ギャグセンスを取り戻すため奮闘中。
IS学園・・・・・・
この世のあらゆる夢と欲望を約束する巨大学園都市。
そこは一般人の通わぬ、人工島。
今はただ、静かな眠りにつく、冷たいメガフロートの塊。
しかし、このバトルアイランドが熱く燃えさかる刻が、永き眠りを覚ます日が刻一刻と近づいていた。
たった一つの目的のために、青春のすべてを賭ける熱き少年少女たちの元へ。
そう。
全ては、運命に導かれし一人の『男』と運命の出会いを迎えるために・・・・・・。
「芸術は爆発だ!――というわけで、美術部は爆弾解体ゲームやってまーす♪
カップルでの参加で協力プレイもOKですので皆様、ふるってご参加くださ~い☆」
「吹奏楽部は楽器体験コーナーやってま~す。部室内にある楽器なら、どれでも演奏OKで~す。――ちなみに部からのお勧めはホルン!」
「・・・アブ~ラ・カタブ~ラ・ナーメンダ~ブツ・・・・・・剣道部は占いの館にジョブチェンジしたよ~。恋愛運とか相性運とか占いまーす」
そんな掛け声と呼び込みの声が、普段は学園生徒と教員たちだけしか存在しない、内輪だけで島一つに引きこもって機密抱えまくって、サムライ型のパワードスーツを防衛用に配備もされてて、港の使用は制限されているIS学園の各所から轟いてきていた。
普段は、江戸時代の日本スモール版みたいなのが常態化している学園内に、珍しく外部の人間が限定的ながらも招待されて、IS学園にもようやく黒船来港の夜明けが近づいている気配が感じられなくもない特別な日が訪れていたからだ。
そう――今日は学園祭の当日。
普段はIS関係の政府か企業か軍部の関係者以外の方には、強面顔の警備員さんが「クッチャクッチャ」とガムを噛みながら、警棒を「ポンポン」右手で弄びつつ、立ち入りを丁寧にご遠慮願っているIS学園の正面入り口玄関であるとはいえ(注:抽象的表現のため現実とは異なります)
今日ばかりは一般家庭に生まれた、お偉方との特別なコネも縁故もない、金もなければ才能もなく、本当にただの普通で平凡な一般人のお宅の庶民でさえも、IS学園の生徒から招待客として選ばれさえすれば、『選ばれた一部だけの人間』として学園内に入ることを許されて、学園内の備品を使っても警視庁の人に職務質問されることはない権利と自由が与えられる。
まさに、女尊男卑に基づく生まれの地位身分によって人が別けられることが当たり前となった時代の日本人にとって、祭りと呼ぶに相応しい日と言えるだろう。
祭りとは本来、無礼講。
身分制度のあった時代に、人々が身分の差を一時だけ忘れ合い、桜を見る広場の下で、団子屋の屋根の下で、雑木林の見えにくいところで、月明かりの下で暗がりの中で。
色々やって、イロイロ交わり合って、身分差を超える関係になることが許されていた特別な日――それが無礼講のお祭り。
IS学園で今日おこなわれているのは、そーいう日のイベントであった。(注:違います)
そーいう日だから、こーいう人達も少数ながら存在している↓
「少年名探偵でも解き明かせなかった、たった一つの恋の真実を解き明かせるのは君だ!
――失敗したらボンバーマンEND罰ゲームッ!!(かもしれない)」
「ホルンという楽器は―――この、うにうにした形が素晴らしいッ!!
うにうには正義! なんかダーク系っぽいドラゴンが生まれそうだから!!」
「・・・・・・見える。見えるわ、世界の運命が・・・!
――貴女、死ぬわよッ!!」
祭りやる気はあるんだろうが、コイツラは本当に店やる気はあるんだろうか?
