転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?   作:紫 和春

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第38話 班分け

 週が明け、学校に登校してきた長屋。この日もバッグの中には拳銃が忍ばせてある。あの日以来、新日本婦人会が突撃してくることはなく、普通の日常を送ることができている。

 そんな折、担任の田口先生がホームルームで次のような話を始めた。

 

「修学旅行の時期が近づいてきました。今年は京都と奈良が旅行先です。今日は自由行動の班を決めたいと思いますが、今年は長屋君がいるので、どうしようか先生も悩んでいます」

 

 少し笑いが発生する教室。しかし、すぐに一人の女子生徒が意見を述べる。

 

「長屋さんは黒須さんと一緒にいるっぽいので、それでいいと思いまーす」

 

 その意見に同調する女子生徒たち。長屋と黒須は少し顔が赤くなっていた。

 

「そうねぇ……。でも二人だけの班にするのはちょっと不安なのよねー……」

 

 そんな話をしていると、急に教室の後ろの扉が開く。

 

「じゃあうちが一緒に行ったげる!」

 

 高崎であった。

 

「あなた、一年の高崎さん……よね? 一年生は修学旅行に連れて行けませんよ」

 

 田口先生がそのように咎めると、追いかけてきたであろう一年の担任が連れ戻しに来た。

 

「ちょっと高崎さん!? 急に教室を離れないでください!」

「せんせー! うちはヨウ君と一緒に京都行くんです! 離してください!」

「ダメですよ! ほら、早く教室に戻ってきてください!」

 

 そうして高崎はズルズルと引きずられていった。

 

「えー……、そうですね……。長屋君と黒須さんの班には、相沢さんに入ってもらいましょう」

「私ですか!?」

 

 突然の指名を受けて、相沢委員長は声が出てしまう。

 

「相沢さんは委員長ですし、他の人の面倒見もいいので、ピッタリだと思います」

 

 田口先生からそのように推薦を受ける相沢委員長。それに同意するように、教室中から拍手が起きた。

 

「え、えぇ……?」

 

 相沢委員長はかなり不本意な合意に困惑しているようだ。

 それには長屋も同じ気持ちであった。

 

(俺たちの同意も取ってほしかったのだが……)

 

 しかし、黒須と一緒の班になれるというのは正直悪くはない。でも黒須がどう思っているのか。

 長屋は小声で黒須に話しかける。

 

「茜は俺と一緒で大丈夫?」

「うん。陽介君も、委員長も一緒にいるのには反対しないよ」

「そう」

 

 これで話は終わった。未だに相沢委員長は抗議の意を示しているが、教室内の生徒たちの同意に基づいて班分けが行われるため、おそらくはこのまま長屋と黒須と相沢委員長の班が出来上がることだろう。

 果たして、そのようになったわけで、相沢委員長は少し不満そうな顔をしていた。

 

「あのー、委員長?」

 

 班分けが行われた後の顔合わせで、長屋と黒須は相沢委員長に声をかける。

 

「……なんですか?」

「いや……、自分のせいで勝手に班が決められちゃったみたいで……。謝罪の言葉要ります?」

「要らないです。私は委員長。どんな場面に遭遇したとしても、その職務を全うするだけです」

(なんとも気高き姿だが、学校のクラス委員長ってそんな崇高なものだったっけか?)

 

 ちょっとした疑問が、長屋に小さいモヤモヤを残したのだった。

 そうして一日が終わり、放課後。長屋は珍しく一人で校門に立っていた。黒須は田口先生に呼び出されていたようで、少し遅れるそうだ。

 そんなに長くなる用事ではないようなので、こうして校門で待っているのだ。

 先ほどまで高崎が一緒にいたが、電車の時間の都合もあり、先に帰っていた。

 

(さて、何してようかね……)

 

 そんなことを言いながらも、長屋はYYを開いていた。まさにSNS中毒の典型例だろう。

 するとそこに、一人のスーツ姿の男性が近づいてきた。

 

「こんにちは、長屋陽介様」

「あ、こんち……」

 

 挨拶されたので、挨拶を返そうとしたところで異変に気が付く。

 

(なんで俺の名前を……?)

 

 顔を上げてみると、そこには見たことのある顔があった。

 

「先日はインターホン越しでのご対応、ありがとうございました」

「……あなたは」

 

 少しして思い出した長屋は、ポケットに入れたままの名刺を取り出す。

 

「……久野友也さん」

「覚えていてくれたようで恐縮です」

 

 肩書からして怪しさ満点の不審者だ。

 

「何の用ですか? あなたとは接点が存在しないように思えるのですが?」

「いえいえ。そういうわけにはいきませんから」

 

 そういって久野は話を始める。

 

「あなたには、我々の味方になっていただきたいのです」

「……何勝手に話進めてんですか」

「ここ500年ほど、この国は大統領というまがい物の玉座に座る不届き者がいます。我々はその不届き者の玉座を破壊し、高御座(たかみくら)へと戻す作業をしています」

「はぁ。まるで古代の日本の話をしているようですね」

「もちろんです。その名刺にも書かれているでしょう。我々は正当なる日本国の後継者である高山宮禄久(ろくひさ)親王殿下を擁護しているのですから」

 

 立ち込める不穏な空気に、長屋は飲み込まれそうになる。

 

「……その言葉、まるで国家転覆でも図っているようですね。こういうのは内乱罪が適用されるんでしたっけ?」

「概ねその通りです。我々の考えは理解していただけたでしょうか?」

「まぁ、大体察しました。あなたの所属する派閥は、かつての日本国を象徴する天皇家の直系か何かであることを」

「理解していただけたようで何よりです。ですが一つ忠告しましょう。あなたの存在そのものは、すでに複数の重要人物に知れ渡っています。もちろん、21世紀の人間であることも。ですので、今後の身の振り方は注意したほうがよろしいですよ」

「……ご忠告どうも」

 

 長屋の背中に冷や汗が流れる。極度の緊張と身元がバレていたことで、視界が真っ暗に鳴りそうだった。

 

「それで、我々の味方になっていただけますか?」

「それは……」

 

 その時、長屋の元に黒須がやってきた。

 

「陽介君、お待たせ」

「茜……っ!」

 

 長屋は一瞬、黒須のほうに視線を向ける。

 

(今の話を聞かれたか……!? いや、今は茜をコイツから守らないと……!)

 

 長屋は黒須の前に立ち塞がった。

 しかし、その時には久野は長屋たちに対して背を向けていた。

 

「今日はこの辺りにしましょう。また後日、返事を聞かせてもらいます」

 

 そういって久野は去っていく。

 

「陽介君、今の知り合い?」

「……いや、ちょっとした不審者だよ」

 

 長屋は久野が去っていくのを、ただ眺めるほかなかった。

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