アルフィア狂い 作:PETTA
フィンとか言う奴は左手か何かが疼き出す時に大事が起こるらしい。
そんな噂を信じたのは金髪の小人が指を抑えながらうずくまっていたからだ。
俺は自称医者だからと診察を申し出るも拒絶されたが、余りにも患者の容体が悪そうなもんで我慢できずにエルフの人には後遺症無く眠ってもらった。
診た所、これは精神的な物であるという結論に達した。
可哀想に、不吉の未来でも予感したのだろう。
そう思い一撃で眠らせてやった。
死ぬほど疲れていたようで全く起きる気配がない。
そうして逃げる様にダンジョンに来たのだった。
40階層でアルフィアと出会えたのは本当に奇跡としか言いようがない。
「俺もアルフィアの事を考えるとうずくんだ、主に下半身が」
「あぁあの
臆病者ねぇ・・・。
「それはそれとして、何が起こるかな。」
「戦争遊戯だろう?私は件の張本人と面識があるが」
「ほう、そいつはどんな美男子だ?」
「鏡を知らない野蛮人だ」
最近のアルフィアさん二人きりだと攻めてきて耳に悪いなぁ。
「英雄気取りよりはマシだろうが。
しかし奴は気に入らないな、種族の為の英雄なぞ。それで自分の首を自らしめている様に見える。」
小人は確かに見下されやすいしなぁ。
太陽を求めるのは分かる。
でもうちのファミリアの奴らは生き生きしているがな。
やりようはあるはずだ。
しかし英雄ねぇ・・・。
「彼は英雄なんて物を神聖視しすぎているのかもね」
英雄とは一般的に偉大な存在だと思われている。
人から尊敬されるものだ
なろうと思う人間は世間の評判を気にしすぎる事もあるのかもしれない。
「英雄なんてのは酒場に居る者と同じだ」
酒場に限らず、どんな場所にでも居るだろうが。
「酒場?」
「・・・あぁ、酒場でも周りを盛り上げる奴は居る.
下戸でもなれる火付け役。」
英雄だってそんな物さ、そこそこの強さは必要だがそれ以上に周りを動かせる人間。
99人が動けない中で動くことが出来る1人が英雄だ。
もちろんたった一人では大局を覆すことは出来ない。
だが、一人が動けた時点で他の10人は動ける。
その10人のお陰で残りも動ける。
「でも一人では出来ない事はある、例えばそう。」
手繰り寄せ、その唇と唇が触れる。
優しく穏やかな匂いが鼻腔を刺激する。
柔らかな感触
温かくて、不思議と続けられる。
「愛とかね」
「た、ただの唾液の交換にそんな物があるものか」
プイっとそっぽを向くアルフィア。
白い髪の魔力に魅了されて余計な事を口走る。
「甘みが匂う情熱的なキスだったけどね」
初心な少女(1〇歳)の顔はいつ見ても素晴らしい。
此処に酒があればなぁ。
皆は知らないアルフィアの可愛さ。
砂糖で煮詰めたお菓子の様。
甘くて甘くて・・・でも飽きない。
先程の顔を思い出しながらニヤニヤ
アルフィアの横顔を見ながらニヤニヤ
俺だけが・・・俺だけが知っている。
友人・知人らはまだ知らない。
俺たちがここまで進展しているなんて・・・。
ヘラは知ってるけど。
メーテリアも感づいてるかもな。
いつまでも二人で居たいもんだ。
「いつか二人で72階層行こうよ」
「 いつかな。」
この約束・・・凄い良い・・何というか青春の味がする。いや青春ってなんだろう?
でも良い。
ダンジョンは登れば登るほど敵は弱くなっていく。
油断する奴らもいるが、俺たちは常に気を張っている。
油断禁物とは言え一歩ずつ遠ざかる死神を感じながら、ようやく此度の事件についてアルフィアが触れて来た。
「今回の・・・本当に全てを敵にまわすつもりか?」
所詮ただの確認、本人も答えは分かっているだろう。
「あぁ。・・・もしかして心配してくれてる?」
「お前の事など誰が心配するものか」
アルフィアお前・・。
「・・・お前がやられるわけ無いだろう」
「アルフィア・・・」
明日は2000人以上と戦うが烏合の衆は俺が出る幕ではないな。
暴れさせよう。
「俺を倒せるかもしれないのはオラリオに数人居る、でも倒してほしいのは1人なんだ。
そして残りの数人と共に協力して倒してほしいな」
1人1人ならば頑張れば倒せちゃうからなぁ。
だが、今のアルフィアでは0人になってしまうな。
「才禍代償か・・」
アルフィアを蝕むスキルの名だ。
「何故それを?」
ヘラが俺に教えたのだ。その上で諦めろと返答はまぁ・・・。
「ようやく・・ようやく治せるようになったんだ。」
ポカンとするアルフィア。
元来の質との別れ等というのは余りにも衝撃的過ぎたのだろう。
「まぁいやな「やれ」はい」
高圧的な態度の中にあるそれ・・・上目遣いの様で凄く可愛い。
_______
どちらのホームでもない宿屋でそれは行われようとしていた。
「いや、お前これは・・・。」
どうにも信じられないらしい。
「いや、本当に・・・治療には
嘘である。
接触面積が大きくなるほど効果が強くなるのは本当の事だが裸になる必要は無い。
もはや触れる必要もない。
良い嘘ってのはね、虚構と真実を混ぜる物さ。
ほらアルフィアも騙されて・・・騙されて。
凄く悪い事してる気分になる。
いや、客観視しろ。
もし俺が『裸を見られたから何だ。減るもんじゃあるまいし』などと宣えば犯罪者になるだろう。
