海上200メートル。そこで制止していた『シルバリオ・ゴスペル』は、うずくまっていた。
膝を抱くように丸めた体を守るように、頭部から伸びた翼が包んでいる。
その格好は、まるで海を進みながら日本に上陸して、日本で一番高かった塔に繭を作る地球の守護怪獣ポジになりやすい巨大イモムシと似ていないこともない。
たぶん近い内に羽化してパワーアップするのだろう。海から来て繭作って制止してるヤツだから。
そして、海から日本を目指して進行してくる、なに考えてるか分からない暴走状態にある存在が日本の海近くで制止してると、海から日本を目指して進行してくる暴走状態にある存在らしく、こーなります。
(――?)
ふと、ただ海の上で止まって顔を上げた次の瞬間。
ドゴーッン!!!
レールキャノンでヘッドショット食らわされて大爆発。
続けて2発目3発目と次々撃ち込まれまくって、大部分は撃墜したものの、迎撃し損なった分は爆発爆発でドカンドカン、ドッカン!
「初弾命中。続けて砲撃を行う、ファイエル!!」
浮かんでただけのゴスペルの顔面に、不意打ちで八十口径の砲弾を叩き込んだドイツ軍人ラウラが、新装備である《パンツァー・カノニーア》を追加した姿で吠える。
海から日本に近づいてきてた所に、空から先制攻撃しかけて、事実上の宣戦布告は行ってあるから直接宣言する必要はなしと言わんばかりの一撃は、さすがに元同盟関係にあった国の軍人らしい戦いぶりと言えるもの。
ラウラは戦う。《シンジュワンの再来》と呼ばれるためにも、先制の奇襲攻撃を半端に終わらせることはしない。
アドミラル・ヤマモートのような停戦のための大打撃を目的とした一撃離脱戦法ではなく、徹底殲滅を目的としたミッドウェーのように、ラウラはあらん限りの火力をゴスペルに向けて撃ちまくり続ける!
戦いは既に始まっている以上、油断していた相手が悪く、怨敵の首だけを討ち取るため狙い撃ちした一撃は卑怯ではない。
日本のブシロードは知らない、ドイツ人はゲルマン魂に背かなければそれでよし!
「ちぃっ! 敵機接近が予想よりも早い・・・!!」
《敵機Aに接敵。排除行動を開始する》
だがラウラ用に届けられた新たな装備は、四枚の物理シールドと両肩に二門の巨砲を背負っているゴテゴテした代物。
こういう装備は、防御力と火力は上がるが、素早さは前より下がってそうなタイプの奴。
それがお約束というものだと分かっているからなのか、砲撃を迎撃しながら接近に成功したゴスペルは、先の仕返しとばかりに鉤爪状になってる右手を顔面に向かって伸ばそうとする!
