片喰は夜に揺れる ~Fate / Berserk Requiem~   作:斑鳩古都

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第5章 丸に十文字と七つ片喰 〜第7節 邂逅〜

【果心居士の視点】

 

 

 私は戦いを抜け出して例の『待合室』へと辿り着いた。だが、到着して早々ある違和感を感じた。

 この感覚。なんと、バーサーカーは消えたか。

 つまり、この聖杯戦争において私の勝ちは無くなったのだった。

 だが、勘違いしてはならない。これは聖杯戦争に見えて、聖杯戦争に非ず。何故ならば、聖杯は既に我が手元にある。

 残念だったな、ランサーよ。お前たちに聖杯は渡さない。

 今から私は、この特異点を消滅させる。そして、またどこかで別の特異点を生むのだ。

 それにしても甚だ残念だ。今回も、私の願いを叶えることはできなかった。

 その願いとは、ある人をサーヴァントとして召喚するということに他ならない。

 またしても、あの人を召喚することは出来なかった。縁のあるサーヴァントを餌とし、呼び寄せるという私の計画は今回も未達成だ。

 だが、これで終わりでは無い。

 何度でもやり直してやる。

 何度でも、作り出してやる。

 大丈夫。私なら上手くやれる。そう、あの人と再び出会う為ならば。

 だが、

「............おや?」

 頭の中になる警告音。この区域にしかけた魔術による防犯装置が作動している。

 これは、侵入者だ。我が城へ侵入したものがいる。

 一体、どこの誰だ。そんな不届き者は処分してくれる。

 

 

「ほう、中々良い所ではないか」

 

 

 甲高い、少女の声が、部屋に響いた。

 その声には、聞き覚えがあった。いや、聞き覚えと言うレベルではない。

 待ち焦がれ、恋焦がれた存在。

 そこにいるのは、愛しの人。

「あ、ああ、あああああ、あなたは......」

 身長は150cmそこそこと小さく細身の体躯。衣服は生前とは異なり、漆黒の軍服と軍帽に身を包んではいるが、忘れようもない。

 その声、その姿。

 腰に差している業物は、へし切長谷部。そして軍帽に飾られた、織田木瓜の家紋。

 

 

「おう、邪魔しておるぞ。我こそは、織田信長。今はアーチャークラスのサーヴァントだがな」

 

 

 目の前の少女こそ、私が恋焦がれた戦国の風雲児であり、第六天魔王と呼ばれた織田信長に相違なかった。後世では男性として語られているが、ご覧の通り少女の姿である。少なくとも、私が生前に出会った織田信長は目の前の御仁であった。

「そうそう、お主のこと覚えておるぞ。果心居士じゃったの。安土城下に来ておった時に、会ったことがあったな」

 動悸が止まらない。涙がこぼれそうだ。まさか、まさかまさかまさか、ようやく願いが叶うとは。

 そう、我が願いとは、愛しの存在である織田信長を召喚することだ。そして、我がサーヴァントとして使役し、未来永劫、共に過ごすのだ。

 生前、私は彼女に一目惚れした。そして願い出たのである。あなた様の、家来にしていただきたい、と。

 だが、その際は縁が無かった。家来として頂くことは叶わなかった。

 であれば、此度は我が家来として終生過ごして頂く。私がマスターで、彼女がサーヴァント。主従の関係などどちらが上でも関係ない。共にいられるのであればどちらでも構わないのだが、この方が色々と都合が良いのだ。

「そう言えば、お主。わしの家来になりたいとか抜かしておったな」

「さ、ささ、左様で」

「で、あるか。あの時はすまんかったの。そなたの願いを拒絶してしまって。まぁ、天下人ともあれば、色々とあるのじゃ、許せ」

「さ、されば、今度こそ......」

「ん? なんじゃ? そなた、わしの家来になりたくて、この特異点を作ったのか? その為に聖杯戦争の真似事をしていたのか?」

「さ、左様にございます......」

 話が早くて助かる。とにかくこの千載一遇の好機を逃したくはない。

「なんじゃそりゃ。そんなことなら、幾らでもかなえてやるわ。構わん構わん、ただいまから、そなたはワシの家来じゃ。のう、これで本望か?」

「教悦、至極に......」

 やった。やったやったやったやった!!

