転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか? 作:紫 和春
「よく来たわね、長屋君」
馬渕は、長屋のことを待っていたように言う。
「馬渕さん、一体どこにいたんですか……。なんかいつの間にか研究所が爆散してましたし……」
「その件は申し訳なかったわね。あの時は上京区の連中が大挙して来たから、なかなか連絡できなかったのよ」
「か、上京区?」
「あなたに接触した高山宮家を擁護する過激派一派よ」
「あぁ……」
長屋は納得する。
「とにかく、馬渕さんが無事でよかっ……」
長屋が馬渕の姿をよく見ようとした時だった。長屋はちょっとした違和感を覚える。
馬渕の姿が、少し
長屋がゆっくり馬渕に近づく。すると、その姿の詳細が見えてくる。
馬渕の左腕から何本もの電気コードが垂れており、カーボンナノファイバー製の骨格が見えている。右足も何かにもがれたらしく、ただの棒を骨格に縛り付けているようだ。
「馬渕さん……、なんですかその姿は……?」
「あなたには言ってなかったけど、私は人類維持局の研究所で造られた、高精度ヒューマノイドなの。あなたをサポートするためだけにね」
「俺のための……、ロボット?」
「その通りよ。詳しくはこのエレベーターの先で説明してくれるわ」
そういって怪しく目が光ると、馬渕はその場で崩れ落ちた。
「ちょっ、馬渕さん!?」
長屋が慌てて馬渕のところへ駆け寄る。
しかし、すでに手遅れだったようで、モーター音は一つもしていなかった。
長屋は、手遅れだったことに罪悪感を感じつつも、おそらく限界だったのだろうと推察した。
そして彼女の言葉通りに、エレベーターで地下に向かうことを決める。
エレベーターの前に立つと、ドアが自動的に開く。長屋は少し警戒しながら、エレベーターへと乗り込んだ。
すぐにドアは閉まり、下方向へ下る感覚がするだろう。液晶にはB1、B2と表示されるが、やがてB
かなり深い所まで下ったようで、エレベーターが停まる1分ほどかかった。
エレベーターが停まるとドアが開く。長屋は恐る恐るエレベーターを降りた。
「……真っ暗なんだけど……」
するとエレベーターのドアが閉まり、完全に暗闇となる。
と思ったら、目の前に一筋の光が天井から降り注ぐ。そこに一人の男性が立っていた。
「あなたは……?」
長屋が聞く。
「よく来てくれた。私が、大日本共和国大統領の野々瀬恭一だ」
ニュースでチラリと見たことある顔。本物の大統領である。
「まぁ、私が大統領であることはさして重要ではない。君が大統領の職に就いている人間と接触することが、一番重要なのだよ」
「……どういうことですか?」
「そのためには、少し歴史を遡る必要がある。特別な映像があるから、まずはそれを見てほしい」
そういって野々瀬はフィンガースナップをする。すると、野々瀬の後ろにあった液晶画面に映像が投影される。
そこに映っていたのは、これまたどこかで見たことある老齢の男性の顔だった。
『よくここまで来てくれた。感謝する、長屋陽介』
そして聞いたことあるような声。
『自己紹介をしよう。私は、そこにいる日本国共和国大統領に憑依している、2071年の長屋陽介だ』
「……は?」
思わずアタッシュケースを落としそうになった。いやしかし、確かに映像の男は長屋の面影を残している。
だが、それだけでは信用に値しない。そんなことを思っていると、老齢の長屋が言葉を続ける。
『突然このように言われても、混乱するだけだろう。これから証拠を見せよう。この装置は見たことあるだろうか?』
すると、また別の光の筋が降り注ぐ。そこには、
『これは私が開発した。そして、そこに私の遺伝子を保存し、君が
「い、いやいや……。そんな馬鹿な話……」
長屋は思わず否定的な言葉を言う。
『馬鹿な話ではない。そうでなければ君はここにいないし、私もこのような状況になっていない』
「……え? これ話が通じてる?」
『あぁ、そうだ。今そこにいる大統領の脳内から話している』
「なんだそりゃ……」
少々混乱してきた長屋。そんな彼に、野々瀬が接近してくる。
「君には、一度キチンとした話をしなければならない。そのために、この装置を頭につけてくれないか?」
野々瀬はどこからともなくリング状の薄い金属を取り出していた。
「……いかにも怪しいんですけど、それを頭に巻かないと話が進まないし、進めてくれないんですよね?」
『その通りだ、よく分かっているじゃないか』
「はぁ……」
「では、そこのソファで横になってくれ」
いつの間にか、横になれるソファが長屋の後ろに存在していた。
長屋は再び溜息をついて、装置を受け取り、ソファに横になる。
「額とこめかみに当たるように装着するんだ」
野々瀬に言われ、長屋はパカッと開いた装置を頭に巻いた。直後、電源が入る音がして、長屋は次第にまどろみの中に落ちていく。