あゝ、忌まわしき青春の記憶よ〜ダメ男なガノタのブルアカ転生〜   作:社会の歯車

20 / 20
第十七話 風雲急を告げて

 

「ん。師匠は私の師匠だよ」

「……本人は認めてないみたいだけど?」

「師匠はシャイだから。本質的には只のオタク」

「そんな事は私も知ってるけど」

「あのー……、俺、別にオタクじゃないんですけど……」

「「暇があったら新兵器のカタログをニヤニヤしながら見てるでしょ」」

「バカなッ!?何故それを……!?」

「仕事以外だと本当に腑抜けてる」

「あれでコソコソしてるつもりなのが甘いと思う」

「ぐ、ぐぅ……!」

「ぐうの音はでるんだねぇ」

 

 ——セリカのバイトの時間となり、それについてきたシロコ達と先生が便利屋と柴関で鉢合わせてしばらく。

 俺を挟み込むようにして座ったシロコとカヨコが何やら言い合いを始めていた。

 その一方でアヤネとノノミ、先生の三人は、ムツキに誘われるがままに便利屋と同じテーブル席へ座りそちらはそちらで仲良く談笑しているようだった。

 ムツキは時折こちらの様子に茶々入れをしてきているが……。

 

 どうやら、仕事外で既に何度か交流していたらしく、何かの話題で盛り上がっているようだった。

 

 …………共通の話題、俺じゃね?

 

 脳内の鉄クズ野郎(ジムIII)がビール片手にこちらを指差し、ゲラゲラと笑い始める姿を幻視した。「女に囲まれてテメェの話題で持ちきりたぁハーレムじゃねぇか」……じゃねーよふざけやがって!全員ガキなんだよ……!

 

 シロコは、シバが配膳したラーメンが伸びぬよう、あくまでも麺を啜ることを主軸としたままカヨコをじっと見つめ。既にラーメンを食べ終えてどんぶりを返却していたカヨコは静かにそんなシロコへ視線を返す。

 のくせ、俺がそれとなく席を離れようと腰を浮かすと二人の視線がこちらへと突き刺さるのだ。

 一体俺が何をしたっていうんだよ……。

 

「シバ」

「あいよ」

「ビール」

「あいにく準備中だ」

 

 嘘つけェ!!今!今お前後ろの冷蔵庫に瓶しまっただろ!

 

 ……、などと声を荒げはしない。そう、なぜなら俺は大人だから。

 

「シバ」

「品切れ中だ」

「まだ何も聞いてねぇよ……」

 

 どうやらシバは俺の敵らしい。クソッ!呆れたような顔してこっち見やがって!!

 

「昼間からお酒?……さすがにどうかと思うんだけど」

「ん。弟子の前でやることでは無い」

「別にお前らに言われる筋合いはねェだろうが……」

 

 両肘をテーブルへと突き、そのまま重い頭を両手で抱える。なんで俺がこんな目に遭わにゃならんのだ……。

 不幸だなんだと嘆く主人公が、けれどその原因が美少女達であるから羨ましい。などと考える輩がいたならぜひとも今すぐこの席を変わってもらいたい。

 頼むから、俺を今すぐ、ラノベやアニメ、ゲームを片手に気楽に笑っていたあの日々に帰して欲しい。

 

 責任なんて、関係なんて、本当に。持つだけ苦しくなるだけなんだ。少なくとも、分不相応な物は、余計に。

 

 チラリと横目で“先生(主人公)”を見る。だってこの物語は、この世界の中心は。……その行く末の責任を担うべきは、彼女の筈だから——。

 

 …………にこやかな笑みを向けて手を振られた。

 

「はぁぁぁぁぁぁ…………」

 

 モウヤダ……オウチカエル……。

 

 

 

 ——そんな事をぐだぐだとしていた昼下がりの平穏は、突然終わりを迎えた。

 

 

 

 突然の轟音。空砲の音。

 

 それは、柴関の店外から聞こえた。

 

「……何?」

 

 ラーメンを啜っていたシロコの表情が、……いや、その場に居た全員の面持ちが変わる。

 キヴォトスにおいて銃声や爆発音など、さして珍しい物ではない。だが、今回のソレは——日常的な銃撃音とは毛色が違った。

 

