あゝ、忌まわしき青春の記憶よ〜ダメ男なガノタのブルアカ転生〜   作:社会の歯車

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第八話 大人の義理

 

「セリカが居なくなった!?」

 

 ラーメン屋での一件があった翌日、いつものように学校へ登校、もしくは出勤をしてきた俺たちだったが、そこにセリカの姿がなかった。

 眼鏡ちゃん――確か、アヤネと言ったはずだ――の話によると、一向に連絡もなく、セリカの住まいを見ても制服もカバンも見当たらなかったらしい。

 

「……拉致か」

「連絡手段を奪われてそうってなると……やっぱりおじさんもそう思うな」

 

 キヴォトスで拉致監禁が珍しい事かと言われると、珍しいと言う程のことはない。身代金目当ての不良グループが平和ボケしたお嬢様相手に試みる小遣い稼ぎの常套手段だ。

 

 だが、アビドスという土地柄を加味するとなると、今回の拉致の目的は――もっと悪辣な可能性が高い。

 

 そこまで思考を回した俺は、自身の装備の残弾を確認してから、先生へと視線を向けた。

 

「出る」

「え、出るって何処へ?」

「俺達にケンカを売ったバカをシバキにだよ」

「ええっ!?」

 

 俺の発言に、その場にいた全員の視線が俺に集まった。

 

「……どういう風の吹き回しかな。最初の交戦以外では、決して手を出さなかったアナタが、今回は手を貸してくれるなんて」

 

 小鳥遊ホシノの懐疑的な視線が俺へと向けられる。確かに、コイツの言う事は尤もだ。

 だが。

 

「やっぱり、子供のピンチはほっとけないんじゃ……」

「違う」

「……ふぅん?」

 

 先生の言葉を一蹴した俺を見て、小鳥遊ホシノの視線がさらに鋭く変わる。何かを試しているような視線だった。生憎、俺はお前に試されるような立場にゃ居ないんだがな。

 

「黒見セリカは、柴関の……シバの従業員だ。ヤツの身内だ。俺は、“シバの敵”に舐められる様な真似はしない」

「あくまで、私達のためじゃなくて、あなた自身の交友関係のためってこと?」

「そうだ」

 

 最初に言っていた通り、俺はこのアビドス高校がどうなろうと知ったことでは無い。どうにかしようと思うことも無いし、どうにか出来ると思う程の力も無い。ただの一人の傭兵もどきのオッサンだ。

 

 だが、だとしても。それが俺の手の届く、身内の事ともなれば――話が変わる。

 

「シバは俺の数少ない友人の一人だからな」

「…………」

 

 繋がりのない、誰かと繋ぐための手すら失った俺の。ほんの僅かに残された“繋がり”なんだ。

 

「なら、セリカをみんなで助けに行こうか」

 

 いつになく真剣な表情の先生が、俺達へとタブレットの画面を指し示した。

 そこに表示されているのは、アビドス自治区の地図と、何かを示す赤いマーク。

 

「ここって……」

「セリカの居場所。突き止めたよ」

「どうなって――、いや。今はいい」

 

 ほんの一瞬で場所の特定ができるなど、発信機でも取り付けていたのかと疑う所だが、この腑抜けたお人好しにそんな事が出来るとは思えない。

 今必要なのは、“作戦目標が判明した”という事実だけだ。

 

「みんな、行くよ」

 

 今再び、アナハイムとアビドスの共同作業が開始される。

 

 

 


 

 

 

 砂漠化した荒野の中を、複数台の車が進んでいた。

 

 中央にトラックが一台。そのトラックを守るようにして、砲身付きの戦闘可能な装甲車が四台。

 

『おい!輸送班!まだ着かないのか!?取引の時間まで半刻も無いんだぞ!』

「今向かってる。後十分もしないうちに着くんだ。そうかっかするなよ」

『今回の取引のお相手は滅多にない超大物なんだ!失敗許されないんだぞ……!』

「わかってるよ」

 

 中央のトラックはターゲットである“黒見セリカ”を輸送中であり、“とある依頼”に従って彼女を誘拐、引き渡しを行うのが彼女ら、カタカタヘルメット団の今回の仕事だった。

 

