あれから何時間経っただろうか。雨はとっくに上がって草木を日光が照らしている。
俺は信長に人里から離れた何もない山の中に吹き飛ばされた。.......官位もなくなり、家もなくなり、そして家族も.......。
絶対に許さない。必ずあいつは殺してやる。..........
とはいっても吹き飛ばされた衝撃で一歩も動けていない。呼吸をするのがやっとだ。場所は人が通る気配が全くと言っていいほどない山の中。
俺はもちろん人間だ。腹も減る。喉も乾く。怪我がそんなにすぐ治るわけもない。.......もう無理だ。俺は死ぬんだ。
と心の中に思っていたが、信長への復讐心だけでなんとか持ち堪えていた。
「あらー、こんなところで倒れ込んで何をしているのですか?」
.........?なにか音が聞こえる。人か?.......いやそんなはずがない。きっと幻聴だろう。そろそろ限界か....
「聞こえてますかー?大丈夫です?血まみれですけど。」
また何か聞こえたので少し目を開けてみることにした。
かすれてあまり見えないが、それは人影だ!
なんとかなるかもしれない!
「タスケテクレ...........」
俺は今出せる精一杯の声を絞り出した。
「...........なんて言いました?.......応急措置で少し治してあげましょう。」
急に視界が明るくなった。体も少しだけ楽になった気がする。
そして前を見るとまるで陰陽師のような見た目をした顔が白塗りの大人びた男がいた。
「..........あなたが助けてくれたのか......?」
「はい、そうですよ。でもどうされたんですか?そんなボロボロで。」
「..........ちょっと色々あってな。...........俺は石田三成だ。助けてくれてありがとう。」
するとその男は驚いたような顔をした直後少し微笑んだような気がした。
そして少し間を置いた後。
「あー。あなたが7日前に魔王の親衛八席をクビになって追い出された元八番隊軍団長の石田三成さんですかー。まさか生きていたとは、すごい耐久力ですね。」
!?!?!?
なぜ俺のことをそんなに詳しく知っているんだ.....!!!
まさかこの男!!信長の家臣で俺の死体を探しにきた敵か!?
まずい!逃げなければ。という感情が浮かび体を動かそうとした。
「アア!イテテテテテ!!」
くそ!体中が折れていてまともに動けねえ...!!!
殺される!
.......しかしそれは杞憂に終わった。
「無理に動かないでくださいよー。大丈夫ですよ、私は信長軍ではありませんよ。」
「.......たしかに、信長軍なら顔を見ただけで俺が石田三成だとわかるか。」
「はい、そうですね。でも今のあなたのその顔面じゃぐちゃぐちゃでよくわかりませんがね(笑)」
「...........それで、あなたは誰なんですか?」
「申し遅れました、わたくし今川義元と申します。」
!?!?なんだと!?今川義元だと!?
今川といえば織田家最大の敵で俺が親衛隊に選ばれる前から戦争をしている。
俺もつい1ヶ月前に今川の家臣、太原雪斎と戦ったばかりだ。その時太原雪斎はタイマンで倒したが戦自体は負けてしまった。
しかしこれはチャンスかもしれない。今川と組めば信長を殺せるチャンスが格段に増える....!!!!
そう思い、俺が仲間に入れてくれと伝えようとする前に今川さんは淡々と話し出した。
「どうですか?石田さん。あなたは織田家を追われた身、わたくしはその織田家と長く戦争をしている。わたしと一緒に来ませんか?」
「.......じつは俺もそう考えていたところです。信長は必ず俺がこの手で殺す。」
「じゃあ決まりですね」
なんか意外とあっさり決まってしまった。
共通の敵がいるからとはいえたった1週間前まではバチバチに戦争していた仲だぞ。
「.......でもいいんですか?俺はあなたのところの太原雪斎を殺している。恨みとかがないとはいえないだろうし、信用もできないでしょう?」
「ハハハ。私は過去のことを気にしないタイプでしてね。.........そしてなによりもあなたのその目には信長公に対する復讐が痛いほど浮かび上がっているのがわかります。そんな人が藁にもすがる思いで出会った敵の敵を裏切ることなんてないでしょう。...........ほら、言うでしょ。共通の敵ができた時仲が最も深まるみたいな。」
今川義元はこんな人なのか。思っていたのと全然違った。
信長がおさめている尾張国では今川家は残虐非道な家で悪魔の家とまで言われていたからだ。
「でもよかったー。ちょうど仲間を集めていたところなんですよ。そんな時に三成さん、あなたに出会えるとは私もついてますね。」
「俺もそうですよ。」
「では行きましょうか、私の城に。ついてきてくださーいね!」
「ちょちょちょ待ってください!!怪我人すよ!俺!」
「そんなの知りませんー。遅いと置いていきますからねー」
訂正しよう。
今川家は悪魔の家だった。
