番外編を今回も見て頂けて嬉しいです!
今日のあかりは、いつもより少し緊張した空気に包まれていた。
インターホンが鳴り、あかりがドアを開けると、そこに立っていたのは見慣れない女性だった。
身長は170cmほど、長い黒髪を一つにまとめ、落ち着いた雰囲気を持つ魔法少女。
胸には組織の最高位を示す銀の徽章が輝いている。
彼女は「定期観察」の結果を直接聞きに来た、最上位クラスの実力を持つ魔法少女——
名前は
「突然お邪魔します。狐娘たちの定期観察結果について、直接お話を伺いに来ました。」
澪の声は穏やかで丁寧だったが、その存在感は明らかに「普通の魔法少女」ではなかった。
あかりは少し緊張しながらも、彼女をリビングに通した。
「は、はい!……どうぞ!狐ちゃんたちは今、部屋の中にいます。」
リビングに入った瞬間、三匹の反応はそれぞれ違った。
まず、ゴムちゃん。
ゴムちゃんは澪の姿を見た瞬間、「ふわっ……!」と「あの人何かやばそう!」と言いたげに短く鳴いて、バタバタしながらソファーの下に素早く潜り込んだ。
お菓子を抱えたまま、体をぎゅっと丸めて完全に隠れてしまう。
尻尾が少し見えているが、それもすぐに引っ込んでしまった。
次に、ぴーちゃん。
ぴーちゃんは澪の姿を捉えた途端、耳をぴたりと倒し、尻尾を硬くした。
そして、突然その場で横にコテンッと寝転がり、頭と膝を抱え込むように体を丸めた。
前を自分の大きな尻尾で覆うように隠し、まんまるな防御体勢を取っている。
鉛筆飾りが少しだけ見えているが、ぴーちゃんは動かず、置物としてやり過ごそうとしている。
そして、狐ちゃん。
狐ちゃんは……完全に状況を把握していなかった。
狐ちゃんは、ついさっきまでソファの上で毛布を頭から被って遊んでいたのだが、澪が入ってきたタイミングで、毛布を自分で踏んでいてそれに気づかず抜け出せなくなっていた。
毛布の中でごそごそと暴れ、「ふわっ! ふわわっ!んぴぴぴ!」と楽しそうな声が響いている。
知らない人が来ていること自体、気づいていないらしい。
毛布がもぞもぞと動くだけで、狐ちゃんの姿はほとんど見えない。
あかりは取り敢えず狐ちゃんを一旦放置し慌てて
「あ……ごめんなさい。この子たちはまだ知らない人に慣れていなくて……特に2匹は強い人には警戒心がちょっと強いんです…」
澪は驚いた様子もなく、むしろ興味深そうに3匹の様子を観察した。
「なるほど……これは興味深い反応ですね。本部に居る子達はこんな反応を示さなかったので新鮮です。特にその横に丸まっている子……ぴーちゃん、でしたか?」
「自分から防御姿勢を取るなんて、賢い子ですね。ソファーの下に隠れているのはゴムちゃん……そして毛布の中で……暴れているのが狐ちゃんですか」
澪はゆっくりとぴーちゃんの近くにしゃがみ込み、距離を保ったまま優しく声をかけた。
「こんにちは。私は神崎澪といいます。今日は皆さんのことを見に来ただけです。怖がらなくていいんですよ。」
しかし、ぴーちゃんは全く動かない。
横に寝転がったまま、頭と膝を抱え込み、尻尾で前をしっかり隠した防御体勢を維持している。
時々「ん……んぴ……」と小さくうなるような声が漏れるだけだ。
ゴムちゃんはソファの下から一切出てこない。
お菓子を抱えたまま、息を殺しているのが伝わってくる。
狐ちゃんだけは毛布の中で大暴れ中。
「ふわっ! ふわふわっ! んぴぃぃぃ!んぴ!んぴぴぴ!!」と鳴きながら毛布が激しくもぞもぞ動き、たまに狐ちゃんの耳や尻尾の先が飛び出しては、すぐに引っ込んでいく。
完全に自分の世界に入ってしまっている。あかりは困った顔で頭をかいた。