しかし! これは一夏の仇討ち作戦なのである。
まだ死んでないが仇討ちなのだ。仇を討つため徒党を組んで夜に奇襲をかけてくる者たちというのは、冬の夜の頃から用意周到に準備してくるのが仇討ちの定番というもの。
「――セシリアッ!!」
「イエス・マム!!」
名を呼ばれた瞬間、ラウラに伸ばされていた右腕は、突如として上空から急速降下してきた機体に弾かれてしまって、ノーダメージで終わってしまう。
ステルスモードの使用を解除した、ブルー・ディアーズからの強襲だった。つい先ほどまでゴスペル自身が使っていたのと同じシステムを、引きつけてから伏兵に襲わせる『釣りの伏』に用いた戦法だった。
セシリアの機体には今、高機動用装備によってブースターを一方向だけに集中させて、ライフルの大きさも普段より更に大きくなった極端なもの。
それらを新たに纏ったセシリアは、昨日まで――いや、今日の昼までとは一味違う。
なにしろ、やってる行動内容は、名を呼ばれて敵からの攻撃が届く前に弾く『ファンネル扱い』なのだ。
ビット使いだったのが、自分自身が遂にビットになってしまっているが、本人的には問題ないらしく、「ニヤリ」と不敵に微笑みながら一撃加えて飛びすさっていく。
いったい誇り高きはずの英国貴族令嬢は、ドコまで行ってしまうのか・・・? そんな疑問はゴスペルの知ったことではなかったし知ることも出来なかったけど、とりあえず新たなお邪魔虫を倒すべき敵に追加だけはしておくみたい。
『敵機Bを新たに認識。改めて排除行動に移r』
「遅いよ、アドモァゼール」
更にそこへ、もう一機のステルスモード使ってセシリアの背中に隠れて接近してきてたシャルロットが参戦。
セシリアの相手をしようとしてた背中に向かってショットガン2発を命中させる。
もちろん敵からの反撃に対しても、夜中に奇襲してくる仇討ち部隊は用意してきているもの。
相手から反撃の小型弾頭連続発射を食らいながら、
「おっと。悪いけど、この《ガーデン・カーテン》は、そのくらいじゃ落ちないよ」
弾雨の雨あられを受けても平然としたものなシャルロット。
それもそのはず、彼女の新装備は実体シールドとエネルギーシールドの二枚重ねで防御力は超頑丈になったもの。
その姿はリヴァイヴよりも通常機のラファールに近いけど、明らかに動きは遅くなりそうな重武装。ラウラの新装備並みの重装甲である。
・・・・・・ただでさえ第三世代開発で出遅れたのを、通常機カスタムした機動性が売りの火力貧弱だった機体を、更に遅くして重くして防御力だけ上げまくる装備なんか新たに造ってなにするつもりだったのか、デュノア社の開発コンセプトは謎すぎる武装ではあったものの、とりあえず今の戦闘では役に立ったのでシャルロットは気にしていない。
最初に仕掛けたラウラと、距離を取り直して高速射撃戦に移行したセシリアと連携しながらゴスペルを追い詰めて撃墜して、好きになった恩人の男の子の仇をとれれば、それでよしと割り切ってるらしい。
『・・・・・・優先順位を変更。現空域からの離脱を最優先に』
三方向から異なるリーチと武装で集中砲火を浴びせられまくり続けたゴスペルは、今になってようやく一時後退を決断。
その遅さは、ガダルカナル再奪取作戦もかくやと言わんばかりの鈍さだったが、遅きに失したとは言え、まぁやらんよりは良いのだろう。
――男尊女卑時代における鉄則曰く、戦闘のプロは奇襲を受けると一端その場を退却してから攻撃に転ずるもので、その場に踏みとどまって撃退するのはアマチュアの計算なのだという。
シルバリオ・ゴスペルは非公式に開発された軍用ISで、アメリカ軍とイスラエル軍の正規軍同士の共同開発だったらしいのだが・・・・・・暴走してるので特に矛盾はない。
暴走とか、感情とか、人の心とか、バーサーカーのクラスとかは大体そんなもの。理性失ってる人に細かいことを言ってはいけない、大事なのは感情であり気持ちなのだ。
その割には、感情的になってる時ほど理屈っぽいこと多い気もするが・・・・・・それはそれ。気持ちが大事なのだから。理屈じゃない。アニメでもない。
――という理屈によって、改めて方向転換して方針も転換させ、今の戦場からの離脱を図ろうとする敵ISゴスペルだが。
「させるぶはァァッ!!!」
ザッパーン!!と。
行く手を遮るように水柱を立てて、海中から突如として姿を現したのは赤い巨体!
