アルフィア狂い 作:PETTA
アルフィア
「ザルドの奴が呪いに侵されたらしいな」
ビクトール
「あぁ、もう治したよ」
顔を真っ赤にしてアルフィアは殴り続けた。
「アルフィア俺の子を産んでくれ」
どぎついセクハラ発言は様々なファミリアの前でいともたやすく行われた。
「は?」
今までも訳の分からない発言は受けてきたが、ここまでのセクハラ行為は受けたことが無い。
「す、すまない。つい気が動転していた。」
黒竜討伐前にこの男もとうとうおかしくなってしまったらしい。
「帰ったら結婚しよう。」
通常運転であった。
ただ順序が入れ替わっていたのだからやはり普段とは違うと言うことか。
「名前も考えてるんだ。男の子なら・・・いや別に長男が欲しい訳ではなくてな女の子も・・・」
それを聞いたゼウスはビクトールの口を塞いだ。
「ばっかもん!戦いの前にその様な事を言う奴があるかッ!!!」
大神曰く縁起が悪いそうだ。
チッチッチと指を振りながらビクトールは答える。
「縁起が悪いのは知ってる、だからこそだ。」
彼曰く禁忌と禁忌が融合する時にこそ奇跡は起こると。
彼は魔法剣士を例に挙げた。
古の名残で、魔導士を剣士はひ弱と言い
剣士を魔導士は野蛮人と言う。
確かにかつてはそう言われていたらしい。
そしてそれらを融合させた魔法剣士の強さを熱弁した。
正直どうでもいい。
「作戦は皆理解していると思う。だが、それが実施できる環境であるかを確かめる必要がある。」
フィンは冷静に述べた。
前衛が盾となり、後衛が槍となる。
単純な作戦だがこれしかない。
冒険者に高度なコンビネーションなど求めてはならないのだ。
だが、その後衛部隊を配置できる場所を予め把握する必要がある。
「誰が先遣隊となってくれる。」
見つかれば1ファミリアでは太刀打ちできない。
「私がやらせてもらおう」
唯一茶を飲みながら参加しているその男。
「・・・ソール・ファミリア団長ビクトール・レイ」
色々あってトラウマとなった男。
確かにこの男ならば適任だ。
もし戦闘になっても唯一戦えるかもしれない・・・オラリオ1の少数精鋭。
全員がその点において一致するも、同時に出来ればやって欲しくないなぁとも思っていた。
「絶対に戦闘はしない」
そう言って奴らは巣に向かっていった。
先遣隊となったソール・ファミリアは順調に奴の巣へと近づいていた。
「お出迎えだ」
奴の魔力に魅せられた魔物どもが襲い掛かってくる。
だが所詮は地上の魔物
足止めにもならない。
「・・・団長感じますか?」
サティも分かったか。
感じる・・・強者の鼓動を。
「あれが黒竜・・・かぁ・・・。」
マーラーが唾を飲む。
「お前ら絶対に音を立てるなよ・・・絶対に。音を立てたら戦闘になっちまう。」
団長・・・それは
「いいか絶対だぞ」
「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
我らが敬愛する勇者殿の親指が疼き出す。
それは余りにもグロテスクな動きだった。
「やりやがった。」
皆が思い浮かべるのは強さ以外に信用の無い男の顔だった。
_________
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「グォォォォォォォォ」
唯の息でさえ、輝く命を刈り取っていく。
圧倒的格上
圧倒的存在感
その黒き竜に団長は意外にも善戦していた。
そんな男を横目に団員達はある武器の準備を始める。
ソールは別の作戦を考えていた。
なんてことはない会話から仮説が生まれ・・・確かめに行った。
そしてそれは団員が音を立ててしまった事により実行に移さざるを得なくなった。
「俺の故郷にもモンスターは居たけど、今を思えば弱かったなぁ・・。」
「あ、それ分かるわ。俺も死ぬ気で討伐した猪が今じゃデコピンで一発だからなぁ」
「やっぱ繁殖したモンスターは弱いよな」
討伐に向けて談笑しながら我々はある事に気づいてしまったのだ。
どんな生物でも生殖機能は持っている。
増えていないのはつがいが居ないからで・・・。
その竜の尻を確認した瞬間にそれは確信へと変わった。
「こいつメスだ!!!!」
と
更に幸運だったのはその穴から・・・