こんな連中も一部の部室に発生させながら、普段よりも人と熱気が多くなっているIS学園は、普段よりも一層騒がしく盛り上がりに包まれていた。
それは、ここ1年1組とて例外ではない。
「え!? 1組はあの織斑くんの接客が受けられるって話、ホントだったの!」
「それだけじゃないわ! 執事の燕尾服で、ゲームまであるらしいわよ!?」
「しかも勝ったら写真を撮ってくれるんでしょう!? ツーショットよツーショット! これは行かない手はないわね! 突撃よ!」
「応さッ! 全員突撃! 死を恐れず突き進むのよ! 全員でかかれば必ずや何割かは本命にたどり着く! 勝利は目前ッ!!」
『『『えい!えい!オーッ!!! 万歳!万歳!! バンザ~~~~ッイ!!!』』』
などと叫んで、バンザイ突撃していく他クラス女子生徒たちの一団が大挙して押し寄せ、IS学園に守られるため入学した、たった一人の選ばれた少年を探し出して彼の元へ辿り着くため1年1組の扉を開けて、
「悪い勇者の子供はいねぇぇぇがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!??」
『ぎ、ギャァァァァァァァッ!?
杖もったナマハゲっぽい犬を連れてる人が襲ってきた―――ッ!?』
選ばれし一人の若者を探し出すため、沢山の子供を狙ってる存在が待ち受けてた場所へと、不用意に飛び込んでしまったバトランド学園の女王宮戦士になってしまった女子生徒たち!!
危うし少女たち! 何故なら彼女たちは、洞窟の中で人間になりたがっている回復役を連れてくるより先に、空を飛べる道具を手に入れてしまった名もなき普通の一般女子生徒たち!
つまりは門番である。門番の兵士A,B,Cぐらいの強さしか持ってない前提の存在なのである! そんな者達が数をそろえただけで、待ち受けているボスに勝つことは決してできないのだッ。
何故なら、それこそが世界のシステムという真理なのだから――――
「――って、何をやっとるんだお前はァァァァァァァァッ!!!」
「ぬぅっ!? その声はIS王宮学園1の戦士にして、武士的なものを好むという、ゴザル先生殿! グーテンタークであるな! HAHAHA♪」
「誰がゴザルだ!? 私は王宮に仕えていた覚えはないし、勇者を探しに行く予定もないッ!
あと、そんな言い回しをライアンは言っとらーんッ!!!」
そして1年1組のハリセンツッコミ担当教師、織斑千冬先生の登場によって、カメレオンに似てないカメレオン男の仮面とセットの巨大ぬいぐるみを蹴り飛ばされて退場させられ事件は解決。
年齢的にやったことあるらしい織斑先生は(多分PS版だろうけど)とりあえず教え子の中で若い癖して自分時代のネタを、ネタとして祭りの場でやりやすそうな問題児の問題行動を阻止して、被害者を未然に防ぐことに成功したのであった。
こうしてIS学園学園祭の平和は、今日も密かに守られている―――
「―――完。うむ、綺麗な形で終わることができたようだな。流石は織斑教諭よ」
「・・・?? さっきから何言ってんだハイド? あとさっきまでどこ行ってたんだ? 客多いんだから、しっかり接客してくれよ本当に」
「うむ。安心したまえ、大丈夫だである」
なんかよく分からないノリながらも、一時だけ姿を消してたハイドが戻ってきたので接客の一部を任せながら、俺は改めて自分のクラス内を見回していた。
いよいよ学園祭の当日がやってきていたからだ。
今日に至るまで、個人レッスンを引き受けてくれた楯無さんの指導とか、夜に部屋の中まで押しかけてくる楯無さんの水着エプロンとか、ときどき騒ぎに混ざりにくる全裸のハイドとか、全裸の女子生徒には赤くなって激怒する楯無さんの解りにくい性倫理観とかいろいろあったけど・・・・・・兎にも角にも今日まで辿り着くことができていた。