 嗚呼、何という僥倖。我が願いは成就せり!

 さて、さっさと契約を結ばねばなるまい。織田信長は気分屋だ。すぐに気が変わられては敵わないからな。

 と、契約の準備にとりかかろうとしたその時、

 

 

「――――その前に、聞きたいことがある」

 

 

 目の前の少女・織田信長は、言った。

 ぞくり、と身体が震えた。言葉だけで、この場は織田信長によって支配された。まるで見えない刃物を突き付けられているかのような悪寒。これは、この気配は、宝具ではないか?

「平手政秀

 柴田勝家

 佐久間信盛

 林秀貞

 丹羽長秀

 羽柴秀吉

 明智光秀

 滝川一益

 前田利家

 佐々成政

 池田恒興

 稲葉一鉄

 氏家卜全

 蒲生氏郷

 坂井久蔵

 佐久間盛政

 原田直政

 不破光治

 細川藤孝

 森可成

 河尻秀隆

 堀秀政

 村井貞勝

 毛利新介

 山内一豊

 坂井政尚

 金森長近

 加藤嘉明

 蜂須賀正勝

 前野長康

 溝口秀勝

 生駒親正

 織田信包

 浅野長政

 蜂屋頼隆

 前田玄以

 太田牛一

 そして、今回は未遂じゃが、――――森長可」

 信長様は、一体何を言っているのだ。

「調べたぞ。今のは、そなたが作った数々の特異点で召喚した、わしの家臣たちじゃな。狙いとしては、あれかの? 織田家の家臣たちを召喚すれば、その縁に導かれてわしが出てくるのではないか。そういうことじゃろ?」

「さ、左様で」

「で、クソ変態なお前のことじゃ、本当はわしを召喚して、得意の幻術を使って手懐けて、思うがままにしたかったのじゃろう? まるで性奴隷のようにな」

「めめめ、めっそうもございません。ただ、私は、貴女様と一緒に過ごせればと、そうおもっていた次第にて」

「............まぁ、そういうことにしておこうか。それにしても、この待合室だが良く出来ておる。ここにわしを留め置かせる予定だったのであろう。ふむふむ、大儀であった」

 未だ宝具の気配を感じる。私は、平伏するしか無かった。一体、信長様は何がしたいというのだ?

「では、早速家臣となったのだから、わしの願いを聞いてくれないかの?」

「はっ、何なりと」

 と、目の前の少女・織田信長はにっこりと微笑みながら言った。

 

 

「――――早速だが、死んでくれ」

 

 

 気がつけば、周囲を埋め尽くす無数の火縄銃。それが、アーチャー・織田信長の宝具であることは明白だった。

「わしは、人理保証機関カルデアのサーヴァントでな。この特異点を修正するためにやってきた」

「な......!? カルデアは、壊滅したはずでは......」

「何とか生き延びておるよ。詳しくは割愛するが、今は白紙化した地球のため、異聞帯(ロストベルト)を切除するため、日夜戦っている」

 白紙化? 異聞帯? 何だそれは。

「ほうほう、長らく変な時空に入り込んでいるせいか、外の事を全く知らないようだな。まぁ、それは良い。どうせお前には関係のないことよ。――――言っとくけどお前、鋸引きの刑に処すからの」

 織田信長は、ぎらりと目を輝かせた。鋸引きの刑とは、生前信長が行った非常に残虐な処刑方法の事だ。

「中々この地にレイシフトできずに困っていたのだが、何とかさっき繋がってな。恐らく、お前がここでやっていたうつけみたいな聖杯戦争の真似事が、何らかの形で決着を迎えたからかもしれんな。というわけで、マスターからの命で、わしが先行してきたんじゃが............何という酷い特異点よ。虫唾が走るわ」