「……狐ちゃんは今、毛布に閉じ込もって抜け出せなくなってるみたいですけど……大丈夫ですか…?」
澪は静かに微笑んだ。
「大丈夫です。今日はただ、彼女達がここでどのように暮らしているか、落ち着いて観察させていただくだけですので。」
その言葉を聞いた瞬間、毛布の中から「んぴぴぴぃぃっ!」という、かなり切羽詰まった「助けて!」と言いたげな鳴き声が響いた。
どうやら狐ちゃんはようやく自分が抜け出せないことに気づいたらしい。
あかりは慌てて毛布に近づき、優しく声をかけながら狐ちゃんを助け出した。
「ほら、狐ちゃん。大丈夫だよ、落ち着いて」
毛布から出てきた狐ちゃんは、髪がぼさぼさになり、目が少し回っていた。
しかし、すぐに澪の存在に気づき、「…………?」一声も発さずにポカーンとしている。
ぴーちゃんはまだ丸まった防御体勢を崩さず、尻尾で前を隠したまま、時々「ムッ!」と警戒の声を出す。
ゴムちゃんはソファーの下から一切顔を出さない。
神崎澪は三匹の反応を静かに観察しながら、小さくメモを取っていた。
「興味深い……個体差がとても明確ですね。狐ちゃんは……。、ぴーちゃんは即座に防御体勢を取り、ゴムちゃんは徹底的に隠れる……この三匹の性格がよく表れています」
あかりは狐ちゃんを抱きながら、少し申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい……まだ強くて知らない人に2匹は慣れていないんです。狐ちゃんは慣れてるっぽいんですけどね…」
澪は優しく首を振った。
「謝らないでください。これはとても良いデータです。
この子たちが安心して暮らせる環境かどうかを確認するのが私の仕事ですから。」
ぴーちゃんはまだ丸まったまま、尻尾の隙間から少しだけ紫色の瞳を覗かせ、「ん……んぴ……」と小さな警戒の声を出し続けている。
狐ちゃんはあかりに抱えられた状態で少し落ち着き、毛布の残骸を横目に「ふわ……」と情けない声を上げた。
ゴムちゃんは相変わらずソファの下で息を潜め、消しゴムをぎゅっと抱えたまま微動だにしない。
神崎澪はゆっくりと立ち上がり、あかりに軽く頭を下げた。
「今日はこれくらいにしておきます。皆さんがとても大切にされていることが、よく伝わりました。また定期観察の時期が来たら、お伺いしますね」
あかりはほっとしながらも、まだ警戒を解かない三匹を見て小さくため息をついた。
「ありがとうございます……狐ちゃんたちも、だんだん慣れていってくれるといいんですけど……」
澪があかりの家を出た後、ぴーちゃんはようやく丸まった体勢を解き、ゆっくりと起き上がって「んーー!」と鳴きながら伸びてからあかりの足にぴったりとくっついた。
ゴムちゃんもそろそろとソファの下から顔を出し、
抱えていたお菓子を食べ始めながらあかりの足元に移動してきた。
狐ちゃんはまだ少しぼーっとしながら、「あかりの胸に顔を埋めて「ふわぁ……」と長い息をついた。
あかりは三匹を優しく抱き寄せながら、小さく微笑んだ。「今日はびっくりしたよね……大丈夫だよ。知らない人でも、みんなのことを心配して来てくれただけだから」
ぴーちゃんはまだ少し警戒が残っているのか、あかりの足に体をすり寄せながら「んぴ……」と小さく鳴いた。
ゴムちゃんは完全に安心したのか、あかりの膝の上で丸くなってしまった。
狐ちゃんだけは、毛布との長い格闘の疲れからか、そのままあかりの膝でうとうとと眠り始めていた。
あかりの部屋に、三匹の狐娘たちの温かい体温と、小さな寝息が静かに広がっていった。
今後も見て頂けると嬉しいです!