アルフィア狂い 作:PETTA
世界の中心 オラリオ
神の恩恵(ファルナ)を得た冒険者が試練の場であるダンジョンにて冒険し成長していく。
そしてその高みへ到達した者を人は英雄と呼んだ。
だがどの様な物にも停滞と衰退が存在する。
歴史上 数多の大帝国が興って滅亡していった様に
この英雄の街も例外ではない。
停滞の時代の始まりを人々は予感した。
その危機感に耐えかねたファミリアが居た
ソール・ファミリアと団長ビクトール・レイ
lv8でありながら誰よりも危機感を持っているその男はある秘策を思いつく。
全ファミリアへの戦争遊戯宣言
世界の試練へと彼らはなったのだった。
「勝ったら何でも命令して良いが、負ければ三大依頼に付き合ってもらう」
彼はそう豪語した。
この数はまさしく戦争
俺も将軍を名乗るとしようかな
「宇宙大将軍とでも名乗るとしよう」
その独り言は誰にも拾われる事なく地面に沈む。
「・・・1000くらいか?」
そう言う男の見立ては間違ってはいない。
「後衛を含めたら2000程度だろう」
アリほどの小さい人間たちが陣地の形成に苦心している様だ。
「俺たちを楽しませてくれる奴らはどれくらいだろうな?」
「そいつは無理だ。第一級冒険者はそもそも少ないし、質もピンキリだ。」
談笑中の団員を見て、笑みがこぼれる。
「うわ、団長が笑ってら。」
「放っておけ、どうせ下半身も膨らませてんだろ。いつもの事さ」
「しかし、こんな人でも一途なんだから面白い」
お前らもその口のせいで玉に瑕だよ。
開始の合図と共に20人程の小部隊が行進して来る。
陣地から安全に魔法を放つのだろう、その為の盾になる者達に合掌する。
「いよいよ始まったな。」
「いっちょやりますかぁ!」
何もないことが逆に素晴らしいと感じる広大な大地を前に今回の戦争遊戯の事を考えていた。
強大なソールファミリアが全ファミリアに布告した宣言。
「人数制限・所属制限なし」「ソール以外は逃走可」
圧倒的有利な条件に煮え湯を飲まされたファミリアもそうでない者達も結託した。
60以上のファミリア連合
絶対に勝てる戦力だ。
だが、足の震えが止まらない。
俺は恐怖している…この悪寒が杞憂であると信じたかった。
「開始ィィ!」
あぁ遂に始まってしまった・・・。
どうか・・どうにか生きて帰りたい。
進むと何かが見えてくる
遠くから
砂埃が・・・
各ファミリアの団長たちで構成する司令部
普段ならば他ファミリアとの連携を意識しない荒くれ者どもを指揮する総司令は
老練なLv6のバーナード・ベルク
戦いが始まって30分が過ぎようとしていた。
各地から既に情報が続々と集まって来ている。
「現在連合の戦闘不能者はおよそ前衛90名後衛10名 敵は3名 依然我々の圧倒的優位は揺るいでいません」
バーナードは机を叩き付け、怒鳴る。
未だに敵の主力は健在なのだ。このペースでは勝てない。
「問題は戦闘可能人数ではなく、残っている第一級冒険者の数だ!」
その助手歴戦Lv4のカールは汗を拭いながら紙を読み上げる。
「現在我々の陣営には40名の第一級冒険者が存在しますが、後方支援がその半数。
比してソールは第一級7名
それも名の知れた“鉄人”“巨人”“常勝”“死神”は健在
第二15名 相手の脱落者は第二級のみ・・・・」
数では圧倒的だ、だが誰もそれを知ったところで顔色は改善されず殆どが青い顔をしている。
「あちらには無傷のLv8が存在している。奴の目撃情報はまだ無いというのにこれでは・・・」
誰かが呟いた。
「とにかく、前線の冒険者には各個撃破に専念する様に伝えろッ!!」
それを打ち消すようにバーナードは命じる。
流石の第一級冒険者でも複数の冒険者に囲まれれば負ける。
それはオラリオの常識だった。
死神のサティ
Lv6でありながら何故死神と呼ばれるのか・・。
それは彼の魔法にある。
死の化身と言われる彼が口を動かす。
冒険者たちは数コンマ反応が遅れた。
「【全てを飲み込め】」
その魔法自体に攻撃力は無い。
だが地面に半径100mの闇が広がる。
その闇はLv2以下の行動は許さず、満足に動けるのはLv3からだ。
動けぬまま意識が刈り取られていく様子に恐慌状態に陥る。
確定した運命の住民たちはその終わりを連れてくる者を死神と呼ぶ。
逃げる冒険者を嫌そうに狩るのは常勝のラヴェル。
真剣勝負を好む熱いLv7。
「怯むな!攻め続けろ!!」
リーダー格の男は怪物の背中を剣で切り裂こうとする。
「え・・・」
剣は折れ、目の前に鉄拳が迫っている。
避ける事は出来ない。
「・・・化け物が」
アランにとってそれは称賛であった。
遠くでは冒険者たちが2、3m程舞い上がっている。
それはまるで大きな人間の様で・・
圧倒な存在感はまさしく巨人
「あぁ・・・お母さん・・・」
此処に居ない者に助けを求める者までいる。
戦況は此方に傾かず、むしろ悪化の一途をたどっている。
「コアトリクエ・ファミリア壊滅!!」
「ホルス・ファミリアも連絡が途絶えました!!」
「ポーションが足りません!!」
「各地より救援要請!!!」
司令部にまで爆発音と叫びが届く。
「連合の戦闘不能者1000名 敵8名・・・5割が戦闘不能です。」
悲痛な面持ちでカールは告げる。
「残っている大半は探索系以外だ。」
商業系の団長は嘆く。
「もはやこれまでだ、撤退する。」
バーナードはそう決断するしかなかった。
本部に残していた第一級らに殿を命じる、奴らならば逃げ切ることは出来なくはないだろう。
古来より撤退は危険が伴う大仕事である。
そもそも逃げるという士気の下がる行為中に襲われるのだから抵抗すらまともに出来ない事も少なくない。
秩序ある撤退・・・それを目指すしかない。
総員が撤退戦へと移行しようとした時、テントを突き破り落下物が地面に突き刺さった。
「伏せろ!!!」
防御して・・・何も起きない事を確認したバーナードは黒いソレを見る。
「こ、これはぁ・・・あぁ・・」
それは殿を務めると言っていた第一級冒険者たち。
それらが黒焦げになり、ロープで結ばれて1つとなっているではないか・・・。
「わぁ・・・あぁ・・」
農業系の団長が腰を抜かし、ズボンに染みを広げた。
「殺されるッ!」
「逃げろ!」
数人が司令部より駆けて行く。
たかが数人・・・だがそれを見ていた後方支援部隊は大混乱に陥る。
この会戦の勝者が完全に決まった瞬間であった。
歴史上稀に見る大会戦はソールの勝利となった。
だが死者は戦いの規模にしては殆ど存在しなかったのはソールが鈍器を武器として用いたためであろう。
大量の負傷者が出たこの戦いによりその月は魔石の供給が完全にストップしてしまい、ギルドも事の重大さを理解した。
冒険者の5割を一度に打ち破ったこの戦いの後ギルドは残存している全てのファミリアに強制任務を課す
ヘラ・ゼウス連合がソールを打ち破るまでの
第一次カイオス会戦
闇派閥掃討戦
第二次カイオス会戦
を2週間戦争と呼ぶ
それはかつてないほどの大抗争であり、数多の英雄の目覚めとなった。