 火縄銃たちに魔力が宿っていく。我は、金縛りにあったように指ひとつ動かすことが出来ないでいた。

「しかも、我が家臣たちを餌におびき寄せようなど、気分が悪い。最悪よのう。お前、今まで沢山聖杯戦争をしてきたと言ったな。――――そこで、先ほど述べた大勢のワシの家臣たちをどう扱った? 物でも使うように使い潰したのではないか? そうだよな?? なぁ、そうだよなぁ!?!?」

 ごくり、と唾を飲み込んだ。

「ほう、図星か。なるほどなるほど。そりゃあ、死刑に匹敵するべき、この織田信長への侮辱よな」

「そ、んな......折角出会えたというのに......あんまりでございます」

「はは、何を言っておる。家臣にしてやったではないか。家臣ならば――――主君に手打ちにされても文句を言うものではない」

 火蓋が開く無数の金属音が聞こえた。そして目の前の、アーチャーのサーヴァントは叫ぶ。

「是非も無し、三千世界に屍を晒すが良い。天魔轟臨、これが魔王の『三千世界(さんだんうち)』じゃあぁぁぁっ!!」

 アーチャー織田信長の宝具『三千世界(さんだんうち)』が起動する。

「灰燼に帰すが良い。散々好き勝手した罰じゃ」

 お、のれ、おのれおのれおのれ、ここまで来たというのに、どうしてうまくいかない。おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇ!!

「――――織田信長ァァァァァァァ!!」

「ハッ、自業自得、己が招いた災厄よな。全く、――――是非もないよね?」

 

 

 

 

通知[NEW!!]:トロフィーが記録されました

「果心居士 完全に消滅」

 

 

【システムメッセージ】

ゲームマスターが敗北により消失しました

まもなく、この特異点は消滅を始めます

消滅まで、残り300秒

残り299秒

残り298秒

残り297秒

残り296秒

残り295秒

 

 

 

 

【カルデアのサーヴァント・織田信長の視点】

 

 

 あー、聞こえるかカルデア?

 おぉ、マスター藤丸よ。たった今敵を殲滅した。聖杯も回収したから、帰ってよい? え、駄目? マシュと一緒にこれから来る? それまでステイ?

 あーはいはい、仕方ないのう。

 え、何、沖田も来るの? 土方も?

 いやいいよ、来なくてよい。アイツらが来ると面倒なのよなぁ。

 え、長可も来る? 鬼・聖杯戦争だったのに鬼武蔵たる自分の出番が無いのが我慢ならない? しかも暴れている?

 あぁ......もう面倒だ.....適当にダーオカでもけしかけて止めてやってくれ......。

 え、こっちの特異点? そうじゃのう、中々に聖杯によって召喚されたサーヴァントたちが必死になって戦ってくれたおかげで、もうやることは無さそうじゃ。

 特にあのランサーとセイバー。カルデアに呼んでも面白いかなと思うがな。この織田信長、人を見る目は確かじゃぞ? まぁ、ミッツのような例外もあるがな。

 じゃあ、マスターが来るのを待っておるからな。くれぐれも! 馬鹿どもは連れてこないように!

 ............ふぅ、交信終了。

 やれやれ、一時はどうなることかと思ったが、何とか自らの生前の尻拭いをすることができたわい。

 いやーアイツなぁ、目をギラギラさせながら鼻息荒く「家臣にしてくれ」とか言うから、ちょっと気持ち悪くて拒否っただけなのに、まさかこんな事態を引き起こすことになるとはな。

 まぁ、別にわしが悪いわけじゃないけどね! 是非もないよね!

 ............それにしても、長宗我部か。

 気まぐれに息子に「信」の字をくれてやったが、まさかあそこまでの強さとはな。

 

 

 やれやれ、蝙蝠(こうもり)にしておくには勿体ない奴、よの。

 

 

 

 

第5章 第7節 了

次へ進みますか?

>はい 

 いいえ












既存のサーヴァントは登場しないと言ったな、アレは嘘だ。
ちなみに、お時間のある方は、最後のセリフの元ネタである「鳥なき島の蝙蝠」という言葉を調べてみてはいかがでしょうか。
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