テンペスト・フィールド プレイ動画 作:微カキン
《メインシナリオ》
発見したクルーザー内で発生していた戦闘を制圧した我々。
打ち倒されたレイダーの亡骸を廊下の片隅に積み上げる傍ら、私はこの船の持ち主達と接触した。
すなわち。ロギディン家の護衛と、その主人である。
「先ほどは我が家例の危ない所を助けていただき、ありがとうございます」
「こちらにも思惑あっての事。礼を言われるような事はない」
通された談話室らしき場所で、相手の代表と話をする。
驚くべき事に、あちらの最大権力者は年端もいかない子供のように見えた。
名乗りを信じるなら、アウリアーレ・レム・ロギディン。ロギディン家の第一子、長女だという。本来であれば、重武装の精兵が部隊単位で護衛しているべき重要人物だ。
にもかかわらず、彼女の護衛において戦力といえるのは武装侍女がたった一人、それも負傷している。他の護衛ははっきりいって武装しただけの一般市民であり、戦力とは言い難い。
正直疑わしいにも程があるが、得体のしれない我々に対し屹然とした態度で交渉に臨んだその佇まい、気品に溢れたオーラはただの詐欺師のものではない。少なくとも我々の求める物資の支払い能力そのものはあるようなので、現状においてはその真偽は置いておく。
ちらり、と視線をずらすと、彼女の背後で件の武装侍女が控えているのが目に入った。少なからぬ手傷を負い、腕を吊っているにも関わらず彼女は護衛としてこの会合に参加している。片手に下げたレーザーピストル程度で我々をどうにかしようというのなら御笑い話だが、悲壮な覚悟を浮かべているその表情からは正しく状況を認識できている事が伺える。
それに対し、目の前のアウリアーレを名乗る少女は太々しい笑みを浮かべて、私と対等に向き合っている。単に状況を理解できていないのか、クソ度胸なのか、私にも判別できない。
こういう場合、相手を過小評価するべきではない。私は気を引き締めて交渉に臨んだ。
「状況が状況だ、手短に行こう。我々は諸事情あって、部隊の旗揚げに伴い後ろ盾を求めている。ここで出会ったのも何かの縁。端的に言えば、我々は自分達を貴方に売り込みたい、と考えている」
「なるほど。話が早くてとても有難い。その申し出、私達は快く買い取らせて頂きたいと思います。現状の契約としては、このようなものでどうでしょう?」
「では拝見させていただく」
古めかしく紙の書類で……この状況でこんなものを用意してきた事自体がある種の牽制である……認められた契約書に目を通す。
その傍らで、アウリアーレは朗々と彼女らの状況について説明した。
「正直に申しますと、こちらも戦力を求めている状態です。ご覧の通り、我々は今、避難民の女子供ばかり。あのような盗賊の集団に取り付かれても、自力では排除できない有様です」
「姫様っ! そのような事を申し上げれば、相手に付け込まれる隙にも……っ」
「黙りなさい」
武装侍女の忠言を、振り返りもせずに一蹴するアウリアーレ。彼女の視線は、私に強い圧を向けてきている。
つまりは、こうだ。「目先の金目当てで転ぶような安い傭兵などこちらからお断りです」。そういう事だろう。貴族というのは全く、効率的なのかそうでないのか、よくわからない生き物だ。
だがしかし、この場においては最善手だろう。まだ言葉をいくつか交えただけに過ぎないのに、あちらはこちらの事を見透かして居る様だ。
我々の目的は、最終的には上層部の叛逆行為の告発にある。その為に、レイダーの仲間に落ちぶれるようでは意味がない。
これはなかなか難者のようである。まあいい、同盟相手が有能であるのは望ましい事だ。
「……契約内容に不服はない。そちらが避難先に到着するまで、我々がその護衛を担当しよう」
「ふふ、これで契約完了ですわね。勿論、そちらの働き次第では、契約更新も考えさせていただきますわ」
「であるならば、早速仕事ぶりを見せる事としよう。即座に、クルーザー内の敵残党の駆逐にかかる。それにあたって、必要な物資の配給を希望したいのだが」
