テンペスト・フィールド プレイ動画   作:微カキン

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『0-2』

 

 

《メインシナリオ》

 

 無事、ビッグフットを撃破した私達。勝利の余韻もなく、ただ敵の攻撃の再開に備え、各々遮蔽物に身を隠して武装を確認する。

 

 そんな中、突如、割り込んでくる通信があった。

 

 そのチャンネルには覚えがある。あれだけ呼びかけても応答がなかった司令部のものだ。

 

 私は痛む体を瓦礫の横に潜め、通信を聞き取る事に全神経を集中した。

 

『こちら司令本部、カーター大佐である。惑星エンデュランス北極基地防衛隊の兵士達に告ぐ』

 

「ようやく救援か……」

 

 遅きに失したと言わざるを得ない。我々はあと数分も立たず全滅するだろう。しかし、これまでの苛烈な抵抗により、敵の戦力は大きく減じている。

 

 新たに到着する部隊への迎撃は衰えたものになるだろう。彼らは敵の抵抗を容易く捻じ伏せてこの地に降り立ち、我々に代わって敵を駆逐する事だろう。

 

 私一人の死は私だけのものではない。我々の命は、全ての兵士の為にある。

 

 ただ、自分達の戦いがどうなるのか、それについては関心がある。いったいどのように奪還作戦が行われるのか、それを一言一句漏らさず聞き届ける為に私は耳を研ぎ澄ませた。

 

『同胞諸君のこれまでの献身に感謝する。現時点をもって、諸君らの軍籍を抹消する。全て基地防衛隊の過去の経歴は消去される。その星に、最初から兵士は存在しなかった』

 

「…………?」

 

 何を。言っているんだ?

 

『祈りの時間を与える。これから20分後に、戦略弾頭ミサイルが基地上空に到達する。これは味方殺しではない、同胞への誤射ではない。諸君らは記録上存在していない。よって、これは人道的になんら問題のある行いではない。通信は以上だ』

 

 ぶつり、とノイズを残して通信が途絶える。

 

 残ったのは、部下達と繋がる中隊無線だけで……それも、酷く困惑した空気に満ちていた。

 

 今、我々は何を聞かされたのだ。一体、大佐は何を言い出したのか。

 

「……統合戦略本部の管理AIは、資源の浪費について厳しい判断を行う。味方勢力の存在する戦域への戦略兵器投入は、極めて厳粛に判断される……」

 

 兵学校で学んだ教本の一節を無意識に復唱する。

 

 まさか。

 

 まさか。

 

 我々諸共敵を戦略兵器で一網打尽にするため、ただそれだけの為に我々の軍歴を抹消した? そこに味方はいないと、管理AIに許可を出させるために?

 

「馬鹿な」

 

 瓦礫の影から顔を出して、雪原を見渡す。

 

 確かに敵の数は圧倒的だが、防衛部隊は勿論基地施設を犠牲にしてまで、戦略兵器で焼き払うほどのものでもない。それは、蜂の巣を焼き払う為にナパーム弾を持ち出すようなものだ。資源の浪費であり、戦力の浪費である。到底合理的な判断ではない。

 

 つまり、人類軍に対する反逆的行動と解釈するべきだ。

 

 我々は、司令本部の愚かな行動の目撃者となった。

 

 このような場合、政治将校が存在すれば、その判断を請う。存在しなければ、該当者はどのような手段を用いても戦場から離脱し、弾劾権限を持つ上位者の判断を請うべき。そのように、我々は入力されている。

 

「α1から各員へ通達。本作戦は、現時点を持って過去にさかのぼり中断されたと考える。作戦指示の消滅により現時点において、本隊の最高指揮権はα1にあると判断。以降、私が独自に判断を下す。異論あれば申し出よ」

 

 困惑する部下達の言葉にならない呻き。しかしそこに明瞭な反対意見が無い事を見て取り、私は命令を下した。

 

「現時点において全ての作戦行動を中止。基地中央塔地下格納庫に全速で退避せよ。繰り返す、現時点において全ての作戦行動を中止。基地中央塔地下格納庫に全速で退避せよ」

 

