ちゃんとした焔月と璃音の出番を作れました!
あかり達は青色の木蓮の髪飾りを付けた狐娘に案内され本殿の奥にある扉の前に居た。
そして、木蓮の髪飾りの子が扉を開けるジェスチャーをしたのであかりは「中に入って」と言っていると理解した。
本殿の奥の重い扉を、あかりがゆっくりと押し開けた瞬間、部屋の中から柔らかな青い灯りと、静かなお香の香りが三人を迎えた。
そこは神社の最も神聖な奥の間だった。
中央に二人の狐娘が静かに立っていた。
左側にいるのは銀髪の優美な狐耳のある女性——。
身長約160cmに九本の銀色の尻尾をゆったりと広げ、白い狐の面を頭に乗せ、赤い瞳が静かに輝いている。
白と紅の巫女装束をまとい、威厳と母性を感じさせる佇まいだった。
右側にいるのは金髪の少女——璃音。
同じく160cmほどで、母親に似た金色の長い髪に紫色の瞳、白黒金藍色の肩出しオフショルダー風の着物を着たている。
表情は柔らかく、少し緊張した様子で三人を見つめていた。
二人は同時に、深く一礼した。焔月が、穏やかでありながら芯のある声で静かに語り始めた。
「ようこそ、我々狐族の住処へ……星乃あかり 様、月見凛 様、天城静華 様。
突然お連れしてしまい、申し訳ありません。」
「私は、狐達の母親の焔月と申します。」
璃音も焔月に続けた。
「初めまして……私は娘の璃音と申します。
私たちが、妹をあかり様のもとへ送り込んだ張本人です。
突然こんな場所へお連れして、本当にご迷惑をおかけしました……」
あかりは狐ちゃんを抱いたまま、驚きを隠せずに二人を見つめた。
「……あなたたちが、すべての原因だったんですね。
どうして……?」
焔月は九本の尻尾をゆっくりと揺らしながら、真っ直ぐにあかりの目を見た。
「理由は、ただ一つ。
私たち狐の、平和を保証していただきたいからです」
部屋が一瞬、静まり返った。
焔月は続けた。
「外の世界では、私たち狐の魔物とあなた方が戦っている魔物を一括りにして『魔物』と呼び、無害な私の娘達を
討伐対象とする魔法少女が少なくありません。幸い"娘達"犠牲はまだ居ませんが…」
「確かに……悪しき魔物も多くいます。
力の無い人の子を狙う卑劣な者たちも、確かに存在します。」
「ですが、私たちの娘たち——…あなた達が『狐ちゃん』、『ぴーちゃん』、『ゴムちゃん』、『スーちゃん』と呼ぶ娘達、そしてこの神社の娘たちは、
決して人間を害するような真似はしていません。」
「ただ好きに生きていたいだけなのです」
璃音が少し前へ出て、穏やかだけれど真剣な声で言った。
「母の言う通りです。
私たちはこの神社で、静かに暮らしています。
外の世界に出る子もいますが、皆、決して悪さをしません。」
「それなのに……もし魔法少女の皆様が『どんな魔物であろうとすべて討伐対象』という考えを持っていたら、
いつか、私の大切な妹たちが傷つけられてしまうかもしれない。」
「それが、とても怖かったのです」
焔月が静かに目を細めた。
「そこで、私たちは子供たちをあかり様のもとへ送りました。
我々が行けば人の子を怖がらせてしまいますから…。」
「勝手ながら…あなた方なら……私たちの気持ちを、少しは理解していただけるのではないかと……」
璃音が続けた。
「妹をあかり様の家に送り込んだのも、娘達を使って皆さんをここへお連れしたのも、
すべてはこの交渉のためです。」
「まぁ…『ぴーちゃん』『ゴムちゃん』『スーちゃん』は本来、送り込む予定ではなかったのですが…」
「……お願いです。
妹たちを、ただ『魔物』として討伐しないでいただけませんか?」
「人間に害なす魔物は確かにいます。
ですが、私たちの妹たちだけは、どうか……見逃していただきたいのです」
その言葉を聞いた瞬間、狐ちゃん、ぴーちゃん、ゴムちゃん、スーちゃんの4匹が、あかりの足元からぴょんぴょん跳ねて、二人の元へ駆け寄った。
「ふわっ!」「んぴ……」「ふあ……」
4匹は璃音と焔月の足にぎゅっとしがみつき、
不安そうに、でも頼るように小さく鳴いている。
どうやら自分が送り込まれた理由を、薄々理解しているようだった。
あかりは狐ちゃんを抱き上げながら、静かに言った。「……つまり、私たちに、狐娘たちを守る約束をしてほしい、ということですね?」
焔月がゆっくりと頷いた。
「ええ。 強制ではありません。
ただ……あなた方のような優しき魔法少女に、
私たちの娘たちの存在を、知っていただきたかったのです。」
「もし可能なら、今後、娘達を見かけたとき、すぐに討伐しようとはせず、様子を見てほしい……」
「それだけでも、私たちはとても助かります」
璃音が少し緊張した面持ちで付け加えた。
「もちろん、私たちも協力できることは何でもします。
情報提供でも、魔物の討伐のお手伝いでも……」
「ただ、娘たちだけは、どうか……守ってあげてください」
部屋の中に、重くも温かい沈黙が落ちた。凛が穏やかな声で言った。
「急なお願いではありますが……とても真剣なお気持ちが伝わってきます」
静華も二丁のショットガンを静かにホルスターに収めながら、
「少なくとも、今のところ、この神社にいる狐娘たちに敵意はないようです…。」
「……少し時間をいただけますか?
私たちも、すぐに答えを出せる問題ではありません…他の魔法少女や上層部との協議が必要ですので…」
すると、あかりは狐ちゃんの頭を優しく撫でながら、
焔月と璃音の二人をまっすぐに見つめた。
「………正直に言います。」
すると焔月は、
「はい…何でしょうか。」
あかりは続けた。
「私は……狐ちゃんたちを、もう家族みたいに思っています。」
「だからといって、簡単に『はい、約束します』とは言えません。」
「でも……今日ここに来て、あなた方のお気持ちを知ったことは、とても大きかったです。
だから、もう少しだけ、考えさせてください」
璃音がほっとしたように小さく微笑んだ。
「ありがとうございます……それだけで、十分です。
今日中に答えを求める様なことはしません。」
そう言うと、焔月が九本の尻尾を静かに揺らしながら。
「どうぞ、ここからは自由に行動していただいて構いません。
少しの間だけでも、ここで過ごしていってください、娘達を観察していただいても構いません。」
「お帰りになる際は、娘の璃音に申し付けください。」
「私達は、ここで待っています。いつでも、返答をお待ちしております。」
狐ちゃんたちが3人の足元で小さく鳴き、璃音と焔月は静かに、しかし心からの期待を込めて、魔法少女たちの返事を待っていた。
こうして、狐娘たちの平和を願う、母と娘からの真剣な交渉が、静かに始まったのだった。
尚、狐ちゃんは内心『何か長い話になってんなぁー…ぴーちゃん達に動き合わせよ…』と考えている。
…スーちゃんが影になってる…
ここで完結しますが、番外編を出していくのでよろしくお願いします!
誤字などがあれば教えてください!