「ま、一人攫って渡すだけであんな大金が手にはいるなんて、楽な仕事ですねー」

「だな。トリニティと違って警備も厳しくないし」

「毎回こんな仕事ならいいんだけどなー」

 

 本部との無線通信を切り、あはははー。と、浮かれた様子で会話をしながらトラックの運転を続けている二人だったが、そのうちの片方が“妙な物音”を耳にした。

 

「……なあ。何か聞こえないか?」

「なんだ?どうせ、荷台のターゲットが起きて、暴れてるとかじゃないのか?」

「いや、なんか。そういうのじゃなくて、こう。ガシャガシャガシャ……って」

「なんだそりゃ――?」

 

 運転席に座る少女は、ふと目にしたサイドミラーに奇妙な影を見た。

 それは、この砂漠で走る、一つの人影。

 

「は?」

 

 そんなバカな。こちらは安全運転中とは言え、走行中のトラックだ。

 ただの人間が、こんな過酷な砂漠を全力疾走したからといって、トラックを追いかけられるわけはない。

 

 そう考えて、再びミラーに視線を戻すと――、やはり、その影は消えていた。

 

 なんだ。やはり見間違えだったのだ。砂漠の枯れ木が偶然人のかたちに見えたのだろう。

 

 そんなふうに結論づけて、視線を再び前に戻して――。

 

 ドン。と、大きく車体が揺れる。

 

 目の前に大きく影が落ち、視界が黒い何かに塞がれた。

 

「な、なんだ!?!?」

 

 フロントガラスに現れたのは――フルフェイスヘルメットの一体のアンドロイド。

 

 彼は右手の拳を振り下ろして、フロントガラスを一撃で粉砕しながら、運転席の少女の胸倉を掴み上げた。

 

「ひいっ!?」

「ドライバー交代だ。降りな、クソガキ」

 

 

 

 抵抗虚しく、少女は車の外へと放り出されてしまった。

 

 

 


 

 

 

「嘘ぉ!?あの人走ってトラックに追いついた!?」

「師匠の義肢は高性能だから」

「そういう問題かなぁ……?」

 

 セリカを乗せたトラックの後方、それらを追跡するバギーに乗ったアビドス高校の面々と先生は、視界の先で隊列を崩し始めたトラックを見て思い思いの感想を述べた。

 

 現在、彼女達の乗るバギーを運転しているのはアヤネであり、つい先程までジェガンもそれに同乗していたのだが、奇襲のために単独飛び出していった。

 義足の駆動状況を最大まで引き上げることで、無理やりトラックへと飛びついた。と言うことなのだが……、その光景を実際に目の当たりにした彼女たちからすれば、それは非現実的な光景にも見えただろう。

 

『あー、あー。こちらアナハイム、応答願う』

「ん。師匠」

『ん……。その声……シロコか?』

 

 バギーに備えられた無線に通信が入り、それに対して食い気味にシロコが応答した。

 

『トラックの運転は奪取したが、俺自身の脚部がイッた。運転ぐらいはこのままするが、後は任せていいな?』

「無茶するね」

『元より出し惜しみができる程の力がねェよ。そら、とっとと構えろ。装甲車がそっちに行くぜ』

 

 それを最後にブツリと通信が切られ、装甲車の包囲を抜けたトラックがこちらへ向けてUターンを決めた。

 

「ん。やろう、みんな」

「あのまま一人で囮をやってくれたら楽だったんだけどな〜」

「まあまあ、ジェガンさんなりに頑張ってくれてるみたいですし、私たちも頑張りましょう?」

「運転と通信は引き続き私が!」

「じゃあ……お姫様を助けに行こうか!!」





 ジェガンの義肢
 ブラックマーケットのジャンク屋が組み上げたワンオフのジェガンの為の義手義足。
 今回のようなリミッター解除機能に加え、アレやコレやと、ジャンク屋が“実現可能な限りの全ての技術”を常に注ぎ込み続けている為、なにかと無駄な機能も多い。Bluetoothスピーカーとか。
 ジェガン本人が使いこなせない機能も多数積まれているため、兵器としては余計なものが多すぎる欠陥品なのだが……、ジャンク屋の腕試しとしての側面を担う事で整備費を割り引いてもらっているので仕方がなかったりする。

 今回の一件でオーバーホールは必須。つまりジャンク屋は次回出ます。
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