あゝ、忌まわしき青春の記憶よ〜ダメ男なガノタのブルアカ転生〜 作:社会の歯車
「お、俺のGフレームがぁ〜〜!!」
「製作者はお前だが、それは俺の義足だ」
アビドス自治区、旧物流区倉庫跡地にて、俺はとある男と接触していた。
「なんだよ!俺が腹を痛めて産んだ子供だぜ!?」
「制作中に腹下しをしていたお前の落ち度だろう」
「いやぁ……、まさかあの時の油が“アタリ”だったとはなぁ……。お前の悪運も大したもんだ」
「そんな事まで俺の悪運にするな」
トラックへと追いつくために行った制限解除と、砂漠の環境下における砂の混入が祟り、機能不全を起こした俺の義足は
目の前で、作業台に寝かされた俺の義足にすがりつくアンドロイドの男は、そんな俺の義足の整備修繕のために俺が呼び寄せたジャンク屋兼メカニックだ。
ちなみに、俺の義足は既に取り外され、代用品が装着されている。さすがにこの変態ジャンク屋も、男の脚に擦り寄るような真似はしない。
「ま、ちゃちゃっとバラしてメンテナンスと行きますか。丁度この前珍しいパーツが入ったんだよなぁ〜」
「おい。俺の注文は整備だぞ」
「分かってる分かってる!
「まて。何をする気だ、ロウ」
「へーきへーき!ブラックマーケットナンバーワンのジャンク屋、このロウ様に任せとけって!」
目を輝かせながらドライバーを手に取り、義足の分解に取り掛かり始めたロウに対し、俺は頭を抱えて溜息をついた。
セリカ救出作戦は成功を収めた。俺の運転するトラックの荷台のなかで、少々荷物の下敷きになってはいたが、セリカは無事だ。それと同時に、彼女を襲ったヘルメット団の方は廃校対策委員会の面々によって壊滅が完了している。
雨降って地固まると言うべきか、些か先生に対してささくれ立っていた態度を示していたセリカも今回の件でかなり丸くなり、彼女達と先生の間の絆も少しずつ確固たる物になって来ている様子だ。……まあ、俺は未だにあの黒猫娘には威嚇されるが、別に長い縁になるとも思えんし、それはいいだろう。
そんなこんなで、俺は一日の休暇をもらい、別の地区から呼びつけたロウに義足のメンテナンスを行ってもらっている。と言うわけだ。
ちなみに、察しのいいヤツなら気づいているかもしれないが、この“ロウ”という名前も俺が口からこぼした名前を勝手に気に入ったこのジャンク屋が名乗っているだけだ。……妙にあのC.E.世界の赤いジャンク屋に似ているだけに妙な感覚になるが、こんな世界にも似たような輩が居るとは思わなかった。
「そういやジェガン。知ってるか?」
「何をだ」
「お前さんの同業者も、
「同業者?」
「ほら、あのアレだよ。万屋……じゃなくて、何でも屋、みたいな」
「お前が俺のことをどんな風に思ってるかはよくわかった」
先生と言いコイツといい……、いや。確かに昔は仕事を選べる様な立場ではなかったと言うか。今も別に払いが良ければ何でもやるのは事実だが……。
「……まあいい。お前が言いたいのは便利屋の事だろう」
「おぉ!それそれ!」
便利屋。正式名称、便利屋68。
ゲヘナ学園の生徒で指名手配犯……、という、なんとも言い難い立場の四人組で構成された組織の名前だ。
組織、もとい会社のスタンスとしては俺のアナハイムPMCとそう遜色はなく、仕事の取り合いや、対立する事もしばしばある組織だ。
お互い似たような仕事をする都合、敵味方問わずに顔を合わせる機会が相応にある腐れ縁のような存在でもある。
……どうせ暇だし、顔でも見に行くか。
“偶然”とは思っていない。大方何かしら、俺たちの仕事に因果関係があるのだから、こんな辺鄙な場所に彼女らも来たのだろう。とすれば、案外いい情報が得られるかもしれない。
そう考えた俺はスマホを取り出して、便利屋とのグループラインに書き込みを入れるのだった――。
俺が待ち合わせ場所に指定したのは、現在でも僅かに物流のある、現在のアビドス市街の中心地の一角だった。
砂漠化の影響で過疎化の進む街の人通りは少なく、路上禁煙もクソも無いのだが。まあ、一応念のため喫煙スポットでタバコをふかしていた。
「ん。……おーい、コッチだコッチ」
そうしているうちに、凸凹な印象を受ける四人組の少女達が目についた。
声を出しながら右手を振ると、先頭に立つ赤毛の少女がこちらに気づく。
彼女らが近寄り切る前に、最後に一服を済ませてから、俺はタバコを右マニピュレータで握りつぶした。
