テンペスト・フィールド プレイ動画 作:微カキン
《メインシナリオ》
いうまでもない事だが、下士官とその上官では与えられる情報に違いがある。
兵士には知るべき情報の量が決められている。そして私はその立場故に、部下達よりも多くの情報に触れている。
例えば兵士達が噂話に語り合う怪奇現象の真相であったり、とか。判断を迷わせるあいまいな情報を、事前につぶしておくのも指揮官の務めだ。
「兵士の間で、サルガッソ宙域と呼ばれているエリアの話は知っているな」
「……多少は。あれは単なるうわさ話なのでは?」
「表向きはな。実際のところ、あれは単なる自然現象にすぎない」
この星系に存在する二連恒星。それの放つ電磁波が互いに干渉した結果、異常なレベルで高まった電磁波が船の制御システムを破壊する。この星系の二連太陽だからこそ発生する特有の現象であり、軍事的に利用価値のある現象であるため機密によって一般に知られていないだけである。
逆に言うと、そこで遭難した船は単にシステムに異常をきたしただけであり、船員は恐らく普通に脱出したものだと考えられる。船が消える宙域というのは、原因不明の船舶トラブルなどに尾ヒレがついたものに過ぎないという事だ。所詮噂話である。
だが逆に言えば、その宙域で行動不能になった船舶が存在する可能性は高いという事である。
「現状の我々にはあらゆる物資が不足している。この機の行動半径もそう広くはない。一度、件のエリアで漂流船から物資を確保し、今後の作戦行動の資源とする。いいな」
「了解しました」
そして向かったポイント。
そこでは都合のいい事に、計ったように一隻の民間船が漂流していた。
かなり大型のクルーザーだ。民間船にしてはグレードが高い。それでも対電磁防御が不足していたようで、天然のトラップにひっかかって行動不能になったようだ。
防衛システムが生きている事を考慮して慎重に接近する。
接近すると、誘導灯が点灯した。基本システムがまだ生きている? 搭乗者がいるのか?
「どうしますか?」
「……気にはなるが、背に腹は代えられない。最悪、船を制圧すればいい」
こちらにも余裕はない。
民間の物資を軍が摘発するなどよくある事だ。今の我々は兵士ではないが。
「着陸する」
輸送機を乗り入れた後は、状況の確認だ。
この船の状況を知るのもそうだが、まず、我々の事についても確認しなければならない。
「コマンダー。装備を点検した結果ですが……大半はもうすでに使用限界を越えています」
「やはりか」
基地防衛において、我々の作戦行動は限界を越えていた。主武装であるレーザーガンは砲身は焼き付き、ケーブルは焼け焦げ、パワーパックは破裂している。この装備はもう使えそうにない。
幸いなことに、レーザー発振器などは無事であった為、組み替える事で必要最低限の武装としては運用可能だ。民間レベルの付け焼刃でしかないが、使う兵士によって価値は変わると信じよう。
そしてもう一つ、大事な事がある。
「お前たち。ヘルメットを脱げ。我々は今現在、運命共同体だ。互いの顔も知らないままでは、色々と差し支える。これまでは信頼はなくとも信用ができれば十分だったが……ここからは信頼も必要だ」
「それは。そうですが」
言いつつも、困惑したように顔を見合わせる兵士達。
理解を得られたところで、率先して私からヘルメットを外す。30時間ぶりにヘルメットを外し、大気に素肌を晒す。
「美男子でなくて悪い所だが、これが私の素顔だ。がっかりしたか?」
「い、いえ! 決して不細工ではないと思います」
「素直だな」
苦笑しつつ、仕草で部下にもヘルメットの解除を促す。
彼らは少しだけためらった後、両手でヘルメットに手をやった。プシュウ、とロックの解除する音と共にヘルメットが外され、その下からふわさ、と長い髪が戦闘服の後ろに広がった。
え。
……女性……?
