転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?   作:紫 和春

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第46話 手遅れ

「よく来たわね、長屋君」

 

 馬渕は、長屋のことを待っていたように言う。

 

「馬渕さん、一体どこにいたんですか……。なんかいつの間にか研究所が爆散してましたし……」

「その件は申し訳なかったわね。あの時は上京区の連中が大挙して来たから、なかなか連絡できなかったのよ」

「か、上京区?」

「あなたに接触した高山宮家を擁護する過激派一派よ」

「あぁ……」

 

 長屋は納得する。

 

「とにかく、馬渕さんが無事でよかっ……」

 

 長屋が馬渕の姿をよく見ようとした時だった。長屋はちょっとした違和感を覚える。

 馬渕の姿が、少し(いびつ)なのだ。左腕が少々短く、右足の膝から下はまるで細い義足のように見える。

 長屋がゆっくり馬渕に近づく。すると、その姿の詳細が見えてくる。

 馬渕の左腕から何本もの電気コードが垂れており、カーボンナノファイバー製の骨格が見えている。右足も何かにもがれたらしく、ただの棒を骨格に縛り付けているようだ。

 

「馬渕さん……、なんですかその姿は……?」

「あなたには言ってなかったけど、私は人類維持局の研究所で造られた、高精度ヒューマノイドなの。あなたをサポートするためだけにね」

「俺のための……、ロボット?」

「その通りよ。詳しくはこのエレベーターの先で説明してくれるわ」

 

 そういって怪しく目が光ると、馬渕はその場で崩れ落ちた。

 

「ちょっ、馬渕さん!?」

 

 長屋が慌てて馬渕のところへ駆け寄る。

 しかし、すでに手遅れだったようで、モーター音は一つもしていなかった。

 長屋は、手遅れだったことに罪悪感を感じつつも、おそらく限界だったのだろうと推察した。

 そして彼女の言葉通りに、エレベーターで地下に向かうことを決める。

 エレベーターの前に立つと、ドアが自動的に開く。長屋は少し警戒しながら、エレベーターへと乗り込んだ。

 すぐにドアは閉まり、下方向へ下る感覚がするだろう。液晶にはB1、B2と表示されるが、やがてB-(マイナス)と表示される。

 かなり深い所まで下ったようで、エレベーターが停まる1分ほどかかった。

 エレベーターが停まるとドアが開く。長屋は恐る恐るエレベーターを降りた。

 

「……真っ暗なんだけど……」

 

 するとエレベーターのドアが閉まり、完全に暗闇となる。

 と思ったら、目の前に一筋の光が天井から降り注ぐ。そこに一人の男性が立っていた。

 

「あなたは……?」

 

 長屋が聞く。

 

「よく来てくれた。私が、大日本共和国大統領の野々瀬恭一だ」

 

 ニュースでチラリと見たことある顔。本物の大統領である。

 

「まぁ、私が大統領であることはさして重要ではない。君が大統領の職に就いている人間と接触することが、一番重要なのだよ」

「……どういうことですか?」

「そのためには、少し歴史を遡る必要がある。特別な映像があるから、まずはそれを見てほしい」

 

 そういって野々瀬はフィンガースナップをする。すると、野々瀬の後ろにあった液晶画面に映像が投影される。

 そこに映っていたのは、これまたどこかで見たことある老齢の男性の顔だった。

 

『よくここまで来てくれた。感謝する、長屋陽介』

 

 そして聞いたことあるような声。

 

『自己紹介をしよう。私は、そこにいる日本国共和国大統領に憑依している、2071年の長屋陽介だ』

「……は?」

 

 思わずアタッシュケースを落としそうになった。いやしかし、確かに映像の男は長屋の面影を残している。

 だが、それだけでは信用に値しない。そんなことを思っていると、老齢の長屋が言葉を続ける。

 

『突然このように言われても、混乱するだけだろう。これから証拠を見せよう。この装置は見たことあるだろうか?』

 

 すると、また別の光の筋が降り注ぐ。そこには、36世紀(この時代)に来てから初めて見た謎の装置。通称タイムマシンだ。

 

『これは私が開発した。そして、そこに私の遺伝子を保存し、君が36世紀(この時代)に召喚されたというわけだ。やろうと思えば、今その装置から君を召喚することが出来る』

「い、いやいや……。そんな馬鹿な話……」

 

 長屋は思わず否定的な言葉を言う。

 

『馬鹿な話ではない。そうでなければ君はここにいないし、私もこのような状況になっていない』

「……え? これ話が通じてる?」

『あぁ、そうだ。今そこにいる大統領の脳内から話している』

「なんだそりゃ……」

 

 少々混乱してきた長屋。そんな彼に、野々瀬が接近してくる。

 

「君には、一度キチンとした話をしなければならない。そのために、この装置を頭につけてくれないか?」

 

 野々瀬はどこからともなくリング状の薄い金属を取り出していた。

 

「……いかにも怪しいんですけど、それを頭に巻かないと話が進まないし、進めてくれないんですよね?」

『その通りだ、よく分かっているじゃないか』

「はぁ……」

「では、そこのソファで横になってくれ」

 

 いつの間にか、横になれるソファが長屋の後ろに存在していた。

 長屋は再び溜息をついて、装置を受け取り、ソファに横になる。

 

「額とこめかみに当たるように装着するんだ」

 

 野々瀬に言われ、長屋はパカッと開いた装置を頭に巻いた。直後、電源が入る音がして、長屋は次第にまどろみの中に落ちていく。

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