あゝ、忌まわしき青春の記憶よ〜ダメ男なガノタのブルアカ転生〜   作:社会の歯車

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第五話 アビドス廃校対策委員会

 

「あ、シロコちゃん!おはようございます〜」

「ん、おはよう。ノノミ。アヤネとセリカも」

「おはようございます、シロコ先輩」

「おはよー。今日、ちょっと遅かったけど、何かあった?」

「ん。お客さんを案内してた」

「お客さん……?」

 

 アビドス高校。砂狼シロコが現在通っており、今回“先生”が問題の解決の為に向かったその場所に到着したのは、俺の予想に反して日が傾くより前となっていた。

 途中以降はシロコが先生を背負い、俺がシロコの自転車を押し始めた事で移動ペースが速くなったというのはあるが……、やはり、現地の人間の案内が正義という事らしい。

 

 先に友人の待つ教室へと踏み入ったシロコは、軽く挨拶を済ませてから、その後ろに待っていた先生を教室へと招き入れる。

 

「はじめまして。……貴方達が、アビドス高校の生徒さん達かな?」

「大人の人……?」

「うん。私は、独立連邦捜査部、シャーレに所属してる先生だよ」

「連邦捜査部……?って言うことは!」

「ん。アヤネの出した申請、ちゃんと届いてたって」

 

 シロコの言葉を聞き、少女達はぱっと明るい笑顔を浮かべて盛り上がる。助けが来たことが余程嬉しかったらしい。

 

 シロコからアビドス高校の簡単な事情を聞いてはいたが……、予想以上に酷い有様だった。

 周囲の建造物の殆どは砂に埋もれ、この校舎だって今も砂漠化の危機にさらされている。生徒もこの部屋にいる彼女らと()()()しかいない様子だ。

 なるほど確かに。これは“物語の舞台”だな。などと、冷めた様子で見てしまうのは、余計な知識が原因だろうか。

 

 ともかく。目的の場所まで依頼人の護送は完了したし、その達成も目視で確認したのなら、ここから先は一端は俺の出る幕ではない。

 結局吸えず終いのタバコもそろそろ恋しくなってきた頃だし、適当に席を外そうと踵を返したその瞬間、俺の肩が掴まれた。

 

「ん。師匠も早く」

「……俺は部外者だ。敷地内から迅速に立ち去るのが筋だと思うが?」

「弟子の顔を立てるのも師匠の通すべき筋」

「だから俺は――」

「その人がシロコちゃんのお師匠さんなんですね〜」

 

 振り向けば、教室の入り口からこちらを覗くようにして、三人の少女たちと一人の大人がこちらの様子をうかがっていた。

 

「いや、俺は――」

「ん。この人が師匠だよ」

「へぇ……、その装備、どこかのPMCなんですか?」

「その」

「ん。師匠はアナハイムで仕事してるって」

「ずいぶんがっしりしてますね……、よく鍛えているんでしょうか」

「だから」

「ん。腕っぷしもかなりつよい。ノノミとだっていい勝負すると思う」

「本当ですか?それは……負けていられませんね☆」

 

 この少女達は、遠慮というものを知らんのだろうか?

 いくら相手が神秘を持った強靭な生徒だとしても、女子の手を力ずくで払いのける事に抵抗を覚えていると、いつの間にか俺の周りは彼女達に取り囲まれていた。

 なんだろう、普通もっと遠慮というか、こんなにガタイの良い男がいたら距離をとるもんじゃ無いのだろうか。

 

「……先生」

「?」

「帰ってもいいか」

「護衛も込みの契約だったと思うけど……。契約不履行。って事でいいのかな?」

 

 立場が弱いと苦労するんだ。本当に。

 

 

 


 

 

 

 屋上で寝ていたという、()()()()()を迎え入れた教室では、生徒達の自己紹介が進んでいた。

 “たった五人の高校”。それは最早、高校としての機能のほとんどを失っている状況だ。そんな彼女らが抱える問題は、非常に大きく、深く、厳しいだろう。

 先生の持ち込んだ申請書により、とりあえずの当面の弾薬などの備蓄は解決した様だが……。だからといって、それで終わりではないだろう。

 