 言い終えるなり、私は全速で基地施設の屋内に向けて走った。扉を蹴飛ばすように開けて階段を駆け下り、輸送機が置かれている地下格納庫にひた走る。

 

 陥落寸前の地下格納庫は広く伽藍としている。だがぽつぽつと灯る照明の中に、一機の全領域航空輸送機が鎮座している。

 

 TSS-012ライトニング。

 

 他ならぬ我々がこの基地に赴任する際に搭乗した輸送機だ。私は駆け寄ると、自らの認識IDでドアロックの解除を試みた。

 

「認識番号P-104021。特務兵α1。起動キーを解除」

 

『ピッ 該当するIDが存在しません。許可の無い装備使用は許可されておりません。その場で待機し、憲兵による取り調べを待ってください』

 

「……そうか」

 

 頭の片隅にあった、何かの冗談であってくれ、という思いは虚しく否定された。

 

 司令本部は本当に、我々ごとこの基地を消し去るつもりなのだ。

 

 機の前で立ち尽くしていると、背後からかつかつ、という足音が響いた。

 

 私の命令に従い帰投してきた部下達の姿。彼らは銃口を降ろしたまま困惑した様子で私と機との間で視線を彷徨わせた。

 

「コマンダー、これは……」

 

「見ての通りだ。我々のIDは全て抹消された。今の我々は、兵士ですらないらしい」

 

「そんな……っ」

 

 歩み出たα2が同じように認識を試し、それが通じない事に膝から崩れ落ちた。

 

 感情の無い、言われるがままに戦い、死ぬだけの兵士達。しかしどれだけ感情を、記憶を制御されようと、彼らとて人間だ。むしろ兵士としての矜持があるからこそ、どのような過酷な戦場にも赴けるのであり、それを他ならぬ軍そのものに踏みにじられるなど、想像した事もないだろう。

 

 人の子のように落胆に打ちひしがれる部下をよそに、私は機の下に潜り込んだ。

 

 薄暗い中で、配線を探す。

 

「……? コマンダー、何を……」

 

「これか」

 

 目当てのものを発見し、レーザーピストルで破壊する。

 

『システムオフライン。品質テストモードで起動します』

 

 途端、がちゃり、とドアロックが解除される。機の下から這い出すと、部下達が顔を見合わせ困惑しているのがヘルメット越しでもはっきりとわかった。

 

「コマンダー? いまのは?」

 

「普段から整備士とは仲良くしておけ。彼らの知識は生存に直結する」

 

 細かい説明は後だ。着弾まで残り数分しかない。

 

「……最終確認だ。ここに残るも私についてくるのもお前達の判断に任せる。ただし、私を逃亡兵として排除するのはお勧めしない。司令部が我々のIDを抹消したのは戦略兵器の使用を戦略AI群に咎められない為であり、それは軍規違反に値する。ここで私を排除する事は、その軍規違反という事実を抹消し隠蔽する事であり、反逆罪に値する。……これは命令ではない。諸君らの賢明な判断を期待する」

 

 それだけ告げて、操縦席に乗り込みエンジンを起動する。幸いにしてよく整備された機のシステムはすぐに立ち上がり、プラズマパルス推進エンジンが光の粒子を吐き出し始めた。

 

 パチパチ、と発進準備を続けていると、助手席に一人の兵士が乗り込んできた。

 

 α2。

 

「コマンダーの判断は適切なものだと考えました。御同行させて頂けないでしょうか」

 

「助かる」

 

 副官ポジションのα2は副操縦士を任せられる。おかげで発進準備がスムーズに捗る。さらに、ぎっ、ぎっ、と機を揺らして、残りの兵士も輸送機に乗り込んできた。

 

 これで六人全員、生き残った者は機に乗り込んだ事になる。

 

「ハッチ開きます」

 

 ごごご……と音を立てて、格納庫の扉が上下に開いていく。あとは脱出するだけ……そう思った所で、扉の解放が突如停止した。

 

 表示を確認する。電力不足?

