ティファレト抑制の難易度が上昇しました   作:森の翁

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 匿名解除です、作風とか文とかで普通にバレそうかなって思ってたんですが、想定とは違う結果になりましたね。

 これはこれで面白いので良きです。


神経に至る病

 ハイドという機械はとても不思議だった。

 

 ある日カーリーが外郭から連れてきた双子に寄り添うようにして現れた巨大な人形機械。

 

 研究所の代表として挨拶をしようとしたのだけど、何故か私の名前を聞いた瞬間双子たちを抱き上げて凄いスピードで後退りしたのは記憶に新しいわ。

 

 本人はカルメンという名前には嫌な思い出があると言っていたけど、私の前にも同じ名前の人に会ったことがあるのかしら?

 

 それにハイドは自分の事をロボットだと自認しているけど、その行動の節々になんというか人間臭さがあったわ。

 

 そして、研究所に入った後も過剰なほどに私へ近寄ることを避けていた。

 

 私が彼(一応男性型らしい)に話しかけようとするといつも姿が消えるの。

 

 そういう時はいつの間にか別の部屋に移動しているのよ。

 

 一度だけ話しかけるのに成功して、私を避ける理由を聞いてみたら『貴方とはあまり深く関わらない方が良いと勘が言っています』ですって、ロボットなのに勘?本当に不思議な子、まるで本当に人間みたい。

 

 まだ会ったばかりだし警戒するのはわかるのだけどね。

 

 あぁでも、もう少しゆっくり話してみたいかなぁ。

 

 ※この間ハイドはカルメンを避けながら双子たちの世話をしています(アイン?多分影からハイドをじっと見てるよ)

 

「ハイドどうしたの?」

 

『返答、物凄く嫌な何かを感じました、この体は機械ですので寒気などは感じない筈なのですが』

 

「また誰かがハイドのひそひそ話でもしてるんじゃないかしら、例えば研究所の代表さんとか」

 

『恐怖、もし本当にそうであれば当機は自分の電源を落としてスリープモードに入ります』

 

「ハイドは本当に代表さんが苦手なのね」

 

『返答、何故かはわかりませんが彼女を見ると当機に存在しない筈の肺が締め付けられるような感覚を覚えます』

 

「そんなに?いったい代表さんの何がハイドの苦手意識をここまで刺激するのかしら」

 

 ※間違いなく彼の友人イリスによる入れ知恵。

 

『感知、未確認の生命反応がこちらに向かっています、本日は当機に関する研究及びお二人への研究所説明会なども予定されていない筈です。

 この反応、移動速度が中々に早いですね?動きも不規則ですしまるで...!?お二人は当機の後ろに隠れてください!』

 

 ハイドの叫び、それはエノクとリサに対する警告であると同時に、彼が臨戦態勢に入った合図でもあった。

 

 そしてまもなく、部屋の扉を破ってそれは現れた。

 

 それは皮肉な事に、ある女性が辿る末路と酷似した姿をしていた。

 

『接敵、クリファ因子起動...コード【シェリダー】これより戦闘行動を開始します。

 警告、現在当機に対する如何なる行動も攻撃と見なし、その全てを撃滅します、どうかどなたも誤った判断をしないようよろしくお願いいたします』

 

 神経のような羽、鮮血の如き体色、見開かれた眼。

 

 幻想体O-04-72、名を『地中の天国』という

 

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「...研究所の外で見回りをしている間に幻想体の脱走を許すとはな、職員に犠牲者は出ていないか?」

 

 カーリーは研究所内の廊下を全力で疾駆しながら無線越しに研究員へと話しかける。

 

『当該幻想体【O-04-72】の脱走時に収容所内で一名が死亡、その後は引き寄せられるようにある1ヵ所へ脇目も振らず向かっているようです』

 

「それは何処だ?」

 

『エノクとリサの2人、そしてハイドさんがいる部屋です』

 

「...施設が持つと良いんだが、もしあのハイドとかいう機械が全力で暴れたらこの研究所は跡形もなく消し飛ぶぞ」

 

『あの、ハイドさんってそんなに危険なんですか?カーリーが言うなら間違いはないと思うんですけど...普段の温厚さからあまり想像出来ないというか』

 

 その言葉に、後の赤い霧であるカーリーは一瞬沈黙する。

 

『あの、カーリーさん?』

 

「...1秒だ」

 

『それはいったい何のタイムですか?』

 

「あのハイドとかいう機械に会った時、奴は丁度外郭の化物どもとやり合っていた。

 そして、奴が接敵してから化物どもを殺しきるのにかかった時間、それが僅か〝1秒〝だ...しかも、その時の化物どもは数十体にも及ぶ群れで奴を囲んでいたのにも関わらずだぞ?」

 

 研究員は閉口する、脳が受け取った事実を理解することを拒んでいる。

 

 外郭の化物、それも数十体にも及ぶ群れをたったの1秒で?そんなイカれたやつがこの世に存在しているのか?

 

「...だからこそ、今心配すべきはあの機械と子供たちの事ではなく、奴が暴れた場合な発生するであろう研究所に対する甚大な被害だ」

 

『返答、その心配はありませんよ』

 

 驚愕、そんな言葉が脳裏によぎる。

 

 その光景をモニター越しに目にした研究員たちもまた、言葉にならない悲鳴のようなくぐもった音を喉から絞り出した。

 

『推奨、この生命体を直ちに然るべき処置をした後収容すべきかと。

 提案、このような生命体が存在するのであれば次から先に情報を共有して頂けるとありがたいですね、加減がとても難しいので』

 

 傷を負うどころか、無傷で幻想体【O-04-72】の頭を鷲掴みにして佇むハイドがそこにはいた




 ごめんね、僕はギャグにもシリアスにも振りきれない中途半端な男なんだ。
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