その名は妖怪・蛸入道!!――ではなく、箒ちゃんの上に乗っかって潜んでた鈴ちゃん達である。
赤い紅椿の背中に乗った真紅の甲龍という赤友達(注:アカ友達ではない)による二人同時の協力プレイで大一番のトリを飾るため海中に潜んでステルス使って待機してたのである。
前回の戦いで『展開装甲』が便利すぎたから使いすぎてエネルギー浪費しまくってたのが敗因になっていた箒ちゃんも、今回は手加減覚えてセーブしながら戦うため最後の登場に便乗している。接近戦得意なので先制の遠距離攻撃はハズしそうという事情もある。
「離脱する前に叩き落う゛ぉぶって、ペッペッ! しょっぱい!?」
新たなる装備《崩山》を追加させた甲龍を戦闘状態に移行させながら、増設された炎を纏った衝撃砲を連射させる。
それは言うなれば、『熱殻拡散衝撃砲』とも呼べる武装で、敵ゴスペルの小型弾頭雨あられに勝るとも劣らない弾雨を降らせまくって命中率を大幅に向上させていたのだ!
・・・・・・まぁ、昼に届いたばかりの新装備で、色々テストするための行事に送ってもらったものだったせいか、セッティングで一部不備があったらしく機体周囲の気密維持にトラブル抱えてるみたいで、少しだけ水が入ってしまうのだけは難点なようだったが・・・・・・性能的には問題ない部分なので割り切るしかないだろう。
出撃して、海に潜って潜む役を担うのが決まってから判明した問題点で時既に遅く、生きて帰ってから真っ先に直させる絶対にだ!と心から誓った必勝と生還の確信とともに鈴の甲龍はゴスペルに向かい、文字通りの火を噴きまくる!
「やりましたの!?」
「まだよ! って言うか、まだになっちゃったわよ!? 余計なこと言うなセシリア! それフラグでしょーが!?」
「な、なんの事ですの!? “フラグ”って、なぜ今の状況下で数学用語が・・・!」
炎をまとった散弾攻撃が直撃した直後に放たれた、日本在来期間短いセシリアの一言によって止めにならないことが確定してしまったお陰で機能停止を免れるシルバリオ・ゴスペル。
いや無論、ホントはそんな理由ではなく、単に鈴の放った攻撃の威力が低かったからと言うのが理由ではあるのだが、結果としてそーいう現象を引き起こす確率をい高めてしまう呪いの力が、この国の言葉には存在してるので注意したい。
なにしろ、熱殻拡散衝撃砲とも呼ぶべきものが、鈴の新たな追加パッケージなのだ。
昔から、《拡散~砲》と名のつく武装は、見た目は派手だが妙に威力の低い確率論兵器で、たいていの場合はコレだけだと倒せないし敵を落とせないという、伝統的な呪いパワーに影響受けやすいジャンル。
セシリアの一言は見事に、それを引き当ててしまう結果を招いてしまったのだ・・・・・・。
そう。彼女は今・・・・・・《物欲センサー》に引っかかってしまった!
だからゴスペルを、この攻撃では倒せなかったのである!!
――言うまでもないが説明しよう!(念のために)
『物欲センサー』とは、スロットやクジなどで「レアアイテム来い!」と求めるものが強く物欲にまみれた途端に察知されて発動すると、日本バトル業界では言われている摩訶不思議センサーのことである。
その呪いの力は強力で、時を超えて呼び方を変えながら、未だに島国全体に影響を行使し続けている・・・・・・。
例:「スゲー。俺も出ると良いなぁ、一等の景品――って、ヤベー!? 言っちまった!」等。
注:このセンサーは迷信であり、現実の科学方程式や物理法則とは一切関係ありません。
『――《シルバーベル》最大稼働』
「ちぃッ! やっぱり察知されちゃってたか! 日本に来てから日の浅いチェリーは、これだから!」
「だから何のことなんですのよ!? それは!」
『――開始ッ』
そんな理由による敵勢力内の内輪もめに乗じて、包囲から離脱しようと戦術コンピューターが考えたのかは不明だが、とにかくゴスペルは傷ついた体で両腕を左右に限界まで広げて翼まで追加させ、自機に内蔵されている砲口の全てを周囲に向け、全弾発射する勢いでエネルギー弾をひたすら撃ちまくる!