流石に、いつまでもあんなジャンクの在り合わせで部下を送り出す訳にはいかない。
当然の要望として提案すると、アウリアーレはにっこりと笑って私に端末を差し出してきた。
そこには、民間用の標準的な銃火器のカタログが表示されている。
「せっかくので、格安価格でご用意させて頂きますわ」
「なるほど。では、商談と行こう」
つまり、報酬から天引き、という事になる訳か。
思った以上に強かな相手のようだ。私は内心相手の評価に上方修正を加えながら、契約の詳細を詰めにかかった。
なお、思った以上に彼女は強敵であった事を記録しておく。
作戦目標:敵の全滅
敗北条件:味方ユニットの全滅
《ミッションクリア!》
報酬一覧:
ノーマルガチャポイント X10
訓練チケット X10
補給物資 X5
レーザーガン速射D X1
レーザーガン単射D X1
レーザーピストルD X1
レーザーショットガンD X1
《メインシナリオ》
多少てこずったが、クルーズ船内に残留していたレイダー残党は殲滅した。
船に穴を開けないように気を付けるのは少しばかり骨が折れたが、何、終わってみれば我々にとっては容易い事ではあった。
「掃討完了は完了した」
「お疲れ様です。お早いお仕事、感謝いたしますわ」
相手の代表であるアウリアーレと軽く握手を交わす。気安い仕草に背後で控えている武装侍女が不機嫌そうな表情を見せているが、向こうが望んでいるのだから仕方あるまい。クライアントの機嫌を損ねないのも契約の内だ。
「それでは引き続き、目的地に到着するまでの護衛をお願いします。勿論、道中で何かあった場合、対処して頂ければボーナスを加算させて頂きますわ」
「了解した」
「部下の皆さんには、クルーズ船の一区画を貸し出しますので、そちらをご利用ください。我が家と思って寛いでくださってよろしいのよ?」
そういって愛らしく微笑むアウリアーレ。
一見するとただ気配りを巡らせているだけのように聞こえるが騙されてはいけない。そうやって集団に船への帰属意識を植え付け、有事の際に率先して船を守らせようという姦計であろう。契約を詰めるにあたって、恐るべき手練手管を目の当たりにした後とあっては、この少女のやる事成す事全てに裏があると考えた方がいい。
とんだ化け物である。流石はロギディン家の息女、といった所か。
問題は、そんな彼女が、どうしてこんなクルーズ船に頼りない護衛と共に乗り込み、遠路はるばる旅の途上にあるのか、という事だが。
話せば話すほど、そのギャップは強くなる。本来ならば、戦艦複数に、護衛の兵団が一個師団は付き従っていてもいいような立場のはずだし、それだけの能力を彼女は持っているように見える。
よって、単刀直入に訪ねる事にした。
「ところで。そろそろ、そちらの事情を教えてもらっても構わないだろうか」
「あら。こちらの事情には関せず、のおつもりだったのでは?」
「そちらの状況に関わりなく我々のやる事は変わらないが、流石にそろそろ知っておかねば問題の方が多い、と判断した」
私の言葉に、アウリアーレはあらあらうふふ、と口元に手を当てて微笑んでいる。
……何やら乗せられているような気がしないでもない。ああ、白状しよう。ども、私はこの娘に苦手意識があるようだ。
「うふふ、関心を持っていただけて嬉しいわ。それでは、恥ずかしながら、我が家の辿っている運命についてお話させて頂こうと思います。長くなるので、ほら、サラ、客人にお茶を」
「部下を待たせている。長居するつもりは……」
「可愛らしい部下の皆さんにも同じ物をおもちしますわ。それでよろしいでしょう?」
まるで事前に準備を整えていたかのように、あれよあれよとあちらのペースで話が進んでいく。
上機嫌で私を招き入れるアウリアーレの後に続きながら、どことなく、私は安全なはずの居住区に続く道がトラップ満載の敵拠点のそれとダブって見えるのだった。
《メッセージ:マイルームが解放されました》
《メッセージ:家具が新規に追加されました》