それは何故か・・・
これは精神的な物であり、彼女の心に負担を強いているからだ。
犯罪とは物理的な損害だけではないのだ。
あぁ・・・駄目だ。駄目だ。こんな事は…今すぐにでも辞めさせないと。
「ごめ」
両耳のウラを真赤にして、小鳥のように身体をまるめて顔をふせている。
あ、これステータス更新の時の俺や。
触れると分かったが 汗が出るほど恥ずかしいらしい。熱さに脳が震える。
うつぶせのまま顔を隠す彼女が気になって、髪を撫でた後隠された顔を見つめる。
「あんまり見るな・・・」
はにかんでもなおその態度は覆さない。
だがその中に生娘の様なあどけなさを感じる。
いや生娘だろ。
余りの衝撃で現実離れしていた身体へ遅れて恥ずかしさと肉欲が湧き出て来た。
だが僅かに残っていた理性がそれを制止する。
「俺は治さねばならない」
そう心に命じてからは何とかなった。
「詠唱無しでも出来るけど、せっかくだから詠唱してもいい?」
長い詠唱中は幾らでも見放題
「…遠慮する」
流石にバレるか。
ストックした魔法を発動しながら背中合わせにベッドへと寝転がる。
身体全体でアルフィアを感じている。
背中から熱を
耳から息を
鼻から匂いを
俺たちは今一人になっている。
先程までの欲望は身を引いている
だがそれも長くは続かない。
俺の理性は治療をやり遂げろと言った。
その後の事は何も言っていない。
具体的なプランを考えているのは我がビックマグナムだけらしい。
徐々に起立を始め、気がつけばこんな状態に
流石に血液が多く流れてるだけはある。
前に団員で試した時は古傷が黒くなって、周辺の肌ごとごっそり落ちたが・・・。
アルフィアのそれは体内にある。
その様な事は起きないだろう。
願わくばこのまま永遠の時の中へ囚われたい。
だが空気を読まない五感は、それの終わりを告げる。
治療が終わったのだ。
ゆっくりと後ろを盗み見ると、胸の辺りまでをシーツで隠しながらアルフィアは目を見開いている。
「これは・・・」
アルフィアも自分の身体の事だ
理解しているのだろう。
若い男女が同じベッドの上で・・・しかも裸。
しばらく沈黙が続き、とうとうアルフィアが立ち上がろうとした。
「待って」という声すら出ず。くびれた彼女の胴へ抱くように腕を伸ばした。
思えば彼女の高圧的で不遜な態度はどうやって形成されたのか何故『静寂』をこよなく愛す様になったのか。
彼女やメーテリアは身体が強くない、そして親の話は聞いたことも無い。
彼女の性格は厳しい世の中で陶冶された生きる術なのではないか。
俺は彼女に幸せになって欲しい、いや幸せにしたい。
そのために今から俺がとる手段は間違っているのだろうか。
「メーテリアにはこんな事はさせられないな」
第一声がそれとは筋金入りのシスコンだな。
「アルフィアの方がひどかったから、メーテリアはここまでしないと思う。」
オレハイママデウソツイタコトナイ。
「そう」
手をグーパーしているが、それで分かる変化ではないと思うがなぁ。
「健康か・・・あまり分からない物だな」
そう呟く表情が、あまりに優しい顔だったから見とれてしまう。
だからこそ俺はこの愛おしいお姫様を幸せにしたいのだ。
「健康体でも幸せっていう人は少ないからな。そんなに良いものじゃないかもよ」
どんなに恵まれていようと。
「そうだな」
どんなに豊かであろうと幸せでない人間は多い。
「でも」
無い人が幸せという訳では無い。
「良いものだ・・・。」
取り敢えずは笑って居られる事が幸せだと思おう。
アルフィアと手を握れる距離で帰りながら思う。
これ朝帰りって奴か?
…いや、別に普段からホームに帰らない事はザラにある。
ダンジョンで寝たり、アルフィアの部屋で寝たり*1。
だから大したことではない。
そんな事を考えていれば歩みが遅くなっていた様で5歩先にアルフィアは居た。
振り向くアルフィアと太陽が重なる。
朝日は灰色を銀へと変貌させた。
「何をしている?」
風が吹き、銀色のそれが無秩序に揺れた。
左手の小指で荒れた髪を鎮めている。
そんな彼女の表情には不快など存在していない様で
「あぁ・・・うん。何でもない。」
初めて会った頃と変わらぬ顔の中に
「今日も綺麗だと・・・思ってな」
温かい物が見えた。
歩きながら、彼女の顔を見る。
先程と変わらぬ無表情。
でもその中で見えた物はどこにも無い。
柔らかくて・・・可愛らしいそれの種。
優しくて喜びのある無表情を大切にしていこう。
いつか君も口を歪ませて大笑いする日が来るかもしれない。
その瞬間に俺も一緒に笑いたいな。
《魔法》
【螺旋】
詠唱式
【巡る巡る】
【螺旋の中で】
【終わり果てるまで】
~~38行省略~~
【永遠のお姫様に】
【俺はいったい】
【何が出来るのか】
・めqwdm3おmf@お3んふぉ@んふぉのえ、じえjふぃwjf。
読み取れない
だが癒す魔法の様だ。
・愛属性
・接触面積に比例して効果向上
説明
古来より人類は“螺旋”を生命の象徴として用いてきた。
権力者の墓や財宝にも同様の文様が多々見られ、御伽噺の怪物たちも螺旋を連想させる物は少なくない。
この魔法は決して寿命を延ばす物ではないが、それ以外のありとあらゆる事象を成せる可能性がある。