「久しいな、ロクハチ」
「ええ、そっちから連絡が来るなんて珍しくて驚いたわ。アナハイム」
両手を組んで、ニヤリと笑みを浮かべる赤毛の少女。便利屋68の社長である陸八魔アル。
「おっひさー!」
「ど、どうも……」
「ほんと、珍しいよね。……どういう風の吹き回し?」
そんな彼女の後に立っている、浅黄ムツキ、伊草ハルカ、鬼方カヨコ。彼女ら四人が、“便利屋68”だ。
「なに。ロウのヤツにお前たちが此処に来てるって話を聞いてな。“偶然”なら、こういう機会も悪くないだろ?」
「……なるほど。それは“偶然”だね」
俺の言葉の含みに気づいたらしいカヨコが目を細め、苦笑気味な笑顔を浮かべて俺を見た。
「まさかジェガンもアビドスに仕事があるなんて。本当にこんな偶然もあるものなのね」
コッチは本気で“偶然”だと思ってそうだがな。
「おじさん。元気にしてた?最近なかなか会わなかったから、ちょっと心配だったんだよねー」
「相変わらずだよ」
「冴えないおじさん度合いに磨きがかかったんじゃない?」
「ほっとけ」
「あははは!」
ひょこひょこと俺の周りを回って小馬鹿にしたような事を言うムツキに軽く手刀を叩き込んでやろうかとするが、軽い身のこなしで腕をくぐり抜けられる。相変わらずなのはお互い様らしい。
「それで。なんだってお前達はこんな辺鄙な所に来たんだ?」
「それは――」
「それはさすがに言えないよ。クライアントとの契約には守秘義務もあるしね」
「そりゃそーだ」
何かを言いかけたアルを制すようにしてカヨコが一歩前に出る。アルの性格なら苦労せずポロっと話が聞けるものかと思っていたが……さすがにカヨコのガードは硬いか。
「そう言うあんたはどうなの?」
「野暮用だ」
「ほら」
カヨコの指摘に、俺は肩を竦めて両手を上げる。“やれやれ”と言うヤツだ。……まあ、俺に関して言えば割とマジで野暮用という他にない部分があるのだが。
「そうよ!ジェガン!あなた私の依頼を受けない!?」
「依頼?」
「ええ!それなら依頼の内容を話しても問題はなくなるし、何より心強いわ!」
「社長、それは……」
「仕事の契約か?話ぐらいは聞いてもいいが……」
いかにも名案を思いついたと言う様子のアルに対して、渋そうな表情をするカヨコを見るに何かしらの問題があるのは明白だった。
「ふむ」
さて。問題があるとするならば、それは一体なんだろうかと俺は頭をひねる。俺を雇うことの不都合など、そう多い理由は思いつかない。対立の関係や、オーナーの都合か。それとも、機密事項の関係か。
いや、多分もっとシンプルだな。アルが見落として、カヨコが気にかけそうな、そんな問題。とすれば。
「金欠か」
「うぐうっ!?」
正解だったらしい。
うめき声を上げたアルの背後では、カヨコが首を横に振り、ムツキが笑い、ハルカが戸惑いを見せた。
「俺一人すら雇えないとは、随分仕事に困窮してるんだな?一体何件失敗したんだ」
「違うわよ!!そんなまるで私達が失敗続きみたいに言わないでちょうだい!!」
「少なくとも俺と対立してる時は――」
「昔の事を引きずるのは男としてどうなのかしら!?」
「……ぐっ」
「あっ。おじさん、自覚あったんだ」
「まあ、大人は過去に生きるって言うしね……」
「嫌なことでも思い出したんでしょうか……」
無自覚による言葉のボディーブローを受け、思わず苦虫を噛み潰したようなうめき声をあげてしまったが……。
やめろ、思い出したくない。目を逸らしていないと気が狂いそうになる。忘れろ、記憶を流せ。頭の片隅に顔を出す、青髪のセミナー会計ごとだ。
――チラつくな。それ以上は本当に、キツい。
「……“恐い顔”、してるけど」
カヨコにそう声をかけられて、俺はようやく意識を自己嫌悪の沼から引きずり出した。
腹の底に燻るような不快感を飲み込んで、精一杯の
「なんだ。ビビらせちまったかよ」
「ううん。別に」
うまく
「アンタも、そういう顔するんだなって」
「はぁ?」
「そこまで驚いた顔じゃ、さすがに怖くは無いけどね」
「……お前な」
クスクスと笑い始めたカヨコの姿に、俺は肩を落として溜息が出た。こんな男を手玉に取るとは、本当に悪い女の仕草が上手い。
「肩の力、抜けたね」
――見透かされたようなその言葉に、俺は小さく舌打ちをした。
カヨコに振り回されるジェガンが書いてて楽しかったです。(小並感)