それによって一時は劣勢を挽回したゴスペルだったが・・・・・・やはり先制で受けたダメージ蓄積の差は大きい。先の戦闘で撃墜される寸前まで追い詰められた負の実績もある。
なんとか包囲から離脱しなければ、今のままでは落とされるからこそ使った全力砲撃では破れかぶれに近い。
言うなれば、形と所属が異なる『神風ファイヤー』
もともと周囲を全て敵に囲まれ、補給の当てもなく海の上に浮かんで孤軍奮闘していた、暴走する軍事特化の存在という、海から日本に近づいてたわりには本体自体が島国大帝国みたいなポジションだった機体なので、結果もまた同じようなもの。
「ラウラ! セシリア! お願い!」
「言われずとも!」
「お任せになって!」
足を止めての全方位攻撃では、防御型のシャルロットと後ろに庇われて立ち止まってる箒だけなら有効なものの、射程も違えば攻撃方法も異なる遠距離攻撃タイプ3機に対しては逆効果の的になりかねない。
そして実際、そうなった。
「よし! 足が止まれば、こっちのもんよ!」
至近の防御型と距離を取られた射撃タイプ、どちらを優先して対処するかを決めかねていたところを鈴に直下から急速接近されて、斬撃の後に拡散砲まで浴びせられて片翼までもがれてしまった。
火事場のクソ力で、なんとか鈴だけは蹴り飛ばして腕部アーマーを破壊して海へと堕としはしたものの、所詮は敗北寸前まで追い詰められてからの『窮鼠カミカゼ猫噛むアタック』
多少の損害は期待できるものの、4機いる中で1機だけ損傷させて落下させるのに成功するため、四方八方から撃たれまくって食らいまくったのが代償では全く割に合っていない。
挙げ句、トドメ役は先程から力を消耗することなく、ずっと近くに潜んでいる。
「鈴!? おのれ――ッ!!
たぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
今の今までエネルギー効率悪い専用機の力を温存したまま控えていた箒の紅椿が、盾に押していたシャルロットの背後から飛び出して斬りかかっていく!
その姿はまさに、路地の影から飛び出してきて要人へと斬りかかる、幕末京都の人斬りが如し!
海の彼方より来たりし夷敵から国を守るため、志を共にする同士たちを多く殺した大老への恨み辛みもついでに晴らすため、天誅の刃を振り下ろす!!
一撃目は防がれたものの、そこは想いだ。想いの力である。
仇討ちを果たさんとする想いの念は、やったら強く、吉良邸の守りをも強引に貫き通す。
「箒! 敵に捕まれた武器を捨てて緊急回避しろ! 早くッ!」
(・・・・・・だが! ここで引いては、何のための・・・・・・何のための力か!)
「何をしている!? 残された砲口にエネルギーが・・・早くッ!!」
(ここは、引けない! 私は引くわけにはいかないのだ!)
――一夏の無念を晴らすため、一夏の仇討ち成就のため!!
根性だ! 信念である!!
武士道を尊ぶ、敗戦後に撤退した敗軍のサムライとして――箒は、この戦場からは決して引くまい。後がないと思い、ただ前にのみ駆け抜けるだけのこと。
(――南無三ッ!!)
全ては愛した男の仇を討つため、箒は反撃を恐れず乾坤一擲、前に出る覚悟を固めた。
敵であるシルバリオ・ゴスペルは、確かに暴走して日本に近づいてきてはいたが、自分からは誰一人犠牲者を出していない相手だったが。
そんな相手を『敵』と指定されたから敵として倒すためなら、犯罪者を巻き込んで殺していいのだと切り捨て策を実行させようとしたこともあるが。
学園内の自分の部屋に、IS学園は治外法権だから銃刀法法違反にならないと、実家から真剣を取り寄せさせてる人だが。
自分は日常的に愛する男を真剣で斬りかかっては殺そうとして、治外法権だから罪にならず、日本国刑法的には犯罪者認定されてないだけの人でもあったが・・・・・・そこは重要ではない。
大事なのは気持ちであり、感情である。
感情で動いてるときの人間に、理屈言っても無駄なのである。
・・・・・・単にムカついて暴れるガキなんじゃね?とか言ってはいけない。人の気持ちの問題だから。
そんなこと言うと、箒ちゃんが泣いちゃうので言わないであげる優しさ・・・・・・感情である。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!
ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!
ずおぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」
ズパァァァァァッッン!!!!
敵からの反撃をギリギリで避けながら、不安定な体勢からの反撃によって爪先の部分から根性でエネルギー刃を発生させる。
それによって放った一斬、かかと落としならぬ『かかと落とし斬り』が決まって、ゴスペルは遂に・・・・・・もう一つ残った翼も失う。
別に翼のパーツだけ全部失ったところで死ぬ訳ではないのだが――ISである。
エネルギー切れたらアーマーが消滅して敗けになるのがISなので、別にコクピットや頭部を破壊しなくても勝てるのがISバトルなのだ。
だから、両翼失って海に落ちてっただけでも大丈夫。
流石に傷つきすぎたので、そろそろ倒せただろう。
・・・・・・そう思っていたのだが。
「はっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・!」
「無事か!? 篠ノ之!」
「私は・・・・・・大丈夫だ。それより福音は――!? な、なんだコレは! 一体なにが!?」
やっとこさ自分たちは勝った、と思ってた瞬間。
ゴスペルが落ちてって姿を消した海面から、強烈な光の球が発生して球状に海を蒸発させて吹き飛ばす。
その光景に、セシリアと箒は見覚えがあった。
自分たちがそれぞれ一夏と出会い、再会した記念すべきバトルの中で、彼が自分専用機を手にした時、“起きた出来事で見た光景”と、いま目の前で起きていることは酷似している。
「これは・・・!? 一体、何が起きて・・・?」
「!? まずい! これは一夏の時と同じ―――『セカンド・シフト』だ!」
光によって蒸発された海の一角は、まるで時間が止まっているかのように、そこだけ凹んだままの状態で維持されて―――その中心に、青い雷を纏った姿で“ヤツ”がいた。
生きていたのである。
無機質なカメラアイを持つバイザーに覆われた顔からは、何の表情も読み取れず。
だが、そこには確かに敵意を感じさせる瞳の光が警鐘を鳴らさずにいられない。
全身を覆う、銀色の装甲。鉤爪のような手を持つ腕。
同じく鉤爪のような爪先の脚。
そして・・・・・・尻の部分から伸びた尻尾。
まるで蝶がサナギから孵るかのように、エネルギーで装甲部分を生やし。
新たに得た力と姿となって、そこに立っている。
「うぉぉぉぉぉ!! ソロモン諸島よ! 私は帰ってきたぞーッ!!
アイ・シャル・ジャパーッン!!であーっる!!!」
『ギアアアアアアッ!?』
「「「「って、お前(アンタ、あなた、君)か――――ッい!?」」」」
そう! 海の中からパワーアップして復活して帰ってきた王の中の征服王!
シュトロハイド・フォン・ローゼンバッハ! ここに再誕!!
何故ならコイツは、人の体で生まれた場合の怪獣王!!
怪獣王とは、海で倒されたと思ったときには大抵、海から復活して死んでなくて、逆にパワーアップしやすいもの。
そして、その決まり通りパワーアップして帰ってきてたのだ。
よりメカニカルになったISを纏い、銀色の装甲で全身を覆い尽くした、動き鈍そうな怪獣っぽいデザインの武装になって、怪獣みたいな銀色ヘルメットも被っている。
その姿、まさにアレだ。アイツである。
「更には私の、この姿!
まさに私の精神が形となったようなもの! 新たなるIS!
