転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか? 作:紫 和春
なんとか高崎との関係を持ち直せた日の週末。
長屋は西原の運転のもと、人類維持局の研究所に向かっていた。
「ごめんねー。急に連絡なんてしちゃって」
「まぁ、いいですよ。今日は暇でしたし」
そんなこんなで研究所に到着すると、馬渕が出迎えてくれる。
「いらっしゃい、長屋君。早速で申し訳ないのだけれど、よろしくね」
そういって尿検査用の紙コップを渡してくる。
「えぇ……、まぁ……、はい……」
「安心して。オカズもちゃんと用意したから」
「それは公衆の面前で出さないでくださいよ!」
馬渕が、成人向けの本を包み隠さず長屋に渡す。それを慌てて回収する長屋。
(しかし有ったほうが助かるのはその通りなのだが……。なんというか、安直な自分に落胆する……)
そう思いながらも長屋は男子トイレに向かい、個室に入った。
「うっ……!」
紙コップを研究員の女性に渡し、長屋は会議室へと通される。
「お疲れ様、長屋君」
「そんな大層な仕事してるような気分ではないんですけど……」
「そうかしら? 少なくとも、私たちは助かっているわ。人類の更なる飛躍に貢献しているわね」
「それならいいんですけど……」
実感が湧かない長屋だ。
「それはそれとして、最近はよろしくやっているそうじゃない?」
「何がですか?」
「恋人を作ったって聞いたのだけれど?」
「あぁ、そうですね。彼女が出来ました」
「早速人類のために活動しているようで何よりだわ。すでにヤったのかしら?」
「ぶふぉっ」
長屋は思わず噴きだしてしまう。
「いきなり何言ってるんですか!?」
「当然よ。私たち人類維持局の最大の関心は、男性の増産なのだから」
「それはそうかもしれないですけど。だからって年頃の男子にそんなことを直球で聞かないでくださいよ」
「あなたの心情は知りません。それで、ヤったの? ヤってないの?」
馬渕がズイッと身を乗り出す。
「……まだしてません」
「そう。意外と奥手なのね」
「いやいやいや……。普通はこういうものですよ。そりゃ21世紀の人間なんですから」
「それもそうだったわね。でも恋人を作れるくらいの順応力があれば、恋人との性行為も簡単に出来ると思うのだけれど?」
その言葉に、長屋は少し詰まる。
「いやぁ、厳しいですよ。今の彼女はたまたま自分と性格が似ていて、かつ男性の数が少ないと言う特殊な環境にいるからこうなったわけで……」
「あら、自己評価は悪いのね」
「まぁ、まず自己肯定感が低いので……」
「でもそれは恋人にとって良いことなのかしら。自分に自信がなければ、恋人の格も下がると思うのだけれど」
「それは……」
長屋は完全に否定することが出来なかった。確かに馬渕の言う通りであると感じたからだ。
「もっと自信を持ったほうがいいわよ。そのほうが動物としての人類の特性に適合しているから」
「そう……なんですかね……」
そんなモヤモヤが長屋の心に覆いかぶさる。
その時、スマホに着信が入った。通知を見てみると、高崎からである。高崎の家でチャットアンドのアカウントを交換しており、長屋と黒須、そして高崎のグループチャットを作っていたのだ。
そのグループチャットでの内容は、私服でスタンドミラーの前に立っている様子を写真に収めた画像であった。
『これどう?』
どうやら服の感想が欲しいようだ。
「あら? 恋人からのメッセージかしら?」
馬渕がからかう。
「えぇ、まぁ……」
「確か、黒須茜って名前だったわね?」
「あー……。今連絡が来たのは二人目の彼女ですね」
「あら、もっと進展していたのね。これは期待が膨らむわ」
「そんな勝手に期待しないでくださいよ……」
そんな話をしていると、再び通知が飛んでくる。今度は黒須が画像を送ってきたようだ。そこには、かなり肌を見せている黒須の姿があった。どうやら普通の服を着崩しているように見える。
『陽介君、これとかどうかな?』
なんだか対抗心を燃やしているようだ。
それに対抗するように、再び高崎から画像が来る。先ほどの黒須よりも肌面積が拡大した、かなり攻めた格好だ。なんなら下着の一部が見えている。
さらにそれに対抗すべく、黒須が次の画像を送ってきた。今度は服装が半分以上脱げ、下着もかなり見えてしまっている状態だ。
「おいおいおいおい……」
「これはなかなかの女豹ね」
いつの間にか馬渕が、長屋のスマホの画面を覗いていた。
「ちょっ、プライバシー侵害しないでください」
「それは謝るわ。でもいいの? 彼女たち、かなりヒートアップしているようだけど」
そういって馬渕は画面を指さす。
画面を見ると、今度は下着を脱ぎ始めている二人。お互いがお互いのことを出し抜き、長屋のことを誘惑するので頭がいっぱいになっているようだ。
「あぁあぁあぁ……」
長屋は急いでメッセージを書きこむ。
『二人とも脱ぎすぎだよ。あまりそういう姿を男に晒すのは良くないと思う』
そのようにメッセージを送ると、通知が大人しくなった。どうやら冷静になって、今の状況を把握してくれたようだ。
「はぁ……。なんか振り回されているような気がする……」
「いいじゃない。恋人が積極的になれば、長屋君の性格も強制的に変わるはずよ」
「あんまり強引に変わりたくないんですけど……」
今後の二人の気持ちに応えることが出来るか、不安になる長屋であった。