 俺が何をしているか?と言われれば……、先生の後ろに立って話を立ち聞きしているだけだ。護衛任務は継続中の様だしな。

 どうにか理由をつけてこの場を離れてタバコを吸おうと策を練っていた、そんな時、校舎の外から銃声が響いた。

 

「アレは……ヘルメット団!?」

「また襲撃……!懲りない奴らなんだから!ホントに!」

 

 どうやら、学校のアレやコレやを目的とした襲撃の様だ。しかも、黒猫娘の言葉を聞くに、一度や二度の話ではないらしい。

 

「ん。みんな、迎撃に出よう」

「はい、私たちの学校は、私たちの手で守りましょう!」

「それじゃ、私も――」

「センセーはここで休んでてー。私達には、私達のやり方があるからさー」

 

 生徒の為に何をしようとしたかまでは分からんが、協力を申し出た先生の言葉は、一人の少女に遮られた。

 

 唯一、俺の知るこの学校の生徒。……傭兵コミュニティでも有名な、“相手に回してはならない生徒(ブラックリスト)”の一角。――アビドス自治区の、小鳥遊ホシノ。

 

「先生、私たちと違って銃弾一発受けるだけでも不味いんでしょ?それを守りながらは、さすがにちょーっと自信ないなぁ」

「で、でも……」

「護衛の人も、怪我されたら困るよね?」

 

 青と黄色の双眸が、薄く開かれ此方を向いた。

 

「そうだな。俺としても無関係な戦闘への介入は極力避けたい」

「ええっ!?ジェガンさん、みんなの力になってくれないの!?」

「……何を驚いてるんだ。俺はただの傭兵。生徒に手を貸す謂れはない」

「で、でも……!」

 

 あの時は早瀬ユウカを助けてくれたのに。とでも言いたげな視線で俺を見ているが、アレは……。

 ……とにかく、例外を持ち出している自覚はないようだが、元々俺は不用意には首を突っ込まないのが方針だ。懇願されても彼女の要望に応えるつもりは無かった。

 

 ちなみに、敬語は外せと命令された為、先生に対してはシロコと同じように話す事とした。人のなかにズケズケと入り込む女だが。そこに不快感を持たせないのがやたらと上手いのは、さすがの“先生”と言ったところか。お前は女版ジュドーかよ。

 

 どうしたものかと困った様子の先生に、しかし腕を組んだまま俺が沈黙を貫いていると――。

 

「ん。ダメだよ、先生。師匠はそれじゃ動かない」

 

 ――シロコが動きを見せた。

 

 制服の内ポケットへ手を突っ込むと、何かを掴んで取り出して、それを指で俺へと弾いた。

 顔面直撃コースのそれを、俺は左手を開いて受け止めて、そのまま掴み取った。

 

 弾薬の自販機用でよく使われる、専用のコインだった。

 

「仕事の依頼だよ、師匠」

「ん……。内容を聞こう」

「狙撃支援。私達にはスナイパーが居ないから。校舎から撃ってくれるだけでいい」

「五発だ」

「ん。契約成立」

 

 俺たちのやり取りを眺めていたその場の全員がポカンとした様子で俺とシロコを交互に見るが。俺はそれを意にも介さず、屋上に移動するため扉へと手を掛けた。

 

「済まないが、先生。少し外す、くれぐれも自分から危機に晒されないでくれよ」

「ちょ、ちょっと待ってジェガンさん!どこ行くの」

「屋上から狙撃支援に入る」

「えっ、でも――」

「コストは貰った。なら、結果を出すのが俺のポリシーだ」

 

 コイン一枚にどれほどの価値があるのか。そう言われれば、せいぜい自販機で粗悪な弾丸が数発買える程度の物だ。要は、“見合っていないなら、なぜ無償で手を貸さないのか”という話だろう。

 

「師匠」

「なんだ」

「三発じゃなくていいんだね?」

「…………物価の高騰を計算し損ねただけだ」

 

 生意気な弟子の言葉を一蹴し、俺は一人屋上へと向かった。

 

 

 

「ん。師匠は面倒くさい」

「シロコちゃん……、いつの間にそんな事覚えたの……」





 Tips.シロコの出したコインで買える弾薬は3発が限度。
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