その名も―――《メカ・ハイド》!!!」
「「「「そのまんま過ぎ!?
あとISらしさ0過ぎる!!!」」」」
『ギアアアアアアアアアッ!?』
如何にも過ぎる見た目と名前をもってる、第二世代機なのにナゾの砂浜空間に何故か入り込んで、どうやってか帰ってきた力によって無理矢理パワーアップさせてしまった征服王。
そんなヘンテコ王が両手で持ち上げ、頭上に抱えたままになってるゴスペルがなんか叫んでるけど、敵だからまぁいいだろうと特に誰も気にしてくれてない。
挙げ句の果てに、
「では参る!
生まれ変わってパワーアップした我が愛機《メカ・ハイド》の力を諸君らの目に焼き付けてあげよう! 目ん玉を見開いて、よく見ておくがよい! とうりゃあー!!」
『ギアアアアアアッ!?』
背中を持ち上げられて、赤ちゃんポーズでジタバタしてたゴスペルを力を込めて、昼間だったら青い青い夜空に向かってブン投げて。
ハイドは接近戦特化仕様だった《ゴールデンバウム》から生まれ変わった新たな機体、射撃戦特化仕様の専用IS《メカ・ハイド》を射撃体勢へと移行させる!
ウィ~ン・・・ガチャッン!!
両手の平を前に伸ばし、指先を真っ直ぐ敵に向けて固定して。
ウィ~~ン・・・ガチャッン!!
片足を曲げ、片膝の先を相手に向けて固定して。
ウィ~~~ン・・・ガッコン!!!
生物の頭部っぽいフォルムの兜に、口の部分を開けさせて。
ウィ~~~~~ン・・・ウィ~~~~~ッン!!!
首の辺りのパーツも開いて、高熱版っぽい装備を展開。
そして、ハイドが手にした新たな力の威力が・・・・・・今、示される。
「では行くぞ。発射である!!」
ズダン! ズダン!! ズダダダダダダンッ!!
ズドン! ズドン! ズドドドンッ!!
ビィーッ!! ビィ――ッ!!
バスンバスン!ズバンッ!!
こうしてメカ・ハイドによる攻撃がはじまった。
片腕からは、《フィンガー・ミサイル(×5)》
片足からは、《ネイル・ミサイル(×5)》
片膝からは、《レッグ・キャノン(×1)》
首筋からは、《ネック・レーザー(×1)》
鼻の穴から、《フンフンバルカン(×2)》※ハイド命名
両目からも、《目からレーザー砲(×2)》※ハイド命名
そして口の中から、《主砲キャノン怪光線ビーム》※ハイド命名
コレが全部同時に纏めて一方向に向けて撃ちまくられてくるのである。
しかもISエネルギーで補充してるからか、弾が切れない。エネルギー切れるまで撃ちまくり続けるという反則な戦い方を可能にした、まさに常識の通じないメカ怪獣王っぽいフォルムに相応しい性能ぶり。
『ギイイイイイイイッ!!!』
「あっ! 福音が回避行動を――横にッ!?」
「逃げろ! ハイド! こいつの威力は・・・!」
「な、何なんですの!? この性能・・・・・・軍用とはいえ、あまりに異常な――」
空高く投げ飛ばされながらも、一応はこっちもセカンドシフトしてて、ハイドと一緒の場所だったから気づいてもらえなくなってただけのゴスペルが、その残された力で最後の超性能を発揮し、最大限の反撃を占めそうとする。
胸部から、腹部から、背部から、装甲を卵の殻のようにヒビ割れさせて小型のエネルギー翼を生やし、その全てをエネルギー弾として高速移動しながらハイドに向かい、四方八方から弾丸の雨を浴びせまくり!
そして!
「うぉぉぉぉぉっ!! やらせはせん!