 

 欠陥構造にも程がある、まさか格納庫の扉の開閉すら満足にできないとは。一度外に出て、配電盤の繋ぎ変えを行わなければ。

 

 急いでいるというのに、面倒な事になった。

 

「コマンダー、敵が!」

 

 しかも最悪な事に、開いた扉から敵兵が侵入してきている。どうやら思っていたよりも、敵が動き出すのが早かったようだ。

 

「止むをえまい。敵を迎撃しつつ、格納庫の解放と発進準備を並行して進める。α7、配電盤の工作を頼む! 私は機から指示を出す」

 

「了解しました!」

 

 脱出の為に残されている猶予はあと数分。間に合うか……?

 

 

 

 

 

《チュートリアル》

 

 世界が停止し、再びリンファが画面に現れる。

 

「またお会い出来ましたね! 本ミッションではストラテジーに加え、FPS操作をご説明します。まずは、チームのユニットを選択し、戦場に配置してください。各ユニットには行動傾向があります。積極的に攻撃するユニットを敵に近い位置に、支援行動を積極的に行うユニットを敵から遠い場所に位置に配置するのが効率的です。まずはα2を一番敵に近い位置に配置しましょう」

 

 言われた通り、ユニットアイコンをタッチしてスワイプし、赤く点滅する配置場所に移動させる。三頭身ぐらいにデフォルメされたキャラクターが、画面から貴方に向けて手を振った。もっとも、全員ヘルメットをかぶったモブ顔なのでいまいち愛嬌が無いが。

 

「できましたね。α2は遊撃手として高い攻撃力と攻撃頻度を持ちます。多数の敵の撃破を期待できるでしょう。しかし、本ミッションでは敵が多数押し寄せてくるため、オート行動では手数が間に合いません。よって、FPSモードを適宜駆使して、敵を撃退していきましょう。画面左下の『FPSモード』をアンロックします」

 

 

 

 

 

「敵の本格的な攻撃までまだ猶予がある。各自、装備の状態を確認しておけ」

 

「了解しました。……カメラの反応が悪いようです。モニタリングチェックお願いします」

 

「確認する」

 

 

 

「このボタンを押すと、画面がFPSモードに切り替わります。このモードでは、プレイヤーであるα1が各ユニットが装備しているカメラ視点で、選択中のキャラクターに直接、指示を出す事が出来ます」

 

 FPSモードとやらの操作画面がスクリーンショットで表示される。各アイコンには注意書きが表示されており、貴方はなんとなく意味を理解した。

 

「ドラッグで視界変更、タッチで射撃、リロードボタンをタッチでリロード。このモードではプレイヤーの腕前が全てです、ガンガン敵を撃破してください」

 

 短い動画が流れる。画面の中では、オート操作とは比較にならない勢いで攻撃が繰り出されている。ずっとこれならどんなボスも楽勝だ。もっとも、そう簡単なはずはないが。

 

「なお、FPSモード中のキャラクターはダメージを受けませんが、代わりに攻撃を受けると制限時間が減っていきます。制限時間がゼロになるとFPSモードは自動的に解除され、一定時間が経過するまで発動できません」

 

 

 

 

 

 

 

作戦目標:作業完了まで敵の侵攻を阻止せよ

 

敗北条件:敵の最終防衛ライン突破

 

 

 

 

 

 

 

《チュートリアル》

 

「FPSモードは上手く使えましたか? 特定の敵を倒したい、あるいは特定対象の護衛といったミッションにおいては、FPSモードをうまく使わないとクリアは困難です。キャラクター達は大局的な判断を下すのが苦手なため、指揮官であるプレイヤーが適宜彼女達へ指示を出し、作戦を成功に導いてあげましょう」

 

 残念ながら、初めてという事もあって、貴方は上手く操作できなかった。練習が必要なようだ。

 

「他にも、制限時間内であればFPSモードはダメージを受けない事を利用し強力なボスの攻撃を敢えて受ける、あるいは強力な攻撃の後隙を突くためにFPSモードを温存する、という判断も考えられます。チームのユニットの特性を考えて、二つのモードをうまく切り替えていきましょう!」

