あゝ、忌まわしき青春の記憶よ〜ダメ男なガノタのブルアカ転生〜 作:社会の歯車
俺がこのペロロ――モモフレンズと呼ばれるコンテンツのキャラクター、“ペロロ”と言うキモ………………カワキャラだ――狂いと知り合ったのは半年ほど前の話だ。
トリニティ総合学園という“超”がつくほどのお嬢様学校に通うこの少女、阿慈谷ヒフミと出会ったのは彼女からの“仕事の依頼”が切っ掛けだった。
ブラックマーケットのとあるブツを手に入れたいから護衛と案内をしてほしい。
それが依頼の内容であり、ずいぶんと黒い依頼が来たものだと思った俺は、しかしその払いのよさに仕事を受ける事にした。そして、その依頼主として現れたのがコイツだった――という訳だ。
ブラックマーケットの街をいく我々の一行に加わったヒフミと並びながら、俺は彼女との出会いのあらましをシロコへ語っていた。
「ヒフミは依頼主だったんだね」
「あの時は本当に助かりました。お陰様でいいお店も見つけられましたし」
「言っておくが。普通はブラックマーケットにある時点で“いいお店”とは言わないんだ」
「でも、ペロロさまの限定グッズをあそこまでしっかりと買い揃えられる中古店はそうそうありません!店主の方も目利きで偽造品もありませんでしたし……信頼できるお店だと思います!」
「アレに偽造品があるのか……」
確かにその店にいた他の客の目も心なしか血走っていたような気もしないでもない。……熱心なコレクターというのは案外どこにでもいるのだろう。初期キットとかめちゃくちゃ欲しがる人居たもんな、ガンプラでも。
どう考えても危険なことに首を突っ込んでいる自覚がないのがこの少女の危うさなのだが……、オタク活動仕草というか、その“モモフレンズ”へと注ぐ熱意にどうにも共感できてしまう為、俺は強くそこを諌めることが出来ずにいた。俺も下手の横好き程度ではあれどガンプラをいくらか買い漁っていた時期もあった身であり、どうにもそこにシンパシーを感じてしまう訳だ。
妙に品揃えのいい少し寂れた路地にある古ぼけた模型屋とか行きたくなるよね。わかる。
まあ、そんな経緯もあってすでに何度かこのペロキチの護衛任務をした事があり、それ故にいつしか俺とヒフミはある程度打ち解けた仲と言えるほどになっていた。
「今回も護衛をお願いしようかと思っていたのですが……何やらお仕事の新規受付をしていないみたいだったので」
「ん。師匠は今私達が借りてるからね」
「そうだったんですね」
そのまま、“俺”という共通の話題で盛り上がり始めたバカ弟子とペロキチに微妙に複雑な気分を感じていると、ちょいちょいと背中を突かれた。
「ジェガンさんって意外と顔広いですよね」
振り返れば、セリカが少し感心した様子で俺を見上げていた。本当にこの黒猫娘は俺の事を何だと思ってやがるんだ。
「仕事柄な」
適当にそんな一言で話を切り上げつつ、俺たちはそのままブラックマーケットの捜索を続けるのだった。
道中、怪しい店でセリカがガラクタを掴まされそうになったり。モモフレンズの偽造品を並べた露店売りをヒフミが看破して一悶着になったり。俺が全員分のたい焼きを強請られたり……ってオイ。
「ガキはともかく。なんで俺がアンタの分まで奢らなきゃならないんだ」
「ふぇ?」
さも当然のように俺の買ったたい焼きを貪る大人に俺は苦言を呈す。
「ふぉひほーはまへふ」
「食べながら喋るな!行儀悪ぃな!」
ピッと片手を立てながら頭を下げて、おそらく「ご馳走様です」と言ったであろうこの図々しい大人に俺は思わず声を荒げて頭を抱えた。こんなのが“先生”だっていうのか……。いや、確かに適度に砕けてて接しやすいのかもしれないが……。
「ジェガンさんってさ〜。案外甘いよね〜」
「なんだかんだたい焼きも奢ってくれましたし、見た目よりずっと優しい人ですね☆」
「ちゃっかりアヤネの分も買ってるじゃない」
「もうそーいう事でいい……」
『あははは……たい焼きは帰ったら頂きますね』
アビドスに残っていたアヤネが通信越しに俺へと礼を言うが、俺はそれに返事を返す気力も持ち合わせていなかった。
いつの間にか
そんなふうに俺がウンウンと唸りながら彼女達と共に歩いていると――。
「……あれ?あの車……もしかして」
視線の先に黒い輸送車――おそらく、現金輸送車――が停車しているのを見つけたセリカが足を止めた。
車が止まっているのは……、銀行の前だ。
「ん。私達の所に来てた車だね」
「よく覚えてんな」
「獲物の特徴は数字一つ漏らさない」
「ナンバーまで覚えてんのかよ。と言うか獲物ではねぇだろ」
自信満々な様子で親指を突き立てるシロコの頭を軽く引っ叩いておく。何で自分の借金の集金に来た現金輸送車を“獲物”と言うんだお前は。
『しかし……、どうして私達の返済金がブラックマーケットに……?』
「わざわざこんな所の銀行を使わないといけない理由があるんですかね……?」
アヤネとノノミのその問いに関しての答えを言うのは簡単だが……俺はあえて口を噤む。
借金の取り立ての現金輸送車だというのに、社名が全く書かれておらず警備兵も所属企業の名前を見せない装備で身を固めている。だが、俺はそれらの装備の特徴をよく知っている。
――やはり、“カイザーグループ”か。
集金の現場に立ち会ったわけでもないが、大方予想通りの話だった。
金利はともかく、どうにもこのダラダラと長いもので丸め込んでいくような悪辣な手法は奴らの十八番だ。
「……もしかして。私達のお金って、犯罪者の資金になってたんじゃ……」
「えぇっ!?」
「ん。あの銀行は黒。なら、その予想は合ってると思う」
「し、シロコちゃんは銀行に詳しいんですね……」
苦笑いを浮かべるヒフミに対し、シロコは表情を変えずに――とは言え明らかにドヤ顔なんだが――サムズアップをした。褒められてねぇぞバカ弟子。
『待ってください。まだカイザーローンが彼らと金銭のやり取りをしたという証拠はありませんし……』
「一応、金銭の受領証があればその確認はできると思いますけど……」
「ヒフミも詳しいね」
「あ、あくまでも一般常識の範囲です!」
……どうにも話の方向性が彼女達にも見えてきたらしい。
話さずにいた面倒な事実が現実味を帯びてくることに辟易としながら、俺は空を見上げた。
殆どこの状況は詰んでいるだろう。アビドス高校に組織的な能力があればまだいくらかやりようもあっただろうが、もはや真っ当な手段では抗うことはおろか、真実にたどり着くことすら難しいだろう。
なにせ、重要な書類は既に銀行に――。
…………ん?
「ん。なら、やることは一つだよ」
……一つ。俺の自慢をここで話そう。
全くもって嬉しくない自慢だが。俺の“悪運強さ”を裏付ける一つの要素として、こんな事が挙げられる。
それは、俺の
「――銀行を襲う」
――よく、当たる。