「……どう、でしょうか?」
そういってはにかむのは、私には見眼麗しい若い少女にしか見えなかった。
《チュートリアル》
「お久しぶりです、コマンダー! リンファです。兵士達の素顔が露わになった事で、彼女らの正体をガチャで確定させましょう。今回は、あらかじめ配られていたチュートリアルガチャチケットを消費してガチャを行います」
やっとガチャが解放された。ソシャゲはこの為にやっているようなものである。どんなキャラが引けるか、貴方はワクワクした。
「ホーム画面に戻ります。乗り入れた宇宙船の格納庫が、現状の基地になります。入手したキャラクターの確認や強化、装備、編成はここで行います。今は画面中央のガチャアイコンを押して、画面を切り替えてください」
言われた通りにして、ガチャ画面に選ぶ。今現在はリリース直後で記念ガチャも行っているようだが、今はチュートリアルガチャしか選択できないようだ。画面では、全身をスーツに包んだ露出ゼロの女性キャラが立ち並んでいる。結構アーマー素材や周辺装備モゴチャゴチャしていて、最近の露出過多なソシャゲと違ってお堅い雰囲気があるが、まあ、隙間から覗く謎素材のピチピチスーツはそれはそれでフェティッシュだと貴方は思った。
「この画面では、チケットを用いて10連ガチャを引く事が出来ます。ガチャからはランダムにキャラクターを採用する事ができます。最低保証として、星3キャラクターは必ず一人含まれるようになっています。また、ガチャチケットを用いると星4一体が確定で出現します。それではさっそく、採用に望んでみましょう! あ、ちなみに私は実装されておりません、残念!」
ガチャの演出。整列する兵士が、一人ずつヘルメットを外して素顔を露わにする。並ぶ兵士の最後列の兵士だけ、銀色に輝く豪華な戦闘服を装備している。
『星2 強襲兵ジェンス』
『星2 狙撃兵エーレン』
『星1 強襲兵マティアス』
『星1 遊撃兵アレム』
『星3 支援兵フレイシア』
『星2 遊撃兵ウィレム』
『星1 衛生兵メイソン』
『星2 強襲兵ハスカー』
『星3 工作兵バークス』
演出が発生。画面にエフェクトともに現れた兵士が、優雅にヘルメットを外して素顔を露わにする。
『星4 強襲兵シンシア』
《メッセージ:チュートリアルガチャは引きなおす事が出来ます。引き直しますか?》
《メッセージ:わかりました。結果を確定しますか?》
《メッセージ:わかりました。ストーリーの続きは、対称の確定星4をα2に設定した状態で進行します(ストーリーは後から見直す事が出来ます)》
《メッセージ:再度確認です。引き直しますか?》
《メッセージ:わかりました。シナリオに戻ります》
《メインシナリオ》
まさか。女性だったのか。
私は辛うじて声に出さなかったものの、困惑は表情に出ていたらしい。困ったように眉をひそめる部下に、私は慌てて謝罪をした。
「すまない、少し驚いた。君達の名誉を軽んじるつもりではなかった」
「い、いえ。……もしかして、本当に気が付かれていなかったのですか?」
「あ、ああ。だが考えて見ればそうおかしな話でもないか」
戦争の長期化によって男手は不足している。ならばその穴埋めに女性兵士が採用されていてもおかしくはなかった。我々のような、人権無視の高価な消耗品にまで、その流れが押し寄せているとは思わなかったが、いやしかし、であるならばこそなおさらか。
私は深呼吸一つで気持ちを落ち着け、あらためて部下達に向き直った。
「了解した。悪いが、女性と分かった所で今後の扱いを変えるつもりはない。これまでどおり、私の指示に従え」
「はっ。了解しました」
踵を打ち鳴らし、金髪の女性兵士が敬礼をする。その仕草はよく見知った副官のそれであり、私は満足と安心を得て小さく頷いた。
まずは、この船の状況を確認する。それと並行して、現状使用可能な設備と装備の確認をしよう。
私の命令に、5人の部下は散らばってそれぞれの仕事にとりかかった。
「コマンダー。どうやらこの船は、惑星ブリンスタの総督、ロギディン家のクルーザーのようです」
「ブリンスタ? 随分遠い惑星だな。それがどうしてこんな所で漂流している?」
頭の中に星海図を浮かべながら首を傾げる。ちょっとした観光気分で訪れるような距離ではない。それに何よりこの近辺は、我々がそうであったように反乱軍との交戦が行われている危険区域だ。民間船の侵入は禁止されているはずである。
「理由はわかりませんが……どうやら、船員の大半はまだこの船に残っているようです。いえ、船員というにはいささか乗員が多すぎるようです。これは……どちらかというと避難民?」