なんか色々あって、ありすぎた気もしなくはないが・・・・・・―――今となっては何もかも皆、懐かしい、の一言で終わらせて無かったことにしたい気持ちの方が強い気もするし、何もなかったんだよウン。
普通のことしかなかったから、思い出せないだけなんだ。そう思うことが普通に生きる人には大切なんだと学ばされた、IS学園最初の秋はじめだった。
―――これを、残り2回、1年に1回ずつやらされるのか・・・・・・そう考えると暗くなるから、やっぱり何もなかったんだ。何もなかったんだよウン本当に。ホントウに(断言)
「ちょっと、そこの執事。テーブルに案内しなさいよ」
「ん? その声は、ってやっぱ鈴か。どうしたんだ、その格好」
声をかけてきたのは、隣のクラスの鈴だった。
俺やハイドと同じく普段の制服と違って、接客用のコスチュームをまとっている。
中国代表の専用機持ちだから、ってことなんだろうな。真っ赤な生地に竜の刺繍とスリットの入ったチャイナドレスだ。
頭にも普段はつけてない、ボンボンみたいな丸い髪飾りをつけてて(たしか「シニョン」だったかな?)かなり似合っている。
もともとが中国生まれな奴のわけだし、中国っぽい服装はお手の物って感じの印象だ。
「うちは中華喫茶やってんのよ! だから隣のアンタのクラスのせいで前々客こなくなったじゃないの!? どーしてくれんのよ!」
「ああ、まぁ・・・・・・喫茶店やってるクラスが2つ並んじまった場合はなぁ・・・」
改めて俺たちの1年1組の教室と、鈴のクラスの2組とを見比べてみて―――近いんだよなぁと、思わざるを得ない位置関係に多少の申し訳なさを感じさせられなくもなく。
最終的に決まった俺たちのクラスと鈴のクラスは、テーマこそ違っているとはいえ大雑把に別ければ同じ『喫茶店』という点に変わりはない。
学生同士で運営している学祭レベルの飲食店で、同じようなジャンルの店が二つ続いちまったときには、よっぽど味の評判いいとかじゃないと次の店までは中々・・・。
そういう事情もあってか、鈴たちの2組はそれほどの千客万来って状態にまではなれていない。多少の空きが、ここからでも見つかるほどだ。
とはいえガラガラという訳でもなく、そこそこの客入りは確保できているようでもあった。
何しろ中華である。しかも中華料理屋の娘が直々に腕を振るっているときた。
うちの1組じゃ同じことやるの無理な人材しかそろってない訳だから、好きな人はそりゃアッチに行く。そういう配分で1組と2組、二つの出し物喫茶店クラスは成り立っている。
「と、とにかく! そーいうことだからアンタの店に案内しなさいよ! お客様としてね! あ、アンタたちのせいでひ、ヒマになってるんだから・・・・・・勘違いしないでよね!?」
「何をだよ。――まぁ、それはそれとして、畏まりましたお嬢様。どうぞこちらへ」
「おじょ!? お、お嬢様って、一夏、あの・・・えっと・・・・・・(ポッ♡)」
「?? なに赤くなってんだ? 風邪か? そう言うのがルールなんだよ」
「お嬢・・・様・・・・・・一夏に、あたし・・・・・・お嬢様って・・・・・・エヘ~~♪(デレッ♡)」
「・・・・・・・・・聞いてるか? おーい、もしも~し」
なんか気に入った呼ばれ方だったらしく、トリップしたまま戻ってこなくなった鈴の意識はまぁ後から回復するだろうと割り切って。
俺は体をクネクネしながら身悶えしているセカンド幼馴染みを(正直ちょっとキモい)店の仲間で案内してやって、2組とは異なる喫茶店システムでの接客を彼女のために用意することになる。
なのでまぁ、とりあえずはっと―――
「日の本の和を乱す夷敵めが! 天誅ぅぅぅぅぅッ!!!」
「う、うわぁぁぁッ!? ほ、箒っ! アンタ一体なって、きゃあああああッ!?!?」
スパァァァァッン!!!
