『理解、この展開は当然と言えば当然でしたね』
「...説明しろ、お前はいったい何なんだ?」
『解答、ただの機械ですよ...それも年代物で時代遅れの』
幻想体といいましたか、部屋に向かってきて生命反応の持ち主を鎮圧したまでは良かったのですが。
私の危険性が再認識された結果、私自身が収容室に叩き込まれてしまいました。
そして、後の特色様にやって直々に詰問を受けているというわけです。
これはもう駄目かもしれませんね、つまり私がこの研究所にいられなくなるかもしれないということですね。
とはいえです、此処で説明を渋るとろくなことにならないと勘が言っていますし、質問にはちゃんと答えましょう。
「...そんな抽象的な事は聞いていない、もう一度聞くぞ?お前は何だ」
『解答、誰が作ったのか、いつ造られたのかは定かではありませんがそのコンセプトは明確ですね、当機は乙型自動駆動式機械人形0期型、型式番号No.X8110、現在は所有権限を持つお二人によって登録されたハイドと呼称されています。
ですが、またの名をクリファ.コード003【シェリダー】これもまた当機を呼称する際の正式名称でもありますね。
当機の内部には〝クリファ因子〝または〝ゾーハル因子〝と呼称される特定因子が存在しますが、これは当機を製造した技術者たちが〝人ではないもの〝〝異常なもの〝として定めたもの全てを抑制する試験的な兵装であり、いずれ来る日に備えて旧き日の技術者たちが造り上げた実験兵器です。
つまりは対異常存在用殲滅兵装、それが当機ですね。
ですが、当機を製造した者たちはあまりにも当機を強力に作りすぎた為か都市の外郭へと放逐されました』
私の発言に研究所の職員たちが色めき立つのを感じますね。
やはり私の体に関する面倒はもはや避けられないでしょう。
「...それはどういうことだ?」
『解答、彼らの基準による〝人ではない者〝〝異常存在〝という判定があまりにも広く、その範囲に都市が人であると定めた者も含まれていたが故ですね。
彼らの基準では、人の範疇を少しでも逸脱した存在は全て抑制対象でした。
都市ではそれに当てはまる存在が多すぎるのですよ、おそらく現行の翼が用いる特異点によって生み出された存在は全て対象に含まれますし、それに裏路地を闊歩する者たちもまたそれに該当します。
またここで言う抑制とは、現行人類であるあなた方からすれば抹殺という意味も含まれます。
だからこそ当機は時代遅れなのです。
当機は今の都市にあまりにも則さないからですね、言った筈ですよ?当機を連れて帰れば極めて甚大な障害になり得ると』
「...そこまで解っているなら、何故今まで一度も私たちに情報を共有しなかった?」
『解答、誰もその情報に関する質問を口にしなかったからです。
当機はあくまで機械ですから、誰かに聞かれない限りその問いに対する解答を開示出来ません』
私はあくまでも機械という役割を演じているのですから、聞かれない限りどんな事実も話せないよは当然の事なのですよ。
「...最後に一つ、お前は機械か?それとも人間か?」
『解答、当機はあくまで機械です...概ねその認識で間違いないかと』
私の言葉を聞いて、カーリー様は酷く残念そうな顔をしながら席を立ってしまわれました。
あぁでも、最後にこれだけは宣告しておかなければなりませんね。
私のスタンスを明確にしておく必要があります。
『宣告、当機を廃棄なさるおつもりなら止めはしませんが、間違ってもエノクとリサに対して危害を加えないように、もし如何なる方法であっても2人に危害を加えた場合、当機に搭載された所有権限者保護プログラムが自動的に働き、当機は当機の意思に関係なく手段を問わずあなた方全員を抹殺します。
例え殺し切れなかったとしても施設の七割は損壊させますし、職員は八割以上死亡するでしょう。
その際は、例え非戦闘員であろうと只一人の例外もなく殺傷してしまいますのでお忘れなきように、そうならない限り私は可能な範囲であなた方に協力しましょう』
「...覚えておく」
『宣告、最後に一つ...所有権限者保護プログラムが起動した状態の私を唯一止められるのもエノクとリサの2人だけです。
あの2人は当機に対する絶対的命令権を持っていますから、あの2人が死亡しない限りは当機がプログラムによって暴走しても被害は最小限で済みます』
おそらくこれで、この研究所内での私に対する扱いはほぼ確定すると見て良いでしょうね。
すなわち要隔離対象として判定されるでしょう。
「...なぁ、お前はいつから存在しているんだ?」
あぁ、それでしたら。
『解答、少なくとも100年以上前から存在はしています。
ただし正確な製造年代は不明です。
これはあくまでも当機が起動してからの年数であり〝129年と11ヶ月〝それが当機が起動してから全機能の解析を終え、エノクとリサが当機を発見するまでの時間です』
「そうか...話せて良かったよ」
不思議なお方ですね、何故今の言葉に笑みを浮かべるのでしょう?
先ほどまでとても残念そうな顔をしていらっしゃったというのに。
「...お前、やっぱり機械じゃなくて私たち寄りだよ」
『困惑、発言の意図を理解しかねます』
カーリー様...私を機械ではなく人間扱いするのはやめた方がよろしいかと。
私の肉体は生身の要素が皆無、意識だけが人間に近しい状態で微かに残っているだけなのですから。
下手をすると頭からは人間に近しい機械として執行対象になりかねませんからね、流石に爪とか調律者相手にするのは嫌ですよ私。
要するに存在自体が都市に対するゴリゴリの特効兵器みたいなやつが主人公です。