「何だと?」
「それに加えて、どうやら船内で戦闘が行われているようです。船の中央部で、船の警備隊と第三勢力が睨み合っている模様。装備を見るに、第三勢力はレイダーのようです。いかがなさいますか?」
部下からの報告にしばし思索にふける。
この船に我々が乗り込んできても出迎えがなかったのはそれが理由か。すでに招かれざる客人の相手で手一杯だったと。
少し考えて、私は部下から提示された戦況情報に目を通す。
……船員側が大きく押されているようだ。このままでは、多数の乗員が押し込められるように滞在しているフロアへの侵入を許すのも時間の問題。というより、動きが悪すぎる、素人か? 一名、マップ上のアイコンから見ても動きのいい奴がいるが、多勢に無勢。制圧されるのは時間の問題だろう。
熟考している余裕はなさそうだ。
「……介入する。戦闘準備を整えろ」
「よろしいのですか?」
「我々は現在、兵士IDを失った、いうなれば私設武装集団だ。体外的にはレイダーと変わらない。今後の活動も考えれば、今の我々に必要なのは後ろ盾だ。ロギディン家は権威としては申し分ない」
私の説明に、部下達は頷くと即座に戦闘準備に入った。
ヘルメットを装備し、在り合わせで組んだレーザーガンを手にする。
少々心もとない装備だが、レイダー程度ならこれでも十分通じるだろう。
「やるぞ」
《チュートリアル》
「それではそろそろ、最後のチュートリアルです。ホーム画面の編成ボタンから、チームを編成してください。前述のとおり、1チームは5ユニットで編成されています。またユニットにはそれぞれポジショニングがあり、前衛・後衛に分かれています。チーム編成においては、必ず前衛・後衛をどちらも最低一人ずつ配備してください」
画面を確認すると、先ほどガチャで引き当てたユニットがずらりと並んでいた。どうやらステージ『0-2』まで操作していたモブ顔のヘルメットとはここでお別れらしい。ストーリー的には、あの中身がガチャで引いたキャラクターという事なのだろう。まあ5人より多いのはゲーム故仕方ない。
「またポジショニングとは別に、それぞれの兵士には役職が割り振られています。強襲兵、狙撃兵、衛生兵、といった表記がそれを示しています。これらはユニットの行動傾向や出来る事を示しており、例えば前衛ポジションの中だと、強襲兵は強力な武器を持ち、積極的に敵に接近し攻撃を行いますがその分消耗しやすい欠点があります。それに対し遊撃兵は同じく強力な武装を持ちますが、敵とある程度の距離を持ってバランスよく戦闘を行う為、消耗を押さえられる反面突破力では強襲兵に劣ります」
言われて、貴方は『0-1』でオートで暴れまわっていたユニットを思い出した。あれはそういう事だったのかと納得する。
「他にもステータスは低くても特殊な能力を持っているなど、キャラクターにはそれぞれ個性的な能力が設定されています。それらを吟味し、チームを編成しましょう」
と、そこで画面に大きく、チュートリアルガチャで入手した星4ユニットが拡大表示された。
赤目の金髪という目立つ色合いの、華奢な少女がごついアーマーに身を包み、銃剣を装備したライフルを構えているのはなかなかフェチズムを感じずにはいられない。貴女のデータにおいては、彼女がα2、副官、という事になるようだ。
「特別解説です! チュートリアルで入手した『強襲兵シンシア』は非常に攻撃的な特性を持ったユニットです。相性の良いレーザーガンを装備すると攻撃力が大きく上昇する他、接近戦時には銃剣を装備して近接攻撃を行います。銃剣攻撃は防御力の高い敵にも大きなダメージを与えますので、強敵相手にガンガン繰り出していきましょう。半面、撃たれ弱いのでFPSモードを多用してカバーしてあげた方がいいかも? 以上で簡単なユニットと編成の説明を終わります。まずは実際に編成し、出撃してみましょう!」
作戦目標:敵の全滅
敗北条件:味方ユニットの全滅
《ミッションクリア!》
報酬一覧:
ノーマルガチャポイント X10
訓練チケット X10
補給物資 X5
《チュートリアル》
「以上でチュートリアルは完了です。今後は、メインストーリーを進めるなり、イベントに参加するなり、好きなようにゲームを楽しんでください。もし私にまたお会いしたいのであれば、ヘルプからチュートリアルを確認してくださいね! それでは、コマンダーのこれからの武運長久を願って。あと最後に特別プレゼントです!」
《リリース記念:星4エクストラチケットを入手しました》
《メッセージ:今すぐ引きますか?》
《『星4 殲滅兵エクシス』を入手しました!》