はい!2作目の投稿を開始しました!
この作品のタイプが好きな人は合わないかもしれませんがよろしくお願いします!
杜神社の最も奥深く、封印の間。青い灯りが静かに揺れる薄暗い部屋の中央に、巨大な古い祠があった。
その祠は数百年にわたり、厚い封印の術式で閉ざされていた。
今夜、その封印にひびが入った。
微かな、銀色の光が祠の表面を走る。
長い、長い封印の時が、ようやく終わりを迎えようとしていた。
カチリ、という小さな音とともに、祠がゆっくりと割れ始めた。
そして中から現れたのは、一人の女性だった。
長い金髪に、深く澄んだ紅の瞳。
九本の尾は今は静かに畳まれているが、その一本一本に宿る霊力は、焔月をも超える古の重みを感じさせた。
白と薄紅の古風な巫女装束をまとい、その佇まいは、ただの天狐というより、神そのものに近かった。
彼女の名は、緋華。
焔月の祖母であり、先代の天狐。
約2800年前、ある大戦の末に自らを封印し、長い眠りについていた存在だった。
緋華はゆっくりと目を開け、封印の間を見回した。
「……ここは……まだ、杜……か」
声は低く、澄んでいた。
長い封印の影響で体が少し重く感じるが、その瞳には、衰えなど微塵もなかった。
彼女はゆっくりと歩き出し、封印の間を出て、境内の回廊へと向かった。
夜の神社に、銀色の髪が月光に照らされて輝く。
「……随分と、時が経ったようだな」境内には、まだ多くの狐たちが眠っていた。
何百匹もの狐娘たちが、木陰や石畳の上で丸くなって寝息を立てている。
緋華はそんな光景を静かに見下ろし、小さく微笑んだ。
「ふっ……ずいぶん増えたものだ。私の封印の間、娘がよく守ってくれたようだな。」
その時、回廊の奥から足音が近づいてきた。
現れたのは、銀髪を一つにまとめた焔月だった。
九本の尾を優しく揺らし、祖母の気配を感じ取って駆けつけたらしい。
その表情には、驚きと、深い懐かしさと、わずかな緊張が混じっていた。
「……お祖母様」
緋華は静かに振り返り、初めて目覚めたこの時代で、初めて会う姪の顔を見た。
「……む…妾の娘では無いな…?だが…九本の尾を完全に制御している……」
焔月は深く頭を下げた。
「お祖母様……お目覚めになられたのですね。長い間、封印をお守りしておりました…焔月と申します。あなたの姪です。」
緋華は優しく微笑み、焔月の肩にそっと手を置いた。
「そうか…苦労をかけたな。私は……長い夢を見ていた。
人間界と魔物の狭間で、多くの命が失われていく夢を……そして、優しい光がそれを包む夢も」
彼女は境内を見渡し、眠る無数の狐娘たちに視線を止めた。
「この子たちは?」
焔月は静かに答えた。
「私の娘たち……そして、この神社の子どもたちです。
人間界で、魔法少女たちに守られながら、安心して暮らせるようになった子たちも多くいます」
緋華はゆっくりと歩き、一匹の眠っている幼狐の傍らにしゃがみ込んだ。
小さな金色の髪を、指で優しく撫でる。
「……娘か。妾の時代には、こんなに多くの子狐たちが、安心して眠れる場所などなかった。」
「よくやったそれにしても…魔法少女か…」
焔月は祖母の横に並び、静かに言った。
「お祖母様……人間界は、随分と変わりました。
魔法少女の中にも、私たちを『魔物』ではなく、
守るべき存在として見てくれる者が増えました。
その中心に、星乃あかり様という方が……」
緋華は目を細め、遠くを見つめるような表情になった。
「星乃……あかり、か。その名の者にいずれ、会ってみたいものだな」
彼女は立ち上がり、九本の尾を静かに広げた。
封印から目覚めたばかりとは思えない、圧倒的ながらも優しい霊力が、境内全体を包み込む。
「長い眠りから目覚めた今、妾はもう少し、この時代を見てみたい。……子どもたちと共に」
焔月は深く頭を下げ、初めて会う祖母に、静かな喜びを込めて答えた。
「はい、お祖母様。どうか、ゆっくりと……この時代の杜を、ご覧ください」
夜の神社に、二人の天狐の銀色の髪が、月光の下で静かに輝いていた。
長い封印から目覚めた先代天狐・緋華は、新しい時代に、静かに足を踏み入れた。
そしてその夜、神社は、古の祖母と、現代の母が、
初めて出会う、特別な夜となったのだった。
今後もこの作品と2作目をよろしくお願いします!