「こいつ排卵日だ!!!」
あぁ、何たる僥倖か・・・
そう思った団員たちは叫びながら踊り狂った。
当然、竜はそれを見逃すはずがなく・・・・
俺たちはその作戦に必要な長い槍を作っている。
先端は発射可能なその槍に付ける物。
ヘルメスの奴が
「苦痛に耐えられぬ時のむがいい。自決出来る」
と渡した失敗作の魔力爆弾。
それは周囲の魔力を糧に威力を向上させる欠陥品である為、起動すれば気分が悪くなり範囲外に逃れるまでに爆発する。
つまり・・・つまりだ。
「こいつを奴のケツにぶちこむ」
それがこの作戦である。
「楽しいなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
それはかつてアルフィアと本気で喧嘩した時に匹敵する。
傍から見ればこの上なく美しい剣の舞
もう何時間も見ていられるものであった。
対する黒竜は前門の狂人後門の卵に挟まれて思うように身体を動かせていなかった。
そしてとうとう後ろの門が決壊する。
仕方がない。
数秒だけ卵に集中して即座に終わらせる。
それは違う世界でシェリーフェンプランと呼ばれる物と似ていた。
そしてその計画は失敗した。
この黒竜の場合も・・・・。
「今だ!!!!」
目の前の男が槍を受け取る。
何をする気だ。
男が後ろにまわる。
おのれ・・・だが後ろにも鱗はある。
その様な槍では傷つける事は出来まい。
卵は出し切った・・・これでやれる。
「ファイヤーー!!」
だがその卵により緩んだ穴へ異物が入った様な気がした。
その不快感からそれを排出しようとまたも力み始める。
ある学者曰く
魔物というのは所詮肉を持たない動物である。
その体は全てが
それが足に来れば動くことが分かるでしょう?
そのように魔力の流れを知るのは重要なのです。
と
「まそっぷ」
差し込んだ本人は迫りくる爆風から逃亡したが間に合わず。
「伏せろ!」
団員たちは岩に隠れ。
「ギャアアアアアァァ!!!!!」
人間の様な悲痛な叫びを響かせた。
「!?」
近くまで迫っていたアルフィアたちは重々しい響きと、遠方で立ち上る黒煙に驚いた。
まだ戦えているのだ。
皆が一層加速しだした。
辿り着いた彼らが見たソレはまさしく死闘であった。
黒竜は何故か
何かで吹っ飛ばされた後の様で、もしや竜種の必殺であるブレスを食らったのではないだろうか。
竜は怒りのまま吠え続ける。
怒りの咆哮はlv3以下を痺れさせる程度。
奴は追い詰められている。
アルフィアは杖を構えた。
彼女以外も構え詠唱を始める。
【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪】
自身の頭上に灰銀の巨大な鐘が顕現する
【禊はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪】
ソールは既に逃げ出している。
【神々の喇叭、精霊の竪琴、光の旋律、すなわち罪禍の烙印】
黒竜はようやくこちらに気づいた様だ。
【箱庭に愛されし我が運命よ砕け散れ。私は貴様を憎んでいる】
だがもう遅い
【代償はここに。罪の証をもって万物を滅す】
遂に三大依頼は達成される。
【哭け、聖鐘楼】
鐘が爆砕した。
「化け物・・・」
誰かが呟いた。
奴は生きている・・・未だ生きている。
だが誰もが気力を使い果たしている。
ソールも動けないらしい。
「・・・?!」
奴は翼を動かした。
逃げる気だ。
「福音・福音・・福音・・・福音!・・・・・・・福音」
だがそれだけでは奴の翼を破壊する事は出来なかった。
「…行ったな。」
アルフィアは膝をつきながら悔しそうにこぼす。
「終わりましたね・・・。」
ラヴェルは団長へ
「・・・あぁ、終わってしまった。今回の黒竜討伐戦はもう終わったんだよ。」
勝手に始めた戦犯は小さな声を漏らす。
だがその顔は憑き物が取れた様に清々しい表情であった。
結果としては失敗に終わったそれはソールファミリア全員とその他一部のランクアップを引き起こす程の偉業と認められた。
失敗でさえ偉業扱いされる現実に皆は震え、ソールの団員は「ケツにぶち込んだ」だけでランクアップ出来た現実に腰を抜かしていた。