうか」

 

 

 

通知[NEW!!]:トロフィーが記録されました

「バーサークセイバー 立花道雪 敗北により脱落」

 

 

通知[NEW!!]:トロフィーが記録されました

「バーサークキャスター カシン(果心居士オルタ) マスターにより粛正され脱落」

 

 

 

 

真名解放[NEW!!]

サーヴァント・バーサークバーサーカー

 

真名:島津四兄弟

(島津義久、義弘、歳久、家久)

通称:鬼島津、鬼石曼子

※四名の英霊の霊基が合一した姿

 

第一宝具:?????

第二宝具:捨て奸(すてがまり)

第三宝具:釣り野伏せ

第四宝具:?????

※この情報は不完全です

※引き続きストーリーを進めることで

明らかになります

 

 

 

 

 

第3章 第7節 了

次へ進みますか?

>はい 

 いいえ

 

 

【注意事項】

本作における『果心居士(かしんこじ)』は、FGOに実装されているサーヴァントとは別世界の存在です。

一切、FGOの『果心居士(かしんこじ)』との関連はございません。

オリジナル設定の存在としてお楽しみください。

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