扉を開けて教室は行った直後に、走り寄ってきた箒による上段からの振り下ろしが放たれてきた斬撃を、大慌てで避ける鈴。
この前実家から送ってもらえたとか言ってたえっと、アケボノだったかアケヨロだか忘れたけど、なんかそんな名前の刀を振りかざして鈴に切りつけてきやがっている。
白いダンダラ模様の入った藍色の羽織をまとって、頭に鉢がね巻いてる姿で、日本刀もちながら堂々と。
この場所がIS学園の教室じゃなかったら、即座に通報一択しかない格好で、俺のファースト幼馴染みはセカンド幼馴染みの少女に斬りかかってくる「接客の仕方」で登場してきやがったというわけで。
「あ、危ないわね箒! 何するのよ!? 殺す気なのアンタは!!」
「フッ・・・私は新撰組一番隊組長の沖田。ようこそ土方さん、歓迎しますよ――チッ」
「今「チッ」って言ってたわよねアンタ!? 「チッ」って! って言うか沖田とか新撰組ってなに!?」
「あー・・・・・・それについては俺から説明するって言うか、教室前の方の黒板にも一応書いてはあるんだが・・・」
ポリポリと頬をかきながら、尤もすぎる鈴の怒りを前にして俺の方でも補足説明してやるぐらいの義務はあるだろうなと、殺人未遂を犯しかけたファースト幼馴染み少女をフォローするためにも、その名前と店のシステムを混みで説明してやることにする。
「つまりだな。
うちのクラスの出し物は喫茶店は喫茶店でも、いわゆるコスプレ喫茶って奴とご奉仕喫茶ってのを兼ねてて、二つを組み合わせるならリアル志向も追求しようってことになり、各自が衣装は自前で用意してきていいという流れになったことから―――つまり。
いらっしゃいませ、お客様。
『コスプレご奉仕休憩所喫茶シンガーソングはいいねぇ文化の極みだ』に、ようこそ」
「馬鹿じゃないの!? いいえ、この大バカッッ!!!」
セカンド幼馴染み、憤激す。
怒りのあまり酷いことを言われてしまった。
言い返せないところが特に酷い、正論過ぎる罵倒に俺はただただ心から――――この馬鹿なアイデアへと導いてしまってたと思しき友人に怒りを覚えることしか出来そうにねぇ!!
ファーストオリジナル俺、憤激す! 超憤激すッ!!
・・・・・・そんなIS学園の日常らしい混沌が、いつも通り色々あった末の学園祭後半でのことだった。
「はぁ・・・っ、はぁ・・・っ、はぁ・・・・・・ッ!」
俺は学園の廊下を、息を切らしながら全速力で駆け続けることになっていた・・・!
喉が・・・熱い、足が、重くなってきやがった・・・ッ! 疲れ切った体は、休みを急速に欲しているのに無意識のレベルで前へ前へと足を動かし続けてしまうのを止められない!
「はぁっ、はぁっ、はぁ・・・ッ!」
走りながら、息を切らしながら、一瞬だけ俺は、背後を振り返るッ。
“追ってきているナニカ”が追いついてないかと確認するために・・・ッ。
それがナニカは俺にも分からない、どこに潜んでいて、どれだけの数が追ってきているのかも・・・・・・だが確実にそれらは俺のことを追ってきている―――迫ってきてるんだ!
「く、くそ・・・一体、どうして・・・こんな事になっちまったんだ・・・っ」
訳の分からないまま激変し続ける状況に、ただ振り回されて、追い立てられ、ただただ逃げることしか許されない立場へと追い込まれている現在の状況・・・・くそゥ!
本当に、どうして俺がこんな目に―――
『BブロックC地点に目標の姿なし! そっちにはいた!?』
『Dブロックからも発見の応答はない! 人員をもっと増やすしかないわ!』
「ちぃっ!? もう、こんな所まで・・・ッ」
廊下の先から聞こえてきた声に背中を突き飛ばされ、俺は一時的に身を潜める場所に使っていた階段下の死角スペースから飛び出すと、再び全力疾走でかけ始める!!
『軍用犬を借りてくるべきだわ!』
『隠れ潜むネズミを燻り出すには、絨緞爆撃が一番よッ』
『虱潰しで探せェッ! アリ一匹這い出る隙間がないほど徹底的に探すまでだわッ!!』
走りだした背中の背後からは、恐ろしい内容の声が魔女狩りのように響いてくる・・・ッ。
いや、狩りに来ているのは魔女の方なのかもしれない・・・! 偶然にも異常な状況に迷い込んでしまった一般生徒でしかない俺を捕まえて、何かの魔術儀式に生贄として使うために追いかけてくる・・・・・・魔女たちの!!