 明らかに柴関を目的とした轟音。空砲と言うことは、威嚇の意を伝える為のものだ。それらは、何らかの意図を持ってこそ行われる物。

 

『——店内に告ぐ!』

 

 拡声器により増幅された声が店内へ響き渡った。

 

『我々はゲヘナ風紀委員会である!店鋪はすでに完全に包囲されている!』

「ゲヘナの風紀委員会……?」

 

 柴関の店鋪は、当然アビドス自治区内に存在している。学園都市であり、学園を中心とした経済体系が構築されるキヴォトスにおいて、“自治区”と言うのは国家の領土のような意味を持ち、学校の公式な“風紀委員会”と言うのはいわば軍隊だ。

 

 そんな組織が、他校の自治区へ大手を振って現れる等と言う事態は、異常と言って差し支えがない。

 

「風紀委員会がなんでここに……!?」

 

 ……とは言え、理由は見当がつくのだが。

 今怯えたような声を上げたのは、“便利屋68”の社長である陸八魔アルだ。そして、そんな彼女はゲヘナ学園の生徒であると同時に——。

 

『——速やかに投降し!指名手配犯、“陸八魔アル”の身柄、および便利屋68の身柄をこちらへ引渡しなさい!!』

「な……なんですってぇ!?」

 

 ——ゲヘナ学園の、指名手配犯だ。

 何をやらかしたのかは俺の知るところではないのだがな。

 

「カヨコ」

「……他校の自治区まで追ってきたのは、コレが初めて、かな」

「だろうな」

 

 便利屋68が風紀委員会にそこまで重要視されている……とは、思えない。事実として、俺は何度か彼女達と仕事をした経験があるが、そのなかで風紀委員会との接触があった事例は全(・)て(・)ゲ(・)ヘ(・)ナ(・)自(・)治(・)区(・)で(・)の(・)話(・)だ。

 当然、裏を返せばそれはゲ(・)ヘ(・)ナ(・)自(・)治(・)区(・)外(・)へ(・)の(・)侵(・)攻(・)を(・)す(・)る(・)ほ(・)ど(・)で(・)は(・)な(・)い(・)と言うことを示している。

 

 とすれば当然、“ゲヘナ風紀委員会”の目的は——便利屋ではない。

 

「カヨコ」

「わかった。……白いの、アンタもきて」

「ん……?」

「作戦会議。……アビドスの生徒会みたいなものなんでしょ?他校の風紀委員会がきて、そのまま知らぬ存ぜぬはできない筈」

 

 俺が脇においていたスナイパーライフルを肩にかけて席を立つと、その意図を汲み取ったカヨコがシロコを促しながら席を立った。

 

 ああ、そうだ。この状況において、便利屋68は名目上のターゲットであり、そのなかにはおそらく“アビドス生徒会”の関連事項も含まれている。となれば、今は彼女達は互いに立場が近い状況と言えるだろう。

 

 ——そして唯一、考えうる限りほぼ間違いなく、ゲ(・)ヘ(・)ナ(・)風(・)紀(・)委(・)員(・)会(・)の(・)想(・)定(・)外(・)の存在は。

 

 俺は内心で溜息をつきながら戸を開けて暖簾をくぐる。……シバにコレ以上の迷惑は掛けたくないからな。

 

 それにそもそも、こういう回(・)り(・)く(・)ど(・)い(・)真(・)似(・)をするゲヘナの風紀委員会には……ア(・)テ(・)がある。

 

「よお。久しぶりだな……イオリ」

「……げっ!?なんでこんな所に……!?」

 

 柴関の前に敷かれた陣の、その先頭に陣取り拡声器を手にしていた銀髪褐色の少女……銀鏡イオリは、俺の顔を見るなりその表情を引き攣らせた。

 コレでもゲヘナで仕事をしていた経験のある身だ。面識ぐらいはある。

 

「さて。……で?こんなに大勢引き連れて……随分とご苦労な事だな」

 

 肩をすくめて首を振り、大げさな振る舞いをしてみせる。それはイオリに対するものではなく、彼(・)女(・)の(・)向(・)こ(・)う(・)へ向けたもの。

 

「大方……狙いは“シャーレの先生”。ってところか?なぁ、……天雨アコ行政官殿?」

『アナハイムの……ジェガン……!』

 

 ホログラムで映し出された少女、天雨アコが苦虫を噛み潰したような顔で——俺を見ていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。