狐ちゃんの達の尻尾のお話ですよ!
あかりの家のリビング。
夕食後に皆でくつろいでいる時間だった。
あかりがソファに座って本を読んでいると、狐ちゃんが自分の大きな尻尾の中に顔と手を突っ込んで、ごそごそと何かを探し始めた。
「ふわ……んぴ……んぴぴ……」
やがて狐ちゃんが満足げに顔を上げ、尻尾の中から取り出したのは——狐娘達用のサイズの小さな釣り竿だった。
長さ約40cm、ラインも細く、狐ちゃんの小さな手にぴったりな可愛らしいデザインで柄の下には狐のマーク。
あかりは本を閉じて、苦笑しながら声をかけた。
「……それ久々に尻尾から出してきたね、狐ちゃん」
あかりは以前狐ちゃんを保護したばかりの時に山程物が出てきたのを思い出していた。
狐ちゃんは釣り竿を両手で持って振りながら、あかりのほうを見て「ふわっ!」と得意げに鳴いた。
あかりは狐ちゃんが尻尾に良く物をしまい込むのは知っていたが、他の子も良く物をしまい込むと後々、焔月から聞いた。
この家にいる狐ちゃん、ぴーちゃん、ゴムちゃんだけでなく、神社にいるすべての狐娘たちが、何か道具を尻尾の中に持っていることを。
狐ちゃんが尻尾をもう一度振ると、次に出てきたのは狐娘サイズの調理器具セット。
ミニフライパン、小さなスプーン、フォークが揃った可愛らしいものだ。
続いて、折り畳み式の極小寝袋、狐娘用の小さな傘、出してきた。
焔月から聞いた話だが、対魔物用の狐専用ライフル(自衛用)なんて物もあるらしい。
そしてそのどれも、神社のすべての狐娘が同じ物を尻尾の中に収めている必需品だった。
あかりはため息をつきながら、狐ちゃんの頭を優しく撫でた。
「本当にみんな同じものを持ってるんだよね……狐ちゃんは…『釣り竿』、『調理器具』、『寝袋』、『傘』、そして自衛用の『銃』……銃かぁ…扱いには気をつけてね?」
狐ちゃんは自慢げに尻尾をふりふりと振り、
「ふわっ!」と鳴いた。
そこへ、ぴーちゃんとゴムちゃんもやってきた。
ぴーちゃんは自分の尻尾から、同じ狐印のデザインの小さいノートと鉛筆を取り出し、あかりの膝の上で「んぴ!」と鳴きながら見せびらかす。
ゴムちゃんも尻尾から狐印の毛布と枕のセットを出して、
ソファの上で「ふあっ!」と自分の寝床を作り始めた。
あかりは三匹を交互に見ながら、感心したように言った。
「みんな同じ狐印で揃えてるんだ。それって神社で作ってるの?」
狐ちゃんが元気よく頷き、「ふわ!」と鳴いて「そうだよ!」と言いたげだ。
あかりは狐ちゃんの尻尾に手を突っ込み銃を取り出した。
狐ちゃんは、「あぁ〜!返して!」と言いたげな顔でぴょこぴょこ跳ねているが高さが足りていない。
あかりは、安全を確認しながら言った。
「特にこの銃……焔月さんが全員に持たせてるって聞いたよ。」
「外出するときは絶対に危ないことがないようにって……みんな、ちゃんと持ってるんだね」
「でもこれは危ないから扱いに気をつけるんだよ?人とかお友達に向けちゃいけないからね?もし向けたら今後お菓子とか禁止だからね」
そう言うと、三匹は一斉に「ふ…ふわぁ!!!」と冷や汗をかきながら返事をしてきた。
どうやら、お菓子無しの生活は考えただけで恐ろしいらしい。
あかりは三匹の頭を順番に軽く撫でながら続けた。
「それにしても本当に不思議だね……神社にいる狐ちゃん達のお友達が、みんな尻尾の中に物を持ってるなんて。」
狐ちゃんは尻尾の中に手を入れ、ミニフライパンを取り出して、あかりに見せながら「んぴ!」と自慢げに鳴いてフライパンをしまった。
あかりは、銃の安全を確認してから狐ちゃんに自衛用の銃を返した。
「よし、ちゃんと持ってるね。でも、絶対に必要なとき以外は出しちゃ駄目だからね?」
それに対して、三匹は一斉に「ふわっ!」と元気よく返事をした。
その夜、あかりは三匹が寝静まったあと、ソファーに座って三匹並んで仲良く眠っている狐ちゃん達を眺めながら小さく微笑んだ。
狐ちゃんたちの尻尾は、本当に不思議だ。
尻尾の中に貰い物や自分にとっての必需品を収めている。
みんなが同じ狐印のものを持っている。
あかりは三匹の寝顔を見ながら、心の中で思った。
(これからも、みんなが安心して外に出られるように……私も、ちゃんと見守っていかなきゃね)
狐ちゃんが寝言のように「ふわ〜…きちゅねー…」と小さく呟き、尻尾をふりふりと動かして毛布をずらしてしまった。
あかりは優しく毛布を狐ちゃん達に掛け直してやり、静かな夜を三匹とともに過ごした。
狐娘たちの尻尾は、彼女たちの冒険と日常を、いつもそっと支えてくれているのだった。
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