スーちゃんの番外編ですよ!
凛の家は、今日も段ボール箱が這い回る音で賑やかだった。
「ふわっ……んぴ……」狐娘——凛が「スーちゃん」と呼ぶ狐娘は、いつもの段ボール箱を被ってリビングを低速で巡回中。
頭には濃紺のバンダナを巻き、身体には小さなスニーキングスーツを着込み、今日も「隠密行動中」のつもりでいる。
凛はキッチンで夕飯の準備をしながら、
小さく笑っていた。
「スーちゃん、そろそろ任務終了ね。ご飯できたよ」
段ボール箱がピタリと止まり、中から小さな狐の鼻先がちょこんと出てきた。
「んぴ……?」凛はテーブルの上に、今日のメニューを並べた。
「今日は野菜たっぷりの炒め物とご飯だよ。にんじん、ブロッコリー、ピーマンも入れてみた。栄養バランス大事だからね」
スーちゃんは段ボール箱からゆっくりと這い出てきた。
金色の髪に紫色の瞳、ふわふわの尻尾。
いつもの可愛らしい姿だが、今日は明らかに表情が硬い。
小さな器に盛られたご飯と炒め物を見て、スーちゃんの顔が一瞬で渋くなった。
「……ふわ……」耳がぴたりと倒れ、尻尾がしょんぼりとしたように垂れ下がった。
紫色の瞳がピーマンを見つめ、明らかに「…これは拷問だ…」という顔をしている。
凛は優しく微笑みながら、スーちゃんの前に座った。
「ほら、ちゃんと食べないと成長しないよ?ス○ークさんだって、任務の後はちゃんと食事してるでしょ?」
スーちゃんは小さなスプーンを渋々握りしめ、
ものすごく渋い顔で炒め物に突っついた。
「ん……んぴ……」一口目にんじんを食べた瞬間、
顔がさらに渋くなり、小さなうなり声が漏れた。
「うぅ〜…うぅぅ!……んぴぃ!」ブロッコリーを口に入れたら、さらにうなり声が大きくなる。「うーうー……ふわぁ……」
ピーマンに至っては、
スプーンを持った手がピクピク震えながら、
なんとか飲み込もうとしている。
尻尾が情けなく下がり、耳も完全に後ろに倒れている。
凛はくすくす笑いながら、
スーちゃんの頭を優しく撫でた。
「そんなに嫌なら、野菜だけ残してもいいけど……少しずつ慣れていこうね。憧れの人も、野菜はちゃんと食べてたはずだよ?」
スーちゃんは「うぅ〜…」と低くうなりながら、
なんとかご飯と一緒に野菜を押し込んでいる。
でも顔は完全に「…撤退したい……」という表情だ。
やがて、半分くらい食べたところで、スーちゃんはスプーンを投げ出し、凛の膝にぴょんと飛び乗ってきた。
「うぅぅぅ!……ふわぁぁん!…んぴぃ!」甘えるように顔を埋め、「もう無理っ!……助けてっ!」という気持ちが全身から伝わってくる。
凛は笑いながらスーちゃんを抱き上げ、残りの野菜を小さく取り分けてあげた。
「わかったわ。今日はこれくらいで許してあげる。
でも、明日も少しずつ頑張ろうね?」
スーちゃんは「ん……」と小さく返事をして、凛の胸に顔を埋めたまま、尻尾を弱々しくぴくぴく動かした。
その夜、スーちゃんは段ボール箱の中で丸くなりながら、夢の中で「野菜の魔物」と戦っているような寝言を言っていた。
「ふぎゅぅぅぅ〜…ぴぃ〜…ぶわぁ…」凛はそんなスーちゃんを優しく見守りながら、
心の中で思った。
(……ス○ークに憧れる狐娘が、野菜をこんなに嫌がるなんて……可愛くて困るわね)
アパートの部屋では、今日もスネークごっこ狐娘の、渋い顔と小さなうなり声が、温かく響き続けていた。
スーちゃんが眠った後…
「仕方ない…あんな顔されたら可哀想だから…」
「明日はご褒美にチョコレートを食後に多めにあげるかぁ…」
スーちゃんの憧れのス○ークになる為の挑戦は続く…
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