短いですけどスーちゃんの日常です!
スーちゃん事態が出番久々なので少し以前の登場から違和感があるかもしれないです…。
夜の月明かりがカーテンの隙間から差し込む、月見凛のアパート。
リビングの床に、段ボール箱がゆっくりと動いていた。
「ふわ……んぴ……」小さく、しかし明らかに興奮した鳴き声が段ボールの中から漏れる。
新しい新品の箱の表面にはマジックで乱暴に「FOX」と小さく添え書きされている。
箱狐娘——保護されてから「スーちゃん」と名付けられた狐娘は、今、完全にス○ークに憧れきっていた。
きっかけは、姉の璃音が人間に化けて居た頃、持ってきてくれた「メ○ルギア」をきつね工房で小さいゲーム機を作ってもらいプレイした結果、画面の中のスネークの姿に、スーちゃんの紫色の瞳は一瞬で輝き、以来、毎日「ス○ーク」になる為に奔走している。
「ふわっ……!」段ボール箱がリビングのソファの下に潜り込む。
箱が少しだけ持ち上がり、はみ出た尻尾がふりふりと動く。
どうやら「隠密行動中」のつもりらしい。
凛はキッチンで夕飯の準備をしながら、苦笑いを浮かべて声をかけた。
「スーちゃん、またやってるの?もう三時間くらい段ボール被ってるよね?」
「んぴ!」箱の中から元気な返事が返ってくる。
次の瞬間、段ボールが勢いよく動き、テーブルの脚の間をくぐり抜け、テレビ台の後ろに隠れた。
凛はエプロン姿のまましゃがみ込んで、段ボール箱の横に顔を近づけわざとらしく喋りかける。
「ほ〜らお狐さん、そろそろご飯にしませんか〜?今日はきつねうどんですよ〜」
箱がピクリと止まった。
中から小さな声が聞こえる。
「……ん!」
どうやら「任務中だからまだ無理」という意思表示らしい。
しかし、すぐに箱の端からスーちゃんの鼻先がちょこんと出て、うどんの良い匂いをくんくん嗅ぎ始めた。
凛はくすっと笑った。
「任務よりお腹が大事でしょ?ほら、段ボール脱いでおいでじゃないとご飯なくなっちゃうぞ〜?」
「んぴ!?…ん…んぴ……」しばらく迷った後、段ボール箱がゆっくりと後ろにずれ、中からスーちゃんが這い出てきた。
やっぱりご飯には勝てないらしい。
金色の髪に紫色の瞳、ふわふわの狐耳と大きな尻尾。
今日は頭に小さな濃紺のバンダナ(凛が手作りした新しい物)をつけ、体にはちっちゃなスニーキングスーツを着ている。
スーちゃんは這ったまま凛の足元まで来て、上目遣いに見上げながら「ふわ……」と小さく鳴いた。
尻尾が「任務失敗したけどお腹すいた……」とでも言いたげに、しょんぼりと下がっている。
凛は優しくスーちゃんを抱き上げ、自分の膝の上に乗せた。
「ス○ークごっこ、楽しかった?」
「んぴっ!」
スーちゃんは元気よく頷く。
しかしすぐに「お腹すいた」モードに切り替わり、凛の胸に顔を埋めて「ふわぁ…わふー…」と甘えた声を出す。
凛はきつねの頭を優しく撫でながら、テーブルの上に置いたうどんを指差した。
「はいはい、今日の任務はこれで終了。ちゃんとご飯食べて、また明日から隠密行動しましょうね」
きつねは「ん!」と元気よく返事をして、小さなフォークを握り、うどんを一生懸命にすする。
「んむ……んむ……ふわっ!」
熱々のうどんを頰張りながら、スーちゃんの尻尾がぶんぶん高速で振られる。
どうやら「任務の疲れを癒す食事」として、かなり満足しているらしい。
凛はスーちゃんの隣に座り、自分もうどんを食べながら、ふと微笑んだ。
「ねえ、スーちゃん。おいしい?」
きつねはフォークを止めて、紫色の瞳をキラキラさせながら大きく頷いた。
「ふわっ! んぴぴ!」
「そっかそっかぁ〜。おいしいかぁ~♪」
凛はもうスーちゃんと2人きりの時はいつもキャラが崩れる。
「じゃあ、今後もいっぱい食べて大きくならないとね〜」
と撫でながら言うと、きつねは「ん!」と力強く返事をして、再びうどんに集中した。
凛の家のリビングでは、小さな狐娘が、今日もメ○ルギアのス○ークに憧れ、段ボールを被って這い回る日常が続いていた。
スーちゃんを保護した月見凛は、そんな小さな狐を温かく見守りながら、心の中で静かに思う。
(…何だか小さい弟ができたみたい…)
窓の外では夜の街灯が優しく光り、部屋の中では、小さな段ボール箱が再び動き始めていた。
「ふわっ……んぴ!」
スーちゃんの元気な鳴き声が、今日も家に響き渡る。
ス○ークに憧れた狐娘の、賑やかな日常は、これからも続いていくのだった。
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