「はぁ・・・! はぁ・・・! クソッ、こうなったらIS使っていい相手だけでもバトルで何とかし――」
「――こっちへ」
「・・・え? あ、貴女は――」
「早く。時間がない」
「お、おうッ!」
ガコン、と。
音を立てて背後で扉が閉まり、俺は助けてくれた女の人に手を引かれながら、その部屋の中へと逃げ込むことに何とか成功することができたようだった。
たぶん、楽屋裏か何かにある更衣室かなんかなのだろう。衣装が置いてあるし、ロッカーもある。あんまり使ってるようには見えない埃の被りようだけど、確かにここなら見つけられる可能性は低そうだった。
「はぁ、はぁ・・・・・・ど、どうも・・・・・・ありがとうございました」
「・・・・・・」
俺は助けてくれた女の人にお礼を言って、相手を見る。
スーツ姿をした女の人だった。
ふわりとしたロングヘアーの美人さんで、なんていうか『企業の人間』っていう感じの人だ。
「―――」
表情も「キリリ」としていて真面目そうで、凄く優秀そうなエリートキャリアウーマンって印象を強く感じさせられる顔立ちをしている。
どことなく千冬姉と似た印象を受けさせられる人だった。
「あの、ありがとうございました。でもどうして貴女は俺のことを助けてくれたんです?」
「――それが果たすべきミッションだからだ」
「・・・・・・え?」
ミッション――日常生活の中では滅多に使う機会のない単語を聞かされた瞬間、俺の頭の中には危険信号が激しく点滅しはじめていた。
そうだ・・・よく考えなくても、こんな偶然がある訳がない・・・突然に訳も分からず巻き込まれた異常事態に陥っていたところを助け出してくれた、正体不明の美人な女性・・・・・・こんなにも出来過ぎた偶然がある方が希なのが現実。
それを考えれば、この人の正体も普通の人なんかじゃないって事は、予想できる・・・。
「あ、アンタ一体・・・・・・なんなんだ・・・?」
「・・・・・・」
返答はなく、ただ周囲に対して険しい視線だけを飛ばし続けているのみ・・・。
危険な人、ではないと思う。この動きも俺を守るためにしてくれている・・・そんな気がする・・・・・・。
けど――この人はいったい何者で、何のために俺を守って・・・いや。
そもそも俺は、一体どこの誰から狙われている
「危ないッ!! 伏せろッ!!」
「え? う、うわっ!?」
ガバッ!と、頭を鷲づかみにされて無理矢理伏せさせられながら身を低くする俺たち!
相手の女性はすぐさま身を起こすと周囲を警戒しつつも扉の方へと視線を向ける。
そして―――ヒョイッと。
なにかの丸い部品らしきものをスーツから取り出して床に放ると、「チャリン」と小さく音が鳴って、コロコロと床を転がっていき、やがて止まる。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
――それだけだった。
特にそれで何があるというわけでもなくて、ただ部品を投げて床に落ちて転がって止まった・・・・・・ただそれだけ。
「状況Cクリアー。続いて状況Dへと移行する。オーバー」
「あの・・・貴女いったい何やって・・・・・・って言うか、その携帯電話なんなんですか? どっか繋がってんですかそれ?
今さっき電話口から『午後3時50分をお知らせします』って聞こえたような・・・・・・」
「危ない! 伏せろォォッ!!」
「またかい!? って、フボォッ!?」
ガバッと! またしても頭捕まれて伏せさせられる俺!
なんなんだよ!? さっきまでは思わなかったけど、なんなんだよこの人とこの状況は本当に!?
「・・・こちら、フェニックス・ネオ。施設への潜入に成功し、偶然にも民間人の少年を助け出すことになった。
どうやら、“機関”の奴らも本気のようだな。――なに? 大丈夫か、だと?・・・・・・クククッ、おいおい誰に向かって言っているのだ。
ああ、分かっている。無理はしない。レクイエムの日は近い。まだ“機関”に我々の計画を察知される訳にはいかないからな」
「なんか言い出しやがった!? なんか秘密組織の工作員っぽいセリフを携帯電話に向かって! さっきから時報流れてきてんですけどそれは!?」
「分かっていると言ったろう? これは“潜入任務”なのだからな。お前の方も気をつけた方がいい。
気付かれれば、奴らに消される。共に生きて、約束の地で再会しよう。
では、また来世―――エル・プサイ・コングルゥ」
「しかも呪文っぽい謎の言葉まで最後に!? 相手の人って時報でしょう! なのになんで!?」
「シッ! 落ち着け少年。これは潜入なのだぞ? 敵に気付かれれば君とて消されるだろう、細心の注意を持って行動しなければ・・・・・・」
大真面目な顔と態度のままで、大真面目にそんなこと言ってくる美人さん。――ここまで来ると俺でさえ、この人がなんなのか流石に分かる。
この人は、アレだ。そーいう人達の一員な人だ。
現実と頭の中にあるフィクションが区別できていない人の一人だわ間違いなく。
助けてもらったのは有り難いけど、関わっちゃいけないタイプの人だし、そろそろお暇した方がいいかもしれない。なんか怖いし。
「あの、お姉さんすいません。俺ちょっと忙しいんで、クラスに帰らせてもらいますね。助けてもらったのには感謝してます。それじゃ」
「待て、少年。今出るのは危ない。“奴ら”が君を狙っている」
「大丈夫です、分かってますから大丈夫ですから平気です。それじゃあ――」
とりあえず、それっぽいこと言って撤退させてもらうことにする俺。
こーいう危ない人には深く関わり合わないのが一番だって、弾とか鈴とか千冬姉からも言われたことあるしな。
変な人と関わり合って、変なところに連れて行かれて絡め取られたりすると、幾らむしろ取られるか分かったもんじゃないって、中学校でも先生から言われたことあ―――
ズガァァァァッン!!!