 

 

 

 

 

「こちらα7、配電盤の工作作業完了しました!」

 

「よし……! 離脱する、総員輸送機に戻れ!!」

 

 

 

 

 

《ミッションクリア!》

 

 

 

報酬一覧:

 

ノーマルガチャポイント X1  

 

訓練チケット      X10

 

補給物資        X5

 

部屋の鍵(銅)     X1

 

 

 

《メインシナリオ》

 

「よし……! 離脱する、総員輸送機に戻れ!」

 

 私の指示に従い、コンテナなどを盾に敵兵と交戦していた部下達が引き返してくる。当然、迎撃が衰えた事で敵兵が勢いにのって格納庫に侵入してくるが、私は彼らに向けて輸送機の機銃の照準を合わせた。

 

 甲高い唸りを上げて機銃が掃射され、敵兵士達を一瞬で霧散させる。アーマーを装備していても、車載機銃の大口径を前には紙くず同然、人体など原型も残さず弾け飛ぶ。

 

 攻撃を受けて、敵兵達が慌てて扉の影に隠れる。それでいい。

 

 残弾を撃ち尽くした機銃のトリガーから指を離し、操縦桿を両手で握りしめる。

 

「全員搭乗しました!」

 

「よし、いくぞ!」

 

 エンジンを最大出力で噴射し、機を加速させる。床と擦れるスキッドが、血飛沫のような火花を上げる。

 

 どんどん迫る、格納庫の扉。限界まで操縦桿を引いて機首を上げる。

 

「……飛べ……!!」

 

 ふわり、という浮遊感。擦れていたスキッドの抵抗が不意に途絶える。

 

 ぐぐん、と機首があがり、破壊された隔壁や敵兵の姿が視界の下に消えていく。代わりに目に入るのは、どこまでも続く曇天と、その向こうで輝いている太陽の光だ。

 

 高度計に目をやれば、すでに高度は数百メートルを越えている。エンジンの調子も良い、このまま一気に大気圏を離脱する。

 

「こ、コマンダー、あれを!」

 

「……!」

 

 α2の言葉に視線を向けると、左舷キャノピー越しに赤く尾を引いて飛翔する流星のような光が見えた。

 

 勿論、流星なんかではない事は百も承知。

 

 戦略級ミサイル。

 

 基地から飛び立つ私達と入れ替わるように、それはまっすぐ基地を目指して飛翔している。

 

 そして飛び立った基地が遥か雲の下に消えた頃で、レーダーが膨大な熱源を感知した。

 

「衝撃が来る、総員何かに掴まれ!」

 

 雲の下で、膨れ上がる何か。膨れ上がった閃光が、雲を押しのけて地上の太陽のように輝く。

 

 遅れて吹き寄せてきた衝撃で輸送機が激しく揺れる。怨霊の叫びのような風切り音と共にミシミシと機が嫌な音をたて、部下達の悲鳴が上がった。

 

 私は歯を食いしばって操縦桿を握りしめる。あと少しだ。宇宙空間にさえ出てしまえば……。

 

 途端、ふ、と振動が止んだ。

 

 嫌な音も消え去る。機が急激に安定し、機内にはエンジンの静かな振動音だけが、規則正しく伝わっている。

 

 シン、とした静寂。

 

 目の前に広がっているのは灰色に淀んだ惑星の宙ではなく、蒼に近い黒に染まった、ダークブルーの視界。その向こうに一つ、二つ、と星が煌めき、瞬く間に数え切れぬほどの星の海が、キャノピー一面に広がっていた。

 

「……コマンダー。これから、私達はどうすればいいのでしょう」

 

「考えはある。無策ではない、私を信じろ……いや。信じなくともいい。お前たちの指揮官は依然として私だ」

 

 気休めのつもりはない。

 

 私には指揮官として、彼らの最上位者として、兵士達を無駄死にさせない義務と責務がある。

 

「安心しろ。お前たちに、必ず納得のいく最後を用意してやる」

 

 私は操縦桿を手繰り、暗黒の宇宙へと突き進んだ。

 

 

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