あゝ、忌まわしき青春の記憶よ〜ダメ男なガノタのブルアカ転生〜 作:社会の歯車
結局。資金繰りに関しての結論は出ないまま、会議の内容は“アビドスへ襲撃をかけてくる存在”についてと変遷していった。
先日アビドスを襲った便利屋68やそれより以前からアビドス高校を襲っているヘルメット団には、いくつか不可解な要素があった。
彼らの武器がすでに製造停止されているものであったり、一般流通していないものであったりという点だ。当然、シロコはそんなブツの入手先を知っていた。
――“ブラックマーケット”。非合法な取引が横行する、キヴォトスの掃き溜めだ。
そこに行けば何か手がかりがある筈だと考えたアビドス高校のメンバーと先生は、危険な場所と知りつつブラックマーケットへの調査を決断。……そんな危険な場所に護衛対象が赴くというのは、正直苦言を呈したいところではあるが……、決定してしまったものは仕方ない。
最終的にはブラックマーケットの都合を知っている俺とシロコがガイドをするという運びになった。
……正直。便利屋達へ誰が仕事を回したのか、俺は大方予想がついているのだが――。それを言って教える義理はないし、間違っていても責任は取れない。……ので、無駄な希望は与えない事を優先させてもらった。
ヤカラのような地上げのやり方には、俺も覚えがある。と言うことだ。
「ここが……ブラックマーケット」
「なんか思ってたより普通ね」
「ん。セリカはどんなのを想像してたの?」
「どんなの。って……なんかこう、もっとネオンがギラギラしてて、薄暗い雰囲気で。…………ジェガンさんみたいな人が我が物顔で闊歩してる街?」
「オイ」
“俺みたいなのが”という表現に、俺は思わず苦言を呈す。
「テメェの中の俺は一体何なんだ黒猫娘」
「何って……“悪い大人”だけど」
「“アナハイム”は清廉潔白な民間軍事会社だぞ」
「そうだよセリカ。師匠はこんな所にゴロゴロいたりしない」
そう言いながらシロコは俺たちの歩く大通りから脇道にそれた小さな路地裏を指さした。
「師匠がいるのはアッチ」
「なるほど。流石シロコ先輩」
「お前ら……一回ぶん殴られたいか????」
「暴力は良くないよ。ジェガンさん」
拳を構えた俺に対して、大げさに頭を両手でかばう仕草をするシロコを見て先生が笑いながら俺を諌める。
こういう奴は殴ってでも修整してやる!ってのは、さすがに時代が古すぎるらしい。
「ったく……、ぱっと見落ち着いてるとは言えここは無法者共のテリトリーなんだぞ、もっと警戒心をだな――」
どうにも気の抜けた様子のシロコに対し、俺が忠告をしてやろうと口を開いた時のことだった。
「なんで追いかけて来るんですかぁ〜〜!?」
少し遠くから聞こえるそんな嘆きの声がだんだんとこちらへ近づいていた。合わせて聞こえるドタバタとした騒がしさに、恐らく何かいよいよもってブラックマーケットらしい一悶着でもあったのだろう事が判断できる。
折角ならそれでもって説明してやるか、なんて思いながら俺は声のした方へ視線を向け……ん?
「……待てよ。なんか、声に聞き覚えが……」
その俺の一瞬の思案の直後に答えは目の前に現れた。
「あっ!!アナハイムの!」
「お前っ……ペロキチ娘!?」
クリーム色の髪をした少女が、二つに結ったおさげを大きく揺らして走りながら俺の姿を見てそう叫ぶ。
どうやら不良に追われているらしいその少女は……俺の顔見知りだった。
「助けて下さい!お金は後で!」
少女は俺の姿を確認したとほぼ同時に迷わず俺に助けを求める。それはつまり、彼女からの仕事の依頼という事だ。
「チィッ!!だからあれほど一人で来るなと!」
少女の言葉に俺は即座に背中のライフルへと手をかけて安全装置を取り外す。
突然変化した状況に、セリカが困惑の声を上げて俺と少女を見比べるが――答えている暇は無さそうだった。
少女を追う不良の数は二人。そのいずれもがただのスケバン不良で有り、特殊な装備をしている様子は見受けられない。
ヘルムのサポートシステムを操作しライフルの火器管制を行う。火力は十分、環境も良好な範疇だ。
「伏せろ!」
俺の声に少女が足を止めてしゃがみ込む。遮蔽となっていた少女が視界から消え、ターゲットの姿が明瞭に映る。これなら――外さない。
ドスン。ドスン。と言う重い銃声が二発響き、短い悲鳴とともに二人の不良が意識を失う。いくら神秘を持たない男の弾丸とは言え、対物ライフルの一撃を眉間に受けたのだ。無事で済むわけがない。
災難な奴らだと同情する。トリニティの腑抜けた獲物が転がり込んできたように見えたのだろうが……、この天然トラブルメーカーに関わったのが運の尽きだ。
「あ、アナハイムさぁぁぁん!!」
しゃがみ込んでいた少女が立ち上がると、安心したのかうっすらと涙を目に浮かべながら安堵した様子で俺へと駆け寄る。……そう、“天然トラブルメーカー”が。だ。
「助かりました〜……、急に追いかけられて、困っていたんですよ」
「予想はできただろ……。なんで一人で来てんだお前は」
「ええっと……そのぉ……、どうやら、ペロロさまの限定グッズがとあるポイントで入荷したとのお話を聞きまして……居ても立ってもいられず……」
「オーケー。もう喋るな。何処からその話を仕入れてきたのかなんて絶対言うなよ」
「情報源は確かなんです!だって以前――」
「言わんでいいと言ったんだ!」
余計なことを口走る前に俺は少女の言葉に言葉をかぶせて蓋をする。これ以上の面倒事はもう避けたい所だった。例えば――。
「師匠」
――シロコの何処かフラットな声が聞こえる。
「その子、なに?」
端的な質問。単純な問いだというのに、そこには妙な威圧感と、有無を言わさぬプレッシャーがあった。金縛りに遭うほどではないが。
「……過去の依頼主だ」
「師匠?……と言うことは、彼女はお弟子さんなんですか?」
「いや、コレは――」
「ん。私は砂狼シロコ。師匠の一番弟子」
俺が説明するより先に俺より一歩少女に踏み込み、シロコは堂々と間違った肩書を宣言する。師匠の話を聞かない弟子なんて……いや結構いるか……。
「そうだったんですね!お師匠さんにはお世話になりました!」
シロコの自己紹介にぱっと表情を明るくした少女はにこやかに笑い、しっかりと頭を下げる。
想定外の反応だったのか、シロコは少し面食らったような様子でその少女の姿を見つめていた。わかるよ、そうだよな。だってコイツは――。
「あっ。申し遅れました……、私、阿慈谷ヒフミって言います、よろしくお願いしますね、シロコさん!」
「ん、ん……。よろしく……?」
少女のカバンに下げられた、