「ハーッハッハハハ!!! やぁっと見つけたぜェ! ガキの癖して随分と探すのに苦労させてくれんじゃねぇかよ、このクソガキがッ!!!」
「ゲホッ、ゲホッ! あ、あなた巻紙、さん・・・・・・どうして、ここに・・・?」
「ああん? どーしてだぁ? ふざけんなッ! テメェがこっちの正体気付いて逃げ出しやがったんだろうがよぉッ。
ったく、こっちが用意した蜘蛛の巣の貼り場所につく寸前に方向変えやがって、ムカつくガキが。嫌がらせのつもりかよ!?
だったら、いい度胸だ。このオータム様が望み通りブチ殺して消し炭にしてやるぜェ!!」
「お、オータム・・・? 巻紙さん・・・あんた・・・・・・あんた一体・・・・・・ッ!?」
「今更知らんぷりしてんじゃねーよ! もう気付いてんだろぉ? そうさぁ・・・・・・あたしはな、『悪の組織の一人』だっつーの!
秘密結社ファントム・タスクが一人、オータム様って言えば分かるかぁ!?」
「お、オータム!? それにファントム・タスクって、しかも秘密結社・・・・・・ッ!!
――そんなお為ごかしの冗談はいらねぇんだよ!?
厨二病仲間の人ならさっきからいるわ! ホントのこと言えホントのこと!」
「な、なんだとガキ!? このオレ様がチューニ病だってのかよ!? チッ! 平和ボケした日本のガキはこれだから、ジャパニメーションの見過ぎだっつーんだよ!
このオレ様のは正真正銘、マジものの秘密結社だっつってんだよ!!」
「嘘だッ!! オレはもう騙されない!! さっきのお姉さんで、俺は学んだッ!!」
「嘘じゃねぇっつってんだろうが!? んなことより白式とっとと出せよとっととよぉ! いいのかぁ? このままだとオレ様に後ろの女もろとも殺されちまうぞ? それでもいいのか? あぁぁん!?」
「嘘つけぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」
「いや、嘘じゃねぇって!? ホントだって! 信じろってオイ!? なんなんだこのガキ!? 人間不信にでもかかってんじゃなぇのかオイ!?」
こうして、ギャーギャー言い合ってばかりで、白式を呼び出すのが遅れたせいで楯無さんが助けに来るのが結果的に早まって負けてしまった、自称・悪の秘密結社の一人オータムさん。
事件が終わった後に分かることだが・・・・・・本当の話だったらしいと聞かされて驚かされた。
世の中まだまだ不思議なことがいっぱいなんだと、改めて思い知らされることになる―――そんな学園祭の一日は、こうして終わることになる。
PS:追伸
「おお! そこにいるのは志を同じくする我が同志! 元気であったかね!?
―――エム・プーサン・コングラチエーショングー」
「・・・・・・コーデネーム・ハイドか。どうやら我々の戦いに、新たな敵が現れたようだな。
秘密結社ファントム・タスク・・・噂には聞いていたが、まさか実在していたとは。
“機関”だけでなく奴らを相手取っての戦いは激烈さを増していくだろう。
――だが私は決して退くことはできない。退けない根源(りゆう)が、私にはあるのだから・・・」
ハイドの関係者のお方でしたとさ。
分かってたけどな。それ以外に選択肢ないのが現実世界ってものだから。
つづく