我が学園の学友たちを、軍用IS如きにやらせるものかぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
自機の周囲を高速移動しながら撃ってくる敵を迎撃するため、ハイドはその場に止まったままグルグル回転を開始。
回転しながら撃ちます。全弾撃ち続けます。エネルギー消費とか考える頭のない人間型の怪獣王は、とにかく撃ちまくって敵を倒そうとするだけしか考えない。
その結果、
「ちょ! 危なっ!? 危ないわよハイド! こっち飛んでくるんじゃ、うわわわっ!?」
「キャーッ!? 砲撃ですわ! ミサイルですわ! わたくし防御薄いんですのよー!?」
「き、貴様ー!? 私が今、機動力低下してることを知っててやってるだろう!? 味方殺し! 人でなしーッ!」
「箒ちゃん! ボクの背中に隠れて! ガーデン・カーテンでも、これはキツい!?」
「アイツは一体何なんだ!? アイツは一体どっちの味方なんだ~~~ッ!?」
やらせないと言ってる学友たちを、自分が一番危険な状態へと追いやってますが・・・・・・自己です。流れ弾です。戦場ではよくあることなので仕方ないと割り切るしか他に無し。
『Laaa・・・ッ!!』
せっかく増やした弾もデタラメな攻撃方法の前では数が足りず、圧倒的な物量差を前にして、既に敗北は時間の問題となってしまったシルバリオ・ゴスペル。
せめて最後に一矢報いようとしたのだろう、多分。
超速移動で背後に回り込むと、飛び道具は使わず鉤爪状のアームを突き出し、後頭部を狙ってタマを取ろうと不意打ちを仕掛けることに成功した、その次の瞬間。
グルリン、と。
“首だけ”が、自分が手を伸ばそうとしていた背後に向かって振り向いて。
首から下の胴体全ては前を向いたままの状態で、口パーツがパカリと開く。
そして発射。
ビ~~~ッ!!! ズドォォォッン!!!!
『La・・・・・・aaa・・・・・・・・・』
遂に力尽きて海へと落下していきながら、途中でアーマー消滅してジョボン。
―――長い夜の戦いは、こうして日本の海防衛側の勝利で幕を閉じたのだった。
「我々は勝った。だが敵を倒しても、織斑くんが戻ってくることはない・・・。
戦いは空しいという事実を、ゴスペル君は身を以て我らに教えてくれたのだ・・・・・・。
だが、彼らの犠牲を無駄にしないためにも、我々は決して忘れてはならない。
いつの日か再び、第2第3のゴスペルくんが海より日本に現れるのだということを・・・・・・」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
・・・そうかな~・・・?と正直思いつつ。
それでも尚、IS学園・織斑一夏大好きガールズのもとに、織斑一夏は帰ってくることはなかったのは事実・・・。
戦いは勝利で終わったが、その代償に2度と取り戻せない大事なものを失ってしまった少女たちは、気の重い凱旋の途に着くことになる。
一夜だけで終わる、戦いと苦悩。
戦いが終わった後も延々と続く、孤独と損失。
彼女たちの、織斑一夏のいない長い一生は、今この時に始まったばかりだ・・・・・・。
―――尚、余談として。
「・・・待たせたな、箒。俺の仲間は誰一人としてやらせね―――って、あ、あれ? いない・・・?
おーい! どこ行ったんだ皆! 返事をしろー! ――ハッ!?
ま、まさか間に合わずに皆、一人残らず・・・・・・!!
許さない! もしそうだとしたら絶対に許さないぞゴスペル!
俺は決着を付けて皆の仇を取る日まで、お前を追い続けるーッ!!!」
誰一人いなくなった勝利した後の海上に現れて、なんか叫びながら四方八方を飛び回ってたISが確認されていたらしい。
ずっと夏の青空な砂浜世界の『向こう側』と『こっち側』とで、時間の流れが同じかどうか不明だったせいで起きてしまった悲劇だったと歴史は記したとか、記さなかったとか、無かったことにしたのだとか諸説不明。
つづく