転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?   作:紫 和春

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第23話 SNS

「ふぅ。これで高校生らしくなったかな」

 

 長屋は重い腰を上げて、SNSに手を出した。36世紀の日本で最も普及している短文ブログ型SNS「YY」というアプリだ。

 アカウントを作成し、興味があったり官公庁や新聞社の公式アカウントをフォローする。そして自分のタイムラインが出来上がった。

 

「さて、世の中の人々はどんなことに注目しているのかなぁっと……」

 

 すると、いくつかのハッシュタグが並んでいた。どうやら、東京のほうで男性アイドルのライブが行われているようだ。そのホットな話題として、誰彼見境なく殴り合うといった炎上が起きていた。

 

「やっぱ時代が変わっても、こういう人間らしいところは変わらないんだなぁ……」

 長くタイムラインを見ていると、自分の考えまで歪んでしまいそうだ。長屋はなるべく、そういう話題が飛び交わないようなタイムラインを構築するよう心がけることにした。

 翌日。いつものように学校へ行き、授業を受け、昼休みになる。黒須が作ってきてくれた弁当を食べていると、同じクラスの女子生徒のあるグループが話しているのが聞こえてくる。

 

「最近、東京都自警団が怪しい動きしてるっぽいのよね」

「あー、YYでも見た」

「なんかきな臭いらしいじゃん」

 

 東京都自警団という聞き慣れない単語に疑問を抱いた長屋は、スマホを取り出して検索してみる。どうやら、アメリカ合衆国の州兵や、郷土防衛隊に分類される民兵のようだ。もう少し深掘りして、36世紀()の日本の軍事を調べてみる。

 大日本共和国には、正式な軍隊として共和国軍、それを補助する民兵としての役割を持つ都道府県自警団が公的に存在する。共和国軍には貴重な存在である男性が多く所属しており、男性人口の4割弱が軍人であるらしい。

 その一方、都道府県自警団は女性のみで構成されているところも多く、共和国軍の予備として扱われているとのこと。

 そして、その二つとは異なる特異な存在として、首相シークレットサービスというものがある。首相の護衛を担当しているが、近年は首相が幅を利かせてやりたい放題しており、私兵のような状態になっているらしい。

 閑話休題。

 彼女らの話に耳を傾ける。

 

「なんでも、首相のシークレットサービスが対人装備を大量ニ買い込んでいて、それを東京都自警団が摘発するんじゃないかって噂だよ」

「でもそれって警察の仕事じゃない?」

「どうなんだろ? 警視庁が協力を要請したとか?」

「だとしてよ何かきな臭いんだよねぇ……」

 

 そしてダラダラとミリタリー雑談へと入っていく。

 

(結局、きな臭いというだけの話だったな……)

 

長屋は弁当を食べ終え、空になった弁当箱を黒須に返した。

 午後の授業も受けて、放課後となる。

 長屋がバッグに必要な物を詰め込んでいると、黒須が声をかけてくる。

「陽介君、今から文芸部の部室に寄ってかない?」

「いいけど、何かあった?」

「い、いやー、ちょっと高崎さんとお話して、あわよくば入部の取り下げとかできないかなー……と思って……」

 

 黒須はなんだか、少し後ろめたさを感じているようだ。おそらく、文芸部の部室を自由に使えるという謳い文句に乗っかったことを後悔しているのだろう。

 

「まぁ、いいよ」

 

 そうして二人で部室へ向かう。部室にはすでに高崎がいた。

 

「あっ、ちゃーす。早速イチャイチャしに来た?」

「ち、違います!」

 

 黒須が強めに否定して、本題に入る。

 

「その、入部の件なんですけど、取り下げしたいなぁと考えてまして……」

「取り下げ? なんで?」

 

 嫌味のない、純粋な疑問だ。

 

「その、入部の動機が不純で、部の活動とかけ離れているのが一番の理由なんですけど……」

「えー、イイじゃん。この部活、ケッコー適当だからさぁー。顧問の先生も許してくれるよー」

「そ、そういうわけには……」

 

 その時、部室の扉が開かれる。

 

「あら、新入部員の二人ね」

 

 そこには、担任の田口先生が立っていた。

 

「先生、なんでここに……」

「黒須さんたちには言ってなかったと思うけど、私文芸部の顧問なの。二人が入ってくれると先生助かるわぁ」

「助かるってどういうことですか?」

 

 長屋が聞く。

 

「今の時代、教員は普段の授業の準備で忙殺されてるの。正直顧問をやっている暇なんてないわ。でも最近になって顧問手当というものが出るようになったの。いわば、教員の合法的な副業━━小遣い稼ぎね。部員が増えると、その分手当も増えるって寸法よ」

「教職員がそれでいいんですか……?」

「給料さえ増えれば万事オッケーよ」

 

 田口先生の目は、どす黒く塗りつぶしたようになる。それは教師の闇を表しているようだった。

 

「じゃ、そういうことだから、簡単に辞めないでねー」

 

 そういって田口先生は去っていく。長屋は頭に手をやるしかなかった。

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