スーちゃん出番が…作らないと!
本部ビル・第3会議室にて。
会議の真っ最中だった。
大型モニターには魔物の最新出現パターンが映し出され、十数名の魔法少女たちが真剣な表情で資料を睨んでいる。
空気はピリピリと張りつめ、誰一人として余計な言葉を発しない。
その緊張した空気の中で——会議室の隅にある観葉植物の鉢の陰から、小さな金色の影がゆっくりと這い出てきた。
何かと思えばそれは、狐娘だった。
元々神社に居た子の一匹で、頭に淡い水色のリボンをつけている。
30cmの小さな体で、紫色の瞳をきょとんとさせながら、会議テーブルの脚の間をちょこちょこと走って移動している。
誰もが気づいていたが、誰も声を上げなかった。
最近はもう「狐娘がいる」ことは日常風景になっていたからだ。
議長を務める上級魔法少女が、資料をめくりながら淡々と説明を続けている。
「——したがって、次回の殲滅作戦は第7区画を中心に……」
その時、狐娘がテーブルの下から出て、議長の椅子の横にちょこんと座り込んだ。
「ふわ!」大きめの鳴き声が会議室に響く。
議長は一瞬言葉を止め、視線を下に落とした。
狐娘は彼女の膝の横に体を寄せ、尻尾をゆっくりと左右に振りながら紫の瞳を輝かせながら見上げていた。
議長はため息をつき、椅子を少し引いて狐娘を抱き上げた。
「はいはい、わかったわ。お外に出ましょうね」
彼女は狐娘を両腕を脇の下に通して持ち上げるようにして抱えた。
狐娘はされるがままに体を預け、「ふわー!」と鳴きながらも、大人しく抱かれている。
議長は会議を中断することなく、自然な動作でドアに向かった。
「ちょっと失礼。すぐに戻ります」ドアを開け、廊下に出た瞬間、狐娘を優しく床に下ろした。
「ほら、外で遊んでて。会議が終わったらまた呼ぶからね」と言うと狐娘は「ふわっ!」と元気よく鳴き、尻尾をぶんぶん振りながら廊下をちょこちょこと走り去って行った。
議長は軽く息を吐き、会議室に戻った。
「失礼しました。続きを——」
誰も何も言わなかった。
別の日、第2資料室にて。
ここは比較的静かな空間で、数名の魔法少女が報告書の整理をしている。
その一角の棚の上で、二匹の狐娘が並んで座っていた。
一匹は頭に小さな星の飾り、もう一匹は緑のリボン。
二匹とも資料の端を小さな手で触りながら、
「んぴ! ふわ?」と興味深そうに鳴いている。
一人の魔法少女がため息をつき、
立ち上がって二匹に近づいた。
「またここにいたのね……」彼女は二匹をそれぞれ片腕で抱え上げ持ち上げながら呟いた。
「資料室は仕事場だからダメよ。外でお日様浴びてらっしゃい」二匹はされるがままに持ち上げられながら、
「ムっ!」「ムー!」と不満げに鳴いた。
「ムーじゃないのわかった?。」
そう言い魔法少女が廊下まで連れて行き、優しく床に下ろすと、狐娘たちはすぐに尻尾を振って遊びに行ってしまった。
「あれは、聞いてなさそうね…。」
同じ日の夕方、作戦司令室。
ここは本部の中でも最も重要な部屋で、大型スクリーンと複数のモニターが並び、常に緊張感が漂っている。
今日も大規模魔物出現の対応会議が行われていた。
その会議の最中、司令官の椅子の後ろに、三匹の狐娘がちょこんと並んで座っていた。
どうやら誰かが連れてきたまま、置き去りにされてしまったらしい。
司令官が地図を指差しながら指示を出していると、一番左の狐娘が司令官の椅子の脚に手をかけて、「ふわ!」と大きく鳴いた。
司令官は一瞬手を止め、後ろを振り返った。
「……またか」司令官は深いため息をつき、椅子を少し引いて三匹を順番に抱き上げた。
三匹を持ち上げてから立ち上がる。
「ちょっと待ってくれ。外に連れて行く」
司令官は三匹を抱えたまま、会議室のドアに向かった。
三匹はされるがままに抱かれながら、「んぴ……」「ふわっ!」とそれぞれ小さな声を出す。
ドアの外に出ると、司令官は三匹を優しく床に下ろした。
「ほら、外で遊んでて。大事な会議なの。終わったらまた呼ぶから下のコンビニでお菓子でも買ってきなさい。」
と言い狐娘に小銭を渡した。
三匹は少し不満げに「構ってー!」と言いたげに鳴いていたが、お菓子と言う単語を聞いて小銭を受け取り尻尾を振って廊下をぴょんぴょん跳ねて去っていった。
司令官は軽く肩をすくめ、会議室に戻った。
「申し訳ない。続きを―――」
誰も文句を言わなかった。
この光景は、もう本部内では「あるある」になっていた。
狐娘たちは神社の子たちを中心に、
最近では本部ビル内で自由に動き回るようになっていた。
会議室、資料室、休憩スペース、廊下……どこにいても不思議に思われなくなった。
重要な会議や作戦室では、「声をかけながら外に連れて行く」という対応が、すっかり定着していた。
ある日、休憩室で若い魔法少女が膝に狐娘を乗せて撫でながら同僚に話していた。
「もうここの住人だよね、この子たち。」
同僚が笑いながら答えた。
「まぁ…可愛いけど、仕事中はちょっと困るわね。でもこの子たちがいるだけで、ここの空気が少し柔らかくなった気がする」
本部ビルのどこかで、今日も「ふわっ!」と「んぴ!」という元気な声が響いていた。
狐娘たちは、もう「見慣れた存在」として、魔法少女たちの日常に溶け込んでいた。
そしてその存在は、組織全体を少しだけ、優しく、温かい場所へと変えつつあった。
これからも自分の作品をお願いします!