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そんなこんなで今川義元の仲間になった俺だが、城についた後、義元さんに元々支えていた人たちに反発されるのは目に見えていた。
「殿!!わしは反対ですぞ!!その石田は太原どのを葬った悪魔!!そんなのを味方に迎え入れるなどわしは納得できませぬ!!」
「こればっかいはおいどんも毛利殿と同意見じゃぞ!」
今川軍には六道覇軍と呼ばれるものがあり、それぞれ計6人の隊長がいる。織田軍で言ったら魔王の親衛八席のようなものだ。
一番隊から伊達政宗、毛利元就、島津義弘、真田幸村、長宗我部元親である。この前3番隊隊長であった太原雪斎が戦死したため今3番隊隊長席は空席だ。
「まあまあ、とりあえず落ち着いてください。」
「しかし!!!」
「わしは敵などと一緒にいたくない!!」
まー、そうなるよなー。って思いつつ。
この白髭が生えてるお爺さんは毛利元就。六道覇軍2番隊隊長だ。昔から戦乱の世を生き続けており、国内にその名前を知らないものはいないほど有名なお爺さんだ。
俺が信長に支えてたころ、リーダーの今川さんともう1人を除いて次の特記戦力として警戒されていた。
...........そして強く反発しているもう1人、薩摩弁が強いこのおっさんは島津義弘。六道覇軍4番隊隊長だ。勇猛果敢の文字が最も似合う男でその実力は確かだ。
この人も特記戦力の1人だった。
「いったん黙りましょうか。」
!?!?!?
毛利さんと島津さんが騒いでいる時。静かに今川さんが声を発した。
.........しかしその声にはなんともいえない恐怖感があり、それは信長と同じような圧を感じた。
あたりは静まり返り、島津さんと毛利さんは気づいたら頭を下げて謝っており、それにつられるような感じで俺も頭を下げた。
「.............すみませぬ。」
「.....ところで、伊達さんはどこに行ったんですか?.....真田さん。あなたよく一緒にいますよね、何か知りませんか?」
「んーー。ぜんっぜん知りません!!....あの人唯我独尊って感じでいつもフラフラしてるし〜」
「......は〜。困りますね、本当に一番隊隊長としての自覚はある.........」
「ギリギリセーーーフ!!!」
今川さんが話している途中に目に眼帯をかけ、髪を上げている身長が高い人が飛び込んできた。
「......アウトですよ、伊達さん。次遅刻したら許さないっていいま............」
「アウトっすか!!!すみません!許して今川さん!」
これが六道覇軍一番隊隊長、伊達政宗か。もっと几帳面な人だと思っていたで想像と違った。
なんせ伊達政宗はつい2週間前に信長軍5番隊隊長の徳川さんが大敗を喫した相手だ。その件について徳川さんは信長にブチギレられ腹いせに長男を殺されていた。
信長は短気だが一回負けたぐらいでは怒らない。
徳川さんがそこまで怒らせてしまったのには理由がある。
それは徳川さん本人がこの伊達政宗と戦ったのにも関わらず「能力などの情報すら得られずに大敗した」からだ。
徳川さんは魔王の親衛八席の5番隊隊長だ。もちろん強い。
........しかしその徳川さんですら手も足も出なかった相手、それがこの伊達政宗という男だ。
「........ん、ところでその人だれっすか?」
「彼は石田三成ですよ。ほら、死んだって言われた信長の元家臣の。」
「ふーん、あの太原さんがタイマンで負けたっていうね......。ところでなぜそんな彼がここに?」
「彼は信長に見捨てられ、信長に強い復讐心を持っている。敵の敵は味方。私たちと同じ『魔王を殺す』という目標があるんですよ。だからもう仲間です。」
おそらく反発される、なんなら殺されてもおかしくないと思っていた。
............しかし
「へー!そうなんすね!三成!よろしくな!」
「......あ、はい、よろしくお願いします。」
気さくに笑顔で応えてくれた。嘘偽りのない顔で心から仲間として受け入れられたような気がして嬉しかった。
「.........で、石田さんは六道覇軍3番隊隊長にすることにしました。..........でも条件として伊達さん、石田さんとしばらく行動を共にしてほしいんです。........監視も兼ねて。」
「りょうかいーす!」
そして初の作戦が言い渡される。
「そして、ゆっくりしている暇はありません。信長軍は今この時も力をつけています。.......そこでまず、私たち今川軍は人が足りないと思ったので仲間を増やしたいと思います。」
「..........誰を仲間に?」
少し間を空けて真剣な顔で今川さんが発する。
「............率直に言います。越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄を仲間に引き入れます。」
!?!?!?
そしてこの時、越後の龍と甲斐の虎の2人の猛獣を仲間に引き入れる戦いが始まった。